旧友とのじゃれ合い
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
剥き出しの岩肌に設置された松明の明かりが優しく闇を払い進路を照らす。我が旧友の下へと思いの外歩きやすい洞窟内をお散歩感覚で進んで行く。
広大で開放的な空の下から一転、くらぁい洞窟内へ。
閉塞感を覚えてしまうかと思いきや、中々に広い横幅そして松明ちゃん達の炎のお陰もあってか狭苦しい感覚は湧いてこなかった。
外のむわぁっとした空気とは違い洞窟内は意外と快適なのよねぇ。
涼しくて丁度良い塩梅の湿度が含まれた乾いた空気が漂い、体に纏わりついていた湿気と篭った熱を冷ましてくれていた。
「ふふ――ん。んふふ――」
この空気が心地良いのか、意図せずとも鼻歌が零れてしまう。
私の美しい音色が通路内にこだまするとそれが壁に反射して様々な角度から私の耳に返って来る。
おぉっ、壁が近いから声が色んな角度で反射して行くわね。
前後左右から届く歌姫も思わず賞賛したくなる音色の所為か、妙な明るい感情が生まれてしまった。
「あはは――ん。んふふっ――。私は――淫魔の女王なのよ――」
この陽性な感情に従い頭の中に思い浮かぶ素敵な歌詞を遠慮なく放つ。
どうせ誰も聞いていないし?? 喉の調子も良いし、もっと声高らかにいっちゃう!?
「強くて、カッコ良くて――。私の――素敵な体に男共は夢中なの――」
ふんふん!! いいわね!!
音階に多少のズレはあるかも知れないけど……。まぁ作詞と同時進行で歌っているからしかたないわよね??
「でもねぇ、愛する男は私を抱きしめてくれないの……。あぁん!! でも――それが更に私の心を燃え上がらせるのよ――!!」
来た来たぁ!! いよいよ最終節に突入ね!!
昂る感情をそのままに喉を震わせ、熱い拳をぎゅっと握り締めて燃える心を表現しながら声量を爆発させた。
「愛しているって、言ってよ――!! 私はあなたに愛されたいのよ――!! 猛禽類の様な猛る瞳で迫って――!!」
大袈裟に両手をバっ!! と開き。さながら世界を魅了する歌手の如く大観衆へ向けて己の感情を表現してやる。
ここで総仕上げよ!!
歌の締めに相応しく最大限の声量を発しようとして大きく空気を吸い込んだ。
さぁ……。行きまぁぁああ――すっ!!!!
「わ……」
『五月蠅――――――――い!!!!!!!!』
「五月蠅――――――――い!!!!!!!!」
「きゃあっ!?」
会場を埋め尽くす大勢の観客から万雷の拍手が届くかと思いきや、それとは正反対の罵声に近いフォレインの怒号が頭の中と鼓膜に響き渡った。
余りの剣幕に思わず腰を抜かしそうになってしまう。
『ちょっと!! 私は仕事中ですのよ!? 静かにしなさい!!』
『あはは、悪いわね。ここの響き渡る感触がどうも気に入っちゃってさ――』
未だ見えぬ旧友へ向けて念話を返してやる。
『いい迷惑です!! さっさと用件を伝えたらどうですか!?』
『まぁまぁ――。積もる話もあるし?? 直接顔を見て話すわよ』
おっ、もう直ぐ別れ道ね。
ここより一段明るい光が薄っすらと見えて来る。
確か……。一本道を抜けたら、大きな空間に出て八つの通路の別れ道になる筈。
『結構です。私は今忙しいので!!』
『そう寂しい事言わないでよ――。旧友の訪問を無下に断るのは無粋ってものよ??』
『あなたと絡んで、ロクな目に遭った事がありませんのでね』
友人を邪険に扱ってまぁ……。冷たいったらありゃしないっ。
「んしょ。とう――ちゃくっ」
高い天井から木製の大きな燭台がぶら下がり、心が落ち着く明かりが広い空間を照らす。
しかし。
この朗らかな光の下、二人の兵士がアワアワと口を開きつつ恐れ慄き。ペタンと腰を抜かして一本の通路を見つめていた。
「ん?? どうしたのかしら??」
「あ……。いえ。フォレイン様の御怒りの声が突如として聞こえましたので……」
あぁ、そういう事。
「大丈夫大丈夫。私が行って慰めて来るからさ!!」
「そ、そうですか。それは助かり……。ってぇ!! あなたは誰ですか!?」
あはは、この子は私の事知らないのか。
一人の兵が慌てて立ち上がり、まぁまぁ殺傷能力が高そうな刀を私に向けるが。
「こらっ、刀を仕舞いなさい。この人はフォレイン様の友人であり淫魔の一族を統べる者なのよ??」
「へっ?? そ、そうなのですか……。無礼をお許し下さい!!」
何度か見た事のある女性が私の素性を知らせると大人しく刀を納刀してくれた。
「別に気にしないわよ?? じゃっ、そういう訳だから通るわね――」
「は、はぁ」
呆気に取られている子を尻目に、今から決戦にでも望むのですかと問いたくなる様な呆れた魔力が漏れている通路の奥へ向かって歩んで行った。
全くぅ、人が楽しく歌いながら散歩しているっていうのに……。
友達なんだからもうちょっと優しく言ってもいいんじゃない??
ぶつくさと文句を垂れ流しながら進んで行き、ちょいと古びた両開きの扉を開くと。
「お久ぶり――。どう?? 元気にしてた??」
「はぁ……。本当に来ちゃったのね……」
旧友が陽性とも陰性とも判断出来る何とも言えない表情を浮かべ、若干疲れ気味の姿勢で女王の椅子に座りながら私の到着を迎えてくれた。
白鳥も羨む白く長い髪を後ろに銀の簪で纏め、前髪は疲れ度を現す様に気怠さを醸し出して右に流している。
ん?? 髪型変えた??
赤と黒を基調とした高価な着物に身を包みワンパクな娘同様、男なら思わず視線を釘付けにしてしまう程に胸元を開いていた。
すっと伸びた鼻筋に美しい瞳に誂えたような端整な顔立ちに思わず感心してしまう。
ぐぬぬ……。これが一児の母親とは思えないわね。
若かりし頃から崩れぬ体型に若干の嫉妬を覚えてしまった。
「何よぉ。そんなに会いたくなかったの??」
むすっと唇を尖らせて言う。
「そんなんじゃないわ。ふぅ……。ちょっと休憩」
椅子の上に座りながらぐんっと体を大きく伸ばし、体の凝りを流している。
うおっ。フォレインって結構おっきいわよねぇ。
私と同じ位か若しくはちょい小さい位か……。
「執務はいいの??」
盛り上がった双丘から彼女の端整な顔へ視線を向けて話す。
「あなたが来るから切り上げてこの部屋に来たのよ。執務室はまた別にあるの」
流れる所作で此方から向かって右奥にある扉を指す。
「ふぅん。それは態々ど――も」
「それで?? 今日の御用件は何かしら??」
用件……か。
「さっきさ、テスラの所へ行って例の件の進捗具合を確かめて来たのよ」
女王の間。その部屋の隅の座り心地が宜しくない椅子に座って口を開く。
見た目通りにちょいとお尻が不機嫌な顔を浮かべているわね。
「そう……。期日までには間に合いそうなの??」
一段高くなった椅子から私を見下ろして問いかけて来る。
その瞳は先程までの友に向ける優しき瞳とは正反対であり、真剣そのものであった。
「何とかね。先日マウルに会ってさ、どうやら目覚めは年が明けて少し経った位って言ってたから……。間に合うんじゃない??」
「ちょっと。本当に大丈夫なんでしょうね??」
「勿論だって。テスラは後二か月位で完成するって言っていたし。それに、もし間に合いそうに無かったら私が手伝うから」
「狷介孤高の海竜が他の種族の手を借りると思う??」
「――――。ごもっともで」
テスラ然り、ヒューリン然り、私の生徒然り……。皆総じて真面目なのよねぇ。
「間に合いそうなら構いませんけど……。最終手段としてあなたと私が海竜達に手を貸す。それで宜しいでしょう」
「賛成――!!」
向こうが拒否するかもしれないけど、この世界の運命が掛かっているのだから四の五の言ってられないって。
「用件は以上でいいわよね??」
「え?? うん、まぁ……。話すべき事はそれ位かなぁ??」
ボー達と会ってこれと言って特筆するべき事は無かったし。クソ狐の事も話したくないし。
「じゃあ私は仕事が残っていますので……」
私の話を聞き終えると女王の椅子からすっと立ち上がり、踵を返して奥の部屋へと進もうとする。
「ちょ、ちょっと!! 幾ら何でも早過ぎじゃない!?」
このままでは本当に私を置いて部屋に篭ってしまう。そう考え出来の悪い椅子から慌てて立ち上がり彼女の後を追った。
「だから。今言いましたよね?? 仕事が残っているって」
「女王同士。積もる話もあるってもんじゃない?? それに……。アオイの土産話なんてどうかしら??」
「……」
アオイ。
娘の名前を聞くと扉に差し掛かった手がピタリと止まる。
ふふん。どうよ?? 娘の活躍、聞きたかろうて??
「…………ま、まぁっ。執務も一段落した事だし?? ちょっと位なら話を聞いてもいいかもねぇ」
お硬い表情に僅かな笑みが零れ、そして先程とは雲泥の差の速さで女王の椅子へと戻る。
「やった!! そうこなくっちゃ!!」
そりゃ自分の娘の話ですもんねぇ――?? 聞きたいわよね――??
早速私は先程と同じ椅子へと足早に移動して得意気に口を開いた。
「さぁて……。どこから話しましょうかねぇ」
「ほら、マウルの所に行ったのでしょ?? その時の様子を聞かせて??」
あらまぁ……。御主人様に散歩を強請る犬みたいにワクワクした顔しちゃって。
「いいわよ?? ちょっと前かな?? いつもの様にクソ狐の所で温泉に浸かっていたらさ。レイド達が『私に』 会いに来たのよ」
「あなた、じゃなくて。イスハにでしょ??」
「違います――。私にです――」
「はぁ。まぁいいでしょう。話が進まないから肯定しておくわ」
やれやれといった感じで溜息を付く。
「それでさぁ。ビシバシといつも通りに鍛えてやってね……」
カエデとアオイに対して魔法の指南を授けた事。新しく覚えた使い魔に増加した魔法の種類。
その全てが自分の事の様に嬉しく感じているのか。いつもは割と無表情な顔が途端に緩み出す。
ん――。これこそ正真正銘、親馬鹿って奴ね。
「――――。それでハーピーの女王、アレクシアの容体が芳しくないからって事で北のマウルの所まで行って来たのよ」
「へぇ……。そうなの。それで?? 結局の所、病気の原因は何だったの??」
「あぁ、アレね。なんかさ、子供が産める体になって。その時に想い人が近くにいないと恋煩いが起きて発熱しちゃうんだってさぁ」
「まぁ。繊細な種族なのねぇ……」
「繊細……。そうなのかもね」
同じ女である私はその気持を痛い程理解出来てしまう。
好きな人と会えないと心がきゅっと痛み、時間の経過が虚しく感じる。
それを誤魔化す為に彼の顔を思い描き、彼との楽しい日々を思い出し、大切に反芻して咀嚼を続けるのだ。
かけがえのない思い出はどんな高価な宝より価値がある。
『誰にも奪われたくない私と彼だけの大切な思い出』
それが膨れ上がって心を悪戯に傷付けるのだろう。現に、私も今猛烈に彼の顔を見たいのがその証拠だ。
「娘が世話になってるわね。ありがとう。指導してくれて」
「え?? あ、あぁ。うん。ついでよ、ついで。ほら、カエデが私に弟子入りしているしさ。魔法が得意なアオイもそのついで――って感じよ。あはは」
いきなり礼を言われるなんて想定外よ。
適当に愛想笑いを浮かべ、ぽっと湧いた照れを隠しておく。
「この里の西部。勿論分かっているとは思うけどオーク達が東へ向けて侵攻を画策しているのよ。それを食い止める為に私を含め里の兵達は毎日四苦八苦している。アオイの指導処じゃないってのが本音。だから、さ。あなたとイスハには頭が下がる想いなの」
「親としては複雑よねぇ……」
「えぇ。それと……ミルフレアと対峙した話。イスハから聞いたわよ??」
「クソ狐から?? あいつ、ここまで来たって言うの??」
「そ。あの事件があってから直ぐに来たわ」
それは初耳だな。
「あの子……。レイドさんが傷つき、倒れるのを見て力を解放しようとしたらしいじゃない」
「アオイだけじゃない。マイ、カエデ。そしてネイトの娘リューヴもね」
誰だって大切な人を傷付けられたら憤慨するだろう。しかも、絶命に至る傷を受けたのなら尚更だ。
今振り返ると私も良く耐えられたなと考えてしまう。
あの光景を思い出すと……。ドス黒い感情が心を支配していく。
許さないわよ。あの女……。
もし、今度私の彼を傷付けようもんならこの世に炭一つ残さず焼き尽くしてやる。
「ねぇ、フォレイン。アオイは現時点でどこまで覚醒出来ると思う?? 率直な親の意見を聞かせて」
生徒達の今後の指導方針を決める為、単調直入に聞いてみた。
「…………以前。シオンを傷付けた時はもう既に第二段階まで覚醒していたわ」
「うっそ。凄いじゃん」
「あのねぇ。分を弁えない力は己の身を滅ぼす。あなたは嫌と言う程知っているでしょ??」
「……ま、ね」
ふんっ。それ位分かっていますよっと。
忘却の彼方に消え失せた思い出が蘇りズキンと心を傷付ける。
「アオイを含め。彼女達とレイドには血の覚醒の制御をそろそろ覚えて貰おうと考えているの。有象無象の雑兵は容易く倒せるけど、それで満足して貰っちゃ困るしね」
「あの子達が想像している以上に過酷な訓練だけど大丈夫かしら??」
フォレインが複雑な表情を浮かべる。
「安心なさい。私と……あのクソ狐もいるし。暴走しないようにちゃんと監視するわ」
「それなら安心出来るけど……。娘は恐らく、第二段階までは既に到達していると思うわ。第三段階である『女王の器』 の片鱗が朧げに見えている感じでしょう。フィロの娘達と行動している事が大いに刺激になっている筈ですからね」
ふぅん。
周りに傑物が揃えば自ずと鍛えられるのは自明の理ってとこか。
「稽古はしっかり務めてあげる。でも、私達二人だけじゃ務まらない事もあるからね??」
その自信はあるけどさ。只、それが七人ともなると多少なりとも不安がある。
それを鑑みて一応釘を差しておいた。
「分かっているわよ。その時が来れば知らせてよ?? 私が娘に指導するから」
「ん。りょう――かい」
「ふぅ――……。何だか結局、疲れる話になっちゃたわね」
簪で束ねていた髪を解き、その簪を小さな唇で咥え髪を整え出す。
「しょうがないでしょ。いつまでも楽しい話ばかりをしていて許される立場じゃないし」
「女王の重責、って奴ね」
「そ――そ――。今朝もさぁ――、里で執務していたら側近が文句ばっか垂れて来て。嫌になっちゃったわよ」
「それが側近の仕事なのよ。…………んっ。よしっ。綺麗に纏まった」
髪型を整え、満足気に盛られた髪を手で優しく触る。
「ねぇ。髪型変えたよね??」
気になっていた事を何気無く問うた。
前は束ねていなかったし。
「あぁ。実はね?? ふふ……。いいのかなぁ。話しても」
むぅっ!! 何だか男の匂いがするわね。
何故だか分からないが……。私の第六感が、嬉しそうに顔を緩めている彼女の表情を見て悟ってしまった。
「ちょっと前にさ。レイドさんが軍の任務で西のオーク達の前線を調査する為、ここに立ち寄ったのよ。その時にね?? 『お世話になります。これはささやかなお気持ちですが受け取って下さい』 そう言って私にこの簪を贈ってくれたの」
満足気な笑みを浮かべ、銀の簪にちょこんと触れて話す。
「男性からの贈り物なんて……。思い出せない位前にしか貰った事ないのにさ。それだからかな?? 今も大切に使っているのよ」
「はぁ?? それ、初耳なんだけど??」
「だって今言いましたもの」
ぐぬぬぬぬぅぅぅぅ――!!!!
わ、私より先に……。他の女性に贈物を贈るなんて!!
「いいでしょ?? これ。凄く気に入っているのよ……」
銀の簪にか細い指を這わせる。
その顔は一丁前に一人の女性の顔、そのものであった。
「そ、それはアレでしょ!! お世話になる礼と、娘の家に寄るから手ぶらじゃ不味いって意味での贈物でしょ!!」
「それでも贈物は贈物ですからねぇ……」
「な、何よ?? その勝ち誇った顔は!!」
にっと笑みを浮かべて私を見下ろす。
「さぁ?? 気のせいでは??」
こ、この泥棒猫めっ!! あ、いや泥棒蜘蛛か。
この際どっちでもいいけど!! 私の話を聞いてもいい気分でいられるかしらね!?
「あ、そう。実はさぁ――。この髪留め。分かる??」
前髪を留めている髪留めをわざとらしく彼女に晒して話す。
「えぇ。桜、ですね」
「そうそう。ちょっと前にさ――。彼とレイモンドの街で『デート』 してね?? その別れ際にくれたんだぁ。急だったらから私驚いちゃってね?? も――飛び上がる程嬉しかったんだよなぁ――」
私が超得意気に彼との逢瀬を話してやると。
「…………っ」
悔しそうに下唇をきゅっと噛み冷たい瞳で此方を見つめた。
どうだ――。
ん――?? いいでしょ――??
「しかも!! 月明かりが綺麗な夜空の下、二人っきりの時にくれたのよ??」
「そう、ですか」
ふふん!! 完全勝利ね!!
どうしたのかなぁその悔しそうな御顔は??
ぷくくっ、私を出し抜こうなんて烏滸がましいのよ。
ちょっと話を盛るけど……これで止めよ!!
「その時さぁ。私の体をきゅっと抱き締めてくれたのよ。別れ際だってのに――。彼ったらさ――。離れたがらないから困っちゃって――」
どうさ?? どうだい?? 悔しいでしょ??
超優越感に浸りつつ、フフンと吐息を漏らしてやると。
「抱き締めた、か。ふぅ――思い出すわねぇ。彼がここに泊まった時にね?? 私が彼の部屋にお邪魔した時、ベッドの上で優しく抱き締めてくれたなぁ――」
「……………………。イマ、何て言った??」
聞き捨てならない台詞が私の鼓膜を刺激してしまった。
「あ、ごめんなさいね?? 気分を害したのなら謝るわ。彼、私の体を気に入ってくれたみたいでね?? それはもぅ甘い時間を過ごせたわ……」
「お、お、思い出した!!!! あんた三人掛かりでレイドに襲い掛かったんでしょ!!」
以前聞いた話が一瞬で甦る。
「さぁ??」
「だ、い、た、い!!!! あんた一児の母親でしょ!? それなのに仕事の片腕でもある重臣と自分の娘とあんたで孕もうなんておかしいんじゃないの!?」
勝ち誇る顔へ正論をぶちまけてやった。
「より多くの子孫を残そうとするのは自然の摂理。それに?? この御時世です。子は多くても困りません」
「倫理観どこいったのよ!?!?」
「まぁ。淫魔の女王から倫理観と来ましたか。これは驚きですわねぇ……」
にやりと笑いこちらを見下ろす。
む、む、むっかつく顔ねぇ!!!!
「あ、そっかぁ――。三人じゃないと相手にして貰えないのかぁ――。そりゃそうよねぇ。一児の母親なんて相手にしたくないだろうしぃ??」
「相手にされない人よりか、マシでは??」
「されてるしっ!!!!」
拳をぎゅっと握り、思わず噛みついてしまった。
いけない……落ち着け、私。私はこいつより濃密な時間を彼と過ごしているのよ……。
俄然有利な立場のは揺ぎ無いの。
しかし、冷静に務めようとしていた私の感情を彼女の言葉が一気呵成にぶち破った。
「彼の体……。それはそれはもう素敵でしたわぁ。引き締まった体付き、体中に残る傷跡が私の子宮をきゅんっと刺激したのよねぇ……。男性の象徴も立派に自己主張をされていたし?? あれはぁ……。んふっ。きっと私の体を気に入ってくれた証拠ですっ」
「さっきから黙って聞いていれば」
「黙る?? ペラペラと舌が良く動いているじゃないですか??」
小首を傾げて私を見下ろす。
「三人同時に襲うなんておかしいって言ってんの!!」
女なら正々堂々と一人で夜這いをしなさいよね!!
「ですから。あくまでも種の存続を願い行ったまでで、三人同時に孕めばより効率的でしょ?? 彼、若いし三回連続でも私達の技を使えば一瞬でそそり立……」
「はい!! そこまで!! 皆迄言わなくても結構!!!!」
何て事を口走ろうとしてんのよ。
あんた、一応女王でしょ!?
「兎に角!! 金輪際、彼に手を出さない様に!! いいわね!?」
ここで釘を差しておかないと。こいつが本気を出したら彼なんて一瞬で拘束されちゃうし……。
私が彼の貞操を守ってやらねばそう考え声を荒げてやった。
「あなたにそんな権限は無いでしょ??」
「あるのよ!! 私と……その。そう!! レイドは付き合っているの!!」
いつかそうなる……筈だもん!!
ちょっとだけ早いけど今の内に既成事実を作っておけばなし崩し的に付き合う流れになるかな??
「嘘仰い。イスハはそんな事言っていませんでしたよ?? あっ、ふふ……。そうですよねぇ。そうやって噓八百を言いふらして外堀を埋める予定でした?? 淫魔の女王足る者が何んと姑息な手段を取る事か」
「はぁっ??」
くっそぅ!! やっぱりこいつには通じないか。
見透かされた事、それに先程から私を見下ろす態度が気に食わない所為か妙に腹が立ってきた。
「正に墓穴を掘るとはこの事ですわねぇ。レイドさんに言っちゃおうかな??」
「あんた。旧友だからって許される言葉と許されない言葉があるわよ??」
椅子から立ち上がり、憤りの感情そのままに魔力を放出して言い放つ。
「許す?? あなたはいつから私の上司になったのですか??」
「あぁ言ったらこう言う。昔っから変わらないわねぇその糞みたいな性格……」
「あら、そう?? 子を産んでからちょっとだけ体型が崩れちゃったけど。褒めてくれるなんて嬉しいわ」
「そっちの話じゃない!! もういい……。ちょっとその沸いた頭にお灸を据えてあげるわ」
右手に魔力を集中させ、業火の塊を空間に召喚してやる。
「あらぁ――。ここで始めるの?? 私、怖いなぁ??」
嫌々と顔を横に振り嬉しそうに困った表情を浮かべる。
その姿が私の感情を大いに逆撫でしやがった。
「この……。お惚け蜘蛛がぁ!! その白髪、黒焦げにしてやるわよ!!!!」
「あなたには無理ですわ」
こ、このぉ!!!!
一人の男を争う女同士の戦いよ!! 負けていられるか!!
もうどうなっても知らない!!
激情に駆られるがまま周囲の空気が焼け焦げ、剥き出しの岩肌が溶け落ちる程の熱量を放つ火球を目の前の女王へとぶちまけてやったのだった。
お疲れ様でした。
次の御話を掲載後、本編の更新に戻ります。
今日も本当に寒かったですね……。こうも寒いと温泉が恋しくなりますよ。
温かな温泉に浸かり、火照った体に冷たい飲み物を与えて何も考えずに畳の上で横になる。日本人に生まれたからには休日を利用してこうしたプチ贅沢を満喫したいものです。
しかしながら年末年始は部屋大掃除や買い物等々、予定がみっちりと組まれているので違った形で贅沢を満喫しなければなりません。そして休日を利用してのプロットの執筆。
もう一つ体があれば幾分か楽に過ごせるのですがね……。
一応、年末年始もちゃんと更新する予定ですので楽しみにされている方がいれば御安心?? 下さいませ。
本編のお礼を此処で述べるのはちょっと違うかも知れませんが……。ブックマークをして頂き有難う御座いました!!
そしていつも応援してくれている読者様にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
この御話を読んで下さり有難う御座います。これからも皆様の期待に応えられる様、精進させて頂きますね。
それでは皆様、お休みなさいませ。




