その2の4
彼の彼女とはいったい誰なんだろう。
そういう話題がテレビの情報番組で特集されていた。
それを見ながら仕事をしていると、初期から一緒にバンドを応援してきた彼女が、
「サキちゃんとかじゃないかな?」
と、私の名前を出してしまった。
その後、大変なことになった。
多くの報道陣が家の周りを囲んでいた。
「大丈夫か?」
と、彼から連絡が来た。
「大丈夫だと思っていたけど、これじゃ、仕事も出来なくなって、囲まれているの。」
と、状況を説明すると、
「じゃあ、今から家に行くから、必要最低限の荷物を準備しておけ。」
そう言うと、電話は切れた。
私は、本当に必要最低限の荷物を準備し、彼を待った。
急に今まで以上に外がうるさくなった。
そうすると、彼の運転している車が家の前で止まっていた。
そして、警備員がドアから、彼の車の入り口までをガードしてくれた。
私は、小走りで彼の車の入り口までいった。
彼は、後部座席に乗れと合図してくれた。
私が後部座席に乗ると、車は直ぐに出発した。
「待たせて悪かった。警備員を集めるのに時間がかかってしまった。」
彼は、申し訳なさそうに話した。
「大丈夫だよ。来てくれただけで、安心できたよ。ありがとう。ところで、どこにいくの?」
私がそう聞くと、
「俺が今、住んでいるマンションだ。その際だ。一緒に暮らそうぜ。」
と、嬉しそうに話した。
私が住んでいるところから、20分くらいで、これぞ高級マンションというマンションに着いた。
彼は、車を預け、一緒に中に入ると、まるで映画を見ているようだった。
彼に手を握られ、部屋まで連れていってくれた。
「やっと、お前をこの部屋に入れることができた。それだけで、すごい嬉しい。」
そう言って、私を抱きしめた。
「私も嬉しいよ。貴方と暮らしていけると思っただけで。」
そう言って、彼を抱きしめた。
彼と暮らしはじめて数ヵ月、私たちは結婚した。
彼は、一緒に暮らしはじめて数日で、婚姻届を持ってきたが、私がもう少し、恋人生活をしたいと言って、伸ばしてもらっていた。
そして、私も納得して、婚姻届をだしに行けた。
結婚生活は、上手く行っていた。
彼の音楽活動も順調だった。
だが、私は病気にかかってしまい、入院生活を余儀なくされた。
彼は、忙しいなかでも、面会に来てくれた。
それが、とてもうれしかった。
病気は一向に良くならず、悪化している感じだった。
それから、一ヶ月後、主治医から
「もってあと半年、早ければ数ヵ月後に、貴女は死亡します。」
そう伝えられた。
私も彼も泣いた。
早ければ数ヵ月後には彼と一緒にいられなくなる。
彼は落ち込んでいるようだった。
「ねぇ、旅行に行かない?」
私は、彼にそう言った。
彼は、何を言っているんだ?という表情をしていた。
「私たち、二人で旅行に行ったことはないでしょ?だから、二人で旅行したいと思ったのよ。」
彼は、その言葉を聞いて、
「そうだよな。二人だけでの旅行はしたことはなかったなぁ。分かった。時間を作れるように努力する。」
そう言ってくれた。
それから一ヶ月後、私と彼は世界一周旅行にいくことになった。
彼は、今まで見たことない、子どものよう表情をしていた。
来てよかったと思った。
私の体調は良くはならなかったが、彼とのたくさんの思いでが出来て、うれしかった。
だが、時間を止めることは出来なかった。
もう少しで世界一周というところで、私の命は尽きてしまった。
命が尽きる瞬間、彼に、
「愛しています。」
と言えたことは満足だった。
彼からも、
「俺も、愛してるからな。」
と言われて、すごく幸せだった。
その後、彼はバンドを解散し、フリーになった。
そして、他のミュージシャンに曲を書きながら過ごしていた。
彼の体にも病気が存在する事が分かった。
その直後に天国に旅だっていった。
彼は最期に
「ようやく妻のもとへ行けるんだ。嬉しいよ。サキ、愛しているよ。」
と、言ったそうだ。