3話
「それで……その魔物? モンスター? は人間を……その……襲うんですよね?」
「そうですね……襲いますね……」
「おうふ……。俺はその世界に転移して生きていけるでしょうか……」
やはりと言うかなんと言うか。転移する世界は小説では在り来りなファンタジーなのだろうかと、魔物と戦う力は俺には無いぞと、一人心の中で愚痴る。
「だ、大丈夫です! 転移して頂けるのであれば能力を授けたいと思います!」
女神様から生きていけるという言葉が聞こえてきて神崎正樹は安心感を覚える。美女からそんな言葉が返ってくれば誰だって信じてしまうものではないかと。
ただ疑問も尽きない。
「それはどういった能力なのでしょうか?」
「その前にですね。……その、お聞づらいのですが……」
凄く、どうしてか凄く、聞かれては行けないセリフが聞こえてきそうな。
「はいなんでしょう」
「神崎正樹さんは、童貞でいらっしゃいますよね?」
…
「ん?」
「で、ですから! そのですね?!
神崎正樹さんは! 童貞ですよね!?」
「いやいやいやいや!!! 聞こえなかったんじゃなくて!!! そうじゃなくて!!!! なんでそれが関係するんですか!!! ああああああああ!!!」
「えっと……なんかすみません……」
「いや! 謝らないでくださいよ!! 逆に辛い!!! 関係性を説明してくださいよ!!」
「えっとそのですね…その童貞が、転移していただく世界で力になるんですよ」
「…………へ?」
ここまではテンプレが多かった事もあり、神崎正樹は話についていけた。
だが、あまりにも有り得ない言葉が返ってきて神崎正樹は思考を停止せざる得なかった。
「いやですからね? 童貞が」
「いやだから聞こえなかったんじゃないですから! そんな難聴じゃないですから!」
「ふふふ、冗談です」
美女女神様はそう言いながら、ニコニコと、先程童貞という二文字が出なかったんじゃないかと思うくらい、ニコニコと笑顔を神崎正樹に振る舞う。
「あぁ…もぅ…それで? それが能力となんの関係があるんですか?」
「私が神崎正樹さんに授ける能力というのが、童貞力という能力なのですよ」
「童貞力?」
「そうです。その童貞力はポイント制なっているんです。そのポイントを消費して、能力や物や、ステータス、あ、転移する世界にはですね、ステータスというのも存在します。
で、そのステータスにも変換できるんです」
「ふぁ!? まじですか!?」
先程から自分の中で押し殺していた物が声に出てしまった。
声に出てしまったことに動揺し、心を落ち着かせる。
そして女神様から出たセリフは。
「まじです。本気と書いて」
「マジと読む。ってなんで知ってるんですかそのネタ」
これである。
神崎正樹もこれを聞いてからか、冷静になり、そして間髪入れずツッコミを入れてしまった。
「あ、でもポイント制なので、物によってはポイントが高くて、所持しているポイントでは変換できないものはありますのであしからず」
そんな女神様はこれである。
「無視ですか!? ……まぁいいですけど….はぁそうなんですね」
もうどうにでもなれと思う神崎正樹。
「因みに、神崎正樹さんの所持ポイントは300ポイントになります」
「それはなにかの基準があるのでしょうか?」
「いえ? ないですよ? そもそも転生する世界には童貞力なんてポイントありませんから」
「え?! じゃあどうして俺にはあるんですか?」
「組み込んでみました。システムに」
「えええ! そんな簡単に組み込んでしまっていいんですか!?」
「簡単じゃないですよ。世界の命運がかかってるんです。かなり大変です」
「うわぁ……なんかごめんなさい……」
「いいんです。転移して頂けるのであれば」
「うーん……まずその童貞力というものを試してみたのですが良いですか?」
「それは規則に反するのですが……」
「俺もどうなるか分からない能力を使って生きていくのは怖いんですよ……」
…
……
………。
長い。
長いあいだ、女神様は腕を組みながら下を向き、たまに横や斜めを向きながら、無言を徹底している。
そんな女神様は決心がついたのか、
呆れてしまったのか、
そんな感情が顔に出ているのではと思うような形相で、こちらを向きながら口を開く。
「分かりました。今回に限っては事が事です。ご説明など含めてお教えします」
「ありがとうございます」
「まずはステータスオープンと発言してみて下さい」
「分かりました。ステータスオープン」
やっとテンプレ最大の見せ場が今顕現させられる。
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