第五十一話 ベルリーナお姉ちゃんへのお礼
あの大変刺激的な経験から数日もたった後、
守くんはまたモンスター退治などの活動をしています
今日は久しぶりにアミーお姉さんと一緒のお仕事でしたが、
以前までと違って随分積極的にあれこれ教えてくれるようになっていました
「マモルくん、連携のおさらいよ! まず私が突っ込んで相手の注意を惹きつけるから、
小型のモンスターが飛び掛かってきたところで魔法を撃ってちょうだい、
私はそのまま奥の中型モンスターを狙うから」
「はい、分かりました!」
気合の入った指示をされ、複数人で戦うときの方法をあれこれと教授してもらいます
お仕事に行く場所も、町の近辺だけでなく、より多く、より強いモンスターも
出現する場所へ足を運ぶようになっていました
それに、お姉さんはかなり行動的に戦っていますが、
守くんから見てもかなり強くなっていることが伺えます
「・・・お疲れ様、今のでこのあたりのモンスターはほとんどいなくなったわね、
もう少し探してみてもいいけれど・・・、大きな群れにでも出会ったら危ないかしら、
よし、ちょっと早いけどもう帰りましょうか」
「お疲れ様でした、お姉さん」
「マモルくんもお疲れ様、一応帰り道も警戒は怠らないでね?」
「はい」
本日の業務も切り上げ、二人は岐路に着きます
その道すがら、守くんは気になったことをお姉さんに尋ねていました
「お姉さんとお外に出るの、なんだか久しぶりな気がします」
「そうだったかしら? ・・・そうだったかもね、
これまでベルお姉ちゃんにいろいろやってもらってたから、確かに久しぶりね」
「ベルリーナお姉ちゃんに・・・、そうだったんですか、
どんなことをしてたんでしょう?」
「それはまあ、いろいろね、・・・まあ正直に言うと
ちょっと修行させてもらってた、ってところかしら?」
「修行? おお・・・、すごいです♪ だからお姉さんが前よりずっと強くなってたように思えたんですね♪」
「そう? ありがと♪ でもまだまだあの頃には・・・」
「あの頃・・・?」
「ううん、なんでもないわ♪ それより、マモルくんはこれからどうするの?」
「えっと・・・、あ、そういえばベルリーナお姉ちゃんの名前が出たから思い出したんですけれど、
聞きたいことがあったんでした」
「聞きたいこと? 何かしら?」
「その・・・、ベルリーナお姉ちゃんは、何を上げたら喜んでくれるんでしょう・・・?」
和やかな談笑をしていたところで、守くんは不意に思い出したことを口にします
それは、かねてより考えていたこれまで自分を助けてくれた人たちへのお礼に関することでした
食べ物の好み以外はほとんど分からず、プレゼントの内容に困っているようです
「そうねぇ・・・、私は果物で良かったけれど、ベルお姉ちゃんはそういうの興味ないだろうし・・・、
いっそのこと、本人に聞いてしまったらどうかしら?」
「ベルリーナお姉ちゃんに・・・、そっか、確かにそれが一番かもしれません」
「お姉ちゃん、たぶん私やマモルくんからの贈り物ならなんでも喜んでくれると思うけど、
できれば心から嬉しいと思ってもらいたいでしょう? それなら聞いてみるのが確実よ♪」
「分かりました、直接聞いてみることにします♪」
「ええ、それがいいわ♪ 今日は・・・、もしかしたら、本部のお部屋にいるかもしれないわね、
後で行ってごらんなさい♪」
「はい、そうします♪」
予定も決まり、守くんたちは町へ帰還します
(まあ、お姉ちゃんが欲しいって言ったら多分あれでしょうね・・・、
マモルくん、大変だけどがんばれ!)
その途中でお姉さんが呟いた心の声は、もちろん誰にも聞かれることはありませんでした・・・
無事に帰還し、本部で報告をすませた二人は一旦そこで別れました
アミーお姉さんはそのままお家に戻り、
守くんは一人ベルリーナお姉ちゃんを尋ねます
(確かこの部屋だったよね・・・、受付で聞いたら今日は居るって聞いたから、きっと居るんだろうけど、
うーん、改めてお部屋に行くの、なんだか緊張するなあ・・・)
本人からいつでも部屋を尋ねる許可を出されていたものの、
用事が用事なために照れ臭いのか、守くんは扉を前に少しまごついていました
とはいえそのまま廊下でうろうろしているわけにもいかず、
思い切って扉を叩きます
「あ、あの・・・、ベルリーナお姉ちゃん、僕です、まも」
「マモルちゃん、いらっしゃぁい♪ 良く来てくれたわねぇ♪」
アミーお姉さんがやっていたようにノックして声をかけると、
言葉の途中で扉が開いてベルリーナお姉ちゃんが姿を見せました
以前、モンスターとの戦い方をいろいろと教えてもらったりした
とてもお世話になった女性です
守くんはその時お姉ちゃんと呼ぶように言われ、
ずっとその通りにしていました
「今日は・・・、マモルちゃん一人なのね? 何かあったの?」
「いえ、そうじゃなくて、えっと・・・、何て言えばいいのかな・・・」
「? とりあえず、お話があるならお部屋に入りましょう?」
「あ、はい」
入口で話を始めようとした守くんでしたが、促されて入室します
そこからなかなか要領を得ない説明が始まりましたが、
お姉ちゃんは最後まで口をはさむことなくきちんと聞いてくれました
「つまり・・・、お世話になった私たちに贈り物をしたいと、そう言ってくれるのね?♪
あらあら♪ 嬉しい申し出だわ♪」
「はい・・・、だけど、何を贈ればいいか分からないから
本人に聞きなさいってお姉さんに・・・」
「・・・なるほどね♪ マモルちゃん、それ、物以外でもいいかしら?
実は今、あなたにしてもらいたいことがあるんだけど・・・、それをお礼として受け取っても構わない?」
「えっ? それはもちろん、お姉ちゃんがそっちの方がいいなら・・・、
だけど、一体何をすればいいんですか?」
「簡単なことよ♪ 実はね・・・、ちょっと話し相手になってもらいたいの♪
誰かに話したいことがいっぱいあって♪」
「分かりました♪ じゃあ、僕で良ければお話させてください♪」
「そうこなくっちゃ♪ 待ってて、お水でも持って来ましょう♪」
お姉ちゃんは嬉しそうに席を立つと、小走りに部屋を出ていきます
無事に贈り物の内容も決まり、守くんは安心しますが、
そこから中々に大変な時間が始まるとはまだ思いもしませんでした・・・
大きな水差しと小さなコップを手にお姉ちゃんが戻って来たところでお話が始まります
「それでね、お花の種を手に入れたから植えてみたいんだけど、
あまり家に戻らないから花壇の世話をできそうになくて踏み切れないのよねぇ」
「そうなんですか、お世話してくれる人、いないんですね・・・(あのお屋敷って本当にベルリーナお姉ちゃんが一人で住んで・・・)」
最初は他愛のないお話でしたが・・・
「だから上の偉い人に逐一報告して突いてるんだけど
なかなか対応してくれなくて」
「そ、そうなんですね・・・(何のことかお話が難しくてさっぱり分からないや・・・)」
段々と込み入った話も増えていき・・・
「私だってもっと自由にやりたいけどいろいろ縛られてて難しいの、
も~、いっそのことまたどーんとお休みにしちゃおうかしらっ!」
「は、はいぃ・・・」
果てには聞こえてくるのが愚痴のようなものばかり、守くんもすっかり疲れてしまいます
気が付けば、来た時はお昼を過ぎたくらいだった時間も
夕方になろうとしていました
「ふ~、ちょっと休憩、あ、マモルちゃんもお水飲む?♪」
「は、はい・・・、飲みます・・・」
しかし、それでもベルリーナお姉ちゃんのお話は終わる気配がありません
守くんもいつまでよく分からないお話を聞いていれば良いのか
段々と困ってしまいます
ですが、どうやらベルリーナお姉ちゃんは相手が疲れてくることも計算済みのようでした
「次は何のお話をしようかしら・・・、そうだ、アミーちゃんの昔の話、聞きたくない?♪」
「はい・・・、えっ? お姉さんのお話ですか?」
「そうよ?♪ アミーちゃんの昔のこと、聞いたことある?」
「それは・・・、そう言えばあんまりない気がします」
「じゃあ決まりね♪ 私が知る限りでいろいろ教えちゃおっと♪」
興味が出そうなお話に、疲れていた守くんも元気を取り戻します
ここからは、彼の知らないアミーお姉さんの昔ばなしが始まりました・・・




