【自動販売機】
[長方形の狭い空間]
(ウィーーン)―と、夏目さんが描かれてある1枚の紙が入って来る。
右に立つ男が手に取る。左の男に見せる。ソイツは呆れた顔をする。首を横に降る。こう言う。
「ぐちゃぐちゃ過ぎる。ダメだな」
それを聞くと、右の男はその紙を入って来た隙間から戻す。(ウィーーン)―と、紙は向こうに戻ってゆく。左に立つ男は穴から外を覗く。2人は半笑いで話す。
「ピーンとしてる?」
「ピーンとしてるよ」
「がんばってる?」
「がんばってるねー」
再び(ウィーーン)と入って来た紙を、右の男が手に取る。左の男に見せる。
「まーだ、ダメでしょ」
(ウィーーン)と戻す。覗く。
「がんばってる?」
「がんばってるね」
「必死?」
「必死だね。1回縦に折り曲げるパターンやりだした」
「まじで?見して、見して。はははは。頑張り過ぎでしょ。コイツ」
「はははは」
(ウィーーン)―右の男が紙を取る。左の男に見せる。半笑いで言う。
「まぁ、この程度で勘弁してやるか」
「だな」
右の男が[オーケー]ボタンを押す。表の許可が降りる。左の男が穴から覗く。愚痴る。
「なんだよ。最初に決めとけよ。早く選べよ。なんだよコイツ。おせーな。おせーよな。早くしろよ。なんだよコイツ」
「おせーな」
「おせーな」
「おせーな」
「おせーな」
「あ!」
「決まった?」
「決まったよ」
「なに?」
「コーラとコーヒー同時に押して運に任せてみるパターン」
「なんだよ、コイツ。しかも、コーラとコーヒーって全然飲みたい気分が違うじゃねーかバカタレ」
「なぁ」
「なぁ」
「どーする」
「ぬるいコーラあったよな?」
「あった。あった」
「それ出してやれ」
「だな」
右の男は膝元の大きな袋からぬるいコーラを出した。下の穴から入れた。
(ガシャン)
そして、左の男は(チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、チャリン)―と、胸の高さにある小さな穴から、銅色のメダルだけを選び抜き、1枚1枚落としていた。
2人共ずっと半笑いだった。
(―END―)