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女力士への道  作者: hidekazu
女力士への道 ①

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221/324

裏切りのその先へ ⑩

 西経女子相撲部は石川さくらを中心に大学リーグは見事リーグ優勝し、全日本女子相撲選手権大会でさくらが無差別級を制し悲願の日本一を手に入れた。他の階級でも優勝とはいかなくとも入賞者を多数出し、大学女子相撲女王は西経大学女子相撲部と言う印象を強く印象付けた。


 女子大相撲の関係者達も当然のように西経女子相撲部に訪れることが多く毎月どこかしらの部屋の関係者や実業団関係者などが倉橋監督詣でに来ている。本命は石川さくらだがそれ以外にも注目選手は多い、そんななか土俵上では稲倉映見が珍しく本番さながらの三番稽古を石川さくらとしている。その様子を小上がりから見る倉橋と女子大相撲海王山部屋で主任をしている長谷川璃子(元大関 藤の花)が初めてやって来たのだ。


「璃子さんがいらしゃるとは」と真奈美


「師匠に無理言ってね、石川さくらを生で久しぶりに見て見たいとおもって、ついでに真奈美さんにも会いたかったし」と璃子


「私はついでなんですね?」


「再婚されて牙を抜かれた○○だって女子相撲界では云われてますし」


「誰がそんなこと!」


「一度離婚した相手とまた再婚って、どんな気持ち?」


「あぁぁ、そうですね意外と新鮮と云うか・・・結婚はしましたけどなにか夫婦というよりは親友と云うか・・・」


「親友?」


「高専時代に戻ったような・・・・」


「はぁ~ずいぶん年のいったJKで・・・」


「なるべくしおらしく生きようかなと」


「「しおらしい」って古語の「萎る(しをる)」が由来で「萎る」は、草木が正気を失って、ぐったりとするさまってことらしいけど真奈美さんなら除草剤撒かれても枯れそうもないし」とクスクス笑いをしながら


「璃子さん私に喧嘩でも!?」


「久しぶりに会えたんで毒吐いてやろうかと」


「そういう事は初代妙義山さんに言ってくださいよ」


「初代妙義山は論外としても二代目妙義山は絶対横綱の称号を授かったからねもう呼び捨てもできないわ「妙義山!お前の相撲はだから甘いいんだよ!」とか口が裂けても言えないわ全く」と璃子は苦笑い


「葉月山の後継は二代目妙義山それも初代妙義山の娘さん。彼女の血筋に相撲の遺伝子が息づいていると云うか」


「二代目妙義山はお父さんの鷹の里さんの血が強く息づいてるのかなぁ今やスイーツの世界じゃカリスマ的存在なのに、メディアにはほとんどお出にならないし大多数の人は、大相撲力士で大関まで行ったなんて知らないでしょう?今は10店舗ほどやってらして確か「玉鋼」って・・・Pâtisserieとは程遠い店名だけどね」


「玉鋼?私あそこのモンブランが好きでよく買ってるけどあそこって鷹の里さんの?」


「名古屋にもあるんだ・・・鷹の里さんは本当は横綱になるべき力士だったけどね、奥さんである理事長には禁句だからね鷹の里さんの話は・・・・ところで動き良すぎないかい西経の横綱は?」


「本人は入学当時から女子大相撲志望且つ海王山部屋に行きたいと言ってましたし先日は海王師匠がさくらの自宅に行かれたようですし私も何度かお会いして、さくらはその意味ではモチベーション維持はできていると・・・」


「私が言ってるのは稲倉よ、彼女殆ど試合にも出てないし当然医師を目指しているってことで女子大相撲の各部屋だって稲倉の女子大相撲入りは消えたってことになってるけど、石川さくらと勝負できてると云うかどうなってるの?」


「稽古は週一二回だけですけどさくら相手の稽古だとどうも相撲魂が燃えるとか云って・・・」と真奈美は苦笑


「悩ましいじゃんない」


「悩ましい?」


「才能があるのに女子大相撲に行かれない彼女に」


「映見は子供の頃から医師を目指していたわけだから・・・本人はもう大相撲の事は一切云わないし今は国家資格の取得とその先の人生のために邁進しているんだからそれでいいんです。この事は映見が医学部に入った時点でわかっている事でしたから」


「特例条件で云えば25歳まで且つ直近一年以内での大学や全日本選手権で優勝すればに入門資格かつ幕下から行ける。やりようによっては行けたんじゃない?真奈美さんなら色々思案してるのかとおもったけど・・・・」


「映見からそれとなく勉強の方に集中したい旨云われたのよ、まぁそこは彼女の意向に・・・まぁ私がもう少し若かったら違っていたでしょうけど・・・」


「そう・・・ごめんねなんかくだらないこと聞いて、ファンや協会でもあの大会以降稲倉待望論見たいのが渦巻いてましてや昨年はほぼ完璧な相撲を・・・でも稲倉もあなたも沈黙を通してそれで今年は殆ど試合には出ず、まぁその意味はそういう事かとみんな理解しているんだけどなんかね」


「今は、彼女が医師として歩んでいけるように祈るだけです。もう相撲は・・・」


 四年生の映見は完璧の相撲内容だった。成績もさることながら試合に対する気概、主将として部を引っ張る統率力と次の後の主将もきっちり育てるあたり正直映見がここまで成長していたことに驚いていた。五年になり部の方にはあまり出ることもなくなった。そのことに落胆していた自分に映見は見透かしたように・・・・。


「さくらが幕下から行けるは監督の手腕にかかってますけど?」と映見


「さくらはどっかの誰かさんみたいに泣き事言って部とかサボらないから、相撲に対する気概が違うんだよ!どっかの女王様とか違うんでね」


「監督のお局様化は歳のせいかそれとも光先生とご無沙汰とか?」


「はぁ~?おまえだって彼氏は東京だろうが!」


「月一で会ってるので」


「あんたさー和樹君は新入社員なんだからあんたと違うんだから少しは気を使いなさいよ!」


「でも、和樹が私との時間が大事だからって・・・キャ・・・」


「あぁぁ、とろくさい」


 前の映見とならこんな話もできなかった今の映見は私に気を使ってると云うか・・・。何か気が抜けた私をいじってくれるのだ。映見がいなくとも私にはさくらを見なければならないましてや彼女は最初から女子大相撲入門を公言しているしそれ相応の選手である。そこに不満などないしそれはさくらに対して失礼千万!でも初代妙義山が葉月山を気持ち的に溺愛していたように私は映見を・・・そのことを彼女に感じさせているのかもしれない、だとしたら私は監督失格!真奈美にとってはそれほどの選手であり女性なのだ。


 一通りの稽古は終わりさくらと映見は璃子の前に・・・。


「さくら、一段とレベルアップしていると云いたいところなんだけど引退してる映見に押しこまれるのはいただけないね」


「映見先輩、私と稽古すると異様にテンション高いと云うか敵意むき出しと云うかもう・・・」


「何言ってんだが、今のさくらの成長において私の存在が如何に重要なキーになっていることにさくらは感謝すべきよ!」と映見


「あぁぁ・・・何云ってんだかさっぱりわからないんですけど?」


「( ゜Д゜)ハァ?」


 そんな事云いながらもさくらも楽しいのだ。さくらにとって映見が稽古を付けてくれることには感謝以外なにもない。映見が西経の横綱としていた活躍していた昨年までと比べればそれは真っ向勝負すればさくらの方が上なのは間違えない。ただそれでも技術的なものはまだ映見の方が上,身体的能力では真っ向勝負はできなくてもそこには一日の長があるのだ


「映見、相撲楽しそうね、あなたが常に西経の横綱として活躍していた時にはそんな顔を見せたことなかったでしょう?ある意味プレシャーからの解放された感じ?」と璃子


「と云うよりも「呪縛からの解放」ってところですかね」と映見は真奈美を指さす


「( ゜Д゜)ハァ?何言ってるのあんたは性格悪くなったわね全く!」


「監督の指導に問題があるんじゃないの?・・・・映見!“Awesome”」と両手を広げる璃子


部員達から笑い声が・・・・。


「あんた達何がおかしいのよ!あぁぁそうですかわかりましたよ!さくら!あんた明日から地獄の猛稽古ね!覚悟しておきなさいよ!」


「えぇ、なんで私何ですか!?」


「ロートルの映見に押しまくられてるようじゃしょうがないでしょうが!!!」


「ロートル?」さくらは意味が分からない様子で・・・・


「ロートルって・・・真奈美さん本当は理事長より歳上でしょう」と璃子は笑いこらえるように


「さくら、ロートルって「老人」・「年寄り」アスリートで云えばベテラン選手を揶揄するようなことよ。監督に例えれば「老害」?」と映見


「・・・・誰が」と真奈美


「・・・・って璃子さんが独り言云ってましたよ監督!」と映見


「( ゜Д゜)ハァ??」と璃子


------------名古屋駅へ向かう車中------------


「別にわざわざ車で送ってくれなくてもいいのに」と璃子


「まったく!少し部員達絞めつけてやらないと!」と真奈美


「もう・・・でもちょと私が想っていた西経のイメージとは違ってたかなぁって、もう少しピリピリしてるのかなって」と璃子


「私も老害がね・・・」と真奈美


「いや、云ってないから!」


 車は広小路久屋西の交差点を突っ切る。右手にMIRAI TOWERのイルミネーションを見ながら。


「最近、理事長がねちょっと・・・・」


「紗理奈さんがなにか?」


「十和田富士さん知ってるでしょう?」


「えっえぇお会いしたことはありませんが・・・あぁそう云えば地元の青森の病院で相撲部の監督をされるとか」


「稲倉さんが出た郡上の翌日、木曽でやっていた女子相撲講習会に理事長と葉月が突然やって来てね」


「・・・・・」(葉月さんが光さんの相撲クラブに行った時?)


「その時に、偶然に十和田富士さんが来ていてね」


 璃子はその時の様子、帰りは葉月が名古屋空港まで送ったことまで話した。


「でも、あの大怪我のことは二人の力士人生の明暗を分けてしまった事でしたけどそのわだかまりのようなものが解けたのならそれで」


「それは私も同じなんだけど、ただここのところ顕著に青森に行っていてね、それも秘書付けずに一人で車運転して、聞いても「あくまでもプライベートだから」の一点張りでね」


「そうなんじゃないんですか?」


「それはそうなんだけど・・・話は脱線するけど東京でのあの大会以降稲倉映見の女子大相撲待望論がファンのみならず協会でもそんな空気が渦巻いたでしょ、そこで稲倉のために何かしらの特例措置をって話が出てきてね、そこで法務部の方で規約その他の面でどいう方法があるのか作らしたことがあったのよ、順番からしたら本当は稲倉や真奈美さんにその意志を聞くのが筋なんだけど」


「噂には聞いてましたけど、本人がその件に関しては言ってはこなかったし私もあえて聞くことも」


「だから女子大相撲関係者も彼女が五年になってからはその待望論もなんとなく消えていった。でもその頃から理事長が頻繫に青森に行くようになってね。別に行くことにどうたらこうたら言うつもりはないんだけど月一ぐらいでそれも一人で車を運転して行かなきゃならないことがあるのかってね、真奈美さんなんか聞いてない?」


「いや、そもそも私は頻繫に実業団の方とはお付き合いないしましてや十和田富士さんのところはどちらかと云うと中・高校生の俱楽部的意味合いが強いと聞いていますし今のところは実業団リーグで云々という感じでも・・・」


「そうか・・・真奈美さんなら何か知ってるかなって思ったもんだから。紗理奈さんが一人で動く時って何かしらをやる時なのよ、葉月に稽古つけるためだけに毎週函館に行っていたのなんか最たるものよ、みんな見て見ぬふりをしていたけど・・・でもそれがあって女子大相撲最強の絶対横綱葉月山が誕生したんだけどね」


「でも、引退後は表にほとんど出られて来なかったのに、十和田富士さん娘さんの十和桜関に触発されたんじゃないんですか?その意味では妙義山関もけして安堵と云えないと想いますが?」と真奈美


「妙義山はそれを望んでいたんだから横綱桃の山の頃とは・・・心底楽しみにしているんだろうな妙義山は」


 笹島の交差点手前のスパイラルタワーはまるで躍動する人体骨格を想わせる造形美。車は東海道線のガードをくぐり右折すると名古屋駅はもうすぐ。


 

 







 

 

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