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女力士への道  作者: hidekazu
女力士への扉

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スカウト ①

「さくら!もっと前に出ないと次の展開作れないよ!」と島尾の怒号が飛ぶ。


 西経での出稽古はさくらにとって代えがたい体験であったのは間違いない。それ以降の稽古に対する向き合い方が変わったことは監督である島尾が一番感じている。今まではどちらかと云う云われた稽古をこなすと云う感じだったのが率先して考える稽古と云うか稽古の「なぜこうなるのかだとしたらどうすればいいのか」を自ら考えるようになったことと4月から3年になるという意識があるのか率先して下級生の稽古などもやっていることはなかったこと。


 島尾自身は西経への出稽古は消極的ではあったが本人の強い希望で行かせたが結果的には相撲云々より人間的に成長したことは全く考えてもみなかった。さくらに稽古のことは一切聞かなかったが行かせたことは間違いではなかった。


 年が明け、本格的シーズンが始まる前の高大親善試合はオフシーズンでの稽古が試される大事な試合である。ましてや今年はあの西経大学が出場することは中京圏ならず女子相撲関係者なら注目の大会なのだ。団体戦形式のみだが注目は超高校級の石川さくら筆頭とする明星高校と稲倉映見と云う学生及びアマチュアでの絶対横綱を擁する西経大学の戦いは注目の的である。


 そしてもう一つは国別対抗女子相撲世界大会がおこなわれること。通常なら4月にアマチュア選抜の国際大会や女子大相撲が始まるのだが今年は女子大相撲の開催を2ヶ月延ばしてやることにそして注目は初めておこなわれるプロ・アマの混合団体戦である。プロ二人にアマ一人の編成でトーナメント戦で行われ真の相撲強国を決めると云うものである。


 女子相撲の世界では日本はある意味において立ち遅れていた。世界が女子相撲を一つのスポーツビジネスととらえ各国プロリーグを立ち上げているなか日本はある種の偏見見たいものが邪魔をしてなかなか立ち上げられなかったがやっとこプロリーグが新設されると意外に女性の支持を受け認知度を高めていったのと小・中学生では意外と相撲人口が多いのに高校・大学では一気に減りそこで相撲は終わりと云うサイクルがプロリーグ新設により卒業後も相撲ができる環境になったことは女子相撲選手にとっては大きな意味を持つ。世界からは一瞬立ち遅れたが後に葉月山を筆頭に名女性力士が生まれそのことで盛り上がり大相撲とは違いそこに国際的視点が加わったことにより国同士の相撲と云う新しい視点が加わったことが人気に拍車をかけていった。


明星女子相撲部も昨今の女子相撲の影響か入部希望者が増えるとと同時に各大会でも好成績を上げ女子相撲界においては一躍注目の高校にまでになっていた。そのことは相乗効果になって他のスポーツからの入部者もあとを絶たないほどになっていた。当然女子大相撲のスカウト達も注目せずにはいられない。


 女子大相撲は年二場所の4月の春と秋の10月に開催され。その他の時期は国際試合や日本ではブロックごとの対抗戦が組まれたりもする。


 女子大相撲は全国を8ブロックに分け各ブロックには各チームがありそこに選手は所属することなる。各チームは上限20人の力士で8ブロック計160 人で構成され幕内・幕下・序の口の各段で構成されている。個人及び各ブロックの協会部屋ごとの出稽古なども積極的におこなわれその際は公開稽古もしているのでファンも身近に感じられるようにしている。


 女子大相撲は年二場所制で春場所の4月・秋場所の10月に開催され会場は各ブロックの持ち回りでおこなわれる。場所以外の期間には国際大会もあり各ブロックごとの対抗戦などおこなわれるなど大相撲とはまた違った相撲も魅力である。


 そういったこともあり入門希望者も多いのだが現状では力士の数を増やすことには慎重になっていることは事実。相撲クラブなどが増え競技人口が増えていることはうれしい限りなのだが女子大相撲協会の現状としては難しいというのが現時点での結論なのだ。


「夕夏、腰の位置が高いもっと意識して」と相撲場に響く監督の声。そしてその隣に座っている一人の女性がいる。中部ブロックの中部部屋の広報兼スカウトを受け持つ新崎一花である。当然彼女が注目しているのは石川さくら。中部部屋としては絶対に欲しい逸材。現状では上限いっぱいの力士が所属しているが今年は二名ほどの引退力士が見込まれている。その二人は30歳近くになり成績も下降気味でありある一定程度の成績を収められていない期間が二場所続いた場合、協会として引退勧告を出されてしまうと云う厳しい世界なのだ。その空くであろう枠に石川さくらをと云うことなのだ。基本的に選手の出生地の協会に優先権がありそこから漏れた場合は出生地以外の協会同士でドラフトに掛かるのだ。


 明星女子相撲部の稽古が生徒達は相撲場から消え残っているのは監督の島尾と協会の新崎。


「協会としてはぜひ卒業後は女子大相撲に入門してもらいたいしそのことは女子相撲の更なる活性化には欠かせない逸材であることはあなただって理解していると思うけど?」と新崎


 新崎も女子相撲経験者で関東の大学で活躍し島尾とは同学年でありライバル関係として張り合った仲なのだ。


「女子相撲もそれなりに開拓されて競技人口も増え女子大相撲もなんとか軌道に乗ってここまでになった。女子相撲をやっている者からしたら夢みたいな話よ。本音は直接本人に気持ちを聞きたいけど礼儀として監督に最初に聞くのがスジかなと思って来てみたけどなんか賛成って感じではなさそうねぇ?」


「まだ彼女は高校二年なのあと三か月もすれば三年だけどその話はもう少し後にしてくれないかなーって云うのが本音。プロに行くのか進学するのかもまだ本音で聞いたことないし親御さんからもそのへんの話も聞いていないし・・・」と島尾


「朋美、あなたを前にこんな言い方するのもどうかと思うけど大学一年であれだけ頑張っていたのに二年ではあんなボロボロになってしまった」と一花

「何が云いたの?」と朋美


「石川さくら西経に出稽古に行かせたのは何、西経から何かしらの話が来てるの?」

「早耳ねぇ流石と云うのか・・・」

「あの稲倉映見と三番稽古して完勝だったそうじゃない」

「へぇーそうなんだ知らなかった・・・」

「知らないって・・・・」

「さくらに稽古のこと一切聞いていないし出稽古の誘いも私にではなく直接本人に西経の部員から誘いを受けただけの話。西経がさくらに何かしらの優遇を与えて入学させるとかではないのそれははっきり云っておく」

「変わってるよね朋美は普通聞くでしょ?ましてやアマチュア女子最強と云われている稲倉と稽古したとなれば・・・・」

「あくまでも稽古だし・・・・」

「西経は高校取りで失敗してるわけだし今度は大学で再度ってことなんじゃないかねぇと思ってるわけよただそれは協会としては困るのよ正直。大学で消耗させるくらいならプロで鍛えた方が現実的だし私も大学でやっていて思ったのは男子ならそれでもいいけど女子の選手寿命考えたら大学卒業後せいぜいやれて6-7年そう考えるとどうなのかなぁって・・・・結婚・出産しても現役でやってらっしゃる力士もいるけど・・・でも大半は幕下どまりそれが現実」

「一花はプロに行くチャンスがあったんじゃないのドラフトでも指名されていたし?」

「私の実力じゃせいぜい幕下止まりとても幕内なんか行けるはずはないし正直そこまで女子大相撲に行きたいと思っていなかったからでも結局は女子大相撲で仕事してるってところがなんかねぇ」と一花は笑いながら


 石川さくら本人はプロ入りの希望であることは本人から聞いている。ただ、それが高校卒業後なのか大学ないし実業団経由なのかは聞いたことがなかった。正直云うと関東や関西の女子強豪大学から話が来ているがそれは丁重に現時点では白紙の状態なのでとその旨を伝えてある。本人から本気でプロ入りの相談や進学などを相談されたら対応しようと思っているのだ。


「とりあえず今日は帰るわ石川さくらの稽古見れたしそれで十分。でも去年の夏に来た時よりも一段と相撲上手くなったと云うか・・・朋美もあと何年かしたら名将とか云われるんじゃないの?」

「何云ってるんだが」

「それと内緒の話だけど、来月初めの女子相撲協会で日本代表監督に元横綱の葉月山がなるみたいよ?協会関係者にはだいぶ根回しはしてあるみたいで確定らしい」

「あんまり興味ないけど・・・」

「今度の世界大会でおこなわれるプロ・アマの混合団体戦のことで元横綱の監督起用になったと云うのが表向きだけど裏は多分違う」

「・・・・・」

「倉橋監督外しだと思う」

「監督外し?」

「あなたの師匠の悪口云うつもりはないけど今まで西経一強だったから仕方がないんだけど昨今状況は変わってきているのは朋美も知っていてるとは思うけどそのことで西経と云うか倉橋主導で動いてきたアマチュア女子相撲に不満を持っている関係者も多い。個人的にはここまでアマチュア界を発展させたのは倉橋さんだからできたと思っているけどねぇ。ただ他校の監督に元大相撲・女子相撲の引退力士がなってくると・・・プロ側にいる私が云うのもなんだけど自然と女子大相撲主導見たいな感じにはなるよねアマチュア界も・・・」

「そんなこと私に話す意味ある?」

「御免、別に変な意味があって云った訳じゃないのただ現状を云っただけなの・・・・。石川さくらを西経に行かせたのは倉橋さんからの誘いがあって何のかなぁと・・・・御免私の勝手な妄想だったねぇ」

「別に気にしてないから・・・さくらが三年になったらちゃんとそのあたりは聞くつもりだからその時はあなたに連絡する。ただ私からは進路に関してアドバイス以上のことはしないから」

「勿論よ。彼女の人生は彼女が決めるものだから」と云うと新崎一花は一礼をして相撲場から出て行った。

 高校もしかりで元プロ力士が監督やコーチとして招かれ指導をしていることが多くなった。以前、西経が女子相撲養成所などと揶揄されたが今は他校の方がそれに近いし高校からプロ入りを目指す選手が8割と云っても過言ではない。本当にプロに行くのなら高卒で行くのが現実的なのだが・・・・。

 

 


 


 


 



 


 

 



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