7 夢の中で
気づけば前日のラブホテルにいて、私は私を振った男とセックスをしている最中でした。
明らかに白昼夢とは思えないようなものでした。まるで動画を今でいう高性能カメラで撮ったものが頭の中に巡っているような感じだったのです。
私は体が興奮してきてしまい、恥ずかしいのですが、体の陰部が恐ろしい程に熱くなりました。
気づかれてはいけないと、ひたすら我慢していたけれど限界というものはあります。
だって……
彼がどのタイミングでキスをしたのか……愛撫の順番やら、私がどんな声を出したか、いつ絶頂に達したのか、そんなものまで事細かに頭に流れて止められなくなり、体が火照っていてもたってもいられなくなり、限界がきた私は、結局、先生にお願いして、体調が悪いからと保健室へ行く事にしました。
先生は深刻そうな顔をしていました。
そして……ありがた迷惑な事に、例の元彼が付きそうと言ってきてくれました。本当にありがた迷惑という言葉が当てはまる瞬間は後にも先にもあの時以外は人生でありませんでした。
あなたの事で苦しんでいるのに、本当にいつまでも酷い人だと。あわよくばなんて考えているんじゃないかとイライラもしました。
でも、彼は本当に優しい気持ちだけだったようで、保健室まで付き添った後ですぐに帰っていきました。
私は保健室に着いてから、少しはこの気が狂うような記憶の再生が止まってくれると考えていたのですが、全く記憶は止まってくれずに、恥ずかしいお話ですが、限界をきた私は自分で自分を慰めたのです。
もちろんそこには保健室の先生、いわゆる養護教諭がいて、できるだけばれないようにしましたが、もしかしたら気づいていたかもしれないです。
全身の細胞が記憶を取り戻して熱くたぎらせたようでした。
自分を慰めるとそのまま疲れ果てて眠りました。でも、彼ったら本当に意地が悪いのです。
私の夢の中にまで現れて、幸せだった日々の思い出という夢を見せてきて、私を傷つけるのです。
私達は付き合っていた期間は本当に短ったのですが、恋は盲目なのか、自分は色々なところへ行ったような気がしていました。でも、実際に思い返してみると、映画館でリング2を観たとか、ショッピングセンターでぶらぶらしたとか、そんなもので、大した場所には行っていなかったのです。
あ、でも一緒にいったプラネタリウムは綺麗でした。
彼は退屈そうでしたが、横顔を見ながら、それでも一緒にいられるという事が嬉しくて仕方がなかった。
夢の中で思い出が延々と流れ続けていた。もしこれが夢だと気付いたら、もう二度と目が醒めないでと思ったでしょう。
生きている現実より、何より幸せでした。
彼と一緒にいるあの夢の時間が、現実の自分よりも幸せだったのです。
でも、それも終わる時間がきました。
「みどり」
体を揺さぶられ、長かった夢の世界から現実に戻りました。