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女力士への道  作者: hidekazu
似た者同士・・・

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アマチュア代表枠 ①


 映見は医大生としてなんとか基礎医学・解剖実習。そして実習レポートと云う難題を正直危うかったがなんとかクリアーでき進級の目途がたった。そして三年・四年と臨床医学がスタートする。


そして今、映見が気になってしょうがないのが


さくらから聞いたあの話の真相。


「神崎さん怪我しているから辞退するって・・・」映見の頭から離れない。



 映見は大学の講義が終わると相撲場の更衣室で着替え大学の相撲場に入るとすでに主将が準備運動に入っていた。


「おはよう映見」と主将の吉瀬瞳はちょっと嬉しそうな表情で・・・。

「主将おはようございます」と映見。


 二人は四股・摺足・鉄砲と入念に体を仕上げていく。他の部員も云われなくとも相撲場に入り体仕上げていく。


「今年は五月からシーズンインだからちょっと時間的余裕があるから映見調子戻せるんじゃない」

「主将。世界大会のこと何か聞いてます?」

「何かって?」

「ちょと気になることがあって・・・代表監督が来た高大校とか・・・」と映見は意図的に聞きたいことをずらすように・・・。


「本来なら映見だと思うけど・・・今回はさくらと青葉の神崎さんでしょ?それが真っ当な選択だと思う。映見には悪いけど・・・映見だってそう思ってるでしょ」

「もし、私が選ばれるってことあると思います?」


「プロとの混合チームなんって女子相撲やっているアマチュアなら憧れる。映見が本調子ならすんなり決まっていたのかもしれないけど・・・多分さくらが映見の後継と踏んでいるんだと思う。映見が選ばれるとしたら何かしらのアクシデントみたいなことがないと無理だと思う」


「アクシデント?」


「内定してた選手が怪我とか病気とかになれば別だけど・・・でも映見はそれでも無理でしょ?」

「えっ・・・何でですか?」

「監督は万が一監督の方から打診があっても断ると思う。それに映見。もう一回一から出直すつもりでやるんだから中途半端に代表になるのは・・・ちょっと云い方きついけどそう覚悟決めたんでしょ?

「そうですけど・・・」


「私、映見がもう一度一から相撲に向き合う姿勢を見せてくれたこと正直嬉しかった。世界大会以降の映見を見てたらもう相撲やめるんじゃないかって・・・・」とちよっと瞳の顔が曇る。


「代表の打診があっても監督がダメだと云ったらダメなんですか?」と真剣な表情で主将に問う映見。


「映見。あなたは一から相撲やり直すって云ったんだから代表云々なんって考えるのはちよっと違うんじゃない。それに主将の立場で云わせてもらえば部の秩序から云ったら退部させられてもおかしくなかったのよ。そこらへんの自覚が足りないんじゃいないの・・・」


「・・・・」映見は黙るしかなかった。


「映見。あなた何か知ってるの?あなたがここまで代表のことに拘るのはおかしいでしょ?。そもそも自分で世界代表になる資格すらないって云っていたよねどうしちゃったのよ?」


「さくらは間違いなく代表になると思う。高校生だけど・・・もしそうならさくらと出てみたい。補欠でもいいから出たいのよ!」それは映見の本心なのだ。


「出れるか出れないかは協会が決めることだし映見がいくら出たいと云ったところで出れるもんじゃないでしょ?それと最近気になってるんだけどなんか映見、感情的になり過ぎてない?。監督の云い方もあれかもしれないけどなんかそんな気がして・・・」


「もういい。今までの話はなかったことにしてください」と云うと映見は再度四股を踏みなおし監督が来るのを待つ。


 監督が相撲場に入りいつも通りの稽古が始まる。部員達は申し合い・三番稽古・ぶつかり稽古と主将の指示で進んでいく。倉橋は特段指示をするわけではなく稽古の流れを見ている。映見も高大校で負けたショックでまた来なくなるのではと内心思ったがそれは杞憂な心配だったのかもしれない。ただ若干映見に対しては不安なところもあるのだが・・・。倉橋のスマホが鳴る。相手は正門の守衛所からだった。


「倉橋監督。正門の方に椎名さんって方がお越しですが?」

「わかりました。今、部員を迎えに行かせるので」

「お願いします」


 倉橋はマネージャの海藤を呼んだ


「正門に世界大会の代表監督である椎名さんが来てる。悪いんだが迎えに行ってくれそして来賓用の応接室で待ってもらうようにそれとこの中にモンブランが入っているから紅茶と一緒に出すようにそれで部屋で待つように云ってくれ大事なお客さんだから粗相のないように・・・それともし相撲場に行きたいと云われても監督の許可がないと入室はできないむねも云うようにそれじゃ頼む」


「わかりました」と云うと海藤は相撲場を出ていく。


 その様子を何気なく見ていた主将の瞳。


(代表監督って聞こえたような・・・・)


「主将!何ぼさっとしているちゃんと稽古に集中しろ。らしくないぞ」と激を飛ばす倉橋。

「すいません!」


映見は別に気にしている様子もなく三番勝負の相手をしている。気合が入り過ぎているぐらいに・・・。


 瞳がふと座敷上がりを見た時に監督の姿がないことに気づく。その隙と云うわけではないが瞳はマネージャー海藤のもとへ。


西経女子相撲部マネージャー 海藤瑞希 三年生


 海藤は吉瀬の好敵手として付属高校からの同級生。日本代表選考会なとでも常に好勝負を演じるも瞳に勝つことは一度もなかった。大学進学後本来なら女子相撲部に入部してと云うところだがそこには常に吉瀬と云う壁が・・・。大学では人間科学部でスポーツ生理学を学んでいる。


 相撲はもう区切りをつけてと考えていた。吉瀬には相撲に区切りをつけるむねを大学進学前に伝えると瞳が珍しく感情的になったのだ。


「なんで、なんで大学で相撲を続けないのおかしいよ!」

「御免・・・。大学で相撲を続けていくイメージが湧かなくて・・・それに・・・」

「それにって・・・それにって何!」

「御免・・・・」


 何となく相撲から遠ざかり吉瀬との距離も広がっていった。ライバルであったのかも知れないがプライベートではそんなに親しいとも云えなかったし・・・。相撲も・・・・。


 大学入学前のそんな中途半端な気持ちの中で海藤は倉橋と偶然構内ですれ違うことに・・・。


 廊下で海藤は前からくる倉橋を認識すると軽く会釈し通り過ぎようとした時倉橋の方から声を掛けてきた。


「海藤瑞希」

「えっ・・えっはい」一瞬自分の名前を呼ばれたことに戸惑ってしまった。

「大学に上がれたのか?」

「あっ・・・はい。なんとか」

「相撲はどうするんだ」

「相撲ですか・・・」


 高校の時に倉橋監督とは何回か指導を受けてぐらいでそんなに面識があるわけじゃない。それに高校でやっていたからと云ってみんなそのまま大学の相撲部に入部するわけではない。


「相撲はここで区切りをつけようかと思ってまして」

「そう。大学は何の学部?」

「人間科学部でスポーツ心理学を」

「そう。大変だろうが勉学に勤しんで・・・それじゃ」と云うと倉橋は背を向けたまま歩いていく。


「あの」と瑞希


その声に倉橋が振り向く。


「一つ聞いていいですか?」

「何かしら?」


「私が吉瀬に常に負けてしまっていたのは何がダメだっんでしょうか?」


倉橋は少し笑いながら


「しいて云えば運がなかった吉瀬と云う選手と同世代だったことそれとあなたがそれに輪をかけて強くしてしまった。そんなところかな・・・あなたと吉瀬と格段に実力が違うわけではないけど吉瀬の方が頭一つ上だった・・・それだけのことだと思う」


「私が吉瀬を強くしてしまったとは・・・」


「好敵手がいるほど強くなれる。あなただって常に吉瀬と試合も稽古もしてきたわけだし、ただ吉瀬の方が僅かに才能も努力も上だったそれだけの話よ」

「わかりました。ありがとうございます」と海藤は軽く会釈し立ち去らとすると・・・


「海藤」

「はい」


「相撲に区切りをつけるのもあなたの考えだから私が云うのもなんだが選手だけが相撲じゃないと思うが」

「えっ・・・」

「スポーツ心理学を学ぶのであれば選手を外から見ることが大事じゃないか?」

「外から・・・」


「選手を含め部全体を裏から支える。端的に云えばマネージメント的な役割もましてや海藤は選手として活躍してきたのだからより深く選手達の心理も掴むことができるはずだ。違う視点から相撲に携わるのもけして無駄ではないと思う。率直に云うとマネージャが欲しいってことなんたが・・・監督自らマネージャの勧誘みたいなことをするのもどうなんだが」と苦笑しながら


「倉橋監督・・・」


「まぁーもし少しでもその気があったら相撲部の方に来て、それじゃ」


     大学入学直後自ら女子相撲部に出向きマネージャーに志願をし入部。


 マネージャの形として相撲に係わるのは海藤にとってはいささか不満ではあった。吉瀬と選手として切磋琢磨していた自分からすると何か格落ちと云う云い方は適切ではないがそんな気持ちも・・・。ただ吉瀬にとっては海藤が選手ではないがまたいっしょに相撲に係わってくれたことに自分の事のように歓迎してくれた。そこからお互いとの距離は高校時代より詰まり相撲の事・プライベートの事など相談できる仲に偶には対立することもあるが・・・。




 

海藤、さっき代表監督がどうのって?」


「元横綱の葉月山さんです。倉橋監督と会う約束で来客用の応接室に」


「何か聞いた葉月山さんに?」


「明星からこっちに着たって。主将が云っていたように石川さくらが代表になったんじゃないんですか?それで偶々西経に・・・もしくは稲倉を代表にとか?」


「それはないと思う。もしそうだとしても監督がうんとは云わないと思う」


「さっき稲倉と揉めてたよね何か?」


「急に代表候補の事云い出して・・・」


「それって自分が代表になりたいってこと?」


「私は映見が代表になることはあまりいいことではないと思う」


「私も同感。稲倉の実力は認めるけど・・・私は選手ではないから云うべきではないけど私が主将だったら強制退部させてる。確かに今の稲倉は気持ちを入れ替えて一からやり直すって云ったらしいけどだったら代表は自ら辞退するべきだと思うわ。それをぬけぬけと代表になれればなりたい何ってよく言えると思うわ。自分の反省の意味も込めてここは辞退するのがすじだと思う。ちょっと前の部の雰囲気を考えるとと今は表面上平静を保ってるように見えるけど何か稲倉だけはやっぱり特別扱いされているように見える。もちろん監督が映見だけを特別扱いしているわけではないけど・・・稲倉は実力的には別格なんだからと云えばそれまでだけどねぇ」


「ずいぶん偉そうに云うんですねぇ海藤さん」


二人ともすぐ近くに映見がいることに気づかなかった。


「盗み聞き・・・」と海藤

「選手でも監督でもないくせに・・・」と映見は鼻で笑うような素振りを見せながら

「あなたからしたらそのようにしか見えないんでしょうね。この負け犬が見たいな」

「瑞希!」と瞳。

「映見。海道に謝って」

「なんで」

「なんで?当たり前でしょそんなのあなたは今、そんな人を批判なんかできる立場なのもう少し自覚してよ女子相撲部はあなた一人で部が回ってるわけじゃないのよ!」

「私がいなかったら・・・」と映見。


その言葉を聞いていきなり映見の頬にビンタを飛ばした。


「何調子に乗ってるのよ!」と瞳は怒鳴り散らしてしまった。


しばらく沈黙が続いていると相撲場に倉橋が戻ってきた。


「何やってる!」と三人に向かって大声で・・・。


倉橋は何か三人の不穏な空気感を感じていた。時刻は午後8時ちょい前。もうじき稽古が終わる




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