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第八章(5)

 フィアナは騎士の証である銀プレートを見せつける。


「同じく、ナシオン・ソレダー」

「私たちは総帥から、こちらの応援に入るように指示されました。ここの指揮を執っているのはどなたですか?」


 この場の指揮を執っているのは、あの第一騎士団の団長だった。だが、彼の姿が見当たらない。

 フィアナは目の前の騎士から、現状を聞き出した。どうやら彼らはこの場での待機を命じられているようだ。


「団長は、この先におります」


 フィアナとナシオンは悩んだ結果、奥に進むことにした。まずは団長と会い、情報共有が必要だ。と同時に、巫女らに必要以上に近づかないようにと、念を押すのも必要だろう。


「なんだって、短時間で様変わりした感じだな」


 ナシオンの言葉に頷く。

 先ほどまで、カリノの裁判を行っていた。それが終わってしばらくしたらこのざまだ。動きが早すぎる。


「あ、団長」


 ナシオンが声をあげると、第一騎士団の団長がこちらに気づいて、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。





 フィアナは自席で、机に突っ伏していた。外はとっぷりと闇に包まれている。長い一日だった。

 とにかく疲れた。このひと言にかぎる。


「ほらよ。お疲れさん」


 ナシオンが、机の上にコトリとカップを置いた。


「はぁ。今は、ナシオンさんに不味い紅茶が身体に染みます」


 渋いはずの紅茶なのに、今はその味すら感じない。


「相変わらず失礼なやつだな」


 笑いながら、ナシオンも席につく。

 大聖堂の捜査の応援に入ったまではよかった。


 大聖堂の地下室にまで捜査の手が伸びようとしたとき、枢機卿らは大反対したらしい。そうなれば、第一騎士団の彼らだって怪しむだろう。


 なんだかんだと押し問答を繰り広げた結果、地下室へと踏み込んだのだが――。


「イアンさんの言うとおりでしたね……」


 彼は大聖堂の地下室というキーワードをフィアナに伝えた。それはきっと、地下室を捜査しろという意味だったのだろうなと、今になって思う。


 地下室から出てきたのは、大量の魔石だ。これは騎士団が把握している国の所有する魔石の量よりも、圧倒的に多いものであった。


 つまり、彼らは違法に魔石を手にしていた。


 さらに地下室の奥には、いくつかの女性の遺体が隠されてあった。防腐の術が施され、棺に綺麗に納められていた。彼女たちは、魔石を取り込んだものの、魔石に負けた巫女らだった。


 魔石を取り込んだ者は、その力に負けるか、その力を奪い取るか、力の影響を受けないかの三種類に分かれるようだ。


 そこからバタバタと捜査の手は巫女や聖騎士にも伸び、フィアナは巫女ら一人一人から話を聞くこととなった。といっても、始まった時間が時間なだけに、今日、一日ですべての巫女から話を聞くのは難しい。フィアナの見積もりでは少なくとも五日はかかる。


 とにかく今日の分のそれが終わり、イアンとも話をして戻ってきたらすでに夜の時間帯。


 それでもまだまだ大聖堂で見張りやら片づけやらを行っている騎士たちに比べれば、マシと言えよう。

 教皇や枢機卿らを捕らえたのだが、こちらの地下牢にまで連れてくるには人手が足りないということで、大聖堂の牢を借りることにした。そこに、騎士団の人間を幾人か見張りとして配置している。


 フィアナはなんとか戻って来られたが、これから巫女たちの話をまとめて報告書を作らねばならない。

 軽く見積もって、日が替わる前に終わらないかコースである。むしろ、徹夜かもしれない。


「本当に大聖堂は腐っていたな……」


 紅茶をずずっとすすりながら、ナシオンがしみじみと言葉にする。


「アルテール殿下のおかげで、騎士団も捜査に入れたってわけか……」


 子どもの言い訳とか、散々アルテールを馬鹿にしていたナシオンは、コロリと手のひらを返してきた。


「だからって、アルテール殿下がされたことも、褒められたものではありませんけどね」 

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