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4 学校の通学路には恋をしている少女が歩いているらしい

 放課後、天が


「よし、今日は用事ないよね? 一緒に帰ろっ」


 とどう考えてもうきうきしている様子で言った。

 きっと、早く恋バナしてほしいという意味だろう。

 私は


「はいはい、分かったよ。じゃあ早く帰ろう」


 私は教科書を詰めたバッグを持つ。


 通学路。

 高等部にいた真琴を誘って帰宅していた。

 隣を歩く天が口火を切った。


「でさ、早く教えてよ。その人を好きになった訳」

「うん、分かったよ。じゃあ話すよ」


 私なりに話の内容を整理し天に話し始めた。


     *     *     *


 翼が中学一年生のとき、はじめて紅葉学園に来た時の事。

 紅葉学園は中等部、高等部と別れていて広い学校である。そのため翼は迷子になっていた。

 何度も同じところを通ったりしても気付かずぐるぐるさまよっている様は他人からみたらおかしいかも知れない。

 しかし、翼はかなり困っていた。

 しかも翼は結構人見知りをするタイプ。

 なので他の人に声をかける事もできないままおろおろしているばかりだった。

 そんな翼に声をかけてくれた人がいた。

 その人はネクタイの色を見る限り翼より一学年上の男子だった。

 その人は迷っていて困っていた翼を案内してくれた。

 何とか見慣れた風景にたどり着いた時翼はほっとして涙が出そうになった。

 その人にはお礼を伝える前にどこかにいってしまったのでそのお礼を言いたいと思っていた。

 それが本当にお礼を伝えたいだけか、それとも話す口実がほしいだけかその時の翼はまだ分からなかった。


     *     *     *


「こんな話だよ」


 そういい私は話を締めくくった。

 しばらく二人は呆然としていたが


「へえ、なるほどねえ。一目惚れってやつですか」


 とにやけ顔で天が


「すごくいい奴だな、空は。もっと無愛想の奴かと思ったよ」


 と感心した顔で真琴が言った。

 はじめ私は天のにやけ顔にいらっときたがそれよりも真琴のせりふのせいで吹っ飛んだ。


「空ってだれ?」


 そう。真琴の口から出てきた「空」という言葉だ。きっと雲が浮かんでいる空ではないはず。

 真琴はびっくりしたように


「空の事知らないのか……。自分の好きな人の名前なのに」


 と言った。でもしょうがないと私は思う。だって


「しょうがないじゃん。私その人に会ったのその一度だけだし。それにその時名前聞き忘れたんだから」


 このとき以降私はその人に会ってない。会ったとしても廊下ですれ違った位だ。

 私は帰宅部だし、委員会も入ってない。

 接点なんてあるはずない。

 それでもこの気持ちは本物だ。


「えー、翼自分の好きな人の名前も知らなかったの? ありえない」


 うざいテンションで指摘してきたのは天だ。まったく天は……。


「だってさ、それくらい自分で聞いたりその人を知っている人を聞いたりして教えてもらえばいいじゃない。これだから最近の若者は……」


 いや、一応今は中学生だから最近の若者に自分も含まれているだろう。

 まあ、本当の年は分からないけど。

 そしてきけばいいじゃんといわれても無理だ。


「あのさ、天。私極度の人見知りなんだよ? だから自分で訊くのは無理。そして残念な事に私の狭い情報網にはその人を知っている人がいなかったんだよ」

「そうか……、友達いないんだね」


 天に哀れみのまなざしを向けられた。

 う、うるさい。友達くらいいるしっ。……少ないけど。


「ところで告白はいつするんだ?」


 急に爆弾を落としてきた奴が一人。

 ちなみにそいつは元悪魔です。堕天使ならぬ堕悪魔です。


「おい、なんか僕の説明は毎度ひどいよな!」


 そんなことはありません。

 ってそれより、


「こ、こ、告白なんて出来るわけないでしょっ」

「なんで~? 好きなら告白しちゃいなよ」


 相変わらずうざいにやけ顔で聞いてくる天。


「うざいって言うなっ」

「うざいのは天じゃないよ、真琴だよ」

「それならよし」

「いや、僕は良くないからっ」


 ふう、うまくごまかせた。


「話が脱線した。真琴のせいで」

「脱線させたのはお前らだろうが!」

「本題に戻って、告白はしないからね。絶対」


 これは本当だ。別に付き合ってデートしたいとかそういうわけではないから。


「なんで付き合いたくないの~? それにさ、付き合ってくれないと私たち帰れないんだよね、泉に」


 それは困る。

 私は右に告白、左に天に住みつかれるを天秤にかける。

 どちらが嫌か。そうするとすごい勢いで左が下がった。

 それに付き合えるなら付き合いたい。

 きっかけがないから誰にも言えなかったけど。


「ひどいなあ、そんなに私に住みつかれたくないの?」


 ひどく心外というように頬を膨らませる天。

 そんな天を無視し私は宣言した。


「私は、自分の好きな人に告白する! ……いつか」


 ちなみにこの言葉を言ったのは人通りが多くはないものの全くないわけではない。つまり、他の人に聞かれた。

 クスクス笑われたり、がんばれよーと応援されたりして私は恥ずかしくて真っ赤になってしまった。

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