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女力士への道  作者: hidekazu
似た者同士・・・

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アマチュア代表枠 ③

「私・・・」


 映見がやっと重い口を開こうとしていた。


「あなたが想っていることを云って、口に出して云ってみて」


「私、相撲が好きなんです。本当に好きなんです。勝負がどうだとかはどうでもいいんです。でも私が勝てば勝つほど何か私の想っていることとは違うことが・・・私のまず目指す目標は医師になることなんです。でもそれと同じくらい相撲も頑張りたい。でもアマチュアでトップの選手が女子大相撲に行かないのは罪ですか?。周りは私が相撲のことで何か云えばどうせプロに行かないんだから関係ないとか私がプロに行かない見たいなこと云うと女子大相撲を本当は馬鹿にしてるとかそんなことないのに世界大会でメダル取れなかったら天罰だとか口ほどにもない奴だってなんでそんな云われ方されるんですか?だからもういいと思った。私の目標は医師になることなんだから相撲捨てても構わないって・・・」


「いいわよ。もっと思ってること吐き出して」


「でも、主将から石川さくらが出稽古に来るから絶対に来いと云われて・・・最後まで迷ったけど私を目標にしてくれているさくらを裏切るわけにはいかないって・・・でも私のおもっている相撲なんかできるわけなく。さくらには失望させてしまったし監督の怒りをかってしまった」と鳴き声で・・・。


 そしてかつての相撲クラブの仲間に誘われ古巣で相撲の稽古まがいをしてこれぐらいでちょうどいいとおもっていたところに突然現れた倉橋監督。そして相撲でコテンパンにやられてしまったこと・・・。


 「あの日の夜全く眠れなかった。私は監督にあそこまでさせてしまったことに申し訳なくて・・・だからと云って謝罪して終わりにしようとは思わなかった。何故だがわからないけど・・・そのあとは海藤さんも知っての通りです」と云うと映見は泣くのを堪えるようにしながらも海藤の顔を真正面に見据え。


「稲倉が急に稽古に出てくるようになったのはそ云う事か・・・・監督らしいな」と云うと瑞希もつい涙声に・・・。


「私はもう余計なことを考えるのはやめようと・・・・相撲をしてなかった分、勉強に集中できるかと思ったら全くダメで・・・単位落としそうになって」と映見は笑いながら


「そうしたら強制的に稽古は出れなくなるからその方が良かったんじゃない」と瑞希

「そこまで考えが及びませんでした」と映見は苦笑しながら


「高大校の試合に私を出してくれるって云われた時に絶対に勝たなきゃ勝たなきゃいけないって・・・自分のためじゃなくて監督のために・・・。でも負けてしまった。悔しかった。そんなときに青葉の神崎さんが辞退すると聞いて・・・実際に今、椎名さんが来られているってことはそ云う事ですよね?だから何としても出たいんです。さくらと一緒にできると云う事もあるけど本当は監督のために出たいんです。監督はけして勝つことを強要しない。相撲と同じぐらい学業ができなくては稽古すらさせてもらえない。監督からしたら今の私の状態で世界大会代表になってもそれなりの成績も上げられないと云うのが見えているかもしれない。たとえそうだとしても・・・・もう一度チャンスを欲しい。監督に認めてもらいたいんです」


「監督のため・・・か。私も含めて部員全員・OGの方も無意識に監督のためにって意識があるのよねぇ。別に監督が極端に喜んでくれるわけでもないのに・・・監督のために相撲も勉学もやっているわけでもないのに・・・・。あの時、監督に声を掛けて頂けなかったら私は今頃どうなってんいたんだろう?」


海藤はあの時のことを思い出しながら


「監督はあくまでも本人の自主性を尊重し細かいことは云わない。そのうえ文武両道が絶対だから・・・部員もそれを承知で入るわけだから。うちの相撲部って相撲の合間に勉強するんじゃなくて勉強の合間に相撲やってます見たいな他の大学からすると変わってるよね。だから本当に相撲が好きじゃないとこの部には居られないだからこそ自主性を尊重する稽古が成り立ってかつ全国トップレベルの成績を維持している。そこまで考えているとしたら監督の凄さを改めて感じる本当に・・・」


「さぼろうと思えばさぼれますけど・・・・」と映見が云った瞬間。

「( ゜Д゜)ハァ?・・・映見が云うか?」

「えっ・・・あっ・・えっ・・・」

「まっいいわ・・・って良い訳ないでしょ映見」と云いながら顔は笑っていた。

「すいません・・・」


相撲場から外を見るガラスの表面にはうっすらと雪の結晶が付着していた。


「私、もっと自分から瑞希さんと話すべきでした。正直馬鹿にしてました。主将に勝てないからって今度はマネージャーなんってって・・・私監督から誘われた何って知らなかったし・・・・」


「いいのよ。選手として入部しなかったことはある意味負け犬なんだから・・・」

「私負け犬何って・・・・」


「私も正直に云うとあなたが好きではなかった。医学部で頭がよくておまけに相撲の世界大会で常にトップクラスの成績。なんか私がアドバイスしても何か小馬鹿にされていたような・・・一種の被害妄想ねぇ・・・」


「・・・・」


「さっき監督に云われたのよ。「もし、代表の打診を受けたとして・・・・稲倉のメンタルカウンセリングできるか?」って」


「・・・・」


「監督は私を認めて云ってきたのにできませんなんって絶対に云えないって」


「瑞希さん・・・」


「今の映見の弱点は気持ちに余裕がないこと。あなたが高大校の試合以降変わったのかもしれないけど全然ダメ。代表枠のことにこんなに感情的になっていてはもし選ばれたしてもそこから気持ちばかり先走ってちょっとしたことで調子崩したり怪我をするような無茶なことはしてしまいかねない。代表には絶対させる。監督が私に云って来たんだから腹は決めているはず。だから映見。あなたも覚悟を決めて私のメンタルトレーニングを受けてくれる。お互い信頼しあえないと効果は全くない」


「瑞希さん・・・」


「本音はもう手遅れだと思う。ホントは半年・一年かけてやる話だからねぇ。もう二か月もない。でもそこはあなたも医師を目指しているのなら自分で自分をコントロールできなければ患者さんなんか見れない。そうよねぇ」


「はい。わかりました。私も医者の卵のはしくれとして・・・」


「それと監督の事なんだけど・・・」

「監督?」


「最近、何かに迷っている感じがするの?」

「相撲の事?・・・・私の事ですか?」


「それもあるかも知れないけど何か違うような気がする。最近、監督ぼーっとしていることがあったりして・・・」

「そんなこと全然想ったことないし私なんか相撲の稽古でボコボコにされたあげくお腹の上に足乗っけられて・・・ほとんど鬼ですよ鬼!」

「それはあなたが悪いんでしょ?監督に体罰と間違えられることさせないでよ全く」

「・・・・すいません」


 海藤は、倉橋の心の迷いを敏感に感じ取っていたのだ。その理由はわからないが・・・。


「監督ってプライベートの事一切云わないし部員も敢えて聞かないし気にはしたことがなかったんだけどなんか気になってねぇ・・・」

「プライベートの事?」


「監督、離婚した後に西経の監督になったじゃない」

「えっ・・・監督って結婚されたてたんですか?」

「何今更そんな事云ってるのよ。映見って実は性格悪い?」

「本当に知らないんですよ今初めて聞いて・・・」

「まぁ―いいけど・・・監督、今の生き方って本当に幸せなのかなぁーって」

「幸せ・・・」


「監督って英語以外の外国語もペラペラだしITというかコンピューター関連のスキルも凄いし歴史とか世界情勢とか何でも知ってるじゃないそんな人がなんで女子相撲の監督何かしてるのかって・・・別に相撲の監督と云う職業を馬鹿にしているわけではなく持ったなくない・・・なんか才能の無駄遣いって云うか。それに再婚しないのも不思議だなぁーって。」


「再婚?」


「映見、男ともう寝た?」

「えっ・・・あっ寝てはないですけど・・・セックスは・・・」

「うん?。寝てはないけどセックスはした?。えっ・・・どいう事?」

「相撲して・・・なんかそのまま・・・」


「相撲して?なんかそのまま?映見何云っているだがさっぱりわからないけど・・・・あっそうか相撲クラブのそのOBとセックスしたってことか相撲場でやったの?」


「家の裏山に開けたところがあってそこでなんかそんな・・・ってそんな話全然関係ないじゃないですか!なんでセックスの話になるんですか!瑞希さん酷すぎます!」

「映見ってやることはやるんだねぇ。ちょっと意外だけど・・・・」とちょっと吹いてしまった。

「今笑いましたよね!笑いましたよね!」

「ごめんごめんそんなつもりなかったんだけど映見があまりにも真面な顔で喋るから・・・」


「じゃー瑞希さんどうなんですか!!」


「そんなキレなくても・・・私は高校の時の先輩幸いにも違う高校だけど本当に好きだったし結婚しても良いと思った。・・・でもなんかフラれてしまった。私がしつこかったのかもしれないけど・・・」


 お互い何でこんな話をしているのか?


「監督、今の生き方に後悔していないのかなーって、もしかして後悔してるんじゃないかって・・・ちよっと思ったりしてるのよ。だって再婚もしないで20年近く私たち含め学生達の指導に費やしたんだよ自分の人生。ちよっと哀しいかなって」


「瑞希さん・・・」


「なんか話がとんでもない方向に行っちゃったね。とにかく映見が監督のために代表になって認められる成績をと云う趣旨はわかったそれでいこう。私なりに監督にもお願いして映見がベストの状態に持っていけるように・・・・そうか監督は鬼か・・・って云うか監督に映見がボコボコにされたところ見たかったなぁ・・・・なんかスカッとすると同時に凄い恐怖を感じるけど」


「瑞希さん。恐怖はわかるけどスカッとってどう云う事?」


その時、海藤のスマホが鳴った。


「あっ―ごめんごめん。悪いから行って良いから私と映見は二人で帰るから・・・瞳?。えっ乗ってないの?とっくに帰っているのに・・・わかった。とにかく二台とも出しちゃって映見まだ廻し締めたまんまんだから・・・うん。じゃ」


「主将まだ?」


「瞳もよくわからないから・・・物事冷静沈着に判断するくせして手は早いんだよね。さっき瞳

に引っ叩かれてたけど・・・」

「前も同じようなことあって・・・」

「・・・・・」

「張り手の練習だって・・・・」

「瞳らしい言い分で・・・ってそんな事云ってる場合じゃないって・・・あなたがくだらないこと云うからこんな時間になって…帰れなくなったらどうするのよ」

「私のせいですか!?」


---------------------------------------


「大丈夫かねぇうちの相撲部は?」と倉橋

「あんなもんです」と吉瀬瞳


二人は壁に背をつけながら・・・・


「映見の代表の件、椎名さんにお願いするわ」

「そうですか・・・安心しました」


「それと・・・」と真奈美は一拍置いて


「濱田に再婚してくださいって云ってみるわ」

「えっ・・・」


「なんかもう・・・一人で生きていくことに耐えられなくて・・・」

「監督・・・」


「断られたら・・・もう・・・死ぬ・・・」

「・・・・・」

「私の精神年齢は高校生のままなのよ・・・・」

「父をそこまで愛しているんですね」

「50にもなる女が気持ち悪いでしょ」と笑いながら・・・

「父は真奈美さんの事待っていると思います」


 真奈美は何云わず歩き出す。静まり返った廊下に倉橋の足音が冷たいコンクリートに反響しながら・・・それを見る。瞳


(真奈美さん。おかあさんと呼んでもいいですか?血も何も繋がっていないけど・・・)







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