第六章 王女と共に 旅立ちへ
文章が拙いですが、楽しんで頂けますと幸いです。
俺=上坂シュウ ニ=ニャミラル レ=レリム テ=ティア
ニ「前回のあらすじです!
突如として、シュトルム城下に現れたひとつの門、それは異世界へと通じていました。
私たちはシュウ様の能力を使って、高性能型衛兵を1万体程量産して門へと試しに送り込みました
すると一週間も経たないうちに、その門から日本の自衛隊と思しき勢力が出現し、瞬く間に周辺を占領されました
そして更に○ムロイの神官とエルフ等が自衛隊の仲間に加わり――」
俺「――嘘ですよ~これ嘘のあらすじですよ~!というか、まんま別アニメじゃねーか!」
ニ「な~にが戦闘の神ですか!私だって、なんかこう……司ってんですよ!神的に!」
俺「それじゃあ全くもって何を司ってるのか分かんねえよ!ていうか今、俺が神じゃんか!対抗意識燃やすのやめい!」
実際、彼女は神様の時、何を司ってるのだろう、痴女の神かな、ということは今、俺は痴女の神で……。うん、考えるのはやめようかな。
レ「わたしとあのキャラが被る、某魔法を使う青い髪の少女と……」
しょぼんと肩を下ろすレリム。
俺「いや、そうは言っても、この話今は全く関係ないからな!」
テ「ふん、全くなんていうか、見てられないわね、あ、そうそう!そういえばシュウ、今度あの日本の漫画、戦国自衛隊ってタイトルの本の2巻、貸してくれない?あれ面白かったわ」
俺「ん、そうか、分かった、今度貸すから」
テ「ありがとう!楽しみね~」
あらすじとは全く関係ないよねこれ!
ニ「門コレ始まります!」
俺「いや始まらないからな!ありそうだけど、始まらねえよ!」
レ「それでは、始まります、どうぞ」
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ここは、シュトルム王国の王都ヘランカトロス。
その王都シュトルム城の客室の一室に、俺、上坂シュウは備え付きの豪華なベッドで、うーんと肘を付きながら悩んでいた。
なぜ、俺は今ここに存在しているのだろうか?と。
それは、難しい哲学的な内容ではない。無論、私が私を見つめてましたとかそういう哲学でもない。
俺、上坂シュウなる人物が、この物語の世界に入っているわけを今こうして考えている。
元の世界から、この世界、いわゆるライトノベルの元神様のニャミラルから上坂シュウは依頼を受けたのだ。
この世界「グレジア」の神様として、神としての能力を引き継き、本来であれば死ぬはずでなかった王女ティア=シュトルムを助け出し、共に旅をして、国を興し、世界の決定的歴史改竄を防ぐこと、という壮大な目的がある。
そして当初の目的、ティア=シュトルム王女様との邂逅を果たし、この城にも客人として、しばらく居れる算段が付いたわけだが。
ティア=シュトルム王国の城に滞在して、早一週間、特に何事も起きなかった。
他には、周辺の国家の県境で、敵軍隊の怪しい動きがあり、との報告はあったものの、それ以外は特にこれといって代わり榮えがしない日常だった。
よって、俺は前回からの自分の軌跡を模した文章が記されたライトノベルを見返していた。
これは、ニャミラルからの助言によって、俺が開発した文章生成機の本である。
見た目は、ライトノベルと変わりない。
表紙には、アニメキャラ風のニャミラルのイラスト(あざとい風味)が乗っており、時折今までの道筋と共にイラストとして挿絵が入っている。
今までの行動が自動で綴られるという代物だ。(黒歴史の行動も関係なく描写するらしいぞ!)
俺は、この本を閉じ、時折ため息を吐く。
「なんというかこう、俺が創造していた異世界生活とは、全く違うような気がする」
そうだ、思い返すと色々なことがあった。
初っ端から異世界に来て、樹海でニャミラルと汗まみれになり、レリムを創造した後は、一気にこの首都までワープし、果ては王女様を召喚してしまったわけで、なんというか、神様の、この力があると物語の有り難みが全くないということに気づいたのだ。
まあ、それはあくまでも俺の気持ちが問題であって、だからどうしたうということはないのだろうけども。
そう、失敗すれば、全てが水の泡となるのだ。この世界が消えるということだ。そうなるのだろう。
とにかく俺は、万全を期して物語を進行させなければいけないのだ。
さて、俺が創造した赤髪の少女レリムは、現在、力を持て余しているとのことで、城の兵士の相手に鍛錬を行っていた。
彼女曰く、ある程度体も動かせますし、この兵士の力を多少は上げておいても損はないでしょう、とのこと。
ニャミラルは、日々美味しいお菓子を食べながら、グウタラに過ごしている。
外見は、美しい白髪で、肌は白魚の様に美しい白い肌。で、胸が大きい。
それが昼間からゴロゴロと転がりながら、部屋に出されたケーキなどを食べている。
一応、これでも元神様なんだけども。
こうして俺たち3人がここに居れる理由は、元はと言えばティア王女様が、俺、ニャミラル、レリムの3人を客人として通す時に、偶然、彼女の父親、グローデル=シュトルムと、彼女の母、ミアリ=シュトルムが一ヶ月の旅行から王城に帰ってきたからである。
そういったわけで、俺たちがこの王城に着いたその次の日の朝、俺たちは王様とお妃様にお目通りが叶ったのだ。
普通ならば、一ヶ月ぐらい、王様に面会する時を待たなくてはいけないらしいが、今回は偶然が重なったおかげでスムーズになったらしい。
翌日、俺たち3人は、グローデル王と、ミアリ王女についてお目通りした。
ここは謁見の間と言われる場所で、赤い絨毯がそこまで惹かれている。
遠目の玉座には、王様と王女様がそれぞれ座っている。
そこまで進めということらしいので、まよわず進む。
この世界の礼儀作法として、目上の者には片膝をついて頭を垂れていなければならないらしいので、ティア王女の言われた通りにする。
ようやくファンタジーっぽくなってきた気がする。うん、素晴らしいな。
「表をあげい、シュウ=ウエサカ殿よ」
言われたとおり、顔をあげ、王様と王女様の方を下から見上げる。
まず王様の顔を見ると、グローデル王は、温厚そうな顔立ちで40代ぐらいだろうか、いい雰囲気のダンディなオジサンに見えた。
次に、ミアリ王女は、見た目、20代だろうか?と思えるほどの美女で、ティアが成長したらこうなるのだろうかと思えるほど似ており、桃色ブロンドの長髪であった。さすがは親子である。
一通りの型通りの儀式が終わり、堅苦しい挨拶は終わった。
これからは、フランクに話してくれと言われたので、遠慮せずにそうすることにする。肩ぐるしい礼儀作法は、元高校生の俺にとっては疲れるからなあ。
詳しい仕事は、何の仕事をしているのか?と王様に聞かれると、
俺の傍に控えていたティアが話したのだ。
「この者は大賢者です、お父様、お母様」
「ほう、大賢者とはな……!」
「それは、凄いですわね!」
俺のことを大賢者と言ったのだ。
大賢者とは、魔法と召喚術のエキスパートであり、この世界でも10人はいないと言われている最高位である。(脳内時点参照)
その事に驚いた王様と王女様は、賢者であることを試しに何でもいいから証明してくれと言ったのだ。
その程度は造作もない、ということで俺は了解した。
すぐさまワープ魔法を使い、次から次へ、謁見の間辺りをワープ魔法で往復を繰り返し、移動した。
これは一度スキルを脳内で設定しておけば、行き先を考えるだけで自動的に発動出来るから出来る技である。
普通の魔法使いは、連続でワープ魔法が出来るはずもないらしい。
一通り披露すると、見学していた大臣達などが、見ていたらしく、拍手喝采の嵐が俺に降り注いだ。
そんなに凄いことらしいのか。俺としては余り実感が沸かないんだけど。疲れるわけでもないからな。
そして、俺は宮廷魔術師長にならないか?と王様に聞かれた。
宮廷魔術師長とは、国が抱える魔法使いなどの中で、最高地位とされている。(脳内wiki参照)
しかし、今、旅をしている最中ですので、申し訳ありませんと断った。
断るしかないからな、今後の行動を考えると。
それを聞いた王様は少し残念がったが、今後共、娘のことをよろしく頼むといわれ、勿論頷いた。
これから守らなければならないのだから。
次に、ニャミラルの番になった。
彼女は自分自身の事を
「私は、シュウ様の正妻です、遠路はるばるここまで着いて来ました!」ぬけぬけとそう言った。
そして、王女様の貞操は私が守りますと言いきった。
おい誰から守るんだ、誰から。王様は、うんうんと頷き、俺をチラ見する。
そして、何故か上機嫌だった。王女様は若干不安そうだったが。
そして、最後に、レリムの番となった。
レリムは説明が下手そうだったので、彼女は俺が説明したのだ。
そして、俺の元で護衛をしてくれる稀代の天才剣士ということにした。
王様と王女様は、またまた驚き、試しに場内で、一番の腕が立つ近衛兵隊長と剣の試合をさせることとなったのだ。
彼、近衛兵隊長は、20代後半といった感じの見た目は、爽やかな騎士道精神に溢れていそうな外見の、金髪イケメンだった。
(オノレイケメン死すべし!)いや何でもない。
それでこのイケメン曰く「相手が女性であっても、王様の手前、手加減は致しません」とのこと。
(ちねえええ!)
俺は個人的憎悪に燃えて、準備をする騎士(金髪イケメン)を尻目にレリムを傍らに呼び、耳元で小さく命令を下す。
「よし、レリム試合開始直後、高速で終わらせてやれ」
「承知致しました、マスター」
スタスタと試合場所に向かっていくレリム。
ふははは!これで奴のプライドは木っ端微塵じゃ!と心の中で高らかに笑った。
物理的には笑えなかったのでな。
肝心の具体的な試合内容は、木で作った剣を使用し、相手を降参させたら負けという至ってシンプルな内容である。
逆に言えば降参しない限りは、試合が続くということになる。
その選手となる二人は、少し離れた城の中の騎士団練習場にて戦うことになった
。
結果は、言わずもがなレリムの圧勝だった。
まず、最初に動いたのは金髪イケメン騎士だった。
しかし、レリムは最初の構えから一歩も動かずに、一瞬でレリムは敵の剣を真っ二つに破壊したのだ。
相手に傷ひとつ追わず。
いつの間にか集まっていた周囲の観客たちは、ボーゼンとしていた。
しかし、イケメン騎士は、屈辱的に怒り、レリムを怒鳴るなり、殴るなどすることもなく、レリムに歩み寄り、握手を交わした。
そして、何事かを呟いたであろう、直ぐに退出した。
そのすぐ後、誰かが拍手をし出すとそれは瞬く間にレリム賞賛の嵐になっていった。
こうしてレリムは名実共に王国最強の剣士となったのだ。(流石俺の眷属!)
この結果を間近で見ていた、王様と王女様は喜び、是非我が国の宮廷師範になってくれと頼み込んだのだ。
宮廷師範とは、国の軍隊を指導する立場の人間で、模範的な人物がふさわしいとされているが、現在この王国では、空席となっていたのだ。
しかし、これまたレリムは辞退した。
「私は、シュウ様の為だけに剣を振ることを生きがいとしております」
固辞された王様と王女様は、残念と言いつつも俺たち3人の来訪を喜んでくれていた様で笑みが浮かんでいる。
その日の夜、俺たちの為に盛大にご馳走などが振舞われたのだ。
俺たちはなんやかんやで、盛大に飲み食いした。
その食事は王様と王女様、ティアも同席していた。
俺は王様から、今後しばらく、この城に滞在してくれないか?と王様から直々に頼まれのだ。
王様に頼まれたら流石に嫌とも言えず、逆に嬉しくもあった。
しばらくは、ティアの近くにいれるからだ。
また、宴会の席では何故か、イケメン騎士が居て、レリムに積極的に声をかけていた。
無論、俺にも声をかけてきたが、俺は、「ええ、はい」等としか返していない。
その後、レリムに何事かを話していたが、レリムの反応は相変わらず無反応に見えた。
(己えイケメンレリムにアタックだと!?まじ許すまじ!)
まあこのイケメンには特に罪はないのだがな、うん。だがな、娘はやらんぞ!!イケメンめええ!
そうして、何事も無く、早くもこの城に来てから、一週間が経過した。
さて、その間、特にやることも余りなかったので、今後の為に情報収集を行っていた。
神様としての情報、地理などを理解はしているが、実際には見てみないと分からないのだ。
教科書だけを見て知識があっても、実際に見ないとわからない感覚に近いと思う。
まず、この年が世界で何年かは分からなかったので、試しに近くのメイドに聞いてみると、1563年5月と言われたのだ。
今更だが、俺が聞こえる話は翻訳されて、相手方に聞こえているのだろう。
時々、意思疎通がなんとなく違和感を感じるからだ。 まあ、日常生活においては十分すぎるわけだが。
この王国が滅亡するのは、1564年8月と考えるならば、それまでに歴史を変えればいいのだ。
ということは、1年3ヶ月程あることになる。つまり、何者かの王国の革命が起こる前にティア王女と旅に出れば、歴史は早くも改竄出来ると踏んだのだ。
そして、これを実行するには、まずティア王女の意思が必要となる。
このことを、ニャミラルとレリムに伝えると、「おお~流石、シュウ様ですね!是非是非実行しましょう!あ、でももう少しゆっくりしt…・‥いえなんでもないです、はい!」
「私はマスターに従います」とのこと。
いつものメンバーからは許諾を得た。
これは簡単だ。一部が反抗を示しかけたので、フォークで抑えたがな、流石フォーク万能である。
そうなると、次はティア王女様本人が行きたいと考えなければならない。
このことは神様能力でどうにか出来るわけではない。世界に干渉しすぎるのは反則なのである。
こうした話を纏めていると、外はどうやら夕暮れになっていたようだ。
善は急げと考えた俺は、今すぐ王女と会えないかな~と考えていると、コンコンと控えめなノックな音がしたことに気がついた。
夕食の準備を知らせに来たメイドさんだろうか?
「えっと、シュウいるかしら?」メイドさんとは違った、この可愛らしいアニメ声は、ティア王女だ。それ程までに分かりやすい声だったのだ。
「はい、いますよ~、どうかしましたか?」
「え、えっと中に入ってもいい?」
「勿論、どうぞはいってください」と中からいうと、なんとなくしおらしく入ってきたティア王女だった。
「うん、えっとね、お礼を言おうと思って」
そう言う王女は、いつもよりしおらしいティア王女。
「お礼ですか?そんなこと別に気にしないで下さいよ、俺が逆にお礼が言いたいぐらいですのに」
そう、既に俺たちは、美味しい食べ物やお風呂など衣食住、それに一部資金(講師等の代金の収入)を貰っているのだ。
「いえ言わせてちょうだい……有難う、私の我が儘に付き合ってもらって」
「いえ、そんなことはありません、俺たちは自分の意思でここに滞在したいと考えていますから」
しかし、ティアは被りを振った。至極真面目な顔で。
「実は、私はね、この前貴方達と出会う前の話なんだけど、いつもお忍びで街を歩いていたのよ」
一体何を言い出すのだろうか、この王女様は。
しかし、話の内容からして真剣なことであることは分かった。しばらく黙っていることに決めた。
「それで、私は、少し世間を知っていたつもりでいたんだ、この街はなんて平和なんだと……でも」
「実際はそうじゃないとわかっている、貴方のような素晴らしい賢者とか、レリムの様な強い剣士がいる。世界は広いんだと、最近知ったわ、それに時折、街を歩いていると王宮や国への不満をいくつも街中で聞いたの」
いつの時代や世界でも、民は政治や国などへの不満を言うことは至極当然だろう。しかし――
「それでも一人で外を出歩くのはお父様やお母様は許してくれない、外出が許されてもいつも衛兵が付き添いでいるから、私は本当に、自分一人で歩き、目で見て、直接の本心を民の声を聞きたいのよ」
――それは実際に外を出歩ける人間が言えることだ。ましてや王女様となれば、親に守られ世間知らずであるのが当然だ。
彼女はそれを自覚している。
「だから、もしも貴男たちが旅に連れて行ってくれると言うなら、私は喜んでついていくわ!!」
そして、それを未来に繋げようと考えていると、俺には見えたのだ。
「お願い、わたしを旅に連れて行って!」
俺がこの話を自ら言おうと考えたが、彼女が本心から言っているならば反対道理は全くない。
寧ろ、この状況は有難かった。
そして、彼女は今まで本当に悩んで悩み抜いてこの結論を出したのだろう。
目に涙を浮かべ、それでも俺から目を離さない、それ程までに旅に行きたいという決意の現れか。
「俺は、ティア王女を旅に連れて行きたいと考えております」
彼女に笑顔が浮かんだ。
「しかし、あくまで俺達で言えばですから、あなた様の両親に聞かないといけません」
また彼女は一瞬落胆したような顔をしたが
「俺が頼んでみます、王様と王女様にね」と付け加えると、すぐにまた笑顔になった。
そして、俺たち3人がこの城に滞在する最後の晩餐、そのことを王女様と王女様に話すと意外とすんなりと話が通ったのだ。
娘は出せない等と言われ、苦戦するかと考えていたのだが。
「なあに、あなた様はこの大陸、いや世界で1,2を争うほどの腕前でしょう、その方に付いていけるならば、ティアも本望でしょう」
「はい、あなた、私も安心しますわ~」なるほど、俺は、それほどまでに強く見えるのだろう。
賢者だしな、だが元々は高校一年生。
神様といっても絶対安心はない。
それとなく、危ないこともあると伝えると、大丈夫、シュウ殿を信じますとのことだ。そうと言われては、俺も腹をくくるしかあるまい。
「分かりました、しばらくティア王女様をお預かり致します」
「お願いします、これはほんの一部ですが、資金と王族手形発行券です。これがあれば、どこの国でも国賓待遇されます」
有難うございます、と俺はせっかくなので受け取ることにした。
これは、俺たちへの援助と共に、ティア王女への娘にしてやれる精一杯の親心なのだろう、とそう考えた。
この城に週滞在している期間に貰った給料と合わせると、けっこうな額に跳ね上がったのだ。
これだけあれば、1年近く持つだろう。多分(ニャミラルが心配だ)
「む、なんか今失礼なこと考えませんでしたか?」とニャミラル。
だがスルーする。せっかくいい話なのに、話がこじれるからな!
レリムは此方の空気を読んでいるのか、いつもより増して静かにしている。
「あ、それと――」
話の最後に踵を返そうと思った俺は、王様が俺にこっちに来い来いと動作をしたのでもう一度近くによると、王様が寄ってきて耳打ちをした。
「――シュウ殿よ、ティアを嫁に迎える気はないか?」
「はい?」え、えーと、今、なんとおっしゃいましたか?
「なに、側室でもお妾でも良いのじゃが、気に入ったら彼女を貰ってやってくだされ」
「え、えーと突然の話で良くわからないのですが」
突然過ぎて俺の思考が一時停止した。えと、ティア王女とけっ、結婚??
「なになに、そう難しく考えないで下さい、娘といる時間はこれからたっぷりありますので、その時お考え下さい」
俺は突然言い出した王様にボーゼンとしながらも、なんとか頷く他なかった。
それに満足げに頷く王様。そしてそれに頷く王女様。
そして傍らには、ティア王女が家族に別れの挨拶をしていた。
そして、ニコニコしながらこちらに走り寄ってきた。その笑顔は眩しい笑顔に満ち溢れていた。そう、眩しい程に。
いよいよ俺たちはこの城から出発の時間となった。
服装はそれぞれ、着替えている。
俺は、黒いマントを羽織り、黒のローブ、黒のズボンなどで全身黒一色だ。
俺はGか何か?
ニャミラルの得物は、双剣の短剣ということで、白っぽい軽装の甲冑をきて下は動きやすいよう、ズボンを履いていた。
レリムは、剣士ということで、赤い甲冑をきて防御及び攻撃に力を入れている。
ティアは、弓を習っていたということで、弓に最適な軽装鎧を着て、背中に矢筒を入れた。
いずれも職人クラスの鍛冶師が造ったのだろう、どれもよく出来が良かった。
これらの装備は、前から王様が服などのサイズを図らせ、頼んでいたようだ。有り難く受け取ることにした。というか皆もう着ているしな。
こうして、俺はニャミラル、レリム、新しい旅の仲間、ティアと共に王城を出発した。
後ろには、衛兵たちも総出で見送ってくれたのが分かり、全員思い思いに手を振り返す。
その中に、金髪イケメンが大声で、レリムさああああんとのたまっていたのが大変けしからんぞ!
お父さん絶対許しませんからね!
そして、一行はヘランカトロス都の門をくぐり抜け、衛兵の敬礼を受けつつ、ヤシロ平原をゆっくりと歩いていく俺たち4人。
まず目指すは、新たな土地、魔族が支配する地域だ。
これが俺たち4人の新たな旅の幕開けとなった。
ニ「私たちの冒険は今、始まったばかりです、これからです!」
テ「ええ!胸が高鳴るわ!」
レ「はい、頑張りましょうマスター」
俺「あ、ああ!これって打ち切りフラグ……じゃなかったか?」
そして、シュウ達4人が城から出発していったその夜、シュトルム王城にて――
「―ーねえ、あなた」
「なんだ?寝付けないのか?」
「あれで良かったのですね」
「ああ、そうとも、彼ならきっとティアを守ってくれるよ」
「ええ、そうですわね」
「彼が、伝説の魔術師なのだからな」
次回も頑張ります