第2話「にゃんこヒーロー参上!!」
ギンジはパソコンを開き、データを集めだした。
(ん~……あの皮膚、硬そうだなぁ……普通の攻撃ではダメそうだし……)
ギンジはあらゆる方法を思案し、武器を作った。
皮膚を抜け、内部までダメージを与えられる光線銃。
そして、3匹のコスチュームを作った。
ヒーロー名はリンゴの要望通り、“ワンダーアップル”。そして、ラッキーなコタローは、“ラッキーブチブチキャット”。ギンジ自身は色々開発したり、武器を生み出す、“ドクターシルバー”とした。
準備はOKだ。
後はモンスターが出て来るのを待つだけ。
そして、ついに来た! モンスターが!
リンゴは颯爽とワンダーアップルに変身。ギンジもドクターシルバーに変身。着替えにモタモタしているコタローを皆で手伝った。
「ガンバレ! ガンバレ!」
さあ、出番だ!
この日の為に作ったドクタービーグルに颯爽と乗り、出発した。ワンダーアップルはノリノリで
「いいね!このシルバーカー」と言った。
「これはドクタービーグルですよ! 皆で買い物にでも行くんですか!」とギンジはブーブー言いながらも操作し、現場に到着。
モンスターは派手にビルを攻撃し、破壊している真っ最中だ!
ワンダーアップルはいち早く飛び出した。
「コラー! お前の好きにさせないよ。このワンダーアップルがコテンパンにやっつけてやる」
テレビ中継が一斉にワンダーアップルを捉えた。
「エッ? この状況に救世主の様に現れた、このヒーローは何でしょうか? ワンダーアップルと名乗っています」
ワンダーアップルはまず、モンスターの鼻っ柱に
一発お見舞いした。
「アップルパーンチ!」
ギンジは
「あーっ! もう、打ち合わせと違いますよ……モンスターの皮膚硬いんだから、ダメージ小ですよ。光線銃どうしたんですか」 と叫んでいる。
しかし、モンスターはパンチを浴びて、よろけて倒れた。
「エ~ッ!?」
ギンジは驚いた。
「ウソ~。アップルの威力ってこんなですか?」
「さあ、かかって来い! 本番はここからダヨ~!」
ワンダーアップルはビルの上にヒョイと飛び乗り、怒りで襲い掛かるモンスターを軽くいなした。
「おっそいねーアンタ。ここじゃね、みんなのジャマだよ! ついといでー」
アップルはビルをヒョイヒョイ飛び越えながら、何とか暴れても良さそうな広場に出た。
「ん! ここならよさそーだねー」
モンスターもアップルを捕まえようと必死に手を伸ばし、掴もうとするも、全て空振り…… 地団駄を踏んで、イライラしながらアップルを猛然と追いかけた。
「ヨシ!ヨシ! アップルにしてはお手本の様な行動ですよ。見直しました」
ギンジはドクタービーグルで空を飛び付いて来た。
「お空飛べちゃうんだね♡スゴイ♡」
窓に顔をピッタンコして、ラッキーブチブチキャットは外を見ている。
モンスターは走りながら、そばにいた女の子を捕まえた。
「アッアイツ、とんでもないヤツだ」
ギンジはドクタービーグルをモンスターの頭上に止めた。
「かわいちょーだよ」
ラッキーブチブチキャットは窓を開けて
「はなちてー」と叫んだ。
その時、口から舐めていたアメ玉がコロンと落ちた。アメ玉はモンスターの目に当たり
「ギャ~~」と叫びを上げ、女の子を離した。
「キャ~」今度は女の子が叫びを上げて落ちていく。ドクタービーグルはサッと飛び、女の子をキャッチして、乗せた。
「フ~、何とか間に合った。大丈夫ですか?」
「うん……怖かった」
女の子は泣いている。
ブチキャットは
「怖かったよね。コレアゲル」
とアメ玉を渡した。
女の子は「アリガト……」と言って、アメ玉を食べた。
ギンジはビーグルを地上につけ、お母さんの所へ女の子を届けた。
ワンダーアップルは
「アンタ! 悪い子だね! お仕置きだよ」と言って、もう一発、アップルパンチを食らわした。
ドカァ~ モンスターが倒れる。衝撃で地上が揺れる。
アップルは仰向けにひっくり返ったモンスターの腹を目がけ、両足でストマックキック!
「ホラ、起きろ!」
モンスターはかなりのダメージを受けたが、怒りと共に起き上がった。
「ギャオ~」
威嚇して吼える。
そして、鋭い爪を出して襲ってくる。尻尾もムチの様に振ってビシビシと地上を叩き、土を砕いている。
「そう!そう! そう来なくっちゃ!」
アップルは右に左にモンスターをいなし、パンチやキックを出し、その度に細かくダメージを加えていった。
モンスターがヨロけだした。
「アンタもちょっとの間に年取ったねー。じゃ、
そろそろコロッといってもらおーか」
アップルは必殺技“ワンダーキック”を繰り出した。
ドッカーン!!
モンスターは完全に頭の骨を砕かれ、絶命した。
ワンダーアップルは世界を救ったのである。
「エライ! よくやった! 最初の予定と全然違うけど、結果オーライです」
ギンジは満足げだ。
テレビのアナウンサーは大騒ぎだ。
「謎のヒーロー、ワンダーアップルが世界を救いました! そばで一緒に行動し、女の子を救った空飛ぶビーグルは彼女の仲間のヒーローでしょうか?」
アナウンサーが騒ぎ立てる中、アップルはビーグルに乗り、3匹がそろった。
ブチキャットはテレビのアナウンサーに「バイバイ」した。
「アッ! こちらに手を振っています! ありがとう、ありがとう、我らがヒーロー!!」
「フ~、やっぱ気持ち良かったね~。スカッとしちゃった」
アップルはとっても満足げだ。
「ねー、おかちたべる?」
ブチキャットはアップルにプチカステラの袋を出した。
「アッ、食べる食べる」
ベリベリ袋を開けて、食べようしているアップルに、ギンジはアルコールスプレーとウェットティッシュを渡した。
「ちょっと、それ使って下さいね。あなた、モンスターに触れているんですよ……何が付いてるか分からないじゃないですか」
「神経質だねー。食べちゃえば栄養になるよ」
アップルは面倒くさそうにスプレーして、ウェットティッシュで手を拭いた。
「何言ってるんですか。1匹病気になったら他にもうつるかもです。未知のモンスターは用心するに限ります。それから、何でお菓子とかジュースとか大量に持って来てんですか。これはキャンピングカーじゃないんですよ」
ギンジは文句が止まらない。
カステラをパクパク食べ、お茶をガブガブ飲み、アップルもブチキャットも全然聞いていない。
「ギンジ、ハゲるよ。文句ばっか言ってると」
アップルはもう転がっている。
「もう、ヒーローらしくして下さいね。せめて家に帰るまでは」
ギンジは「もう、イヤだなー」と言いながら家路についた。
家に上がるとすぐヒーロースーツを脱ぎ、洗濯機へ……
元に戻ったリンゴは言った
「あー汗かいちゃった。今日は皆で銭湯行こーよ」
「アッ、良いですね。久しぶりに」
ギンジも賛成した。
「いこ♡いこ♡」
コタローも喜んだ。