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女力士への道  作者: hidekazu
女力士への道 ①

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218/324

裏切りのその先へ ⑦

 大阪城近くのTMPホールでの百合の花の講演会は相撲ファン以外にも聞きごたえがあったいい内容だった。女子大相撲においては横綱ではあるもののどちらかという東横綱の引き立て役とも揶揄される百合の花。どちらかと云うとファンのイメージは、元横綱葉月山や東の横綱妙義山のような華はないイメージが先行するが、戦績を含め堂々の横綱であり特に海外での単発的な大会の強さは妙義山をより上ではと言う評論家いる程。


 そんな相撲の話はもちろんだが女力士と生きてきたことの後悔などと言う現役力士それも横綱が話すべき事ではないような事まで・・・。ただそれでも今の力士生活には感謝していること特に絶対横綱と云われた葉月山との名勝負の数々は自分自身にとっては一生の宝物であると言う言葉は百合の花の力士人生そのもの・・・。


 後半はサプライズゲスト元横綱三神櫻(遠藤美香)さんの百合の花褒め殺しの時間。特にここのところ優勝ができないことについてはなかなかの褒め殺しぷっりで・・・。


美香 「百合の花は気を使い過ぎなんだよ妙義山に」


百合の花 「いや実力の差です。率直に心技体の充実度は私より上ですし見習うところは多々あります」


美香 「百合の花は結婚してからなんか「婀娜っぽい」と言うかねぇ・・・いい意味で勝てない理由だよね」


百合の花 「「婀娜っぽい」って・・・」


美香 「結婚してから・・・あぁ旦那確かレスリング選手だったよな稽古の相手とかしてもらうの?」


百合の花 「稽古?」


美香 「休みの日とか夜とかやってもらってんだろう?」


百合の花 「あぁそれなりには・・・隆一さんも体格的には大柄ですし確かに相手としては・・・」


美香 「隆一さんって・・・私なんか旦那をさん付けで読んだことなんか頓とないけどね」


京子 「美香さんの旦那さんは元大相撲菊の山さんですけど・・・・」


美香 「三役にもなれなかったんだから横綱だった私とは格がね・・・」


京子 「横綱の頃ってまだ結婚されてませんよね?」


美香 「なんか大会会場でで取材記者の「勝」見てたら敗れて自信を失った力士見たいでねなんかね」


京子 「奥さんが横綱だと元力士の旦那さんはやりにくいでしょうからその点では百合の花関は元レスリング選手ですが?」


百合の花 「私もレスリングをしていたのでその意味では・・・偶にレスリングしたりするんです家で、違う意味で興奮するというか・・・」


美香 「夜にか?違う意味で想像しちゃうよ全く」


百合の花 「どういう意味ですか?」


美香 「いいよな百合の花は、最高に幸せそうでもう引退だな」


百合の花 「もう一回優勝しなきゃやめられません!」


 観客席から拍手が沸き上がる


京子 「来場所の優勝宣言という事でよろしいでしょうかね、ということで百合の花に褒めたことを書いた記憶がない元横綱だったのごときペンネームの三神櫻さんこと遠藤美香さんから一言お願いします」


美香 「どうせ名ばかりの横綱でしたんでね・・・やかましいわ!まぁ百合の花には厳しいことを散々書いてきたけど裏を返せばその期待に応えてくれるいや答えてきてくれた。


 葉月山も二代目妙義山も百合の花がいなかったら輝くことはできなっかたよそれは常にライバルとバチバチの勝負をしてきたからこそね、現役の横綱に今言うのはあれだけど百合の花には部屋を持って後身の育成に進んでほしいね、そこで白い百合の花ごとくね、白い百合はマドンナリリーと云われていてね、キリスト教では聖母マリアを象徴する花とされて純潔のシンボルなんだよ百合の花にはそんな気持ちで女子大相撲界に貢献して欲しいね」


京子 「純潔ですか・・・美香さんとは程遠いと言うか」


美香 「そうね私には程遠い・・・はぁ~?」


京子 「今日は、横綱百合の花関の初の講演会でしたが百合の花関の知らなかった一面を見せて頂いたと言う感じで月刊【女子相撲】を代表して感謝申し上げます」


百合の花 「こちらこそありがとうございました。本割より緊張しましたが本当に楽しかったですし美香さんも私が無理言って来ていただきありがとうございました」


京子 「主催としましては百合の花さんには是非とも定期的に講演をして頂きたくできましたら今度は雑誌の方で何か連載でも書いていただけれは、ではキリの良い時間なので」


美香 「おーい・・・」と京子を振り向かせ自分自身に指を指す


京子 「あぁすいません!今回の百合の花さんの講演が実現したのは美香さんのおかげですからね、じゃここはビシっとお願いします」


美香 「女子大相撲がここまでになったのはファンの皆様のおかげであると、私は協会の人間ではありませんが、これからもよろしく良くお願いします。百合の花はけして華がある力士ではありませんが彼女のここまでの人生を想えば相撲も含めてけして順風満帆では来なかった。ライバルであった葉月山もその意味では同じだと・・・でも今はそれなりの幸せを得たことに百合の花も女の幸せを掴んだけどできれば指導者として第二の相撲人生をそれが私が百合の花に期待することだね。野に咲く一輪の白い百合のように・・・・でっ一曲歌います!」


京子・百合の花 「・・・・・・・はぁ~(*´Д`)」


野に咲く花のように 風に吹かれて

野に咲く花のように 人をさわやかにして

そんな風に 僕達も生きてゆけたら すばらしい

時には 暗い人生も

トンネルぬければ夏の海

そんな時こそ

野の花のけなげな心を知るのです


野に咲く花のように 雨にうたれて

野に咲く花のように 人をなごやかにして

そんな風に 僕達も生きてゆけたら すばらしい

時には つらい人生も

雨のちくもりでまた晴れる

そんな時こそ

野の花のけなげな心を知るのです



-----------法善寺横丁 日本料理 古月--------


百合の花と元横綱三神櫻(遠藤美香)の対談は初めてと言うのが嘘のようだが、美香自身が現役時代も引退後も現役力士との講演や対談番組などに係わらなかったのはそこに感情が否応なく入ってしまうし本来なら協会に所属しそれなりの要職で働いていてもおかしくないのだが、山下紗理奈の協会運営に反旗ではないがそのことで協会を離れたことも要因の一つ。


 力士や相撲関係者の中には協会への正式な復帰を望む声もあったそれ以上に紗理奈からも謝罪をされたうえで直接的に云われたこともあったがあくまでも外部からのアドバイザー的なものに拘っている、それでも実際のところは紗理奈の懐刀でありそれは女子相撲関係者には承知の事実。相撲中継解説や相撲関連の執筆活動はするものの力士との親密な付き合いは避けてきたのだ。厳しいことしか書かない女子相撲評論家と揶揄されたりもするが・・・。そのなかでも葉月山引退後の百合の花に対する遠藤美香の評価は辛辣で横綱に昇進してから余計に・・・・。


 そんな時、美香の事務所に百合の花直筆の封書が時たま届くようになる。それは美香の記事に対する強気の批評と云うか反論と云うか、美香はざっと目を通すがそれに返信するわけでもなくレターボックスに入れてそのまま放置。


(横綱とあろう者が・・・・そんな手紙を寄越す暇があるのなら桃の山の心を折って引退させるぐらいの相撲をして見ろや!)


 その後の百合の花と葉月山の名勝負は女子大相撲の歴史に燦然と輝く。しかし、葉月山引退後の百合の花の相撲は精彩を欠くことに、初代妙義山の娘である桃の山を筆頭に若手力士の台頭。ただそれは百合の花の力の衰えというより、心技体の心の部分がどこかに飛んで消えてしまったように・・・。


 

 遠藤美香は季刊雑誌【女子相撲】特別号の女子大相撲春場所と女子プロアマ混合団体世界大会の特集記事を書き上げ一息つくとデスクの上に今日届いた百合の花からの封書が封を切らず置いていある。ここ何年も送って来なかったのに・・・。


 封書の内容は今まで書いてきたことがなかった弱気な内容。


「美香さんの記事に怒りを覚えながらも奮起してここまでやってきました。ただ絶対横綱葉月山関が引退し正直倒すべき相手がいなくなった喪失感がこんなにも自分の気力を削がれるものなのかと・・・。心技体すべてバラバラでもう・・・。


 女子プロアマ混合団体世界大会に選ばれたことは正直重荷です。葉月山さんが現役力士としてやられていたら多分こんな弱音は吐かないでしょう?桃の山が葉月山の後継と云われていることに以前の私だったらそれを覆してやるぐらいの気概があったのに今はもう・・・」


横綱三神櫻の頃の自分を想い起こせば力が衰えていたと云え初代妙義山相手に優勝をしたことがあった。永遠に勝てないであろうと想っていた紗理奈相手に勝負師として勝ったのだ。その後妙義山は優勝することなく引退。しかしそれは三神櫻の心にぽっかりと穴が開いたように・・・。その後は精彩を欠いたまま最後は横綱でありながら負け越すと云う大失態をしてしまった。「まぐれで妙義山に勝った最弱横綱」と女子大相撲ファンからそんなレッテルを張られたこともあったのだ。後に引退し協会の役職に就いたものの紗理奈との意見対立はいつの間にか協会の中での孤立を招き離れることに・・・。そんなこんなありながら後に紗理奈の相棒見たいに言われることに心のなかでは嬉しいのだ。


 

(困るんだよなー今度の巻頭特集記事はあんたの手紙を読んで書いたみたいな誤解されるのも)と美香以外誰もいない深夜の個人事務所で苦笑してしまった。百合の花への厳しい記事は彼女に対してのエールなのだ。


 今回の講演まで百合の花と二人で会ってという機会はなく百合の花の怪我における休場の間にでも会うチャンスはいくらでもあったのだがここまで伸びてしまった。


 中島京子から百合の花が初の講演をすると聞いて「へぇー」と想ったがその条件に遠藤美香をゲストに呼んでくれればやりますとのことで拝み倒されいやいやな素振りを見せながらも出ることに、本当は嬉しかったのだが。


そんなこんなありながらも百合の花の講演もそして講演での対談も会場に来ていただいたお客さんにも十分楽しめたものになりその後の「古月」での対談では「西横綱の心の内」と言う微妙な題目で、初代妙義山と戦ってきた横綱三神櫻と葉月山そして二代目妙義山と戦い戦ってきた横綱百合の花が西の横綱としての心の内を語りながら半枚上の東の横綱に挑み挑んできた想いを熱く語ることになったがそこに講演でのおちゃらけた雰囲気一切なく二人が見せた真剣な表情は中島京子からすれば少し殺伐とした空気感になるとは全く想定していなかった。初代妙義山・葉月山と言う絶対横綱とそれぞれ戦ってきた二人だからこそ、そしてライバルである東の横綱を倒した後に来たのは達成感ではなく喪失感だったと・・・。


「古月」での対談は営業前の午後五時から始まり一時間半程を見込んでいたが、対談は和やかどころかお互いがまるでがっぷり四つの大相撲をするかのような白熱の議論になってしまった。進行役の京子もつい聞き入ってしまい予定時間を一時間近くオーバーしてまう。この対談は二人にとって半枚下の横綱としての生きざまをお互いがぶつけ合い出てきた結論は


 半枚下の横綱としての生きざまを繰り返して引き立て役として生きる!攻めてやられての繰り返し攻めて相手を蹴落とした時、自分も落ちていたのだ!勝負師が真の勝負相手を失った瞬間そこには喪失感しかなかった。しかしそれは時間が解決してくれる。その時間を耐え切れず現役力士を下りた横綱三神櫻。その時間を耐え新たに二代目妙義山と言う真の勝負相手に巡り会えた横綱百合の花。


「百合の花は私が一番憎たらしいと想う力士なんだよ!横綱三神櫻には自分に耐え抜く力がなかったことにね!」と美香は百合の花を睨みながらも口元は緩んでいたけども・・・。




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