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第4話「ホカホカなひととき」


「フゥ~」

ギンジは持って来たシャンプー類をきちんと洗い、抱えると、あがりのお湯を(おけ)に入れて持った。


「さ……行きましょ」

コタローと風呂から出る時、コタローと自分の足を洗って出た。


と、長イスにリンゴが座っている。

うちわでバタバタ(あお)ぎながら

「やー暑いねー。あんな長く入っててさー、のぼせない?」 と笑っている。


「え~っ!? リ、リンゴさん、ここ、男湯ですよ!」


「うん。だから、待ってたんじゃん」


うちわでバタバタ(あお)いでいる。


「よっ、リンゴちゃん。さっぱりしたかぁ」


他の客が平気でリンゴに声をかけている。


別の客も

「外、暑いからなぁ。帰りもまた汗かいちゃうかもなぁ。でも、一回風呂入っとくと暑さが違うよ」

としゃべりかける。


「ん~そうだね! でも暑いけどさー、夏は夏で楽しーからねー」


リンゴも皆と和気あいあいだ。


ギンジは

「ま……皆さんが平気ならいいですけどね」と

さっさと着替えた。


「ギンジ! ジュース! ジュース!」


「ハイハイ……何がいいですか?」


ギンジは冷ケースの中を見た。

フルーツ牛乳、いちご牛乳、白牛乳、コーヒー牛乳。ラムネもある。どれも冷えてて美味しそうだ。


「アタシ、フルーツね」


リンゴは言うが早いかサッサとフルーツ牛乳を取って、牛乳瓶のフタを、冷ケースにぶら下がっているフタ取りピックに刺し、開けた。

ピックには先に取ったフタが何枚も刺されている。


ギンジは「嫌だなぁ、こういうの……」と言い、リンゴの分も合わせて全部取り、ゴミ箱に捨てた。


コタローはいちご牛乳を取って、イスに座り、の~んびりコクコクしている。


ギンジはコーヒー牛乳を手に、長イスに座り、中庭を眺めた。


松竹梅(しょうちくばい)は庭が自慢で、松や桜の木が植えられ、小さな池もあり、庭にあった赤い欄干(らんかん)の橋も()かり、見ていて()きない。


コーヒー牛乳を飲みながら、至福の時間である……


挿絵(By みてみん)



「ギンジ! ねえ、ラムネ飲みたい」


リンゴだ! デカイ声だ!


ギンジはイヤミったらしく大きく「フ~~ッ」とため息をついた。


「飲んだらどうです? 一体アナタはこの庭でも(なが)めながら……とかないんですか? 情緒(じょうちょ)の無い……」


ブツブツ


リンゴはさっさとラムネを持って来ると、勢い良く振りだした。


「?? 何やってるんですか。振っちゃダメなんですよ、ソレ」


リンゴはラムネのビー玉を指で突き落とし、勢い良く吹き出る泡を、大きく口を開け、自分のノドチンコに直撃させた。


シュワ~シュワ~


ギンジは「ギャ~」と叫んでいる。


挿絵(By みてみん)



一泡(ひとあわ)というか、一噴射(ひとふんしゃ)終わると、リンゴは

「やっぱコレ美味いわ」

とカラカラ笑って、イスに座った。

足をバタバタさせている。


ギンジはあきれた。

コタローは「すごいねー」とちょっと尊敬を込めてリンゴを見ている。


飲み終わると

「フ~暑いな、まだ。アイス買って!」


「まだ冷たいの食べるんですか?」


ギンジはちょっと驚いたが、アイスの冷ケースをのぞくと、やっぱり美味しそうだ。


「どれがいーかな? 小粒で食べやすそうなのにしよう」


ギンジは、一口サイズのシャーベットがキューブ型になって、いくつか入ってるものを選んだ。

コタローもそれがいいと言うので、2人分買った。


リンゴは棒に付いた大きな氷菓を2つ取り、袋を口で破って、両方かぶりついた。


ギンジは目を見張った。


(初めて現れた人類ってこんなかなぁ?)


アイスを食べ終わって、やっと満足したのか

「あ~、庭キレーだね」

とか言っている。


(興味ないだろアンタ……)


ギンジは思ったが、口では

「そろそろ帰りましょうか」と言った。


「うん! 帰ろ!」

イスから飛び降りた。


(やっぱ興味無かった!)



ギンジは番台がおばあちゃんからおじいちゃんに代わっていたので、丁寧に挨拶し「また来ますね」と言って、帰った。


リンゴが女湯から出て来た。

石けん箱を手ぬぐいでグルグル巻き、それを頭にくくりつけている。


「気でも狂ったんですか?」

ギンジが目をむくと


「えっ? だって、両手空いて楽じゃん」

と言って、平気で前を歩いて行く。


挿絵(By みてみん)



「ねーギンジ、お腹空いたね。何か買ってこー」


「えーそうですね。たこ焼きでもどうです?」


ギンジはちょうどたこ焼き屋の前へ来たので、そう言った。 


リンゴはたこ焼き屋で(すで)に注文を始めている。


「タコ焼きビッグ、36コ入り、8人前。それと、焼きそば5人前。たい焼き10個」


もちろん、全部ギンジが払う。



駄菓子屋の前へ来ると、コタローが止まった。


「花火いーなー」


「あっいいですね。帰ってやりましょうか」


ギンジはファミリー向けの花火を一つ買った。

横を見ると、大量にカゴに駄菓子を詰めているリンゴが立っている。


「それ、全部買うんですか」


「買うよ! ギンジが!」


リンゴはそう言って、もう一つ、何連にもつながっているイカのお菓子を取った。


(食欲魔人だ!)


ギンジは思ったが、まあ皆で食べるからいいかと思い、代金を払って、店を出た。


大した距離(きょり)でもないのに、アッチコッチ寄って、帰るのに結構時間がかかってしまった。


だが、家へ帰るとやはりホッとする。


「ただいまー♡」


3匹は楽しく帰ってきた。






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