砂の女王 ⑤
ゴール前のG-FRONT・3階プライムシート、各席にモニターが設置してあり在席端末でキャッシュレス投票もできる指定席。葉月はD43番・光はD44番の隣同士、葉月はテーブルにタブレットPCを置き競馬場内のフリーwifiに接続して競馬新聞をダウンロード、たいして光は競馬新聞を広げサインペンを紙面の上で転がす・・・。
葉月が想っていた光のイメージとは程遠く、競馬新聞の上で赤ペン転がし予想をするなんて・・・
「何か?」光は隣から視線を感じるぐらいに葉月は光を凝視していたのだ
「いやなんか競馬新聞広げて赤ペン転がすってちょとイメージと違っていたので・・・」
「いや普段指定席は取らないで場内ウロウロしてるんであまり荷物は持ちたくないんです。新聞にサインペン挟んで場内歩き回るのがスタイルなんで・・・」
「なんかノートパソコンとか持ち歩いてってイメージを持っていたんで」
「昭和おやじは新聞と赤ペンですよ!」
「意外過ぎて・・・」
「何かを考える時に、イメージを表現したり文字や数学を想い浮かべる時は、紙に書いて表現するって云うのが自分にはしっくりくるんですよ、だから仕事を後輩たちに譲ったのは正解だったんですよその決断をした自分を褒めてあげたい・・・なんちゃって」と光は笑いながら・・・・
「・・・・・」葉月は言葉が出ない
レースは淡々と進み第五レースまで進み照明に灯が入る、時刻は午後五時を過ぎたところである。最初は、勝った負けたと云いながらやっていたのにいつに間にかメンコをかぶしてそのうえブリンカーでもしてるのかのように前のモニターとレースが始まるとコースしか見ず隣の事など忘れてるかのように・・・。
葉月がタブレットパソコンで競馬新聞を読んでるとマークカードが投げ込まれそこには次のレースの三連単のマーキングしてあるのだ
(はぁ~なんなのよ!)と葉月。その「はぁ~」は投げ込んできたことの「はぁ~」ではなくその三連単のマーキングがあまりにも当てにきている三連単なのだ。葉月はモニターで三連単のオッズをチェク!
(三連単の一番人気で6.0倍!なーに考えてるのよ)とふと横をみると・・・。
(いない?)隣の光はどこかに行ってしまったようで・・・。
第六レースは八頭立てで上位三頭と他の馬との差が大きく光の予想は当然の予想なのだ。
(こんなガチガチのレースほど荒れるものよ)とマークカードを手に取ると裏に何か書いてあることに気づく
「このレースで穴とか狙う人は【アホ】!!!でも葉月山ならねー」
(って、なんなんのよ私に喧嘩でも売ってるの全く!!・・・ってどこ行ったのかしらトイレ?)
葉月にとっては、こんなリラックスできてる時間は久しぶりだった。大会以降はお世話になった後援会の方々へのお世話になった挨拶回りは葉月にとっては苦痛な時間だった。当然部屋を持ち後進の指導にあたるものだと想っていたのにとどれだけ云われたことか・・・そんなことは覚悟はしていたが思いのほか苦言めいた事を云われたことはショックだった。それでも自分が選択した道は間違っていないと・・・。
第六レースは三連単の二番人気で決まった。
(順当な結果ね、このレースで穴とか狙う人は【アホ】!!!だから私は三連複を買ったのよ、三連単が12.5で三連複が4.8、だったら複でしょう!私、その点は失敗しないので負ける勝負はしないんで!ふぉぉぉぉぉ)と一人盛り上がる葉月
「どうしました大損こきましたか」とすぐ後ろの通路から光の声、葉月は即座に後ろを振り向くそこには二頭の馬のぬいぐるみ?
「さては僕の買い目を無視しましたね」と馬のぬいぐるみが喋る?
「おかげさまで」と葉月
「だって、ウマタセーヌ 」と馬のぬいぐるみが?
「ウマタセーヌ ?」と葉月は光の云っている意味が分からない
「葉月は堅実なのよ!ウマタセさんとは違って」
「・・・・」(ウマタセ?なにこの小芝居は?)と葉月
「俺の理想の人生はわらしべ長者なんだよウマタセーヌ 」
「わらしべ長者?」
「運よく大きな富を得た話?」
「それは違う!」
「・・・・・」(違うの?)と葉月
「話の内容は割愛するけどあれには純粋に親切をする大切さを教えているんだよ」
「純粋?」
「そうなんだよ、あの話の本質は親切してあげたからと云って見返りを考えてはいけないよってことなんだよ」
「そうなんだ・・・ウマタセさんでも、葉月さんが三連単の一番人気を買っていたら・・・」とウマタセーヌ
「葉月さんは堅実だから多分・・・三連複を買ってるはずだよ!」
「・・・・」(げっ、見透かされてる)
「もし、三連単を買っていたら?」
「それは・・・自己責任でしょ?だって買えとは云ってないから・・・・」
「・・・・」(はぁ~なんじゃいその言い草)と葉月
「そのぬいぐるみはよく喋りますね」と葉月
「こっちは【ウマタセ】大井競馬場のマスコットキャラクターでこっちは【ウマタセーヌ】と云ってウマタセの彼女でちなみに座右の銘は「愛は行動を伴うもの」だそうです!まるでどっかの誰かさんのようで・・・」
「誰です?」
「マザーテレサは云っていましたね、愛は行動を伴うものって」
愛する気もちがあっても、相手に何もしなければ、愛がないのと変わらないのではないでしょうか
「愛する気持ちの意味がこの年になって少しわかったと云うか・・・・」
「濱田さん・・・」
「お互い口下手で頑固だったけどね、でも本質は気分屋、天才肌で、超ポジティブシンキング」とウマタセーヌの頭を撫でる光
「真奈美さんの事なんですね?」
「違います!」
「だって今!」
「葉月さんは真奈美の事をそう想ってるんですね?」
「はぁ?」
「まぁ色々・・・飯にしません?」
「はぁ~・・・・・」(いやいや話が中途半端だし!)
----------レストラン gioco-------------
バラエティに富んだラインアップの中から、好みのメニューをチョイス!ジョーコの「ワンプレートブッフェ」(1回盛り切り1200円)内には1日10種類以上のメニューがずらりと並び、洋食のみならず中華も取り入れ温かいメニューが2品以上用意されているのも、嬉しいところ。料理のラインアップは、定番5~7品と日替わり2~3品で構成。なかでも人気の定番メニューは「魚介のトマトソース」だとか。
四つに区切られているワンプレートに料理を乗せていく。
「こうゆうのって人間性出ますよね、この四つに何をいれるか」と光
「あぁ・・・」(人間性って・・・・)と葉月
「なんかアート的要素と云うか、白いプレートって難しいけどそこはこのプレートは区切られているからいいけれど」
光はプレートに料理を盛っていくのだがそれが妙に映えると云うか上手いと云うか・・・。
「我ながら上手いよね、起業なんかしないで芸術関係の仕事とかなんでしなかったんだろうな・・・」と光
「・・・・」(芸術って・・・・確かに見栄えはしますけど・・・・)と葉月は心の中で若干呆れていると云うか自己承認欲求強すぎでしょうと?
「あっ、面倒くさい男だとか想ってるでしょ?」とチラッと葉月を見ながら
「えっ、あーいやいやあぁ素晴らしい盛り付けだなーって・・・・」と葉月は如何にも感心した表情で・・・。
「どこが?」
「えっ?」(どこがって・・・あぁめんどくさ)
光はプレートを持ち席の方へ、葉月は料理を眺めながらいらん事を考えてしまう・・・。
(私の選んだワンプレートとかにダメ出しとかしないよね?「葉月さんのセンスって」とか云いそうで、あぁなんで料理選ぶのにこんなに神経使うのよ!)
葉月は慎重に料理を選び席の方へ・・・。
「やばいことになってしまって」と光
「やばいこと?」
光はスマホの着信履歴を見せる
「あっ、真奈美さんからですねそれも三回・・・」
「葉月さんと大井競馬来てるのばれた?」
「はぁ?、どう云う意味ですか?」
「浮気・・・・とか」
「・・・・・はぁぁぁ・・・・もう・・・本気に怒りますよ!!!」
いたって真面目でいったて本気に・・・。
「葉月さん出てくれます?」
「はぁ?」
「なんかねぇ・・・」
「濱田さんってもしかして前科が?」
「前科って、云い方あるでしょうに・・・まぁ不起訴処分に、って喧しいわ!」
「とりあえず折り返してください、途中で代わりますから」と少々呆れた表情の葉月
「すいませんねぇ・・・お手数をおかけしますが」と云いながら光は真奈美に電話を入れる。
真奈美が電話掛けて来た用件は確率の計算におけるベイズの定理の性質・ベイズ更新、そのうえでベイズ統計を学生達に再度復習の意味で整理させるのにどうすればとか云う面倒くさい相談なのだ。
「了解、今夜中にサラッとまとめてファイル送るよ、まだ東京でね」
「東京?珍しいわねいつもならさっさと帰るあなたが、かつての部下と食事でもしてるの?」
「あぁ、がたいの良い秘書兼女ボディーガードとデートしてる」
「はぁ?」
「ちょと・・・濱田さん・・・」
「替わります」と葉月にスマホ渡すとプレートを持ってそそくさと別のテーブルへ
(ちょとなにそれ!)スマホから呼びかけてくる真奈美の声
「あぁー今晩は・・・・」
「うん、どなた?」
「あぁ、葉月です土日はどうも・・・」
「えっ、なんで光と?」
葉月はざっとホテルで別れた後の事を説明した
「まぁ、まさか旦那さんが相撲場にいらしゃるなんって考えてもいなかったんで・・・」
「(* ̄- ̄)ふ~んずいぶん都合のいいシナリオね」
「シナリオ?・・・いやいや本当に!」
「冗談よ、どう私の旦那は?」
「えっ・・・素晴らしい旦那さんで」
「何が素晴らしよまったく、面倒くさいでしょ家の旦那」
「・・・・・」
「図星!まぁ楽しくやってよ」
「あの、絶対に最終の新幹線に乗せますので!」
「別にいいわよ、一応云っとくけど品川は10時07分ののぞみと10時10分のひかりだから、まぁ光は知ってるでしょうけどね、まぁ中年の子供ですけどよろしくそれじゃ」
電話は真奈美から切った。それを見た光はそそくさと戻て来た
「なんか云ってた?」
「なんか疑われてるみたいです」
「えっ、それは浮気って事?あぁぁまぁそれもね・・・」
「・・・・・」
「すいません冗談です!はぁぃー」
完全に日が落ちトゥインクルレース開催日は毎日、競馬場内のイルミネーションが点灯。スタンドエリアでは、日没後から各所のイルミネーションやスタンドのライトアップやレースの合間には内馬場エリアのイルミネーションも点灯し、音楽と光が連動するイルミネーションショーをあったりする。レースは後半へ・・・・。




