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聖女が魔王妃になるまで

作者: るい

「黒髪だ……」


聖女を包む光が収まった時、誰かが呟いた。

その言葉は嫌悪と恐怖の響きを孕んで、彼女の耳に届いた。


この世界では、黒はもっとも忌むべき色だった。

邪悪の権化、魔王の色だからだ。

黒い髪、黒い瞳、黒い服、黒い魔法。この世の全てを闇に包まんとする魔王の代名詞、それが黒色だった。


しかし、その魔王を討ち倒すべく女神から遣わされた聖人その人が、黒い髪と黒い瞳の持ち主とは。

国は大いに揺れた。

彼女は恐れられ、偽物だと弾劾する者も後を絶たない。

しかし、彼女は預言者の伝えた神の御言葉のとおり現れた。預言者はその特殊な能力故に、神の言葉を偽れば口が裂ける呪いにかかっている。預言者がそうと言うのなら、烏は白いし、この黒い少女は聖女なのだ。

彼女の協力なしに魔王を倒すことなど、到底できない。たとえ悍ましい黒髪の持ち主であろうと、彼女は聖女なのだから。

王は彼女を正式に聖女として認めながら、周囲も、そして自身をも納得させることができずにいた。


この世界に来てから、嫌疑の声に取り囲まれた聖女だったが、類稀な心優しき少女だった。

目が細く、眦の下がった相貌だったため、いつも優しく微笑んでいるように見えた。


彼女を恐れ、侍女たちはほとんど世話をしなかったが、彼女は決して責めず、身の回りのことは可能な限り自分で済ませていた。

最低限の世話を押し付けられた一番身分の低い侍女には、いつも感謝と謝罪を伝えた。

ある日侍女が、何故自分のような下々の人間に謝るのかを問うと、こう答えた。


「この世界に方々にとって、この黒い髪と瞳は、肌が青いとか、角が生えているとか、それくらい重大なことなのでしょう? 怖がらせてしまって、申し訳ないです」


嫌悪の視線を向けられることより、怯えられることのほうが聖女にとっては辛かったのだろう。


「でも、私にとっては、慣れ親しんだ髪の色ですし、親から受け継いだ大事なものですから……いつか皆さんにも受け入れてもらえたら嬉しいです」


また、こんな出来事があった。

仕事のため城下町へ出かけた聖女に、子どもが石を投げた。

石は運悪く彼女の左目に当たってしまった。

護衛は石を投げた少年を捕まえ、怒鳴って殴りつけたが、誰も傷付いた聖女には近寄らず、心配の声は遠巻きにかけられた。


聖女を助けない、助けたくない代わりに、少年は護衛に酷くなじられていた。

拳を振り上げる護衛を止めたのは、他でもない聖女だった。


結局、彼女の左目は白く濁り、視力もほとんどなくなってしまったが、彼女が許したことで、少年は罪に問われずに済んだ。

また、子どもが投げた石さえも防げなかった護衛も、彼女は許した。


彼女が寛大な博愛を示す対象は宿敵である魔王にまで及んだ。

今代の魔王は、今までとは違い、生まれついての魔王ではない。

黒い髪と黒い瞳を持った一人の少年だった。


本来、万が一にもそのような不吉な子供が生まれれば秘密裏に死産ということにされる。しかし長らく子を待ち望んでいた両親は、黒髪の子でさえも手放すには惜しかった。夫婦は爵位を持ち、その財力や人脈は決して強大とは言えないが、無視できるほどでもない。

夫婦の必死の嘆願と、生まれた子を縛る厳しい条件を引き換えに、赤子は生きることを許された。


しかし、その温情の甲斐も虚しく、黒髪の忌子は齢八つにして本性を現した。

幽閉された塔の中から国中に流行病を蔓延らせたのだ。

忌子を愛し、守っていた老夫婦もその毒牙にかかってしまった。得難い慈愛を受けながら逆恨みで己が肉親を呪い殺し、国を混乱と絶望の坩堝へと陥れたのだ。


忌子はその後、罪人として罪を贖う機会を与えられたが改心せず。昨年の冬、ついには魔物を操る黒い魔法の力を手に入れ、生まれ故郷を焼き払った。

森が火に包まれ、多くの血が流れた夜、預言者は魔王の誕生を告げた。


無論、この話は国の人間に都合の良い脚色で満ちていたし、聡い聖女はその脚色に隠された真実を見抜くことができた。

つまり、彼は、人々によって魔王にさせられたのだ。


預言者が魔王の誕生を告げたということは、逆説的に言えば、その日まで魔王は存在しなかったのだ。

彼はただの人間だった。子どもだった。

もちろん、ただの子どもが国中を覆うような病を流布することなどできない。

しかし人々は後ろ盾をなくした彼に謂れのない罪を着せ、石を投げ、彼を追い詰めた。


黒髪がこの世界ではどれだけ不遇な扱いを受けるのか、聖女は身をもって知っていた。

聖女という立場のある彼女でさえこの有様だ。貴族とは言え、親を失った子ならどれほど辛い目にあってきたことだろう。


聖女は心から魔王に同情し、救いたいと願った。


聖女の類稀な心の優しさ、清らかさから、少しずつ彼女を受け入れる人が現れた。

しかし、それを面白く思わない人間もいた。

教会から聖女に、ある試練が与えられた。


王都にある大聖堂で祀られる神の炎。

その火のなかに飛び込め。

本当に聖女であるならば、その身を焼かれずに済むだろう、と。


聖女はその試練を受けた。

幸運だったのは、その炎が本当に神から授かった聖火であったことだ。

多くの神官が監視する中、彼女は優然と火の中へと入った。

神の炎は聖女の髪一本すら、焦がしはしなかった。

この試練を無事乗り越えたことで、聖女の評価はさらに向上した。神の炎に当てられると、聖女の髪と瞳の色が赤色に変わるのだという噂が市井に駆け巡った。


この奇跡からすぐに、聖女は病に倒れた。

食事も水も、ほとんど口にできないほど衰弱しきり、肌は血の気を失い青白くなってしまった。

そして忌々しい黒髪も、ほとんど白いものに変わった。

病を期に、世話係は増えたものの、聖女は口を開く体力もないのか、薄く開けた目で使用人たちをじっと見つめていた。

きっと今まで仕えてきた侍女にしてきたように、感謝を伝えたいのだろう。


しかし、当の侍女は不忠だった。勤務中のつまみ食いを見咎められ、処分を受けたのだ。しかも庶民が食べるような下町の軽食を隠れて持ち込んでいたのである。侍女とは言え、貴族の出自の娘がすることではない。全く嘆かわしい。

侍女の裏切りを知ってから聖女はますます塞ぎ込んでしまった。


いよいよ危篤か、という深夜。一人寝室で横たわる聖女に、訪問者があった。

腰に届くほどの長髪。切れ長の瞳。威圧感のあるマント。

全て闇夜に溶ける黒だった。


魔王である。


まるで暗闇の中からたった今生まれてきたかのように、聖女の枕元に現れた。


「可哀想に、毒を盛られている。呪いもかけられているな」


可哀想に、などと言いながら、口調は淡々としていた。まるで、全ての感情をその黒色で塗りつぶしたかのような目だった。

表情のない顔のまま、聖女を見下ろし、魔王は話し続ける。


「王城の人間がやったんだろう? よほど黒髪が気に入らないらしい」


魔王の言うとおり、王や大臣たちが画策し、毒と呪いにより髪の色を白く変えようとした結果が、この有様だった。


食事をとったすぐ後に気分が悪くなって、膝をついた途端、待っていたかのように“医師”たちが部屋に押し入り回復魔法と称した呪いをかけたのだ。抵抗する間もなかった。

使われた毒は百年草という植物から取れる毒で、その毒に苦しんだ者は百年もの歳をとったかのように老けてしまうというので、百年草と呼ばれていた。


魔王は大儀そうに椅子に腰掛けた。聖女に動揺した様子はない。彼女も王の裏切りは承知していた。

魔王は肩透かしを食らった気分だった。これを知ればショックを受けて取り乱すと思い、わざわざ人間どもの城までやってきたというのに。


聖女はわずかに残された力を振り絞り、魔王に手を伸ばした。

何か言いたそうに口を開いていたので、魔王は毒で焼かれた喉を治してやった。

魔王の頬に、彼女の皺だらけの指先が触れた。


「つらかった、ね……」


かすれた、小さな声。心からの同情と慈愛の声。

聖女の目には、彼は魔王ではなく、傷付けられ、追い詰められた青年として映っていた。


にわかに魔王の魔力が揺らいだ。

巧妙に侵入してきた魔王であったが、この時に城の警備魔法が警鐘を鳴らした。

すぐに衛兵が部屋に飛び込んできたが、もう遅い。聖女は魔王の腕に抱えられていた。


「この女は俺の后にする」


それだけ言い残し、闇に紛れるように消えた。


翌朝、王国に二つのスクープが飛び交った。

一つは、聖女の病が国王と一部の大臣の仕業であったこと。

もう一つは、聖女が魔王に連れ去られたこと。


王城には怒れる国民が押し寄せた。毒の入手経路や呪術師との繋がりから、連鎖的に王の過去の悪事や陰謀が発覚した。日頃の政策や王の贅沢な暮らしに対する不満も噴出。連日報じられる国王・大臣叩きは事実かどうかも怪しい噂まで取り沙汰される始末。もはや収拾のつかない事態へと陥った。


この混乱を収めるため、現国王の兄が新たな王となることが決まった。

まるで台本でもあったかのように、会議は粛々と進められ、終わった。青ざめていた大臣たちはまだ可愛らしい方だろう。処刑が決まった愚王はみっともなく喚き散らしていた。

戴冠式を手早く終え、晴れて新国王となったその人は、ブラウンの髪の持ち主であった。人格も能力も、弟より王に相応しかったが、暗い髪の色が足枷となり届かなかった。

彼は元より、髪の色ごときで左右される王座に興味などなかったのだが。

弟の愚行にほとほと呆れた兄が、重い腰を上げて、あるべき地位に収まったのだった。


新国王の指揮のもと、聖女奪還作戦が着々と進められた。



一方、魔王城の聖女は。


「人間、滅ぼすぞー!」


披露宴にて、ノリノリで祝杯をあげていた。

魔物たちは大盛り上がり。始まったばかりの宴は既に大盛況だった。

魔王城の大広間は多種多様な魔物たちで埋め尽くされ、ずらりと並んだテーブルには見ているだけで胸焼けするような料理の数々。

酒気と人いきれ__人ではないが__で蒸し暑い。


魔王の解呪と治癒の魔法により、すっかり元気になり、髪も元の色に戻った。

豪奢な椅子に足を組んで腰掛け、手慣れた様子でワイングラスを煽っている。ちなみに彼女は19歳。故郷では飲酒を禁じられている年齢である。


「ったく、私は天下の聖女様よ? 髪が黒い〜とか、目が黒い〜とか、くっだらねぇことでぐちぐちヒソヒソよぉ」


彼女の声が聞こえていた近くのピクシーたちが、そーだそーだ、と合いの手を入れた。


「クソ女神のせいで突然訳分からん世界に連れてこられて、魔王と戦えとか命令されるし、そのくせ私の見た目は気に入らないらしいし、しかも魔王も自分達が迫害したせいで誕生してんじゃねぇか!? テメェらのケツくらいテメェらで拭けってんだ!」


ピクシーたちに混じってドワーフも、そーだそーだ、と声を上げた。


「クソ人間も、クソ女神も、全員私たちでぶっ殺してやろうぜ!!」


スライムもゴーレムもリザードマンも大喜びである。シャンデリアを止まり木にして遊んでいたドラゴンが景気付けに火を吹く。

これが本来の彼女の性格。粗野で凶暴な魔物たちともウマが合う。


類稀な優しさ? 清らかな心の持ち主?

王国の人間がこの場にいたのなら、聖女は嘲笑ってこう言うだろう。


「全部演技だ、バーカ」


隣の魔王がドン引きするレベルの悪女っぷりである。彼は早くも、この娘を嫁にしたことを後悔していた。


黒い髪と黒い瞳を王国の人間に受け入れさせる。

この世界に来てから、彼女はずっとそれを目標にして動いていた。


そのために、自分の髪や瞳の色を偽らず、積極的に公務やパーティに参加した。まずは見慣れてもらうことだ。

そしてあらゆる場で“理想的な聖女様”を完璧に演じ続けた。

元々、良い子の演技は得意だった。この世界でのマナーや価値観も徹底的に学び、身につけた。


特に、教会からの試練は効果的なパフォーマンスだった。あれはただの炎をただの防火魔法で防いだだけだ。聖女のイメージアップに苦心していた教会が、計画を立てた。聖女は「人々を騙すなんて気が引けますわ」と思ってもいないことを言いつつ乗った。成功と言って良かっただろう。

神の炎で髪と目の色が変わるなどという中二設定を噂されたのは、非常に不本意だったが。


世界の価値観を変えるという途方もない野望のために、目の回るような忙しさだった。

常に他人の目線を気にして最適解を探し続ける。神経を削りながら、彼女は清く正しい聖女様として振る舞った。

結果として彼女は周囲をほとんど100%欺くことに成功していたし、彼女の黒髪も受け入れられつつあった。


しかし、それも終わりだ。


「まさか毒を盛りやがるとはな……魔法で治せないよう、ご丁寧に呪いまでかけやがって。“黒髪コワクナイヨー作戦”はもう終わりじゃ、これからは“人間ブッ殺す作戦”でやってやる……!」


相当ストレスが溜まっていたらしい。危ない目つきで危なそうなことを呟いている。


「バカ国王……豚大臣……ヘタレ護衛……あん時のクソガキ……フフフ、テメェらは私が直接手を下すからな……」


バカ国王と豚大臣は言わずもがな。ヘタレ護衛とクソガキというのは、彼女が片目を失くした件の二人である。

あの時彼女の顔が引き攣っていたのは痛みに耐えるためではなく、怒りに耐えるためだった。

左目は失明してから時間が経っていたため、魔王の力をもってしても治すことはできなかった。


ちなみに、護衛に関しては怯えを必死で隠している様子を気に入って、彼女自身が良く指名していた。ある程度は自業自得だが、もちろんそんなことは省みない。


「な、なぁ」


魔王が遠慮気味に声をかける。


「俺の后になったからと言って、無理に人間を憎まなくても良いのだぞ」

「は? あんたのために憎んでる訳じゃないわよ」


すげない言葉に魔王もたじたじである。かつて塔に引きこもっていた青年は、鋭い目つきと読めない表情とは裏腹に弱気だった。


「でも、殺したくない人間だっているだろう? あっ、ほら、お前にずっと仕えていた侍女とか……あ」


魔王は言ってから思い出した。

自分と同じ黒髪の聖女のことを気にかけていた。だから唯一仕えていた侍女の、最後の裏切りも新聞で知っている。

しかし聖女はあっけからんと答える。


「あぁ、あの子ね。食べ物は私が頼んだのよ。王城の毒入り料理は食べたくなかったから。あの子ドジだから見つかっちゃったけどね」


魔王は鬼嫁の地雷を踏まなかったことに安堵した。


「でも殺すよ? 騙されっぽくて愛嬌はあったけど、無能だし生かす価値ないもん。私に心酔してたから色々使い道はありそうだけど」


侍女が聞いていたら悲しみのあまり自ら命を絶ったかもしれない。

よくこの性格を隠し通せたものだと魔王は呆れた。


実際、彼女が「演技をしている」ということ自体に気付かれることはあった。とくに腹芝居の専門家である貴族たちには、演技に気付いていた人間も多い。

しかし、立場のある者であればあるほど、仮面は被らなくてはならないものだ。決して責められるようなことではない。

だから皆、見抜けなかった。仮面の奥の本性を。


唯一、彼女の危険性に感づいた慧眼の大臣がいた。その人は先の国王の奸計に乗じて聖女を抹殺しようと目論んでいたが、敢えなく国外追放となった。


そして一命を取り留めた聖女は、ボトルを一本空け、給仕のハーピーに「ここのワイン美味しいね。次は白が良い〜」と頼んでいる。


ふと、魔王が防音魔法をかけた。帳が降りたように宴会場の音が遠ざかる。

騒がしいのが苦手な魔王にはよくある光景だった。


「もし、もしも……お前が髪を染めて、目の色を誤魔化していたら。きっとお前は受け入れられただろう」


魔王は前を見たまま訥々と言う。

聖女も聖女でワイングラスをくゆらせながら、魔王の話を聞いているのか、聞いていないのか、よく分からない態度だ。


自分と同じ黒髪で生まれながら、人間たちに受け入れられ、愛されうる彼女。

魔王にとっては、複雑な感情を持ち合わせるしかなかった。彼女は彼にとって希望だった。絶望だった。


だから問う。より受け入れられやすく、より愛されやすい手段を選ばなかった理由を。


「何故、黒色を捨てなかった?」

「むしろなんで私がこの世界に合わせなきゃなんないのよ」


即答だった。

聖女は脚を組み替え、肘掛けに頬杖をつく。


「わざわざ世界救いに来てやってんのよ。世界が私に合わせなさいよ。それができないんならしょうがないわね、滅びなさい」


魔王は、なんて傲慢なんだろう、と思った。

彼女は受け入れてもらおうとか、そういう風には考えないのだ。受け入れさせる。ただ、それだけ。


「それでも、大人しく俺の后になる必要はない」


自分の隣でなくとも、彼女なら上手くやっていくだろう。今まで演じ抜いてきたように。

魔王はそっと俯いた。

長い黒髪が流れ落ち、視界を狭める。


瀕死の彼女を無理矢理攫ってきたのだ。魔王のことを恨んでいてもおかしくない。


「人間どもの国に戻りたいなら、帰って良い」


その声が存外幼く、泣きそうな声だったことを、彼自身も知らなかった。

柔らかい指先が、彼の黒髪をすくって、彼の黒い眼に光が差す。

魔王の苦しみに、悲しみに、優しさに、いつも聖女だけが気付いていた。


「そんな寂しいこと言わないで」


魔王の瞳をこんな風に見つめるのは、この世で聖女ただ一人だった。

両親は目が合うと、悲しそうに「ちゃんと産んであげられなくてごめんね」と謝った。


魔王の髪にこんな風に触れるのは、この世で聖女ただ一人だった。

魔物たちにとっては黒は崇め、畏怖する象徴。部下である彼らに、気安く触れることなどできない。


嘘で固めた聖女像の中、たった一つだけ真実があった。

魔王を救いたいという心。

それだけは本当だった。


魔王が誕生し、聖女が召喚されてから約一年、魔王はほとんど王国を攻めて来なかった。

毒と呪いに苦しむ聖女に、三日三晩付き添って治療をしていた。

目が合うと人は怯えるから、と伏し目がちに言っていた。

部下の魔物たちの名前を全員覚え、その一匹一匹の性格や生態を愛おしそうに語っていた。


「あなたが好きよ」



その後、魔王と元聖女の魔王妃が、世界を征服したとか、しないとか。



挿絵(By みてみん)

聖女スマイル

挿絵(By みてみん)

素の聖女

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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