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女力士への道  作者: hidekazu
中京圏高大校親善試合

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前哨戦③

-続いて中京地域のニュース


倉橋は先週のNY及び日本の金融市場のチャートをパソコンで確認しながらradikoでニュースを聞いていた。


-私立伊木力高校での監督による体罰の問題で高校は陸上部監督兼女性教員を懲戒免職 としたと発表しました。その中で体罰の問題及び同高校の男子生徒に対してわいせつ行為をしたことでこの決定に至ったということです。なお県教委は教諭の名前などを明らかにしないことについて、被害者保護のためとしている。


「そこまで云っといて・・・・」と独り言を云いながらコーヒーを啜る。時刻は午前4時30分。日の出までには2時間弱。月曜日の朝と云うより世界の金融市場チェックは日課になっているのだ。一通りのチェックを終えるとメールの確認。そのなかにポーランドからのメールが・・・。


「powersport.studio」というポーランドにあるスポーツネットゲームの会社。それも日本人からすればマイナースポーツのシミレーションゲームを主として配信している。アルペンスキー・バイアスロン・スキージャンプ等々・・・。そこの開発部門にいる元女性力士の強豪だったロバコスカ オリンピアから女子相撲のゲームを作りたいのだがと云う話を受けてゲーム全体のグランドデザインを三年前に依頼され最初は断るつもりだったが押し切られてやることになったのだ。女子相撲が世界的に人気になりゲームの利用者は公表はされていないが200万弱のダウンロード数だそうだ。日本からも2万ほどのダウンロードがあるそうでその中に西経の部員もいたことは真奈美自身は複雑らしい・・・。


「眞子はそんなネットゲームどこで見つけてくるんだか゛」

「「powerplay manager Women's sumo」ってほんとによくできていると云うかリアルなのよね当然日本チームでやるんだけど日本以外の選手のパラメーターも凄いよくできているし稽古の内容もそして試合の戦略なんか・・・」


 稽古が終わると部員の何人かは相撲場のある座敷で話をしながらプレイしているのだ


「でもこのゲームを考えた人って相当相撲に詳しいのだろうけどマニアック過ぎるよねぇ」


(私がゲームのデザイン考えたんだから当たり前じゃないのよ)と聞いてないふりしてパソコンをいじりながら耳をそばたてていた。


「監督知ってますこのゲーム?」

「私はネットゲームとか興味ないから・・・」

「監督だったら絶対嵌りますよ」

「そう」とまるで全く知らない素振りで・・・


(私がデザインしているんだから私が嵌るゲームにしてるのよ)


「でもこのゲーム難しいし時間かかるからつい課金しちゃうのよ・・・まさかの100ユーロも課金しちゃって・・」


(100ユーロ?)と真奈美


「葉月山とか何人か欲しさに課金しちゃってさぁ・・・育成難しいだもんこのゲーム」とみんなで盛り上がっているのだが・・・。


(葉月山取ったって育成下手糞だったら無理だから)とパソコン操作をしながら部員達の話に集中してしまう。


「監督にやってほしいですよ。どんな結果になるか凄い興味あるんですけど」と眞子

「そもそも私はネットゲームとか興味ないしそれに眞子は何100ユーロも金使っての貴女」

「なんか上手く嵌められてしまうと云うか課金せざるような雰囲気にさせられると云うか・・・」


 真奈美はもう呆れきった表情で


「それはあなたの育成方法と試合における戦略が下手糞だからそうなるんでしょちょっとは頭使ったら・・・犬山のモンキーセンターの猿の方が頭いいんじゃないの」と真奈美

「監督その言い方ちよっと酷すぎませんか・・・だったら監督やってみてくださいよ・・・・って云うかもしかしたら監督やってます?」

「やってません。て云うかもう上がりなさいよここはあなた達の遊び場じゃないんだから全く」


 メールには報酬金額と仕様変更及び各国選手のパラメーター変更のアドバイス依頼が明記されていた。


「うちの部員も嵌っているのはうれしいけどなんか課金と云う上納金の一部が私の報酬と云うのもなんかねぇー」と思わず独り言を・・・。ぶつぶつ独り言云いながら吉瀬瞳にメールを送る。


---今日、濱田の相撲クラブに行ってきます。大事な時期なのに悪いけど今日は貴女の仕切りで稽古を頼む。映見の事もこのままと云う訳に行かないし・・・。それじゃ頼むわね。


 真奈美は送信をクリック。


(光が相撲クラブをやっていたのも驚いたけどよりにもよってうちの選手が出入りして稽古してる何って)


 真奈美はキッチンでフレンチプレスにレギュラーコーヒーの粉を入れ沸騰した湯を少し差し蒸らしたあとにカップより若干多い湯を入れるとそれをリビングへ持っていく。パソコンの脇にあるスマホに着信のメッセージが・・・。


(吉瀬。なにこんな朝早く)真奈美はすぐ折り返すとすぐにでた。


「おはようございます 監督」

「おはよう瞳。何やってるのこんなに朝早く?」

「レポートの提出がちよっと迫っていて・・・」

「そう、そりゃご苦労で・・・でも学業が最優先だから」

「監督こそこんなに早く何を?」

「初老は早起きなのよ」


 真奈美はフレンチプレスからカップにコーヒーを移す。


「今日は悪いんだけど部の方をお願いねぇ」

「会われるんですね・・・」

「映見の様子を見に行くだけよ」

「・・・わかりました」

「高大校は私的には映見は出したくないけどねぇ・・・特別扱いはしたくないから」

「云っていることはわかりますが・・・」


「でも、今度の高大校は今度の世界大会団体戦の選考に係わるのは間違いないましてや石川さくらもジュニアだけど関心はあるはず。映見だって本来は代表になるのは順当だと思うけど昨年の世界大会でケチがついてるしそれを考えると代表は無理だと思うけど何とか勝たせてあげて選考に残らせてあげたい気持ちはあるけどでも部の秩序としては・・・」


「監督・・・でもそれは・・・部員達だって映見の状態は理解してます」

「とにかく会ってくるわ。私は部の稽古に出ろとか云うつもりはないからそのあたりのことは貴女が考えて・・・ちょっと無責任だけど」

「わかりました。それと・・・」

「濱田とのことは私とのことだから・・・貴女にいらぬ神経使わせてるわねぇ」

「私は・・・」

「貴女は、今自分としてやるべきことに集中しなさいそれが今の貴女のやることよ。他人の関係に首突っ込むなんて百年早いわよ」

「私は死んでいるかも知れないけど監督は生きてそうですね」

「食えない女ねぇ本当に・・・」

「誉め言葉として聞いときます」


 お互い苦笑しながら


「監督。私は反対されても映見を出させます補欠でも出させます。もしそれで負けても・・・それじゃ切ります」

「わかったわ。部のことは貴女に任せているんだから貴女の意志を尊重するわ」

「ありがとうございます」 

「それじゃ今日はお願い」と云うと真奈美は電話を切った。


そうは言ったものの稲倉映見だけを特別扱いにするわけにはいかない。いくら相撲が強くても学業ができるとて部としての秩序というものがある。その意味において映見の態度は・・・部員達は大目に見ても真奈美としては許せないのだ。国際大会でメダルを取れなかった事で相撲関係者とか云う連中が好き勝手を云ってるぐらいで・・・。私に批判が来るのは別に構わないでも映見に行くことはお門違いであるがそれでもそれぐらいのことでへそを曲げているようじゃ社会ではやっていけない。日本のアマチュア女子相撲にとって映見は女王なのに今の映見の振る舞いは許せない。それが真奈美の正直な気持ちなのだ。


ベランダ越しの空がやっと白み始めてきた。


(もしかしたら私は稲倉映見を潰してしまうかも知れない・・・・)


 自分が監督になっておそらく稲倉映見は選手としては自分が想い描いていた選手に最も近い。相撲はもちろん学業も優秀であり人間性にも優れているそして彼女には品があった。それが自分が意見したことをちょっと外部から云われたぐらいでそのことでちよっと調子を落として結果が付いてこないぐらいでなぜこんなにも簡単に崩れてしまったことに我慢ならない。体調面で多少すぐれなかった面はあったにせよそれでもなぜ堂々としていられない。精神面で弱い部分は多少は気にはしていたが・・・。


 映見が医学部に進んだことは密かに監督としては嬉しかった。それ以上に嬉しかったのは相撲を続けてくれたこと。他の学部から比べたら正直相撲をやっている時間があるのなら勉学にすべての時間を使っても足りないかも知れない。それでも相撲を続けてくれた映見には何としても両立させてあげたいと云う気持ちでいっぱいだったのだ。そして世界各国の代表選手が名誉懸ける女子相撲世界一を決めるアマ・プロ混合の団体戦には稲倉映見は絶対に出場するべき選手なのだ。女子大相撲の関係者は稲倉映見はプロには来ないのだからどうでもいい見たいなことを云う人が多い。ましてや女子大相撲に対して批判めいた事を発言されたのが面白くない。


 日本の女子相撲が世界から遅れてしまったのは他国がプロ化に動き出していたのにアマチュアの連中の一部がそれを妨害した見たいなことを云う連中がいる。その急先鋒が倉橋真奈美だったと云うのが通説になっている。私はプロ化には賛成だったしそのことが女性選手達が女性力士として相撲を続けていけることには大賛成だった。ただそのことで女子大相撲力士になるためだけの指導にはなってはならないと云うのが倉橋の持論なのだ。


 倉橋自身は正直女子相撲がここまで世界的に人気になるとは考えていなかった。そのことで日本もその波にの乗らないわけには行かなくなったがその事で何もかもが中途半端に動いてしまった。日の当たらなかった女子相撲が急にスポットライトを浴びたら一気に女子相撲部が中高大とできてきた。当然女子相撲に精通している指導者など足りるわけもなく。元大相撲力士やらアマチュア相撲出身者なる男性が指導に当たる。当然やる稽古は男子と同じようなことをさせる。女性特有の体も考えずに・・・。そして学業はそっちのけで相撲一辺倒を許す空気・・・。


     そのことに倉橋真奈美はある種の危機感をあの頃から持っていた。


  (映見が今のような状態なら私が潰して勉学に集中させることが映見の将来のためには・・・・)


 


 

 


 


 


 


 


 

 





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