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~エピローグ~ 恋する乙女じゃないけど

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 朝の訪れを自然に感じ取ったのか将又妙に広くなった寝床に違和感を覚えたのか。


 随分と気持ちの良い眠りから不意に意識が現実に帰って来た。現実と夢の境目を確認する為に重い瞼をゆっくりと確実に開いて行く。



 あれ……。どこ行ったんだろ……。


 眠る前まで目の前にいた彼の姿が見当たらない。


 寝返りを打ち、キョロキョロと眼を動かすがその存在は確認出来なかった。


 唯一確認出来たのは彼が残していったこの香りのみ。



「んふっ。ずっと嗅いでいたい」



 彼の残り香が染み込む布をきゅっと抱き締め、鼻をあてがいスンスンと匂い嗅いで肺を満たす。


 はぁ――。よく眠れたわねぇ。


 やっぱり、この香りがそうさせたのだろうな。



「んしょ……」



 毛布を体に巻き付けたまま上体を起こして首を左右に傾ける。


 ん――。ちょっとだけ首が痛いかも。


 枕代わりじゃないけど……。腕枕、してくれれば良かったのになぁ。



「ふわぁ――……」



 覚醒を促そうとして大きく欠伸を放つと何やら少し離れた所から馬の気持ち良さそうな声が聞こえて来た。


 なあにぃ?? よがった声、出しちゃって。


 朝から御盛んなのかしらね。


 天幕の隙間から漏れて来る朝日に誘われるがまま外に出る。



 おぉ――――。快晴ね。


 寝起きの目にはちょっと相性の悪い突き抜ける青、体を包む冬の訪れを知らせる冷たい空気。


 一日の始まりとしてはこれ以上無い程の好天を捉えるとついつい吐息が漏れてしまう。



「んん――――!! はぁっ」



 毛布を掴んだまま体をぐいっと伸ばすと寝惚けた体が顔を顰める。


 起きなさい。まだ微睡んでいたい。


 体はまだ眠ろうとするが頭は覚醒を促す。


 この矛盾した感じ、朝の定番よねぇ。


 わちゃわちゃと体を悪戯に動かしていると……。ふと、春の陽射しにも似た温かい物を感じた。


 その温かさを与えてくれる場所へ向かって首をくるりと動かすと少し離れた木の下に。



 彼が居た。



 丁寧にウマ子の毛並を整え、彼女の体を優しく撫でて戯れている。


 ウマ子がお礼の為、彼の顔をペロリと舐ると困った顔でそれを受け止めていた。


 前足、後ろ足の蹄を磨き。朝日を浴びながら馬の手入れを行う様は異常なまでに様になっていた。



 ……………………。


 夢見る女性じゃ無い、けどさ。


 いつか、そう。いつか。


 静かな湖畔にちっぽけな家を建ててね?? 世俗から離れて二人でひっそりと静かに暮らすの。


 いつもは一緒に起きて素敵な朝を過ごすんだけど。


 今起きた時みたいに彼の姿が見当たらないと、どうしようも無い不安に苛まれて家を出るんだ。



 朝の光を浴びて煌びやかに光る湖畔が目に活力を与え、遠い地からやって来た風がそんなに慌てなくても大丈夫だぞと私の髪を撫でてくれる。



 慌てる訳じゃないけど妙な不安感が忙しなく視線を動かそうとする。それに従いキョロキョロと視線を体を動かしていると……。


 思いの外、早く彼を見付けるの。


 彼が居なくなった理由は馬の手入れの為。丁度今しがた見ている感じで丁寧にそして念入りに馬の相手をする。


 彼を見付けた私は安堵の息を漏らして彼に駆け寄るの。


 うん、こんな感じでさ。


 私の存在に気付かずに馬の手入れを続けている彼の下に寄ってね??


 これから何百、何千。


 ううん。何万回も言うであろう言葉を掛けてあげるんだ。




「…………おはよう。レイド」



 すると、彼はあのはにかんだ顔でこう返してくれるの。



「おはよう。エルザード」



 その言葉を聞くだけで不安は彼方へと吹き飛び代わりに途方もない幸せが訪れてくれる。



「なぁにぃ?? 馬の手入れより、私の手入れしてよ――」



 そう遠くない未来でもこうやって嬉しさを誤魔化す為にお道化てみせるんだ。



「あのなぁ。夜中にふらっと入って来るなよな」



 ごめんね?? でも、我慢出来なかったの。



「いいじゃない。減るもんじゃないし??」


「はぁ。所で、何か用があったの??」


「偶々近くを通り掛かってね。その流れでお邪魔したのよ」



 嘘、本当はあなたを目掛けて飛んで来たの。



「ふぅん。用事か何か??」


 特別気に掛ける素振も無く馬の手入れを再開させた。


「ま、そんな所ね」


「そっか。お、おい!! 何だよ!? 噛みつくなって!!」



 ウマ子が嫉妬しちゃったんだね?? 女の子は女の嘘が分かるんだぞ??



「あはは!! もっと綺麗にしなさいってさ――」


 私は人目も憚らずその姿を見つめながら大声を上げて笑った。


「止めろ!! 毛が抜ける!!!!」



 昨日一日中思い描いていた人が目の前にいる。そして素敵で無邪気な顔で愛馬と戯れる。


 これが笑わずにいられるもんですか。


 夢にまで見た彼が溌剌と動き困った顔を浮かべる。それだけで私の心は彼に囚われて、もう目を離せなくなってしまっていた。



 んふふ。これからも宜しくね??



『私の将来のお馬鹿な旦那さん』



 分厚い馬の唇で髪の毛を食まれ、涙目で悪戦苦闘しながらそれを外そうとしている彼へ向かって心の奥底で誰にも聞かれない様にそっと呟いたのだった。




お疲れ様でした。


これにて淫魔の女王様の御散歩編は完結です。


もっと短く書こうかなと考えていましたが、意外と長い御話になってしまいました。



さて、本編の後書きに記載したPV三十万件突破記念なのですが。日頃の感謝をこめて、前々からお伝えしておりました次の番外編を連載する事にします!!


彼の同期であるトア伍長が主役となります。


時期的には特殊作戦課の任務に就く前の御話であり、人間側のヒロインが数名登場する予定です。本編では魔物側をメインに扱っておりますので彼女達の私生活を少し深く覗き見る感じで御覧頂けたら幸いです。



次回の更新は本編になりますが、こちらの御話も気にって頂けたのならブックマーク、評価をして頂けないでしょうか。宜しくお願いします!!



それでは皆様、次回は本編でお会いしましょう!!



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