男と女と浮気と美奈子とドンタコスと乾布摩擦と学歴社会の神
女「ねえねえ、わたしに何か隠してることあるよね?」
男「えっ、別にないよ」
女「本当に?ソドンチヌの神に誓える?」
男「そんなマイナーな神に誓いたくないんだけど」
女「絶対に隠し事してないのね?」
男「もちろん」
女「ちゃんと私の第三の目を見て言って」
男「どこだろう」
女「昨日さ……君の携帯見ちゃったんだよね」
男「えっ、いつ?」
女「君が日課の乾布摩擦してる時に」
男「してないしてない。俺そんな日課ないよ」
女「あの電話帳に登録してる『母 美奈子』って女は何者?」
男「まごうことなく母、美奈子だよ」
女「ふーん。いくつくらいの人?」
男「今年で64じゃないかな確か」
女「へえ……年上なんだ」
男「当たり前だよ」
女「なんかあっさりシロ過ぎて逆に怪しい……」
男「今のところお母さんの年齢答えただけなんだけど」
女「じゃあさ……ムハンマド・ドンタコスって……誰?」
男「誰だろう」
女「とぼけないで」
男「いやごめん本当に知らない誰それ」
女「ふうん。まあいいわ」
男「いやめっちゃ気になるんだけどマジ誰だったの今の」
女「じゃあ最後の質問なんだけど」
男「うん」
女「今の日本の学歴社会についてどう思う?」
男「えっと……」
女「すぐ答えられないなんて怪しい」
男「あまりにも想像もしない角度から質問が飛んできたから戸惑ったんだよ」
女「まあ今日のところは見逃してあげるけど、次はないからね」
男「なんでこの質問で俺クロになっちゃったの」
女「もう浮気しちゃダメだからね拳四朗」
男「俺、洋平なんだけど」
女「あっ」
男「ねえ、拳四朗って誰」
女「お、お母さんよ」
男「母、拳四朗は流石に無理があると思うよ」
女「違うの!信じて!私の目を見て!これが嘘ついてる人間の第三の目に見える?」
男「まず第三の目が見えない」
女「どうして信じてくれないの?私が専門卒だから?」
男「東大卒でもダメだよ」
女「別にやましい関係じゃないんだよ。拳四朗とは毎朝一緒に乾布摩擦をするだけの健康健全な付き合いよ」
男「健康ではあるけど多分ある程度不健全じゃないと成立しない仲だよそれ」
女「ごめんなさいめっちゃ浮気してました」
男「もう少し粘ろうよ」
女「これ以上醜い言い訳を並べ、焦燥を隠すこともできずに自責と後悔の念に苛まれながら貴方と向き合うことはできなかったの」
男「平たく言うと隠すのめんどくさくなったんだね」
女「在りし日のドンタコスと今の自分の姿が重なっていくのが耐えられない」
男「ドンタコス故人だったんだ」
女「本当にごめんなさい」
男「うーん」
女「もう二度とやらないから」
男「本当に?」
女「えぇ、ヌポッケイの神に誓って」
男「宗派変わってない?」