最終話 夢の始まり
「ぐ…やるじゃ…ないか…」
だが、績も、雪嘉の攻撃に、カウンターを加えていた。
「っつ…」
その打たれた部分は、ちょうど、胸元…そう、心臓であった。
雪嘉は、そのまま地上へ真っ逆さまに落ちてゆく。
もとい、績も、そのまま、雪嘉同様に落ちてゆく。
二人は、ほぼ同時に、地面へ落ちた。
「君に、僕の意思を託そう…これからの‘未来‘を乗せて…」
その未来が指すもの…。
それが、何かは、雪嘉には、まだわからなかった…。
二人は、同時に地面に落ちることはなく、落ちてきたのは、績一人であった。
雪嘉は、途中、‘起きた‘のだ。
夢の中にいる存在の績には、夢の世界から抜けることなどできない。
だが、雪嘉は、夢の住人ではない、そのため、身の危険が夢の中で起きると、自然と体が起き上ったのだ。
「…夢…か」
そう一言言うと、ベッドから起き上がり、学校へ行く支度をして、家の扉を開けた…。
すると、そこには、眠る前とは別の世界が広がっていた。
目の前にあるはずの家はなかった。
いや、あっても、少なくてもそれは、雪嘉が知っているものではなかった。
{これからの‘未来‘を乗せて・・・}
その一言が、雪嘉の脳裏を横切った。
まぎれもなく、‘未来‘がここにあったのだ。
家にあった時計を見ると、眠りについた時刻と同じ時刻。
だが、カレンダーを見ると、2100年と書かれていた。
雪嘉は、2000年代から2100年へと来ていたのだ。
とても信じられない。
自分が寝ていて、何時間が過ぎていたとしても、これは、何年間というとてつもなく長い時間を移動したこととなっていた。
とまどい、焦る雪嘉の前に、一人の人物が姿を現した。
「あっ…」
それは、自分の身間違いかと思って、雪嘉は、袖で、手で、何度も目を覚めぬかのように擦る。
だが、その現実は変わることはなかった。
「久し振り ユキちゃん」
そう、目の前にいたのは、大人びた弓音であった。
その姿を見て、自分と見比べた。
身長の差は、大人と子供のはずなのに、然程差はないのだ。
と、自分の姿を見て、気がついた。
自分が、‘大人‘となっていたのだ。
これは、本当にあり得ることなのだろうか?と戸惑う。
「久…」
自分の声のはずなのに、それが他人の声に聞こえるように、見覚えのない声を出す自分が恐ろしく思えてきてしまった雪嘉は、自分が大人の姿に本当になってしまったのかと、戸惑っていた。
「…俺、今何歳だ?」
変な質問をする雪嘉だったが、これは自分の姿が本物なのかと確かめるためだった。
「21歳だよ今日は、ユキちゃんの誕生日」
そう言って、大人の弓音は、自分の長く結ばれた髪を揺らした。
「21歳…」
たしかに、自分からは全体は見渡せないが、これが自分なのだと気がついた。
そう、これが自分の、大人になった姿。
鏡を見ると、自分がなんなのかが、見当がついただろう。
と、ようやくここで自分の姿を見て気がついた。
自分は、学生服を着ているのではなかった。
仕事用のシャツとズボンを履いて、さらに慣れていない、というよりも、見たこともない靴を履いていた。
「弓音は、何しにここへ…?」
ようやく解決した自分の口を開き、雪嘉は、弓音に質問をする。
「ユキちゃんに 告白 をしようと思って」
と、彼女から伝えられたその台詞は、あの時、績がこうなる運命だったはずの未来だった。
由愛がしようとしていたこのことを、今、弓音が実行をしていたのだ。
雪嘉は、その言葉に、頷いた。
ただ、何も言わず、自分の頭を縦に振って。
「私は、貴方のことが、天宮 雪嘉(潤野 績)のことが、好きです、大好きです!」
彼女の声は、由愛と重なる。
彼女の告白は、響いた。
きっと、雪嘉の心身の神経のさらに細かな部分まで、それは行き着くほどに。
その言葉を、雪嘉は
「ああ、俺(僕)も好きだよ 大空 弓音(大洞 由愛)のことが、好きだよ」
雪嘉と績の言葉が、ほぼ同じに聞こえる。
彼らの過去は、未来を、績たちの未来を物語っていた。
そして、彼らは、それから2週間後、結婚をし、子供も一人生まれた。
彼らは、一生を誓い合い、そして、コール メロディ コメディ イントゥ(呼びかける音の中の喜劇) (コメコイ)という小説を書いたという。
はい、無事コメコイ2完結ですね
結構短かったと思います。
…本当に、短かったんですかね?
まあ、それはさておき、読者さんたちのコメントの要望があれば、コメコイ3〜after world〜を、書いていきたいと思います。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。




