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恐怖日和  作者: 黒駒臣
80/132

薬師堂の裏に行ってはいけない



 暗闇の中から呻き声がした。

 それが徐々に近づいてくると床下を這う薄汚れた手が光に照らされて見えた。


                 *


『薬師堂の裏に行ってはいけない』

 その薬師堂と思われる古い建物を前面から撮った写真が添付されているメールには確かにそう書かれていた。

「このあと西村と連絡が取れなくなった」

 いつも集合する居酒屋で真剣な表情の宮田がチューハイを一口呑む。

 泰彦は宮田がその後「なんてな」と言いながら大笑いするのではないかと思い、自身もチューハイを口に運んで待った。

 だが、宮田の顔はいくら待っても変化しなかった。

「なあ高塚。俺、西村の跡をたどってみようと思う」

「えっ?」

「西村に何があったのか、俺が突き止めてやらないと。

 どうせ失業中だし――

 でな、もし俺とも連絡が取れなくなったら、今度はお前が俺たちに何が起こったのか突き止めてくれないか。動くのは休日だけでもいいから。

 念のためこの写真とメール転送しとくよ」

 泰彦は返事もせず、まずチューハイのグラスを空にした。それから、

「宮田――お前も知ってると思うが、僕は超ビビりだ。だからその――それは約束できない。

 もちろん自分でも薄情な奴だと思うよ。でも人にとって一番大事なのは自分の身を守ることだと思うんだ。

 だからお前も危ないことはやめて他の方法で西村を探したらどうかな」

 宮田もグラスを空っぽにする。

「もう試したんだ。あいつの親と一緒に警察にも相談した。けど少し様子を見ろというばかりだ。たぶん遊び歩いてるくらいにしか思われてないんだろ。実際、あいつは調査に行って何日も帰ってこないことが多いからな。

 でもまったく連絡がつかないというのはおかしいだろ。それにこの写真とメール――気にならないか?」

「そうだけど、これだけじゃ何もわからないんじゃないか。どこの都道府県でどこの場所かも書かれてないんだろ?」

「ああ、だから今いるこの町を中心にして薬師堂のある地域をしらみつぶしに当たる」

 そう言った後、宮田は手を上げ店員にチューハイのお代わりを頼んだ。

 いやいや薬師堂なんてどれだけあると思ってんだよ。

 そうつっこみたかったが、黙ったまま自分もお代わりを頼んだ。


 高塚泰彦は趣味で都市伝・心スポ研究会というサークルに入っていた。

 三十数名が在籍していて、西村、宮田とは気が合い特に親しい仲間だ。

 おもな活動は巷で流れている都市伝説や心霊スポットの真相をそれぞれ個々で調査し結果や意見を発表してみなで議論する。

 場所は主にこの居酒屋で、ほぼ飲み食いがメインのような浅くて軽い研究会だ。

 他の会員がネットや眉唾な書物から適当に意見をまとめてくる中、西村は真剣に都市伝説や心霊スポットと向き合っていた。とっかかりが怪しいネット情報でも実際に現場に赴いて探索し、真偽どちらの結果でもまじめにレポートにした。

 調査した内容を本にするのが夢だと酒を飲みながら高塚や宮田に熱く語っていた西村はいったい何を調べにどこへ行ってしまったのだろう。


                 *


 あれから宮田はあらゆる地域を駆け回り西村の行方を捜索していたが進展はなかった。

 西村のように行方不明になった時のためと言って、行った先々――バス停や駅舎の前など居所が特定できる場所――で写真を撮り、逐一泰彦に送信してきた。

 毎日何度も送信されてくるメールや写真に辟易し、泰彦はスマホが反応しても目を通さない日々が続いた。それでも宮田の送信は止まらなかった。

 ふとそれが途絶えていることに気づいたのは、最後の送信から三日ほど経った夜だった。

 仕事帰りにコンビニで買った缶ビールとつまみを入れたマイバッグをちゃぶ台に置き、スマホをチェックする。見知らぬ地名が表示された古いバス停の前で自撮りする宮田の写真が最後だ。

 水坂町――この市ではないな。

 色あせた地名の上部にK市コミュニティバスという名が辛うじて見て取れ、調べるとW県にあるとわかった。

「W県か、えらく遠くまで――」

 独り言ちながら、泰彦は宮田に電話した。

 だが出ない。

 あれだけ頻繁な送信が三日前から途絶えているのを合わせて泰彦は胸騒ぎを覚えた。

 宮田を心配しているのではない。いや少しは心配しているが、約束を遂行せねばならないと思うと気が重くなったのだ。

 でも、あの時ちゃんと断ったよね。そうだよ、やめたほうがいいって止めもした。自業自得じゃないか。

 ああ、でも写真の送信が始まった時、僕は断らなかった――ってことは約束したのと一緒なのか?

 泰彦はとりあえず缶ビールを開けて一口飲んだ。

 西村といい宮田といい一体どこに行ってしまったんだ。

 溜息をつき、転送されていた西村のメールと写真を開く。

 なぜ薬師堂の裏に行ってはいけないのだろう。

 まさか二人してドッキリを仕掛けてるんじゃないよな。

 そう思えなくもない。だが、もし本当の失踪なら行った先には何があるのか。

 ビビりではあるが、本来がこういった謎が好きだ。だからあの研究会に入っている。

「うーん、気になる」

 泰彦はビールとつまみをただ無意識に口に運びながら思案に没頭し、そして結論を出した。

「よしっ、探しに行こう」

 宮田のおかげで地域は特定できているのだから後はお堂を見つけるだけだ。

 泰彦はパソコンを開き、水坂町の薬師堂のある寺とそこに都市伝説が絡んでいないかを調べ始めた。


                 *


 コミュニティバスを降りた泰彦はバス停前に立ち、宮田の写真と同一かを確認し、一人うなずいた。

 雲一つない青空の下、ゆっくりと辺りを見渡す。

 町とは名ばかりで山間ののどかな集落には誰もいない。休日だから屋内でくつろいでいるのか、他の町にでも遊びに出かけているのか。

 寺の情報を調べると水坂町で薬師堂のある寺は妙施寺という寺が一軒だが、そこはすでに廃寺だった。

 W県の都市伝・心霊スポットのリストでも、寺関係のものは『某寺で女の幽霊が立っている、うめき声が聞こえる』という簡単な紹介だけで、地名も寺名も載っておらず、この妙施寺が西村の写真の場所かどうかはわからなかった。だが、宮田の消息が水坂町で途切れているのは事実だし、廃寺であってもここには一軒しか寺がないのだから行くしかない。

 西村は有名どころではない地味なスポットに焦点を当てていた。リストに紹介されているものがもし妙施寺だとすると、二人の行った先はここで間違いないと思うものの、消えた場所がそうだという確証はない。

 泰彦は好奇心だけでここまで来ただけだったので、もし西村や宮田が見つからなくても、この先の捜索はやめようと考えていた。

 宮田の情報もここまでだったしな――さて、妙施寺の方向はどっちだ?

 訊ねる相手はいなかったが、わざわざ民家の玄関にまで出向き、チャイムを鳴らす勇気もない。きっと地元の人からすれば心霊スポットを訪れる者など迷惑なだけだろう。

 人に出会うまで辺りを散策しようかと考えた。それでもどちらへ進めばいいのか。妙施寺から遠く離れてしまっては時間の無駄になる。

 悩んでいると籠を抱えた女性が道の向こうからくるのが見えた。

 泰彦はほっとして「すみませーん」と笑顔を浮かべながら女性に駆け寄った。

 絣のもんぺを穿いたその女性は野菜の入った籠を抱えて、泰彦が近づくと明らかに不審の顔色を浮かべた。

「すみません。妙施寺のある場所はどっちの方向へ行けば――」

「妙施寺?」

 泰彦の問いに女性はさらに怪訝な表情を浮かべる。

「あ、もう廃寺になっているお寺なんですが――」

 三十代中頃の女性は整った顔立ちをしていて、不審気に顔を歪めていても美人だった。

「ああ――」

 しかめっ面をふわっと広げ、女性が「なにしに行くの?」と微笑んだ。

「あ、ええっと――」

 まさか行方不明の友人を探しにとも言えず、言い淀んでいると、

「心霊スポットでしょ」

 いたずらっ子を咎めるお姉さんのような目で泰彦を見る。

「え? ああまあ――」

「ホント迷惑なのよね。ここに住んでいる者としていい気はしないわ。騒いだり、ゴミ捨ててったり」

「すみません」

「あら、あなたに愚痴を言っても仕方なかったわね。あなたは一人で来てるし、騒いでもゴミを捨てたりも、まだしてないし」

 まだというところを強調してくすくす笑う。

 少女のように可愛らしい女性だと泰彦は思った。

「そうね――あなたなら悪さもしなさそうだから、案内してあげるわ。でもあそこに噂のようなこと何もないわよ」

「え、そうなんですか?」

「どこから心霊スポットなんて出たのか知らないけど」

「でも、火のないところに何とかって言いますから――」

「まあそうだけど、実はわたしあそこの管理をやってるの、っていっても、たまに本堂や庫裡に風を通したり、境内を掃除したりってだけなんだけどね」

 女性は「こっち」と手で合図して歩き出し「ま、小さなお寺だからそんな大層なことじゃないのよ」と笑った。

 薬師堂のことや西村たちのことを訊ねてみようかと思ったが、胡散臭く思われて「ここまで」となっても困る。

 泰彦はぎりぎりまで訪ねるのはよそうと考えて黙ってついて行った。

「妙施寺は尼寺だったの。庵主様が長い間一人で守ってたんだけどね、ずいぶん前にお亡くなりになって――こんな過疎化が進む田舎だから、結果廃寺になってしまったのよ」

 真偽は別としてリストにある『女』という符号は合う。

「あなたが管理してるって、何かご縁でもあるんですか? あ、すみません。立ち入ったこと聞いてしまって――

 えっと――僕、高塚と言います」

「わたしは村木です。村木邑子ゆうこ

 別に聞いてもいいわよ。そんなたいした話でもなし――

 わたし小さい頃、ここに預けられたままにされてね、って捨てられたっていうほうが正解かな。で、庵主様に育てられたの。

 ここの跡継ぎになりたかったんだけど――修行が大変でわたしには無理だったわ。庵主様のお世話係くらいにしかなれなかった――とまあ、そういうこと。

 でも管理を任されてる一番の理由は、爺さん婆さんしかいない地域だから、かな。みんな自分のことで精一杯だもん。廃寺の管理までやってられないわよ」

 そう言うと邑子はからから笑った。

 葉っぱだけ茂った広いミカン畑の脇を通り、狭い路地の奥に入っていくと竹藪に囲まれた黒ずんだ白壁と雨染みの浮き出た棟門が見えて来た。誰でもすぐ外せそうな横木の閂が通されている。

「ここよ。見に来た人たちみんな勝手に入っていくけど、本当は許可が必要なの。

 でもきょうはわたしがいるから大丈夫よ。中に入る?」

「あ――ありがとうございます。お願いします」

 閂を外し、邑子が先に門をくぐる。

 小さな門ながらも歴史の重みを感じ、泰彦も後に続いた。

 ゴミ一つ落ちていない石畳の参道の左奥に植え込みに囲まれた小さなお堂が見えた。

「あれは?」

「薬師堂よ」

 邑子の答えに胸が高鳴った。

 遠目でわかりにくいが、西村の写真に写っていたものに似ていると言えば似ている。やはりここなのか。

「で、こっちが本堂でその奥が庫裡。本堂は雨戸を開けて見せてあげられるけど、庫裡は庵主様の貴重品が残ったままにしてあるんで中には入れないわ。あなたを疑ってるわけじゃないんだけど、念のためね」

「わかってます」

「本堂の中見る? ご本尊さんも置かれたままよ。一願に特化した仏様じゃないけど、この地域の人たちを見守ってくれてる由緒あるものだからご利益はあるんじゃないかしら――なあんてね」

 邑子はくすくすと少女のように笑った。

「見てみたいです。お願いします」

 泰彦は年上の女性のそのかわいい笑顔にどぎまぎしながら頭を下げた。


 庫裡から回った邑子に本堂の雨戸を開けてもらい、ご本尊を拝顔し終えた泰彦は向拝階段に腰をかけ、お茶までご馳走になった。

「お茶請けがあったらよかったんだけど――」

「そんな――ご本尊を見せていただいた上に、お茶までご馳走になって――もうこれで十分です。ありがとうございます」

「ううん。こっちもついでに本堂の風通しできたしよかったわ。

 さてと、本堂閉めて帰り支度するわ。ちょっと待っててね、一緒に出ましょう」

 結局西村たちのことは訊けないままでいた泰彦はお盆を持って庫裡に戻る邑子の後姿に慌てて声をかけた。

「あのぉ――ちょっとその辺散策してていいですか?」

 邑子が振り返る。

「かまわないわよ。でも――

 薬師堂の裏には行かないでね」

 その言葉を聞いて思わず声が漏れそうになるのをぐっとこらえた。

 西村が残した言葉と同じだ。やはり薬師堂の裏に何かあるのか? それに宮田も巻き込まれたのか?

 泰彦は邑子の後姿が庫裡の中へ完全に消えてから薬師堂へと走った。

 息を弾ませて目の前のお堂を見上げる。

 西村の写真に写っていたのと一緒だった。

 苔むした屋根も板壁の黒ずみも同じで、格子扉を覗くと如来様の鎮座しているのが見えた。

 泰彦は急いで裏に回った。

 だが、特別なところは何もない。板壁の下、ちょうど床下になるあたりの漆喰壁に縦格子に塞がれた通気口があるだけだ。

 念のためしゃがんで覗いてみた。

 床下は通気性を高めるためか深い空間になっていた。中は真っ暗闇だが、通気口から差し込む陽の光が床面に縦格子の影を映している。

 暗闇の中から呻き声がした。

 それが徐々に近づいてくると床下を這う薄汚れた手が光に照らされて見えた。

 続いて汚れや脂で固まった頭髪が見え、その下にある顔が通気口を見上げる。

「宮田っ」

 こちらに目を向けているが、左右ばらばらで焦点の合わない瞳は泰彦を認識していないようだ。

 呼びかけてもよだれを垂らして「あーうー」としか発声しない。

「宮田、何があったんだ、宮田――」

 足音がして泰彦は振り返った。

 背後に邑子が立っていた。

「この中に友人がいるんです。どういうことですか? ここにはいったい何が――」

 その質問に答えることなく、くすくすと笑っている。

「薬師堂の裏には行かないでって言ってるのに、なんで誰も言うことを聞かないのかしら」

「村木、さん?」

 先ほどと同じ少女のようなかわいい笑顔なのに、目に険を浮かべ泰彦を睨んでいる。

「ほーんとバカばっかり」

 意味がわからず何か言い返そうとしたが、喉が詰まって声が出ない。それだけではなく四肢が痺れてきて、頭もぼんやりしてきた。

「よく知りもしない人間の出したものを口にするからよ」

 さっきのお茶に何か盛られていたのだと気づいたが、もう遅かった。


                 *


 眩しい光に目を開けると四角い小さな窓が頭のすぐ上に見えた。いや窓ではない、縦格子があるあの通気口だ。

 泰彦は自分が薬師堂の真っ暗な床下で通気口のほうに頭を向けて寝かされているのを知った。あれから何時間、いや幾日経ったのかはわからないが、日差しの加減で今は午前中だということだけはわかる。

 身体はまだ痺れたままで声も出せなかったが、ぺちゃぺちゃと何かを食べているような音はさっきから聞こえていた。

 邑子に食べ物を与えられた宮田の咀嚼音なのか? ここには西村もいるのか? 自分たちをこんなところに監禁し、あの女はいったい何をしたいんだ?

 疑問が頭を駆け巡るばかりで、ここから助かるための算段ができない。

 とにかく眩し過ぎる光から目を背けるため、辛うじて動かせる首を横にした。一瞬視界が真っ暗になったが、すぐに泰彦を見つめる宮田の顔が余光に浮かび上がりぎょっとした。

 瞳が左右に広がったままでやはり泰彦を認識できていない。奇妙なのはよだれを垂らした開けっ放しの口が何も食べていないことだ。なのに、汚らしい咀嚼音は続いている。

「目が覚めたの?」

 再度通気口を見上げると光を遮って陰になった邑子の顔が覗いていた。

 僕たちをどうするつもりだ。

 そう訴えたが「ううー」としか声が出ない。

 それでもどうにかして怒りを伝えようと唸り声を何度も上げ続けていると、身体の上に何かが這い上って来た。

 泥まみれの尼僧頭巾をかぶったミイラのような化け物だった。

 口を大きく開けぐわっと吠える。数えるほどしか残っていない歯は尖り、その先端から赤黒い唾液が糸を引いていた。強烈な腐臭が鼻を衝く。

「だめよ静かにしなきゃ。庵主様は食事中に騒がしいのがお嫌いなんだから」

 邑子が笑う。

 泰彦はそいつを振り落とそうと懸命にもがいたが、まったく動けなかった。

「無理、無理。あんたが飲んだ薬茶すっごくよく効くから。効果が切れないからずっとそのままよ」

 あきらめて大人しくすると化け物は身体から這い降り宮田に向かった。暗闇に順応した泰彦の目がその動きを追い、咀嚼音の正体を捉えた。

 化け物が宮田の腹部に顔を突っ込んで中身を食べている。宮田の腰から下はすでに何もなかった。

 喉の奥から悲鳴がせり上がってきたが、もちろん唸り声にしかならない。

「あーうー」

 泰彦の唸りに合わせ宮田が呆けた声を出す。

「お茶のせいで痛みは感じないの。でもね、自分の身に何が起こっているのかはわかるじゃない? だから正気じゃいられなくなるのよ。ま、そのほうがマシよね。

 そいつ、お茶の効きがちょっと悪かったの。だから、庵主様が先に来た餌を食してる間、床下を這いまわって逃げ道を探ってたわ。結局、捕まってしまったけどね。

 庵主様お行儀が良くて少食で、だから足から順番に少しずつ食べていくの。あんたの番になるまでまだもう少しかかるわね。

 いつまで正気でいられるか、毎日覗きにくるわ」

 泰彦は邑子を睨み上げたが、果たして自分の顔に怒りが表現できているのか。

 邑子はほうっと溜息をつきながら、泰彦の気持ちなどお構いなしに空を見上げた。整った美しい横顔に朝の光がきらめく。

「でも――あさましいものね。あんなに立派だった庵主様がこんな姿になってまで生に執着するなんて」

 その独り言が聞こえたのか、化け物がしゃあっと威嚇の声を上げた。

「あ、すみません庵主様。失言でした」

 邑子はからから笑った。

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