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恐怖日和  作者: 黒駒臣
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新しいルール

  

  

 道路交通法が改訂され、新法規が追加された。

 信号無視や路地から飛び出しなどの歩行者や自転車を()ね飛ばそうが轢き殺そうがお構いなしとなったのだ。 

 交通法規を守らない側の過失をなぜ巻き込まれた側が背負わなければならないのか。

 事故の際に傷ついた自動車の修理までも請求できる保険まで出来た。

 それでも路地からの飛び出しや車道の真ん中を堂々と走る自転車や道路を横切る歩行者など後を絶たない。

 やるほうは自分だけはそんな目に合わないとでも思っているのか。

 だが、歩行者や自転車だけでなく、スクーターや大型バイクなども通行の邪魔になれば煽られてぶつけられ、道路から排除される対象になり、より大きな乗り物が幅を利かせるようになった。

 新法規はあくまで違反者の自業自得。法を守っている側が違反者側のせいで責任を負わされないようにと作られたもの。なのにその根幹を理解せず、履き違えた者たちがどんどん続出した。

 国産大型SUV車に乗ったこの夫婦もそんな一組だった。

 不法に横切る歩行者、飛び出し自転車の撥ね飛ばしはもちろんのこと、法定速度以下でゆっくり走行する四つ葉マークの車があればぶつけて道路から排除する。

 それを楽しむため、わざわざ高齢者の多い田舎道までドライブを決め込むほどだ。

 今も曲がった腰に籠を背負った野良着の老女を撥ね飛ばしたところだ。

 杖を突き、側道をぎりぎり寄っているにも関わらず、夫の運転するSUV車はスピードを上げて幅寄せし撥ねた。

 妻が背後を確認すると、道路の真ん中まで飛ばされ倒れている老女が見えた。杖は折れ、背負い篭はわずかな野菜をまき散らして彼女の近くに転がっている。

 手を叩いて喜ぶ妻と共にルームミラーで確認した夫も歓声を上げた。

 美しい稜線の重なる山深い田舎道。森と渓流に挟まれた道には大きなカーブ。

 喜ぶのに夢中で、センターラインをはみ出していることに二人は気づかない。

 カーブミラーの確認もせず、前方にダンプカーが対向して来た時にはもう遅かった。

 違反者を見つけたダンプドライバーの嬉々とした顔を、夫婦はその瞬間見た。


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