空と翼はデートするらしい
若干おかしいところがあるかもしれませんが、広い心でスルーしてくれると助かります……。
「おはよ~、翼。今日早いね~。あ、デートか!」
「おはよう、天」
朝早くから準備していたら天が起きてきた。
いつも十時くらいまでぐうたら寝ているのに何で今日に限って早起きなんだ……!
若干恨めしく思いつつ天を見る。
「あ、その顔ってことはやっぱ正解? ふっふっふ、さっすが私!」
天はそう言ってニヤニヤしながらシリアルを器に入れた。
「まあ、格好見ればわかるけどね。それ位」
そう言って天は私の服を見る。
確かに今回は少し……、いやかなり自分にしては頑張った。
インターネットで調べたり、実際にお店に見に行ったりして自分に合いそうな服を買った。
そして、普段は絶対つけない星形の飾りがついたネックレスと小さな白い石がぶら下がっているイヤリングを身に着けている。
これでは簡単に気付くだろう。
「ま、頑張ってきてねー!」
先ほどまでのからかい気味ではない嬉しそうな笑顔に私は何も言えなくなってしまう。
ずるいなあ。
「いってきます」
なんとなく照れくさくなって私は小さい声で呟き家を出た。
「いってらっしゃい」
しかし声は聞こえていたみたいだけど。
* * *
流石に今日は私の方が先だろう。
毎回空の方が先に来ているが(といっても数えるほどしかデートしてないけど)、今回は十五分も早く着く予定だ。
流石に毎回待たせるのは申し訳ない。
案の定、待ち合わせ場所にはまだ空はいなかった。
待ち合わせは九時半だが今は九時十五分。
いつもこの公園で待ち合わせしているが子供の姿を見たことは一度もない。
ただ、人通りは結構あるのでこの時間だと出勤する人が結構通ったりする。
土曜日も仕事なんて大変だなあと思いつつスマホを何気なく見ながら過ごすこと五分。
「待たせてごめん」
予想通り十分前に来てくれたみたいだ。
「そんなに待ってないよ。いつも待たせるのも悪いし」
私はベンチから立ち上がる。
「……じゃあ、行こうか」
「うん」
少し緊張しながらお互いの手をつなぐ。
恋人つなぎはまだ出来ないけれどこれだけでも十分進歩だと思う。
「映画、楽しみだね」
「……うん」
今日は映画を見に行く。
二週間くらい前からお互い見たい映画があったのだが諸事情があり、今日になったのだ。
元々平均点スレスレの私にテスト期間中映画を見に行くということは赤点を手にすることと同意である。
ただでさえ一夜漬けタイプだから。
「でも珍しいね。コメディ系苦手だと思った」
今回見るのはコメディ多めの冒険ファンタジー。
明るくてどちらかというと友達同士とか家族向けなイメージだ。
まあ私が見たいと言ったのだけど。
「……結構好きだよ、コメディ」
少しだけ微笑んで言う。
最近、無表情だと思っていたがよく見てみると僅かに表情が変化している。
その変化を読み取れることがすごく嬉しい。
「それならよかった」
そんな他愛のない雑談をしているとすぐに駅に着いた。
「この時間ならあまり混んでないね、よかった」
私は安心してホームを見回す。
そこにはまばらにしか人はいなかった。
「……次の電車は五分後だって」
空はスマホに目を落として呟いた。
ここは都会とは言えないが田舎とも言えない微妙なところなので電車は大体十五分間隔でくる。
ギリギリ過ぎず、待たされ過ぎずでいい塩梅だ。
少しすると電車が来るアナウンスが流れ車両に乗り込む。
座席はまばらに空いていたがどうせ一駅なのでつり革をつかんだ。
* * *
映画館につくと事前に予約した席の料金を払い、上演時間の少し前にシアター内に入ることができた。
「いよいよかあ、わくわくするね」
「……うん」
小声で隣にいる空に話しかけると嬉しそうな声が聞こえてきた。
上映のアナウンスが流れるとゆっくり照明が暗くなり予告が始まった。
* * *
「面白かったね! もう最初が良かった! コメディだけど引き込まれるような魅力があって、これからどうなるのか期待できたし」
「……中盤の戦闘シーンも迫力あったね」
「そう! コメディだからって一切アクションに手抜きしてなかった! ラストも笑いと涙があっていい感じだった」
映画が終わった後のファミレスで私たちは映画の感想を言いながら昼食をとっていた。
私が興奮気味にしゃべるのを(もちろん周りに迷惑にならない程度で)、空はたまに微笑みながら頷いてくれて時々会話に入ってくれる。
幸せだ……。
地獄の後だから余計にそう感じる。
「……この後どうする?」
映画の感想と昼食が終わり、ドリンクを飲んでいる最中に空は聞いてきた。
「うーん、特に用事はないけど」
ストローから口を離し答える。
「……じゃあ、行きたいところあるから一緒に行こう」
「うん、分かった」
会計を済ませた後、バスに揺られること二十分。
徒歩三分の位置にそれはあった。
「すっごい! 綺麗!」
そこは初めて来る公園だった。
しかも花壇が名物レベルらしくそこそこ園内に人がいた。
「ここの公園の花壇、有名で四季折々の植物が楽しめるんだ。ちなみに今の時期だとバラが綺麗らしいよ」
いつもより饒舌に語ることから察するに調べてくれたんだろう。
「そうなんだね。じゃあバラ見に行きたいな」
「……うん」
差し出された手をつなぎとりとめのない話をした。
バラはどうやら入口から一番遠いところにあるらしい。
しかし、話をするうちにいつの間にかついてしまった。
「……ここだよ」
空がそう言った時、私の目の前には様々な色のバラが一面を覆いつくしていた。
いや、色だけではない。
一輪しか咲いてないものやたくさん花をつけるもの。
横方向に伸びているものや縦方向に伸びているもの。
中にはフェンスに巻き付くように咲いているバラもある。
「……綺麗でしょ?」
やや得意げに空は笑っているような口調で問いかけた。
「うん」
私の口からこの言葉はするりと出てきた。
本当に、綺麗だ。
写真で何回かバラを見たことがある。
だけど香りでも訴えかけてくるのか、写真で見るよりもっと美しかった。
「今日はありがとう」
目一杯この風景を心の中に保存するように見てから私はお礼を言った。
「……たまにはこういうのもいいでしょ?」
「うん。また季節変わったら来たいな」
「……そうだね。次はヒマワリかな」
こうして私たちは公園を後にした。
* * *
「ごめんね、送ってもらっちゃって」
別に五時前だから大丈夫だよ、と言ったけれど心配だからと押し切られ結局私の家まで送ってもらってしまった。
「……全然構わない。それにこっちの方が長く一緒に居れるから」
「本当にありがとう。ばいばい」
「……ばいばい」
この後、玄関にいた天に今日のことを根掘り葉掘り聞かれたけれど、それを考慮しても楽しい一日だった。
もし短編思いついたら書くかもしれませんがとりあえず、これで完結です。




