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女力士への道  作者: hidekazu
女子大相撲トーナメント

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永遠のライバル・そして盟友 ⑤

稲倉映見は升席から向かい側に見える光景に・・・・。


「倉橋監督のサプライズは論外としてさくらも来ている何って・・・よりによって男と・・・・あいつ・・・」と映見は倉橋監督の相撲対決のことよりもそっちの方が気になって・・・。


「石川さくらってなかなかだねぇ・・・まぁどっかの誰かもそうだけど」と和樹は映見をからかい気味に・・・。


「はぁ~私は本当は家でゆっくりしたかったけどどうしてもって和樹が誘うから精神的に疲れ切っているこの私は自分に鞭打って来ているのよ。大会近いのに常識で云えば相撲なんか見ている場合じゃないのよ。わかっている和樹!」


「・・・・・・」和樹は何も答えずなぜか視線は映見以外に?


「何、無視ですかあぁそうですか」


「何が大会近いのに常識で云えばだよ」と後ろから聞き覚えのある声が?


「えっ・・・あっ・・・どうも」と映見


「ずいぶんリラックスしちゃってよろしーいんじゃないんでしょうか?西経の女王様!」と真奈美


「あっはぁぁ・・・・流石でしたあの相撲私が負けたのもしかたがないかと・・・・はい」



「倉橋監督初めまして、自分は甲斐和樹と云います。映見とは小中同じ相撲クラブで」

「ふぅーん濱田のところの・・・」

「濱田のところ?」

「あぁいや濱田先生のところの・・・」

「今日は自分が映見を無理やり誘ったんで本人は少し休みたかった見たいだったんですが」


「別にここに来ることをとやかく云うつもりはないしそれとあなたあんまり映見を調子に乗らすようなことはしないほうがいいわよ。あとでとんでもないしっぺ返しくらわされるから」


「いやいやちょっと待ってください監督意味がわかりません」と映見


「西経の女王様は気分屋の上に頑固で・・・」と真奈美は笑いながら


「・・・・」ムッとした表情の映見。


「さっきの理事長との相撲感動しました。映見が監督の事を崇拝している理由が分かった気がしました」と和樹


「崇拝って・・・映見あなたそんな事云っているの?」


「和樹!。私そんな事云うわけがないでしょもう・・・」


「でも崇拝されるべき存在だと思います。女子大相撲協会の対応からしたらそのようにしか見えませんけど?」


「甲斐君は相撲クラブの濱田先生どう思う?」


「どう思うと云うのは?」


「崇拝されるべき存在?」


「どうでしょうか?崇拝と云うよりも傾倒の方が適切かと思います。正直云うと相撲クラブでの活動はほどほどにまた事業でも立ち上げて表舞台で活躍するべきだと想っていますが色々理由があるようで・・・・自分は起業家としての濱田先生を見てみたいしできればその下で働いてみたい。そうであるならば崇拝するかもしれませんが?」和樹は真奈美にまるで何かを訴えるように・・・。


「そう・・・・」和樹の濱田に対する想いは嬉しくもあり悲しくしくもあり真奈美自身も複雑なのだ。


「あなた今はもう相撲をしていないの?」


「大学に入って相撲を続けてましたがやめてしまいました。ちょと先が見えてしまったと云うか・・・濱田先生にはえらく怒られてしまいした。本当は自分の気持ちが折れてしまったんですけど多分先生には見透かされていたんでしょうけど」


「・・・・」


濱田は私が相撲部の監督の話をした時には先は見えていたはず・・・別れるだろうなぁーっと。それを何とかしようとしてしようとしたのに私がそれを受け入れる気持ちの余裕がなかった。闘牛のように前しか見れなくて・・・。


「濱田先生は優れた起業家でもあると思うわ。先生に色々なことを率直に問えば答えてくれると思う。そんな方のようだから・・・」


「倉橋さんは濱田先生とは・・・」


「和樹。初対面のくせしてペラペラ喋り過ぎよ。私だって監督と話すときは緊張するんだから・・・」


「緊張?」


「甲斐君。こんな女よ映見は気おつけなさいよ。何が私と話す時は緊張よ全く。とにかく明日から大会モードに切り替えてよ映見。しかし大丈夫かね日本のアマチュア代表は全く。なんか貧乏くじ引かされたんじゃないかと思えてきたわ全く」


「誰の事云ってるんですか?さくらのこと?」


「お前のことだよ!」


「・・・・・」


映見の隣で苦笑いをする和樹。


「とにかくそう云う事だから。でもまぁ今日は楽しみなさい。あっそれと帰りの新幹線は取ってあるの?」

「まだですけど・・・」

「だったら私が取ってあげるからついでにさくらにも云っといて取っていないんだったら私が全部取って払ってあげるからって」


「でも自分は関係ないしそれに東京ですし新幹線代出してもらう理由が・・・」


「いいのよ。映見と云う羊の皮を被った猛牛にも彼氏がいたことにホッとしたから」


「監督、それはちょとどう云う意味ですか!?」と映見。それを聞いて笑いを堪える和樹。


「和樹!何がおかしいのよ!」


「えっ・・・いや牛って」


「いいわねぇ若いって・・・まぁとにかく映見。さくらに新幹線の事云っといてよ。それで私に連絡わかった」


「わかりました・・・」と非常に不服めいた声で・・・


「それじゃ」と云って場を離れて行く。



 つい映見の彼氏が同じ相撲クラブの出身と聞いて濱田の事を聞いてしまった。「起業家としての濱田先生を見てみたい」和樹の一言は真奈美にとっても同じと云うか。濱田が自分の会社を部下たちに譲り第一線を退いた原因には真奈美との別れは関係ないのだが相撲クラブで子供達を教えていることは真奈美からすると濱田が突っ走ていた起業家である彼を知っているしましてや短い間ではあるが濱田の下で一緒にある意味戦ってきた。


 そんな彼が相撲クラブ何って・・・。最初にその事を知った時は正直私と同じねぇと嬉しくも想ったが時間が経つごとに濱田がクラブをやっていることにもどかしさを感じるようになっていた。相撲クラブで再会して以降電話ぐらいはしているがなかなか直接会うことはできていなかった。あのシャネルのスーツもなかなか着る機会もなく・・・。


 真奈美は協会が用意した東方の升席に座り観戦することに、周囲の観客は椿姫と認識しているであろうが声をちょっとかけてくるぐらいであとは見て見ぬふりをしてくれている。


倉橋にとっては恥ずかしながら女子大相撲観戦は初めてなのだ。女子大相撲ファンでありながらも会場に行っての生観戦にはどこか躊躇するところがあったのだ。もし紗理奈さんから関係者の顔合わせという名目の誘いがなければここへ来ることは生涯なかったかもしれない。


 アマチュアの大会では何回かこのような大きな会場には来たことがあるがやはりそこは女子大相撲。観客数も違えば雰囲気も全く違う。華やかさと云うか・・・大相撲より女性の観戦者が多いのはある種特徴的なのかもしれない。


 午後からはメインの幕内トーナメント。一発勝負のトーナメント戦は次の大会への試金石になるとも云えなくもないが両横綱は本気の勝負はしないと云うのが普通に考えればそうなる。何もここで結果を出すことはないし本番は次の世界混合団体戦なのだから。


自分の立場で女子大相撲の力士達をどうのこうの云うつもりはないがそれでも両横綱は見ておきたいと云うのは本音なのだ。葉月山引退後の女子大相撲においての両横綱の存在は重要なのだが世間的にはどうしても軽く見られてしまっているのと何か絶対的な強さに欠けると・・・。


 妙義山や葉月山が偉大過ぎたと云うのと創成期においてはライバルとなる力士も少ない。それは海外に行って相撲をしてもそれは同じ。今はこれだけ世界的にも盛り上がっていればそれだけライバルも多いそれは日本も同じでレベルも上がっているし女子相撲人口は10年前から考えると雲泥の差。そんななかで相撲をしていくのは男子の大相撲並みかそれ以上に厳しい世界。今後場所数も増え世界ツアーなども組まれるとなると女性力士達は注目を浴びるだろうが体力的・精神的にはどうなのか?


女子相撲創成期から選手として活躍しその後アマチュア指導者としてここまでやってきた。女子相撲に携わる者達は男子の大相撲のように認められたいと色々云われながらもやってきた。それは真奈美とて同じ事なのだが真奈美でさえここまでになるとは思わなかった。


 女子大相撲は本当のプロフェッショナルな世界になってしまったのだ。幾多のアマチュア女子相撲選手を輩出している真奈美にとっては他の指導者とは全く違う想いがあるのだ。


「一緒に観戦してよろしいですか?」と後ろから声を掛けられる。真奈美は後ろを振り向くと


「長谷川さん・・・」


 女子大相撲技術指導部 部長 長谷川璃子(元大関 藤の花)が声を掛けてきたのだ。


「勿論構いませんよ」と云ったものの内心は「なんで!」と云う表情を隠すのに精いっぱいなのだ。


「少し倉橋監督と話がしてみたくて・・・」



 午後改めて「寄せ太鼓」の合図とともに幕内トーナメントが始まる。館内がいっきにざわつきはじめる。真奈美にとってもアマチュア指導者としてどうしてもそのように見てしまうがそれでも心躍るものはある。そんな真奈美とは対照的に隣の璃子は厳しい表情で土俵を見つめている。



  「これより女子大相撲幕内トーナメントを開催いたします」と館内放送で幕を開ける。









 


 


 



 



 

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