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女力士への道  作者: hidekazu
中京圏高大校親善試合

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中京圏高大校親善試合 当日 ①

 中京圏高大校親善試合は中京三県の大学・高校の女子相撲部が合同で試合をおこない女子相撲の認知度のアップと相撲自体のレベルアップを目的に学生が中心になっておこなっているいるもの全国的にもこの地域は女子相撲が盛んで女子相撲の全国大会及び準じたレベルのものがおこなわれている。そのなかでこの親善試合はローカルな大会ではあるがレベルは高い。そして今回、初めて女子相撲の女王である西経大学が初参戦することはこの大会の重みを増していた。


高大校の特徴としてルールは五人制の勝ち抜き方式。負傷交代を除き5名の選手のポジションチェンジが認められないため、先鋒の負担が特に大きい。先鋒が初戦から順に相手校の5名全てを倒し続けていく。先鋒の負担が特に大きいので大将クラスを先鋒にもっていくと云うてもあるがそこは戦術的なものも大きく勝敗に左右する。


 そして、今回はあくまでもプライベートとしているが元女性横綱の葉月山が来場している事。翌日、理事会で二か月後におこなわれる世界大会の代表監督に就任と云うのが噂されている。その世界大会でのアマチュア枠一名に石川さくらがジュニアであるが有力視されているのだ。次期監督としてはこの目で見たいと云う思惑もあるのだろう。


 会場は神宮の一般財団法人である伊勢神宮崇敬会が運営する神宮会館にある神宮相撲場。お伊勢場所とも呼ばれる神宮奉納大相撲が開催される相撲場である。


 季刊雑誌【女子相撲】の取材記者中島京子もすでに現場入り取材をしていた。そのなかでどうしても話を聞きたかった倉橋真奈美と話すことができた。


「一年ぶりぐらいかな直に会うのは」と京子

「そうねぇ・・・。この前は悪かったわねあなたから取材の依頼があったのに断ってしまって」

「編集長には色々云われてしまったけど貴女が取材を断る何ってなかったから・・・まぁそれなり事情があったのでしょうから理由は聞かない。でも埋め合わせはしてほしいわ」と笑いながら

「わかった。明日どう?貴女は知ってると思うけど東京で協会の理事会があるから終わってからでも会わない?それとも今日は伊勢で一泊でもするの?」

「志摩のホテルで一泊したいところだけどそんな費用出してくれるはずもなくそれとも真奈美と一緒に一泊してもらってもいいけどもちろんあなた持ちで」

「そうしたいところだけど明日東京に行かなければねぇ」

「真奈美。明日そんな余裕あるの?本当は・・・」

「もう既定路線なんだから今更異議を云ったところで変わらないし葉月山が代表監督として指揮をとることは興行的にもいいんじゃないの」

「正直云うと真奈美が取材断った理由は代表監督のことじゃないかと・・・」

「そんなことじゃないのよ色々選手のこととかプライベートで悩むことが多くてねぇ」

「稲倉の補欠ってその中に・・・」

「横綱を補欠にしなきゃならないってことはそ云うことよ」

「稲倉は代表枠には厳しいって云うのがもっぱらだけど噂では青葉の神崎が怪我をしていて辞退するかもって云う情報もあるけど・・・」

「さぁ」

「今日、葉月山が来たのは石川さくらを見たいと云うのは表向きで実は稲倉を見に来たんじゃない?」

「稲倉は出さない」ときっぱりと・・・。

「まぁ試合何ってどう転ぶかわからないし・・・」

「とにかく明日夜の時間空けておきなさいよ京子」

「わかった」

 

 久しぶりに会った真奈美は別に落ち込んでいたわけではなくいたって普通だった。代表監督問題ではないと云っていたがそれも本当だろう。稲倉と云うアマチュア女子を補欠にしなきゃならない事情はわからないが相撲場脇で四股踏んでいる稲倉が調子を崩しているとは思えなかった。プライベート?。稲倉が監督になった時に取材で伺ったときに離婚したのをきっかけに監督になったと・・・それ以降彼女に浮いた話がなかった。(再婚でも・・・・)


 そんなことを考えながら会場を散策する京子。いつもの高大校では考えられないぐらいの人。会場は三百人ほどしか席はなく通常なら満席になることなんかないのだが・・・。そのため整理券を急遽配布することになるほどの盛況ぶり。


 石川さくらと稲倉映見との対決を楽しみにしていた人がほとんどだろうが今のままだとどうもそれも期待薄・・・。しかしプライベートとはいえ元横綱葉月山が来場していることは女子大相撲ファンからするとこんなに身近に見るチャンスはなく熱心なファンからするとそれだけでも十分なのだ


 試合は午前10時からスタート。試合は前回優勝・準優勝校は二回戦からそしてお昼を挟んで午後決勝と云う流れ。


 試合は下馬評通り西経大学が初戦からの出場になったもの危なげなく勝ち上がり明星高校も石川さくらと云う新星の活躍で勝ち上がり決勝へ。そしてここで一つのサプライズが西経の大野が足首を負傷した云う事で補欠登録の稲倉映見が急遽出場と云う事になったのだ。


 今日集まったファンは石川さくらと稲倉映見の対戦を見たかったのだからこれで現実味が増す。ただ石川さくらは初戦からすると6番試合をおこなってきたそのうち二番は大学生相手に三分近くの攻防であったことは体力的にどうなのかと云う不安もあるがにモチベーションは充実していると思われる。対して稲倉映見は体力的には問題がないとしてもモチベーション的にはどうなのか?


そして決勝のオーダー表は石川・稲倉ともに大将で登録。両校の試合経過から見ていくと当然最後は大将同士の対決になるのだがその大将が何番やって最後の勝負に上がってくるのか?特に石川さくらは稲倉との対戦までに初戦から数えると計10番近くは取ることになるのは必至。それを考えると圧倒的に稲倉が有利なのだがどちらかと云うとスロースターターの稲倉にとってはそこが一つ不安要素である。

 

決勝は午後2時から。少し時間があるので内宮で何か食事でも考えていると後ろから声が・・・。


「京子さん」と呼ばれ後ろ振り向くと小走りで走ってくる女性が・・・。女子大相撲協会中部ブロックの広報である新崎一花だった。

「よかった。ほんとは試合開始前に会いたかったですが」と息を切らせながら

「先日の明星高校での取材の協力ありがとうございました。色々ありましたが取材としては充実したものになりましたし感謝してます」

「枇杷の島関のことですが・・・」

「私としては記事にする気はありませんし記事にして波紋が広がるのも嫌ですし別に隠ぺいとかではなくそれに石川さくらが変に気にしてしまっては彼女も可哀そうですし」

「あの後朋美・・・じゃなかった島尾先生のところに改めて二人で謝罪に行きまして島尾先生には激昂されまして」

「石川さくらは?」

「至って冷静に・・・それに対応が・・・島尾先生とは大違いで・・・いゃこのことは内緒で」

「そう。石川さくらにインタビューさせてもらって思ったわ。それに比べると島尾先生はヤンキー女子が教師になりましたって感じで」

「京子さん上手い事云いますねぇ」

「って新崎が云ってましたって今度会ったら云っとくわ」

「いやいや勘弁してくださいよ。ホントに怒らせると収拾つかないんですから朋美は・・・」

「でもそ云う先生も好きよ。生徒のために親身にやってくれそうで・・・じゃまた会う機会が会ったら」と別れようとした時、新崎から意外な言葉が


「椎名葉月が中島さんを食事に誘いたいと・・・どうですか?」

「椎名さんが?」


意外だった。元横綱葉月山が私と食事をしたいと云うのは、雑誌の取材で何回かは会っているので面識がないわけではないが私はどちらかと云うとアマチュア相撲の方に主眼を置いているので女子大相撲の方には・・・。


「椎名さんだって遊びで来ているわけでもないでしょうしそれに私と食事しても・・・」

「椎名は中島さんと少し話がされたいそうなんです。多分アマチュア相撲の選手について」


「それは構わないどころか私としては感激ですけど時期的に取材記者の私と食事するのは云いたくないですが明日の理事会のことも・・・私だったらそのこと聞きますよ。私としてはちよっとと云う想いもありますし・・・」


「椎名はそのことも承知して中島さんを誘えと云う事だと思います。多分、東京では中島さんとは会いにくいでしょうし・・・」

「わかりました。そこまで云われるのなら喜んで」

「ありがとうございます」

「それでどちらへ?」

「神宮会館の方に部屋を取っておりますので椎名は今日はこちらに泊まられた後東京に帰るそうなので」

「わかりました」

「それじゃご案内致します」と云って新崎は歩き出すと京子も一緒に


 神宮会館は内宮まで徒歩約5分、外宮までバス約10分の好位置にあり神宮に参拝される方々の『参宮の宿』として親しまれている。


「聞くの忘れとけど枇杷の島関のことですが?」

「今回は口頭での厳重注意としました。私としては正直不満ですが石川さくらの方から厳重な処分は望まないと直接云われてしまいまして今回だけは彼女の意志を尊重しようと・・・」

「そうですかそれがベストな選択でしょ多分」

「石川さくらはまだ中学生みたいな感じなんだけど大人と云うかなんかこっちが気恥ずかしくなるぐらいに」と苦笑いをしながら喋る新崎。


 二人は、バラ園の脇を抜けていく見ごろはあと3ヶ月ぐらいGWぐらいらしい。二人はバラ園側の裏口からロービーを抜け本館二階の和室へ。


 新崎が部屋のチャイムを鳴らすとなかから返事がドアを開け京子を先に入れると新崎も一緒に入っていく。ふすまを開けると立ち姿の元横綱葉月山がグリーン色でチェック柄のダブル ジャケットにベージュのセミフレアパンツ。力士姿でしか会ったことはなかったので正直別人の様相で誰もよっぽど詳しいファン以外元横綱葉月山とは思わないだろう。


「すいません取材もあるでしょうにお呼びたてしてしまって」と軽く会釈する葉月。

「いいえ、こちらこそ元横綱の葉月山さんと食事と云うのは光栄です」と京子


 椎名葉月が京子と食事をしたい意味はなんとなく察しはつくが・・・・。


「でも私なんかと食事しても」

「貴女にしか聞けない事を聞きたかっので」

「私にしか聞けないこと?」


すでに座卓には会席料理が並べられていた。


「新崎さん悪いのだけどちょっと外してくれないかな・・・決勝までには相撲場に行くから」と葉月

「わかりました」と新崎は部屋を出て行った。


「さぁ食べましょうか」と葉月はジャケットを脱ぎ座椅子に京子も同じく座る。


(私と食事して何を聞きたいの本当のところは・・・・)

 


 

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