1話
「どうも死神です」
目が覚めて早々そんな声が聞こえた。
見渡す限りの銀世界。いや、ここは死後と言うべきなのだろうか。
僕の最後の記憶だと、確か無数の破片が腹を突き刺していたはずだ。
だからきっとここは死後なのだろう。でなければこんなおとぎ話のような光景ありえない。
ここは地獄か…それとも天国か。日々絶望に近い僕はどこにいくのだろうか。
「どこにもいかない。君は地獄と天国の狭間にいるのさ」
死神は言う。紫色をした髪に碧眼の娘は答える。
「狭間…とは、一体どういうことだ…」
「君みたいな奴は地獄に落ちやすいのさ。自殺は地獄行きだよ。まあ君にはその記憶はないみたいだけどね」
「じ、自殺…!?」
僕が…?
全く記憶がない。なぜだ。なぜこんなにも記憶が曖昧なのだろう。
「それは追々わかるさ。私から見たら君は異質。だからここに連れてきた」
強い意志があって死んだ人間は思念体となって現代に残るというのは聞いたことあるが、僕はそれには属されなかったのか。
思念体とは所謂幽霊状態である。例えば恐怖の感情で死んだ者はその感情で幽霊になる。テレビになるのは大抵はこういう類だ。
だが、狭間というものが存在するということは…その概念が大いに狂うことになる。
死神と名乗る娘は、いったい何者なのだろうか。
「君にはチャンスをあげよう。その命、最初からやり直しておいで。記憶は保持させてあげよう」
意味がわからない。どういうことだ。
「やり直すって…またあの人生を送れと言うのか」
僕の瞳に感情が宿る。僕は死神を睨む。
意味のないあの人生を繰り返す?親がグズなのに?
立ち位置は変わらない。どうせまた皆からあの目で見られる。
そんなことなら、死んでた方がましだ。
「違う違う。転生ってことになるのかな?君の生きた世界じゃない、違う世界さ」
異世界
その単語が僕の頭に浮かんだ。
「そう、異世界さ。世界なんて一つじゃない。いくつもある。」
アニオタならわかるよ?っと死神は付け加える。
悪かったなアニオタで。世界を見なくないから現実逃避してただけだ。
「さらに2つ条件つけてある。絶対に負けない力をやろう。ドラゴンにも負けない絶対的な力を。さらにもう一つ――――世界を壊せ」
……
……………
は?
「世界を壊す…だと…?」
「お前がこれからいく世界は壊されることで平和が維持される。壁になるものは全て壊せ。それを守る奴もだ」
ここで初めて死神というものがどれだけ残酷かを知ることになる。
口の端を釣り上げて狂喜に似たものを感じる。
「………異世界、か」
あの世界に希望はあったか?
否、だ。
あるわけない。平等を無くし争いが絶えない世界…僕から見たら異端だ。
そう考えた時点で確信した。
「さて、どうする。決めるのはお前だ―――一ノ草明日香、どうする!?死ぬか生きるか!?どっちだ!?」
そんなの、決まってる。
そういう思いで僕は死神を見た。
また不吉に笑う。ケタケタと、まるで老人形のように。
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誰もいなくなった空間で、死神は「あ、」と声をもらした。
やってしまったと、自分の失敗に額を叩く。
「やばい…これ私がやったこと転生じゃないじゃん…あーやばいな、またあの人に怒られる…」
まあいいか、と死神は舌を出して消える。
何もなくなった空間で、何かが歪んだ。空間だ。空間が歪んだのだ。
本当にここは狭間なのか。それはあの死神にしかわからない。




