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28/62

力自慢の種族の里へお邪魔しますっ

お疲れ様です。


本日の投稿になります。少々長めの文となっておりますので予めご了承下さい。




 天高い位置から降り注ぐ陽気な陽射しが私の心を温め、雲一つ見当たらない快晴の空模様が更にそれに拍車を掛ける。


 お目当ての品を購入出来た御蔭かそれとも口煩い執事の監視の目を逃れている所為か。どうしようもない程に気分が良い。


 一年に一度、訪れるかどうかの気分の良さに私は文字通り『浮かれて』 空を自由に羽ばたいていた。


 気に入った服、超かっこいい下着、可愛い小物。


 王都で購入出来た品は全て満足を優に越える効用があり、しかも当初の予算の半分以下で揃ったのだから気分は自ずと陽性を保ち続ける事であろう。



 ふふっ、参ったわね。このままどこまでも羽ばたいて行けそうだわ。


 凄く遠いけど私達が一昔前に拠点に使用していた南の島まで飛んで行こうかしら??


 眼下に広がるアイリス大陸南部の森を見下ろしながらそんな事を考えていた。



「ん……?? この力強い魔力……。そっか。ボーの里に近いのか」



 買い物を済ませて王都を南下。


 森の上空を抜けて海へと出て、それから西へぐるりと回って大陸を移動しようと考えていた。


 丁度飛行経路の真下にあったのねぇ。


 ボーの奥さん、フェリスとは久々に会いたいけど。あの怪力無双は五月蠅いから会いたくないのよねぇ。



 ん――――……。


 気分も良いし、会って行こうかな!!


 翼の動きを止め、元気溌剌とした力強い魔力が幾つも感知できる里の近くの森へと舞い降りて行った。


 この辺でいいかなぁ……。



「んしょっと。はぁ――いっ、超絶美人の登場で――すっ」



 地上に降り立ち人の姿に変わると華麗にクルっと一回転してカッコいい着地を決め、緑潤う獣道をのんびりとした歩調で進む。


 澄んだ空気が肺を洗浄し、風に揺れる草の音が耳を楽しませてくれた。



 ここも私の里と似て良い場所よねぇ。歩いているだけで心が休まってくるわ。


 後ろ手に手を組み散歩感覚で至る所の緑を見つめ心を潤していると堅牢な木の壁が見えて来た。



「種族差って奴か。魔物の姿になるとアイツ等馬鹿みたいにデカイからねぇ」



 こぉんな平和な場所までオークがやって来るとは思わないけど……。


 前回の事もあってか。転ばぬ先の杖じゃないけど豚共の襲撃に備えて不必要なまでに壁を堅固に構築していて正解だったわね。



 人の力ではおいそれとは破れない木の厚み。何人も通さぬ不動の姿勢を貫く背の高い壁が森のずぅっと奥まで続いて行く。


 そして、その壁の下。


 ぽっかりと開かれている門の前には二名の女性門兵が立ち警備を務めていた。


 一方は暇そうに欠伸を噛み殺し、一方は厳しい視線で周囲を警戒している。



 暇なのは物凄く分かるわよ??


 こんな辺鄙な場所じゃ人はおろかオークでさえそうそう訪れないでしょうに。



「ふぁぁああ……。なぁ、レノア」



 欠伸を噛み殺せずに放つ女は大した力じゃないけど。



「何?? というか、警備中なんだから欠伸は止めなさい」


「いいじゃない。どうせ私達二人しかいないんだから」


「気の弛みが失敗に繋がるんだ。ボー様もそう仰っていただろ」



 もう一方の子は中々の実力ねぇ。


 芯の通った出で立ち、大地をしっかりと捉える重心が手を合わせなくともそれ相応の強さを持っていると窺い知れる。


 ここでじっと観察していてもしょうがないわね。


 事情を話して中に入れてもらお――っと。


 木の陰からぴょこんと姿を現して無警戒で門へと歩み出した。



「相変わらず馬鹿真面目ねぇ。私達と一緒にちょいちょい特訓をサボるユウとは正反対……。ん!? 何者だ!! 貴様!!」



 気付くのおっそ。



「はぁい。初めまして――」


 愛想の良い笑みを浮かべて挨拶としてヒラヒラと手を振ってやる。


「怪しい者じゃないわ。ちょっと懐かしい友人に会いに来たのよ」



 彼女達から数メートル間を空けた所で歩みを止めて事情を説明してあげると。



「怪しい奴では無い?? 大方、怪しい奴はそう言うのだが??」



 欠伸を放っていた女が私に槍の切っ先を向けた。


 こら、初対面の相手にいきなり敵意を向けなさんな。相手が恐ろしい力を持つ者だったらどうするのよ。



「止めろ。失礼しますがお名前とそれに……。誰に会いに来たか教えて頂けますか??」


 おっ、こっちの子は話しが分かりそうね。


「私の名前はエルザード。ボーの奥さん、フェリスに会いに来たのよ」


「フェリス様に?? 目的は??」


「えっとぉ。近くに寄ったついで、かしらねぇ」



 パっと思いつく理由がそれしか見当たらない。



「態々こんな静かな森の中に……。貴様の様な邪気を放つ者が目的も無く里を訪れる筈がなかろう」



 鬱陶しいわねぇ。槍を向けないでよ。


 大体、邪気って。


 これでもあんた達をビビらせない様に頑張って抑えている方なのよ??



「エルザードさん。申し訳ありませんが……。その。ボー様の許可無しに部外者の方を里の中に入れる訳にはいきません」


 レノアと呼ばれた女性が厳しい表情を浮かべたまま言う。


「あ、そう。じゃあボーに聞いてみてよ。私の名前、知っているからさ」



 確認を取る時間位なら待つわよ??


 私はどこぞの陰湿な狐や、超短期な微乳龍と違って気が長い方だからねっ。


 軽快な笑みを浮かべて彼女達の了承の合図を待つが。



「だから!! 部外者は入れないって言ってんの!! ほら、帰った帰った!!」



 私の朗らかな態度とは裏腹に槍を持った門番はあろうことかあからさまな敵意を私に向け、この美しい体の直ぐ目の前に槍の鋭い切っ先を差し出す始末。



 おいおい……。誰にそれ、向けてんの??


 寛大で大らかな私の心も鬱陶しい態度を受けて徐々に表情を曇らせて来た。



「はぁ?? 待つって言ってんのにその態度は何よ」


「聞こえなかったのか?? 私は帰れって言ったのよ。貧弱な種族め」


「止めろ、グイディ。申し訳ありません。こちらの兵が失礼を……」



 レノアが慌てて仲裁に入るが、グイディと呼ばれた女はそれを手で押し退け私の眼前に仁王立ちをする。



「大体なぁ。あんたの様な……。はっ。みすぼらしいガタイで私に喧嘩を売るなんざ十年早いのよ」



 おいおいおいおい。どこ見て言ってんだ??


 この雑魚ちゃんは私の完璧な体を見つめ鼻を鳴らすではありませんか。



「…………。聞き間違いかしら?? 今、何て言った??」


「何度でも言ってやるよ。あんたの様な貧相な体じゃ私に勝てないって言ってんの。武器も持っていなけりゃ。魔力も大した事無い。雑魚はお呼びじゃないの」



 ハハハハ。こりゃいかん。


 世の中の『仕組み』 ってもんを体に覚えさせてあげないとねぇ……。



「帰らないって言うのなら実力で追い返してやる」


「どうぞ?? 好きになさい」



 ちょっとだけお遊び程度に相手をしてやろうかな。


 これも減量の為だしっ。



「忠告したからなぁ?? 食らえぇ!!」



 おっそ。クソ狐の数百倍遅い拳が私の顔面に目掛けて襲い掛かる。


 えっとぉ……。これ位の結界でいいかなぁ??


 向こうから到達するまでに温かな御茶をのんびりと飲み干す事が出来てしまいそうな遅い拳の着弾地点へ極薄の結界を張ってやった。



「いって!!!! つつ……。あんた、ちょっとは魔法が使えるようだな??」


 跳ね返された拳を痛そうに振る。


「まぁね――。ほら、どうしたの?? まだあなたの拳は私の体に届いてさえいないわよ??」


「うっせぇ!! だあぁぁああ――ッ!!」



 力任せに殴打し、蹴り、己の武器で叩きつけて来るが……。



「ふわぁ……。ねぇ――。まぁだぁ??」



 たった数センチの圧さの結界を破れずにいた。


 これ位の厚みなら、マイ達だったら一瞬で破るけどなぁ。



「はぁ……。はぁっ……。やるじゃない、か」


「ど――も。ってか大丈夫?? 武器壊れちゃったけど……」



 彼女が手にしていた槍の柄は折れ曲がり、鋭い切っ先もへにゃりと湾曲して武器としての輝きを消失。


 拳は腫れ上がり、体は息を荒げ、傍から見ても満身創痍であった。



「うっさい!! 拳さえ当たれば勝てるんだよ!!」



 ふふ、駄目よ?? そんなソソル台詞を吐いちゃ。


 グイディが咄嗟に吐いた台詞が私の嗜虐心に火を点けた。



「いいわよ。力自慢さん。私と力勝負しましょ??」


 結界を解き、彼女前にすっと右手を翳してやった。


「はっ!! いいのか?? 後悔しても……知らねぇからな!!」



 痛む拳を握り締め、再び私の手の平に向かって放つ。


 ん――。コイツ程度の力を抑え込むのにはぁ……。こんなものかしらね??


 矮小な土の付与魔法で筋力を増加させ乾坤一擲の拳を右手で掴んでやる。



「ぐっ!! くぅっ…………!!」


「あらぁ?? どうしたのかしらぁ?? ビクともしないわねぇ??」



 額に一杯の汗を浮かべている彼女へと余裕の表情を浮かべたまま言ってやった。



「こ……のぉっ!!」



 ば――か。筋力だけで私を跳ね返せると思うな。


 あっでも……。今のユウとクソ狐なら可能かも。



「そろそろ……。こっちの番でいい?? 見ていて飽きちゃった」


「かかって来いよ!!」



 勢いで勇んだ台詞を吐いちゃってまぁ――……。どうなっても知らないわよ??


 地平線の彼方から月が夜空へ昇るかの如く、ゆるりと。そしてじぃぃっくり力を籠めて硬い拳ちゃんを握ってやった。



「い……。いっでぇえぇえ!!!!」


「え?? どうしたの?? まだぜ――んぜん力出していないわよ――??」



 私がほんの微かに力を籠めただけで彼女は声を上げて地面に片膝を着いてしまう。



「は、放せ!!」


「んふふ。い――や。私を侮辱した罪よ。この拳、貰うわね??」



 にぃっと口元を歪に曲げて、今にも泣きだしそうな瞳を悠々と見下ろして言ってやった。



「ひ、ひぃ!!!!」



 まっ、そんな事しないけどね。女王足る者が他所の種族の兵を傷付けたら戦いが起きちゃうし。


 そんな面倒な事は真っ平御免だもんっ。


 私が力を籠めようとする演技を見せた刹那。



「ッ!!!!」



 鋭い気迫が私の体を突き抜けた。



「……っと。あなた、中々良い物持ってるじゃない」


「それはどうも」



 レノアって言ったっけ。


 仲間がやられると思ったのか、背負っていた戦斧を容赦なく私へと振り下ろすと刃先が空気を裂き甲高い音が周囲に鳴り響くと森の奥へ駆け抜けて行った。



「す、すまん。レノア……」


「相手の実力も確かめないで向かうなんて。もう一度新兵の訓練からやり直しなさい」


 そりゃごもっとも。


「次の相手はあなた??」


 今も戦斧を両の手に持ち、最大限の警戒を続ける彼女に問う。


「あぁ。そうだ」


 そう来なくっちゃ!!!!


「私、武器持ってないのにぃ。卑怯じゃない??」


 体をくねらせ、嫋やかな女性である事を強調してあげる。


「そうだな。武器を持たぬ相手に正々堂々武器を振り翳すのは私の流儀に反する」



 うわっ、古くさ。


 戦いじゃそんな自分の自己陶酔エゴは通用しないのよ?? 自分が持てる全ての武器を利用して相手を完膚なきまで叩き潰す。


 甘い考え、捻じ曲がった自己陶酔、刹那の油断。


 それら全てが敗戦に繋がる事を学ばないのかしら。


 まぁ――……。比較的平和な里じゃ中々身に着かないのは仕方が無いのかもね。



 レノアが戦斧を地面に放り、私と正面で対峙する。



「あなたには魔法で勝てる気がしません。ですから……。これで、勝負は如何ですか??」



 これ?? 何だろう??


 袖を捲り、肩を回す姿を見て大体察しは出来るけどさ。



「力比べです。あなたが勝ちましたのならどうぞ、ここをお通り下さい」


「私が負けたら、帰れって事??」


「そうです。簡単でいいでしょ??」



 まぁ、ね。



「では、どうぞ」


 腕を直角に曲げ、誘う様に手の平をこちらに向ける。


「あんまし得意じゃないけど……。宜しくね??」



 私の想像より一回り硬い手を握って言ってやった。



「では……。始めます!!」



 おぉっ。流石、剛力が売りのミノタウロス!!


 力の波動が手の平を突き抜け、体を通り抜けて大地へと突き刺さる。


 うんうん!! 良いじゃない!!


 この力……。初めて会った時とユウと同じ位かしらね。



「…………」

「や、やりますね??」



 そう??


 まだ一割位の魔力しか使っていないけど……。


 大体さぁ素の力でミノタウロスに勝てる訳ないじゃん。種族差を鑑みてよねぇ。



「く……ずぁっ!!」


「そうそう。いいわよ――?? もう少しで私、負けちゃうかも――??」



 歯を食いしばり、全身の筋力を総動員して私の魔力を筋力のみで打ち負かそうとしている。


 それが出来るのはミノタウロスの長、ボーだけよ。


 ん――。ユウも、もう少ししたらいけるかしら??


 でもね。申し訳無いけど……。あなたじゃ全然役不足なのっ。



「良く頑張ったわね?? お詫びに……。あなたの腕が曲がる位の魔力を見せてあげるわ」


 ちょっとだけ魔力を解放してレノアの手をぎゅっと握ってやった。


「う、嘘……」



 私の魔力に拮抗しようとして右腕の筋肉が悲鳴を上げる。



「そぉれっ」


 徐々にレノアの手を地面と平行になるように傾けてやった。


「こ、このぉぉおおぉお!!!!」



 あんっ。そんなに激しく抵抗しようとするなんて……。これ以上私の嗜虐心を擽らないで……。


 ご褒美として私の奥底に眠る力をほんの少しだけ見せてあげるわ。



「くっ……ぐぅっ!!!!」



 後少しで彼女の腕が地面と完全に平行になる。


 私が勝利を確信したその時。



「―――――――。あらぁ?? エルザードさんじゃないですか」



 背後から随分とのんびりした口調が私の耳に届いた。


 この声は……。



「…………やっほ、フェリス。久々ね??」



 レノアの手をパっと放し、声のした方向へと振り向く。



 森林の中に溶け込む様な緑の長髪、阿保みたいにデカイ胸。そしてお淑やかな出で立ちと柔和な笑顔。


 万人が認める優しい面持ちに大変不釣り合いな凶悪な双丘を持つ族長の奥様が私の方へ温かな視線を向けていた。



「お、奥様!! この方とお知り合いなのですか!?」


 グイディが目を丸くして言う。


「そうよぉ?? でもどうしたの?? いきなり会いに来て」


「ここの近くを通ったからさ。久々に顔を見たくなって会いに来たのよ。そしたら……」


 レノア達を見つめてそう話した。


「あぁ――。不審者として攻撃されちゃったんだ」


「そっ。酷くなぁい?? こんなか弱い女性に襲い掛かってくるんだもん」



「き、貴様が吹っ掛けて来たのだろう!!」


「きゃ――。フェリス――。私、殺されちゃう――」



 彼女の背後に隠れ、血走った眼に向かって言ってやった。



「冗談はそこまでにしたら?? この人はね?? 淫魔を束ねる女王よ」


「「えぇっ!?」」


「私の知る人物の中で一二を争う魔法使い。一つ魔法を唱えれば山は消え、二つ魔法を唱えれば地が裂ける。主人や他の大魔達と肩を並べる凄い人なのよ??」



 ふふん。もっと褒めて!!


 彼女の背後でウンウンと頷いてやった。



「齢三百?? だっけ?? まだ魔物の内では若い年齢だけど、子供はおらず。料理もからっきし。自由奔放に飛び回れば混沌が世に蔓延して秩序が乱れる。彼女を恐れた魔物は口々にこう言い揃えたわ。『混沌の権化』 ってね」



「…………フェリス。言い過ぎ」


「ふふっ。冗談ですよ。じょ――だんっ」



 唇をむぅっと尖らす私を見ると、見ていて快活な感情が湧いてしまう笑みを浮かべる。



「兎に角。怪しい……人だけど。私の友人だから里に入れてもいいわよ??」


「一言余計――」



 怪しい人物。その一点だけ気に入らなかったので一瞬で突っ込みを入れてやった。



「はっ。奥様がそう仰るのなら……」


「はいっ。良く出来ました。さ、エルザードさん。行きましょうか」


「ん――」



 私に向かって未だ疑う視線を送るグイディを尻目に堂々と里へと続く門を潜ってやった。



「はぁ……。ここに来るの久々だけどさぁ。変わっていないわねぇ……」



 門から続く横幅の広い大通りを進み、左右に立ち並ぶ店々に視線を送りながら話す。


 見ているだけで小麦のあまぁい香りが漂って来るパン。獲れたて新鮮の野菜が水滴を弾き、何処からともなく漂う食欲を誘う香りが鼻腔を楽しませてくれる。


 その店の奥に立ち並ぶ家々も以前と変わらずしっかりと形を保っていた。



「お帰りなさい!! フェリスさんっ!!」


「えぇ、ただいま」



「奥様!! 新鮮な根菜類が獲れましたので是非後で寄って下さい!!」


「ありがとう」



「フェリス様っ!! 建築用の樹木は倒木出来ましたか!?」


「私が滞りなく地面から引き抜いて先程調達班の人達に渡しておきましたよ」



 店の店主達、そして行き交う人々は彼女の顔を見るなり皆一様に笑みを浮かべ快活な挨拶を交わしていた。


 その中に少しだけ頭を傾げたくなる台詞があったけども、相も変わらず大人気だ。



 物腰柔らかな姿は好感が持てるし?? 私程じゃないけど体の線も整っている。


 特筆して言うべきなのは胸だけどさぁ……。それ、邪魔じゃない??


 有り得ない程縦にバルンバルンって揺れているし、その振れ幅を受けたゆったりとした服は顔を顰めて今にも泣き出しそうな顔を浮かべているもの。



「二十年振り位よね?? こちらに足を運ぶのは」



 おっと。


 縦に弾む胸を凝視していたらそのちょっと上の方から声を掛けられてしまった。



「そうねぇ……。多分それ位かも」



 慌てて視線を上げ、今も里の者達に会釈を続けている彼女に返事をした。



「前は……。あっそうだ!! フィロさん。それとエルザードさんで料理を習いに来たんだっけ!! いやぁ、懐かしいなぁ……」


 当時の光景を思い出す様に宙を見つめている。


「フィロの奴は初めての出産を控えてさ。生まれて来る子供の為に習いに来てたのよねぇ……」



 うっわ、懐かしい。


 あの微乳龍がギャアギャア騒ぎながら私を半ば強引に此処へ誘ったんだっけ。



「頑張っていたのもその所為でしたね。エルザードさんはフィロさんに無理矢理連れて来られていましたけど……。迷惑そうでしたね??」


「迷惑というか……。料理全般はあんましねぇ。男を料理するのは得意なんだけどさっ」


「またまたぁ。その割には、まだお子さんいないじゃないですか」



 軽い笑みを浮かべてこちらを見つめる。


 むっ。


 何よ、その勝ち誇った顔。


 でも……。



「今はいいのよ、それで。私の子供の父親はもう既に予約済みなのっ」



 頼りなさそうで、頼れて。


 女性に億劫なお馬鹿さんだけど、ね。



「ふぅん……。でもぉ。『恋敵』 が多数いますよ?? ほら、私の娘も彼にぞっこんですし??」


「なぁに言ってんのよ。私が負けるとでも言うの?? 彼、私に夢中なの知らないでしょ??」


「ん――。そう、ですか。ユウちゃん、奥手だからなぁ。今度私直伝の技を享受しないといけないかしら??」



 腕を組み、眉を寄せて何やら如何わしい事を考えている。



「ちょっと。それ、何?? 私の彼に攻撃しないでくれるかしら」


「そんな大袈裟な技じゃありませんよ。ちょっとお耳を……」



 フェリスが耳打ちする姿勢で手を翳すので、彼女に右耳を傾けてやった。



『…………をですね?? むぎゅっと挟むんです』



 ほうほう??



『そしてぇ。こちらは相手の顔を見上げ、きゅっと笑みを浮かべるんです。大丈夫ですよ――ってな感じで』



 ふぅむ??



『相手がそろそろ危ない――って時に…………してあげて止めちゃうんです』



 成程。


 生殺しって奴ね。



『相手が懇願し、ぎゅっとこちらの体を掴むまで……するのは禁止です。最後はぁ…………で止めです』



 うはっ、超えっぐ。



『私にも出来るかしらね??』



 微かに笑みを零す彼女へ向かって耳打ちを返す。



『エルザードさんも……。はいっ。余裕で出来ると思いますよ』



 私にぴったりと肩を当て、胸元の双丘を見下ろすと秘儀の発動を出来るかどうかを確認してくれた。


 よっし。良い事聞いた。

 

 いつかこの技を彼に向かって実践してやろう。



「それでボーの奴を骨抜きにしたのね??」


 私からそっと離れた緑に言ってやる。


「さぁ?? 主人は私の内面を好きになった様ですからねぇ」


 どこ吹く風といった感じで私の揶揄いを流す。


「嘘仰い。大方、コレにぞっこんなんでしょ??」



 聳え立つ巨大な山を指で突いて言ってやった。



「んっ。もぅ……。駄目ですよ?? こんな人前で」



 え?? 何……、今の。


 軽く突いただけで跳ね返されたんだけど??


 あんたの肉袋には一体何が詰まってるのよ。



「いいわよねぇ――。でっかいとぉ」


「そんな良い物じゃあありませんよ。肩は凝るし、服も選ばなきゃいけないし。それに、足元が見えなくなるのが大変辛いです。慣れない階段とか躓いてしまいそうですもの」


「あ、それは何となく分かるわ。今日もさ、ここに来る前に服屋に寄ったんだけどね?? そこでさぁ……」



 数時間前の街中での出来事を端的に話してやった。



「まぁ。ふふ。大きい物同士、悩みは共有出来て嬉しいですっ。あっ、到着しました」



 女子同士の会話に花を咲かせて里の通りを歩いていると正面に大きな屋敷が見えて来た。


 左右に伸びるしっかりとした造りの木造建築物であり、端的に説明するのなら二階建ての馬鹿デカイ屋敷だ。


 客人及び家主を迎える巨大な扉が不動の姿勢で私達を見下ろし、普遍的な二階建て建築物よりも一回り大きな建築物が堂々と立ちその存在感を示していた。


 そして大きな扉の前に到着すると。さぁ開けれらるものなら開けてみろ、と。こちらに問いかけて来るようだ。



「無駄にデカイ屋敷よねぇ……」



 この扉、見上げるだけで首が痛くなりそうだわ。



「主人はたまぁに魔物の姿で帰ってきますので。ある程度の大きさじゃないと壊れてしまいますので大きさは仕方が無いのですよ。それより、どうします?? 主人に会っていかれますか??」



 ん――。どうしよっかなぁ……。


 ボーの奴。


 ユウの事を色々と聞いてきそうで五月蠅そうだしぃ。



「今日はいいや。それより、料理を教えてよ!!」


「料理を??」


 キョトンとした感じでこちらを見つめる。


「ほら。そろそろ花嫁修業しないとさ。彼と一緒に生活を送っていく上で料理は必須科目だし」


「まぁ!! ふふ。淫魔の女王でも色々思う事はあるのですね?? 構いませんよ。一緒に作ってみましょうか」


「りょ――かいっ。この際だから、がっつり覚えていくわよ!!」


「一度に全部は覚えられませんよ。さ、お入り下さい」



 軽快な口調でフェリスがそう話すと相当な重量を誇る扉に右手を当て、まるで普通の扉を開く様に軽く開き中に招いてくれる。


 ってか、片手?? この馬鹿デカイ扉を??



「どうしました??」


「へ?? あぁ。別に……」



 魔力も放出していないのに素の力で、か。


 揺れ動く緑の長髪の後に続きお邪魔させて頂くと、彼女の後ろ姿に子の姿を重ね合わせた。



 流石、ユウの母親ねぇ。


 あの馬鹿力の片鱗は母親譲りかもしれない。


 と、言う事はいつかさっきの『技』 を彼に仕掛けるのかしら……。


 んぅ――。奥手なユウだけど、油断は禁物ね。


 より一層警戒を深めなきゃ!!



 きっとあの『技』を食らったらユウの体を忘れられなくなりそうだしなぁ。


 私も今日から奥義の練習をし――よっと。


 頭の中で先程教えられた奥義の行程を確かめつつ、大変踏み心地の良い木の床の感触に御満悦な足を交互に動かして長い廊下を彼女と共に進んで行った。



お疲れ様でした。


本日の夕食はいつも通り、黄色い看板が目印のカレー店へお邪魔させて頂き。カツカレー、御飯400グラムをペロリと平らげ。まだ疲れが取れないのでコンビニへ寄って栄養ドリンクをグビっと飲み今に至ります。


間も無く訪れる冬。


季節の移り変わりは風邪を引き易いので気を付けましょうね。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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