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恐怖日和  作者: 黒駒臣
101/132

首無民

  

  

「首無し、ですか?」

「そっ」

 オレは向かいの席の白石ちひろに肯定した後、ジョッキに残った生温いビールを一気に飲み干した。

「うーん。よくあるネタ、ですね?」

 彼女はしばらく上目遣いでオレを見ていたが、ふいっと視線を自分の手元に落とした。

 やはりこのネタではお代わりを奢ってくれる気はなさそうだ。

「まあよくあるかもしれんけど、実話ってところが珍しくないか?」

 それでも未練がましく推してみる。

「実話、ねぇ――」

 きょうは虫の居所が悪いのか、変に区切った話し方をして嫌味な感じだ。そう文句を言いたいがビールのためだ。我慢、我慢。

「そ、実話も実話」

「首無しライダー、の実話ならよく聞きますけど――ほら、国道〇号線の、Yトンネル。下り車線、から走って来るバイクの、首から上がないとか。

 あ。あそこ、もありますね。県道△号線――R村の、山道」

 白石は話しながら、大皿に載ったホッケの塩焼きをほじくっている。

「Yトンネルは暴走族を追いかけてた白バイ隊員が事故って首を飛ばした。事故は己のミスじゃなく、暴走族の仲間が首の高さにピアノ線張ってたってやつで、△号線の山道は町に通う会社員が深夜にバイクで帰宅途中、カーブでハンドル操作を誤って崖から転落。首がもげて谷底に転がっていたのに、ハンドルを握ったままの身体とバイクは木に引っかかっていたってやつだろ」

「え、そう、なんですか?」

 ホッケの箸を止めて、白石はオレを見た。

「そうだよ。ま、実話とは言っても、どこにでもある都市伝説みたいなもんだ。本当の事故に首無し伝説がくっついたんだろうな」

「煙のないところに火、は立ちませんから、正真正銘すべて実話、かもしれませんよ。誰かが、本当に、それらの、首無しを見たの、かも」

 ふふっと笑って、再びホッケをほじくり始める。

「火のないところに煙だろう」

「そう、とも言います」

 白石がうつむいたままぼそりと答えた。

 これでよく小説家志望だと名乗れるな――

 オレはあきれてものが言えなかった。


 白石ちひろとはこの居酒屋で出会った。

 こじんまりしたカウンター席と二人掛け用のテーブルが二卓の、いつ来ても白石以外客のいない小さな店だ。

 なので、失業してから金欠のオレが毎日ジョッキ一杯のビールを安いあて(、、)のみでちびちび飲んでいても、大将に邪魔扱いされなかった。

 白石はここの常連で、大将とは仲がよかった。

 カウンター席に座ると勝手に好物が出てくるほど気安く、毎日来てハイボール片手に夕飯を取っていた。

 大将は六十代、いや五十代後半か? こんな小さな店で採算が取れているのだろうか? と心配になるが、実はこの店は趣味で、本当はどこか大会社の社長なのではないかと思うような面構えをしている。

 聞くとはなしに聞こえてきた話で、白石が小説家志望だとわかった。アルコールが進むほど、日本一怖いホラー作家になるのだと豪語していた。

 だが、どこかのサイトに投稿しているという彼女の小説を読んだ大将に物語として破綻していると酷評されていた。閲覧数も少なく、ファンもいないらしい。

 破綻しているのがいいのだ、と白石が反論すると、読み手のことを考えなければだめだ、と大将が正論を吐く。

 書き手が楽しければいいと笑う白石に、それじゃ日本一にはなれんだろ? いや作家すら無理だろ? と、オレはつい独り言ちてしまった。

 それを白石に聞きつけられ、まあ今のような取材対象? のような関係になったというわけだ。

 その時は無礼な独り言をすぐ詫びたが、彼女は特段気にするふうでもなく、怖い話を持ってないかと身を乗り出して訊いて来た。

 既存の都市伝説やら怪談話はいらないと言われ、実体験もしくは今までに聞いたことのない怖い話ならビールを一杯奢ってくれる約束をした。白石と同皿でもよければ肴を食べてもいいというおまけ付きだ。

 今までに何度か同僚から聞いた実話や自分の体験を語り、一話に一杯、一話でも内容が気に入れば二杯、三杯奢ってもらった。だが、失業して引きこもっているだけのオレにはもうネタがない。

 そこで今だ誰にも語ったことのない、とっておきの体験を披露しようと考えたわけだ。

「――じゃ――一応、聞いて、みましょうか?」

 哀れな男に白石が折れてくれた。

 オレは空のジョッキを何気なく白石のほうに押しやり、

「あれは失業するだいぶ前の頃にいた建設現場での話だ――」

 そう話し始めると同時に、白石がビールのお代わりを大将に目配せしてくれたのもしっかり確認した。



 オレはR村の山中で砂防ダムの建設に従事していた。

 以前の砂防ダムは小規模だった上に老朽化し、前年の大雨で決壊寸前になったことで、ようやく新設工事に着手することになった。

 溜まりに溜まった土石を取り除き、古いものを取り壊して新しい砂防ダムを建設する。口で言えば簡単だが、長期にわたる工事で、危険も伴う。でも、オレら作業員にとっては当分食いっぱぐれがないので、安定した仕事と言えた。

 R村っていうのは今でも最寄り駅から市営バスで三時間、そこからさらに村営バスで二時間かかるほどの秘境で、その村営バスも村民が村から出るもしくは戻るという時だけしか動かさない。もし外部から村に入りたいという人がいれば事前に予約をしないといけなかった。


 って聞けば閉鎖的な村のイメージでちょっと怖いだろ?

 はは、何のこたぁない。自家用車で来ればいつでも誰でも出入り自由なんだよ。

 村民は各自車を持ってるし、特に観光地でもないから来る人もない。実質村営バスはほぼ飾りみたいなもんだな。

 で、オレたちの工事現場はそんな村のさらに奥深い場所にあった。人が住んでいないような深い山中だ。そんな場所から砂防ダムが設置されていく。ちゃんと設えておかないと土石流なんてあっという間に(かみ)から(しも)へと押し流れていくからね。

 いくつもの砂防ダムが村を守ってるってことさ。

 その一番山奥の工事現場がオレの持ち場だったんだ。


 工事現場まで簡易道路を切り開き、周辺にプレハブ小屋を建て、作業員たちはそこで寝泊まりしていた。

 村に一軒、年増のママがやってるスナックがあり、休日の前夜に飲みに行く仲間もいたけど、オレは外出するのが億劫で行ったことがなかった。

 だが、やはり長期に及んでくると、いくら休みにゆっくりしたいって思っても、プレハブ小屋に一人でビール飲んで寝転がっているだけでは退屈になってくる。


 で、ある休日の昼下がり、そこら辺を散策してみることにしたんだ。

 あーそれが失敗だった。やっぱ山はどんな山でも舐めちゃあいけないんだな。

 ちょっと奥に入っただけなのに、ふと気づくと右も左もわからなくなっちまったんだ。振り返っても木々に囲まれていて今来た道が見えない。まあ、見えないのは当然だ。自分が道のようにイメージして木立の間を進んでただけで、ほんとの道じゃなかったんだから。


 焦ったオレはそこで再びバカをやらかした。

 あっちこっち動き回ってしまったのだ。何の目印をつけず右へ左へ歩き回ってしまった。

 やっと自分が遭難したと認めた時はもう遅かった。

 電波も届かない山中。村へ呑みに行った仲間たちはみな夜遅くならないと戻ってこない。今もオレが遭難しているなんて誰も予測すらしていないだろう。

 陽もだいぶ傾き、濃くなってくる夕暮れ。オレはどうすることもできず、苔むした倒木に座り込んで途方に暮れていた。

 すると遠くから草や枯枝を踏みしめるたくさんの足音が聞こえてきた。

 オレはとっさに木の陰に身を隠した。


 普通はさ、助かったって思うだろ? 仲間が捜しに来てくれたんだって、おーいって叫んで手を振りたくなるだろ? でも、その時なぜかそうならなかったんだ。仲間が来たとはどうしても思えなかった。

 まだ村から帰って来る時間じゃないっていうのも理由の一つだけど、直感っていうのかな?

 こっちにだんだん近づいて来るものに何となく嫌な気配を感じたんだ。それは熊や猪の危険動物の気配じゃなかった。

 この山にはそんな危険動物がいない。それどころか猿や鹿なんかもいないって、現場監督が最初に教えてくれてたし――

 まあとにかく、仲間でも動物でもない、じゃいったい何なんだって身を隠したままあれこれ考えたよ。


 だんだん近づく足音に、できるだけ身を縮めて様子を窺っていると、縦一列に歩いてくる十数人の人が木立の隙間からちらほらと見えてきた。

 杣人(そまびと)かと思ったが伐採道具らしきものは持っておらず全員手ぶら。何らかの用で山に入った村人かとも思ったが、いつ着替えたものかわからないくらい汚れた古着を着ていて、これは普通の村人じゃないと言う考えに行きついた。


 それにさ、ずっと違和感があったんだけど、近づいてきてそれが何なのかようやくわかった。

 全員首がないんだ。足元から肩までは人のそれだけど、その上の頭部がない。

 裂けたり穴が開いたりでぼろぼろのトレーナーやシャツの襟元から鎖骨の出っ張りは見えるけど、あるのはそこまで。

 でも、目や耳の感覚器官がないのに、倒木や大きく張り出た木の根に(つまず)きもせず、すたすたと進んでくる。

 正直、危険動物以上の恐怖を感じたよ。

 これは山深い場所に隠れ住む、いまだ世間に知られていないまつろわぬ民なんだと思わざるを得なかったね。

 日本もまだまだ未知の領域があるんだなぁって。


 だが、友好的な民かもしれないという考えにはならなかった。

 そいつらが近づくほどに、なぜか恐怖心が膨らんだ。全身が怖気だつような。


 だって、いくら山深いからって今の時代、人に見つからず隠れ住むなんていくら何でも無理だろ? でもいまだ公になっていないってことは――

 オレ、この山に動物がいないというのが、なんとなくわかった気がしたよ。

 で、そいつらが通り過ぎるのを待って、オレは倒木の陰を出た。もちろん奴らの向かうほうへ行けない。だから来た方向へ進もうとした。

 もっと離れるまで待てばよかったのに、方向を見失うかもって焦ってさ、奴らの背中を確認しながらその反対方向へと一歩踏み出したんだ。


 その際、細心の注意を払って足音をさせなかった。下草を踏みしめる微かな音は立てただろうが、遠ざかっていく奴らに聞こえるような音は立てなかった――それに首無民に耳はない。


 なのに、奴らはぴたっと立ち止まったんだ。

 オレもその場に固まってしまって、奴らのぼろぼろに破れた背中から目が離せなかった。こっちを振り返らないか不安でさ。

 ま、振り返っても目がないから見つかるわけないとは思ったけど、でも怖くてたまらない。

 もし振り返ったら全速力で逃げようと身構えていたよ。


 だが、奴らはみな動かなかった。こっちに背を向けたまま前を向いていた。

 気配を感じ取っただけで、オレの存在は知られていないのだと思った。


 よしっ、逃げよう。

 そう決心した時、気づいたんだよ。奴らの背中に。服の破れ目からこっちを窺う目に。

 立ち止まってからずっと背中にある目でオレを見てたんだ。それがわかって脚ががたがた震えたね。


 奴らはいきなり身体をこっちに向けると思いきり走ってきた。

 風圧で破れた服がひらひらめくり上がり胸元まで露出する。そこにも目があった。へその上には口があり奇妙な叫び声を上げている。

 オレも思いきり逃げた。

 藪に引っかかれ、根に足を取られながらもひたすら逃げ、何とか木立の途切れた場所に出た。辺りはすっかり暗闇に包まれていたが、少し先にプレハブ小屋に設置した投光器の明るい光が見えた。オレは涙を流しながらそっちへと向かった。


 袖も裾も裂けてぼろ雑巾みたいだし、手や頬も擦り傷まみれになってたけど、でもオレは助かったんだ。転ばなかったのは奇跡だと思ったよ。

 小屋の手前まで、オレの背後で葉擦れの音とあの嫌な気配がしていたけど、それ以上のことは何もなかった。それでも痛いくらいの視線は感じていたよ。破れた服の隙間からオレを睨んでいるんだと思った。

 

 急いで小屋に入ると仲間が数人帰っていてすでに床についていた。酒臭い息で(いびき)をかいている。

 オレは起こさないように荷物をまとめ、小屋の出口から奴らの気配がないことを確認すると、小屋の前に止めてある軽トラを無断で借り工事現場を後にした。


 とにかく早くここから離れたかったんだ。

 村に一番近い現場の駐車場に軽トラを停めて、オレは村に一軒の個人タクシーの老運転手に頼み込んで隣町まで乗せてもらった。

 身震いが止まらないオレを老運転手は怪訝な表情で見ていたけど、奴らのことを話す気にはなれなかった。

 それからもあちこちの工事現場を回ったけど、山中の仕事だけは頼まれてもしなかったね。

 ま、なんだかんだで、今は失業中の身だけど。

 これがオレの体験した話――まさしく実話だ。



「実話、ねぇ」

 白石はカウンターに前屈みでもたれ、ホッケの身をほじくりながら、ぼそりと呟いた。

「そ、正真正銘!」

 二杯目をちびっと飲んだ後、オレは深くうなずいた。

「でもなぁ時々思うんだ。あれは深い山の気に当たって見た白昼夢みたいなもんだったんじゃないかって。遭難の焦りと恐怖もあったし――」

「ふふ、そちら、のほうが、納得、できますね」

「いやいや違う。やっぱあれは本当にあったことだ」

 オレは慌てて否定した。

 ここでお開きになっては元も子もない。何が何でももう一杯奢ってもらうぞ。

「な、大将からも何とか言ってくれ。首無民がいるかいないかは別として、体験したことは事実なんだからさ」

 オレは洗い物をしている大将の後姿に訴えかけた。

 いつにもまして寡黙な大将は振り返りもせず、手を動かし続けている。

「あれ? 大将、背中――」

 いつもはぴしっと着こなしている白衣の、背中の縫い目が(ほつ)れている。

 その解れ目の穴から目が覗いていた。

「ひぃぃ」

 オレの悲鳴に白石が顔を上げた。その頭がぐらりと傾き、ホッケの皿の上に落ちる。

「ひぃぃぃぃぃ」

 白石の襟元からも目が覗いてオレを見ていた。

「忘れ、てたら、ええもん、を――」

 白石の腹のほうからくぐもった声がした。

「そやけ、いつか喋る、言うた、やろ」

 こっちを振り返る大将の腹からも声がする。頭は落ちて洗い桶の中で水に浸かっていた。

 皿の上と桶の中、どちらの顔もなぜか白石と大将のそれではなく、見知らぬ誰かの腐敗しかけた生首だった。

 オレは今まで二人に騙されていたのか。ずっと首無しのことをばらさないよう見張られていたのか。

 もしかして逆に話させたかったのかもしれない。オレを処分するために。だから怖い話はないかとずっと振り続けていたんだ。

 包丁を手にした首無し大将が切りかかって来た。オレの首を狙っているように見える。間一髪うまく(かわ)せたが、背後に回った白石に羽交い絞めにされた。

「オレをおまえらの仲間にするつもりかっ」

「首、切ったかて、わしらの、仲間になれる、か」

 腰のあたりから白石の声が上がって来る。

 大将が近づき、包丁の切っ先をオレの首に当てた。

「お前は、ここ、切ったら、目鼻も、口も、なぁんも、ないよう、なって、まうやろ。おしまい、いうこと、や」

 白衣の中から嗤う声がし、前合わせの隙間から見える目がにたりと笑う。

 どぉん、ばりぃ。

 突然大きな音がして入口の引き戸が破れた。壊れたではなく、まさしく破れた(、、、、)

 見れば書き割りのような入口の絵に大きな穴が開いて、向こうから金属バットを手にした白石が飛び込んで来た。

「きょうは店に来ないからおかしいなと思ったのよ」

 そう言ってぶんぶんとバットを振り回す。

 首無し白川がオレから離れた。

 竹刀を持った本物の大将も首無し大将と対峙している。

「え? え? あんたら首無民じゃなかったのか」

「んなわけないだろっ」

 バットを振り回しながら白石が唾を飛ばす。

「ぎゃあっ」

 逃げ惑う偽白石の肩甲骨辺りにバットが当たった。

「もしかして急所?」

 白石がにやっと笑って狙いを定める。

 大将も包丁を突き付けてくる首無しに向かって竹刀を叩きつけた。

 かんっと音を立てながら包丁が弾け飛ぶ。

 白石も大将も強かった。

 首無したちの身体にバットや竹刀が打ち込まれる度に上がる悲鳴と共に店内が薄暗くなっていく。

 ここが大将の店でないことはわかったが、いったいどんな仕掛けでオレは騙されていたのか。

「あかん、逃げぇ」

 首無し大将が叫び、暗闇溜まりに逃げ込んだ。首無し白石も後に続き、二人の気配は消えた。

 白石も大将もそれ以上追わず、はあはあと息を切らして座り込んだ。

 辺りを見回すと荒れ果てた庭にいた。大将の店から少し離れた場所にある廃屋の広い庭。

「なんであんたをこんなになるまで助けなきゃいけないのよ」

 まだ荒い息を吐きながら白石がバットを支えに立ち上がった。

「まあお客様ですし――」

 大将も息を整えて立ち上がる。

「大将にとったらお客様でも――っていうか、こいつのお代払ってんの、ほぼわたしだよ。

 ところであんた、なんかおかしいって気づかなかったの?」

「ああまったく気づかなかった。あまりにそっくりで――あっ――」

「なによ」

「しゃべり方が変だと思った。句点が多いっていうか――」

「ほらぁ、兆候はあったのよ。ったく、奢ってもらうことばっか考えてるから騙されるんでしょうが」

「面目ない」

 オレは二人に頭を下げて謝ってから、「助けてくれてありがとう」ともう一度頭を下げた。

「まあ無事でよかったです。

 ところでちーちゃん、良かったな。これで日本一怖いホラー小説が書けるじゃないか」

 大将が白石に視線を移して笑った。

「やだよ。今度はわたしがあいつら狙われるかもしれないじゃない。ホラー作家になるより命のほうが大切!」

「えー、書けばいいのにもったいない。

 どうせちーちゃんの文章破綻してて、何書いてあるかさっぱりなんだから」

「ったく失礼ね。もう早く帰ってビール飲もっ。きょうはあんたのおごりだからね」

 白石がバットでオレを指す。

「えー」

「えーじゃないわよ。大将にツケでも何でもお願いして、おごるのっ」

「わ、わかったよ」

 オレは上目遣いに大将を見る。

「まあ仕方ないですね」

 そう言って大将はハハハと笑った。

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