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家族の影  作者: hoku love
第二章 秀樹の章
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第一話 宏子

母とユキが家を出た。

そう聞いた時、俺は、家族が本当にバラバラになってしまったような気がした。


どうして、こんなことになってしまったんだろう。


そう思った時、俺は少し昔のことを思い返していた。


実は、俺の結婚は二回目だ。

美希と出会う前に、宏子と結婚していた。


宏子と出会った頃の俺は、ある意味、人生につまずいていた。

高校を中退し、アルバイトをしても長続きしない。

家にいれば、両親は手を差し伸べてくれていた。

けれど、それでも俺自身が肩身の狭さを感じていて、家に居場所がないように思っていた。


いや、正確には、居場所がなかったわけじゃない。

ただ、自分で勝手にそう思い込んで、家を出ることの方が多くなっていったのだ。


宏子も高校を中退していた。

仲間内でも、男関係の噂が絶えない女だった。

でも、宏子は俺の話を聞いてくれた。

俺を認めてくれた。

俺を否定しなかった。


だから、俺は宏子と一緒にいるのが心地よかった。

噂なんて気にならなかった。


だが、その時も母は猛反対だった。

俺は反抗し、宏子と逃げては連れ戻される。

そんな生活がずっと続いた。

気がつけば、それが十年続いていた。


十年後のある日、宏子は言った。


「秀樹、私、妊娠したの」


宏子の妊娠は、実は二回目だった。

以前、一度だけ妊娠したことがある。その時は、俺もまだ十代で、結局、堕ろしてもらった過去があった。


それに、もう十年も宏子と付き合ってきた。

男として、ここで責任を取らないといけない。

そう思った。


でも、宏子との結婚に、両親はいい顔をしなかった。


さらに母は、俺にこう言った。


「そのお腹の子、本当に大丈夫なの? 本当にあなたの子なの?」


あまりにも失礼な言葉に、俺は激怒した。


「ふざけんなよ!」


そう怒鳴ったことを、今でも覚えている。


ただ、母があんなことを言った理由も、まったく分からないわけではなかった。


俺は中学二年の時、原因不明の高熱に襲われたことがある。

そのまま意識不明の状態が数か月続いた。

命が助かったのは奇跡だと、周囲は言っていた。


でも、俺にとっては、あの出来事が人生の挫折の始まりだったのかもしれない。


もともと勉強が得意じゃなかった俺は、退院してからさらに学校についていけなくなった。

中学三年の時には、県内でも一番下に近い私立高校を専願で受験した。

特に行きたい学校だったわけじゃない。

ただ、落ちることだけは、俺の中のちっぽけなプライドが許さなかった。


だから、専願でその高校に入った。

でも、結局その学校にも馴染めなかった。


そうして高校を中退し、気づけば、何をしても中途半端なままの自分だけが残った。


結婚を機に、俺は父の会社に入った。

家庭を養うために、真面目になろうと思った。

父も俺を受け入れてくれたのだと思う。


結婚して数年は幸せだった。

息子の涼も生まれた。

母は宏子にも涼にも、少しよそよそしかったが、俺はそれをあまり気にしなかった。

いわゆる嫁と姑なんて、そんなものだろうと思っていた。


だが、涼が三歳の時、事件は起きた。


涼が事故に遭ったのだ。


輸血が必要な状態だった。


その時に分かった。

涼の血液型はA型だった。


俺はB型。

宏子はO型。


BとOの間に、A型の子供は生まれない。


その瞬間、頭の中に、母のあの言葉が響いた。


「本当にあなたの子なの?」


あの時は、失礼だとしか思わなかった。

でも、その言葉が、今度は呪いみたいに頭の中で何度も繰り返された。



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