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道は同じ 8話

 放課後。今度は同じクラスの女子に校舎裏に呼び出された。同じ教室で学ぶことはや7ヶ月。この女子とは2、3回話した程度だ。だって、前回もほとんど関わりがなかったから、初めに同じクラスだったかよく覚えていない。根岸陽子ねぎしようこ。うちの学校のスクールカーストでは上位に位置している人物。前回も下位だった僕にとっては、できれば関わりたくもない人物だ。隣にも誰か知らない人がいるけど、誰だったかな。同じクラスになったことのない女子だから、覚えていないな。こんな見た目の人いたっけ。

 

「井上に聞きたいことがあるの。3組の野本結衣って知っているでしょ。彼女とのことについて説明してくれない?」

 

 またか。さっきの高見さんといい、そんなに興味のある話題か。人の不幸は蜜の味ってやつか。まあ、根岸にならやりかねないな。

 

「いいよ。でも、僕自身もどこから話せばいいか、わからないから、できれば質問してくれると嬉しいかな」

 

「わかった。じゃあ、単刀直入に聞くけど、野本に振られて、暴力を振るったって本当?」

 

 誤解が解けるまでは何回でも説明しないとダメか。はあー。それはそれで大変だ。

 

「教室でも言ったけど、それは違うよ。告白をしたのは野本の方で、僕は告白をされただけ。間違えてグループに送ってしまった、野本の方から誘っていたトーク写真を見ただろ。僕から誘ってないよ。だって、僕は野本のこと何も知らないから」

 

 本当は野本について誰よりも詳しく知っているけど、それはあくまで前回の記憶。今回の記憶では全くと言えるくらい僕が避けていたから関わりはない。

 

「確かにあの写真では井上は誘っていなかったけど、別の日に誘ったとかではないのか?」

 

 そんな回りくどいことをして僕は何がしたいんだ。ストレートに野本という人間がだめだから、話すらしていないのに。

 

「そうだったとしても、僕が野本と会うのは難しいと思うよ。だって、昨日と今日の話だから。そもそも野本に呼び出されたのが放課後。それから、僕が野本を呼び出そうとしたら、夜か早朝になる。まずは、野本の方にいつ僕から暴力を受けたのか聞くべきじゃないかな。もちろん、さっき言ったどちらにも僕のアリバイは親がいないと証明はできないから、犯行が可能と言えば、今の所可能だから。最悪親に聞いてくれてもいいよ。僕は無実だから」

 

 こっちには他にも証拠があるんだ。何も言われても言い返せる証拠が。無駄な足掻きはやめろ野本。

 

「そうか。わかった。私はどちらもまだ信じていないが、こいつがどうしても話を聞きたいというから呼んだんだ。ちなみにこいつのことは知っているか?」

 

 前回の記憶を必死に思い出しているけど、本当に知らない。誰だっけこの人。同じ学校にこんな子いたっけ。名前を聞けば思い出すかもしれないけど、顔を見ただけでは思い出せない。

 

「ごめん。初めましてだから知らない」

 

 本当にいたのか。もしかしてまた僕の知っている過去じゃないのか。

 

「彼女は私の幼馴染、能見菜々のうみななこ。野本から井上のことについて相談を受けたんだって。でも、野本の言葉に整合性が得られなかったから、井上からも話を聞きたいって。昔から正義感が強い子だったから、井上も無理に誘って悪かったね」

 

 名前を聞いて思い出したけど、能見ってもっと地味な見た目じゃなかったか。確か髪はボサボサで眼鏡をかけていつも1人でいて、どこに行くのも本を抱えていたはず。なのに、なんで今は、サラサラのストレートで、メガネはかけてなく、至って普通の女子になっているんだ。しかも、結構可愛い見た目しているし。磨けば輝く原石だったのか。そりゃわからんわ。

 しかしまあ、野本も信用されていないんだな。前回の記憶では、能見は基本1人。今回もそうだろう。そんな人物にまで信用されていなしのだったら、状況をひっくり返すにはもってこいなんじゃないか。能見さんは使えるかもしれない。野本を追い出すのに。

 

「いいよ。どうせ帰ってもするっことないし。暇な時間がなくなったから、晩御飯にちょうどいい時間になったよ」

 

「そうか。それはよかった。なあ、ついでで悪いんだが、明日もまたきてくれるか?」

 

 暇な時間なんて言うんじゃなかった。まさか2日間連続で誘われるなんて誰が予想できたものか。暇と言った手前、断るのもおかしいよな。何か用事があればいいんだが。これという用事はないしな。まあ、今日みたいにそんなに時間を食わないんだったらいいか。

 

「わかった。明日も同じ時間でいいのかな?」

 

「ああ、それで頼む。私たちはもう少し話してから帰るから、もう帰ってくれて大丈夫だぞ。今日はありがとう」

 

 へいへいおじゃまむしは帰りますよ。

 1人寂しく家路についた僕。周りには部活を終えた文化部の人間が多数。僕は白い目で見られていた。

 ……僕の噂はどこまで広まっているんだ。植田の時は4組まで噂が回ってくるのは遅かったのに。今回の噂の流れるスピード早すぎないか。植田の件があったからみんな注目しているからなのか。ほんとやめてほしいよ。

 僕に白い目を向けていた数人は上級生で、隣にいる女子は確か1組の人間だ。

 もうそこまで回っているのか。先生が介入してしまう前にどうにかしないとな。先生が間に入れば面倒なことになる。最悪警察沙汰だ。それだけはごめんだ。

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