21 空は告白の返事を返すらしい
「僕が、好きな人は、翼さんです」
望月先輩ははっきりと告白の答えを口にした。
「翼さんは覚えていないかもしれないけど、小さいとき、知らない町で迷子になった時助けてくれて、すごく嬉しかった。迷子で不安だった僕に、色々面白い話を聞かせてくれて、仲良くなりたいなって思ったんだ。最初はそれだけだったけど。二回目に廊下で会って君だと気づいた時から、廊下や靴箱で会わないか気になってしまった。話しかけたかったけれど、拒否されるのが怖くて、話しかけることができなかった。だから、山下さんが翼さんの知り合いで、話す機会が出来て夢を見ているようだった」
その言葉で私は思い出した。
そういえば、小さいころ、すごく大きな家に迷子の子を案内した覚えがある。
あの時の迷子の子は望月先輩だったんだ。
「なずなのことは、前も言ったけど従妹としか思えない。本当にごめんなさい」
まっすぐなずなさんの方を見て頭を下げる望月先輩。
それに対しなずなさんは困ったように微笑んだ。
「謝らないでください。私は別にあなたを困らせたいわけではないのです。むしろ、私のせいで空に迷惑をかけたことに申し訳ない気持ちでいっぱいです。とりあえず、蘭に報告しないといけないですね」
なずなさんは立ち上がり、私たちもそれに追随する。
天達は別の部屋にいた。
「お疲れ様、翼!」
「お疲れ」
天と真琴が私を労ってくれた。
「結果はもう分かっている」
「凛から聞いたからね」
蘭の言葉に天が付け加える。
「主、お疲れ様」
蘭はなずなさんを抱きしめていた。
慰めるように背中を撫でながら。
「ごめん、私もう少ししたら消える」
蘭は泣きそうな顔をして笑った。
「また、主が恋をしたら現れるからそれまで、元気で」
段々薄くなっていく姿になずなさんは驚く。
「蘭?」
心細げに呟いた時にはもう消えていた。
「主、アタシもそろそろ帰るな。お幸せに」
凛はいつもと同じ表情のまますっといなくなった。
「帰っちゃったね、天は本当にここにいていいの?」
「翼は私がいたら嫌?」
そんなことない。
ただ、あまりに蘭と凛を見る目が悲しそうだったから。
「とりあえず、私たちは先家に帰っているね。行くよ、真琴」
「ああ」
天と真琴が店から出ていくのを呆然と見送る。
何かいつもと違うような……。
「空、翼ちゃん、私も帰りますね。お稽古に遅れても困るので」
最後まで穏やかに微笑んで帰っていったなずなさん。
必然的に私たちは二人きりになる。
「……これから、よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
色々ありすぎて頭の中がこんがらがっているが、望月先輩に告白したこととそれを受け入れてもらえたことは夢じゃない。
「送ってくよ」
前、断ってしまった言葉に、
「ありがとうございます」
自然とお礼を言ってしまう自分がいた。
夏だし、まだまだ明るいのだけど。
ぎこちない恋人関係が始まった。




