表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の仕分け人   作者: 蓮
2/4

午後4時08分

()()4()()0()8()()


時は戻って、午後四時を回ったばかり、国道を見下ろす雲の上。


小柄な男が雲の淵に立っている。

片手に双眼鏡を持ち、腕時計を確認しながら地上を見下ろしていた。

赤い車が右折するところ、道を譲ったトラックの後方から直進する黒いバイク。


「ふむ、予定通り。3、2、1」

男はきゅっと目を閉じた。ガシャンという音に肩をすくめてから、もう一度地上を見下ろした。


事故の状況を確認すると、持っていた帳面に赤いハンコを押した。

「はい、仕分け済み。さて…」


紐で括られた帳面をめくろうとした時、足下から風が吹き上がった。

すると、その一枚が帳面から外れてひらひらと舞い上がり、地上へと落ちていった。

「あちゃ、しまった」


男は慌てて首に下げた双眼鏡を掴んで、紙の落ちる行方を追った。



赤い車の事故現場は、遠巻きに人が集まってザワついていた。



当事者である僕は、申し訳ないが上空を見上げている。


事故のショックで呆然と立ち尽くしているように見えただろう。

一心に目を凝らすと、どうやら雲の上からこちらを見下ろしているのは男のようだ。

すると1枚の紙がひらりひらりと降ってきて、僕の足元に落ちた。

手に取ると何やら書いてある。


「九月五日 午後四時〇八分 国道を右折する赤い車、バイクと衝突」



紙には事故の説明が書いてあって、仕分け済みという赤いハンコが押されていた。いったいどういう事だ。

もう一度見上げると、さっきの男はもういない。



すると、僕の肩のあたりで声がした。


「返してもらいますよ」


雲の上にいた男だ。

いつのまにか僕の横にちょこんと立っていて、僕の手からその紙を抜き取った。



事故現場には、誰かが通報したパトカーと救急車が仰々しくサイレンを鳴らしながらやって来たところだ。


「では」

男は頭を下げてその紙を帳面に挟むと、地面からふわりと浮いた。


「待って」

とっさに僕は男の足首をつかんだ。


「ひゃ」

男は小さく叫んで、足をばたつかせながら、ぐんぐんと空に昇っていった。


僕は全身で風を感じながら、男の足を離さなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ