コワいウワサ 非常駐車帯
改稿しました。
序
昼休みの社食で、今まで見かけたことのない女子がにこにこ笑いかけて来た。会社の制服を着てIDカードもぶら下げているからここの女子社員には間違いないのだろう。
隣に座って楽しそうにしゃべり始める。
「ねえねえ、こんなウワサ聞いたことある?
夜にあそこのトンネルを通るとね、非常駐車帯に人が座り込んでるんだって――」
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非常駐車帯
ある日、仕事帰りの小夜子は毎日利用するトンネルの非常駐車帯で老人が座り込んでいることに気付いた。
何気なく過ぎてしまってから、ふと迷子になっている老人かもしれないと思い直し、Uターンした。
この近隣には高齢者施設があり、よく迷い人のポスターが道路脇のガードレールや電信柱に貼られているからだ。
だが、引き返してみても誰もいなかった。
見間違いかな?
小夜子は首を傾げながらスマホの見過ぎで目が疲れているのだと思うことにした。
数日経っての通勤途中、またも老人を見かけた。顔までは見えず、先の人物と同一かどうかはわからないが、今度は二人、非常駐車帯に座り込んでいる。
時間的に余裕がなく確認ができない。散歩に出た老人たちがあそこで休憩しているのだと思うことにした。
排気ガスの充満したトンネルの中で?
疑問はあったが、忙しくてそのまま小夜子はそのことを忘れてしまった。
二日ほど過ぎての帰宅途中、ヘッドライトが例の場所に三人座っているのを映し出し、それを遠目で確認した。
今回はちゃんと事情を尋ねようと車を止めるも非常駐車帯には誰もいない。見間違えるようなものも何一つない。
トンネル内ということを差し引いても異常な冷気が背筋に怖気を走らせ、小夜子は慌てて車に戻り、トンネルを抜け出した。
小夜子はその後、トンネルを利用しない別ルートで通勤した。遠回りになるが仕方ない。
件の施設では、無断で外出しそのまま行方不明になる老人が多いことに当事者家族が不審を抱き、その通報で警察の捜査が入った。
結果、二人の職員が老人たちを殺害して山中に埋めていたことを突きとめた。
掘り起こした遺体は九人もあったという。
小夜子はそのニュースを知った時、あのままあそこを通り続けていたら九人全員揃うのを見たかもしれないと、ぞっとした。
とにかく事件が解決したことで安心し、小夜子はまた元のルートに戻った。
もちろん非常駐車帯にはもう誰もいない。
ほっとしてその前を通過した時、トンネルの明かりでガラスに反射する車内が見えた。
小夜子一人しか乗っていないのにたくさんの人が乗っている。
それが殺された九人の老人で、全員が自分を覗き込んでていることがわかって震えが止まらなかった。
もうすぐトンネルから出られると、小夜子は我慢しながら走り続けたが、いつまでたっても出口は見えてこなかった。
*
「というわけで、ドライバーはそのまま車ごと行方不明になるんだって。
その度に非常駐車帯に座り込む人がひとり増えるんだそうよ。
ねえ。これも聞いたことある?
あそこの高台にある『丘の公園』のウワサなんだけど――」
続




