第一話 俺と僕
今日は、魔法円の日。
この街で行われている、毎年恒例の学校行事だ。
魔方円というのは、ただ円を描くのではなく、それにそって、その円に願いを描くことで、発動されるもの。
つまり、その円の中に、自分の望みを書けということらしい。
ちなみに、召喚的魔法を実行してもよし、自分の魔法に磨きをかけるも良しと、ジャンルは様々である。
(楽しそうだな、雪嘉。僕も混ぜてくれよ)
断固拒否だな、こんな日に、普通にのこのこと、電話信号を普通に送るなっつうの
(聞こえてるぞー?君の心の声。)
なんと、そこまでの能力があるのか…。ある意味見習いたいものだ。
(さて、君の話をしようか、ルト・ベアリングという魔法の指輪をしっているか?)
知らんわ!そんな魔法道具
(それには、蘇生能力がある。それをとってきてほしい。)
…。蘇生能力なんて、他の魔法道具にいっぱいあるだろうに、なぜそんな大がかりっぽそうなものを。
(それは、そのルト・ベアリングは、僕の指輪だからさ。)
…ああ、そういえば、持主の指輪は、それ相応の反応を示すとか言ってたな、弓音もたまには、役立つことを言ったもんだな…。
(弓音?誰だい?彼女かい?)
ある種、心外だな、どんだけ、弓音に興味を抱いてんだろうと。
それに、彼女なんて、できた覚えはない。
(まあ、がんばりたまえよ。雪嘉くん。)
なんとなく、腹がたつが、仕方がないだろう。とりあえず、その指輪はどこにある?
(ん〜君が180°回転すれば、見えるものも見えるだろう。)
と、そこにあったのは、少し大きめな指輪があった。
中指に入れても、少し隙間があく。
まあまあの大きさはあると思ったが、これ以上があるとは、と俺は関心を余儀なくされた。
そんな中、その指輪を見ていると、裏に文字があった。
{我、ここに在らず、ここにあり。}
と書かれた意味不明な文だ。
何度読み返しても、そう書いてある。
ちなみに、ここに記されているのは、少し前にはやった、0(レイ・ゼロ)語だ。
形式は、7、22300、2230という順で、組み合わされる。
この形式は、とても有名となった。
なぜなら、これは、魔法書第七組、公式10段だからだ。
その、魔法書第七組というのは、この魔法の世界で、一番強いとされる、絶対権限者、コウトメ・コウイチを中心としたメンバー、「コメコイ」が作った、攻守の守護(執事)たちだ。
そして、公式10段とは、この数字が、 1・5・4 の形式で表され、その合計が10個あるから、10段であった。
この 1・5・4 の順は、魔法書第七組の暗号のようなもので、これを使い、連絡を取る時期があったそうだが、つい最近、いやそうは言っても3年前に、独自で入手された情報が、次々と伝染したのだろう。この 1・5・4 は、それほど有名なものとなっていた。
そして、この指輪に描かれた{我、ここに在らず、ここにあり}には、解明されたものがある。
ここに在らず、ここにあり ならば、 ここに見えず、ここにいる という説明をすれば、わかるだろう。
ここにいる。しかし、そに姿は見えない。
そして、解明されていないのが 我 という存在だ。
この存在が本当にあるのかは、なぞであった。
(我、ここに在らず、ここにあり。この説明、今つけようか?)
…。意味がわからない。
(我、これは、魔方陣の呼び名としよう。されば、先ほどの説明を組み合わせれば、わかるはず。)
魔方陣はここにあるけれど、それは見えない。 という説明となってしまう…。
ん?
僕は、ふと疑問が出てきた。
ならば、魔方陣は、ここにある…。
それが、見えない‘位置‘にあるのだとすれば…。
僕は、その指輪の至る所を探し始めた。
指輪についている赤い宝石、その他の、丸い部分。
そして、この文字の部分…。
見えないものを、どのように探すかは、わからなかった…。
だが、ここにあるのだとすれば、それは、この文字の近くにあるはずだ。
…しばらく探すと、そこにあった。
小さな、安全ピンのさきっぽを入れられるが、それ以上の大きいものは入らないような穴だった。
俺は、周囲に、魔法陣を、描き、そこから草を一つ、中心に置いた。
すると、魔方陣が光りだし、その草をきれいに、そして、硬く細い、安全ピンのようなものへと変えた。
そして、先ほどの穴へ入れてみた。
すると、指輪についていた宝石から、光が漏れた。
いや、この光は、魔方陣の発動時の光。
中に何があるかはわからなかったが、何かが発動したのだ。
そして、その光の先に出てきたものは…。




