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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの想い・それぞれの願い

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202/324

四股名を受け継ぐ者へ ⑤

「十和田富士さん・・・」


「なぁもう力士じゃないんだから十和田富士はちょっとなぁ」と照れくさそうな


 二人は相撲場裏手に流れている正沢川を見ながら・・・。


「それよりうちのバカ娘のせいで多大な迷惑をかけてしまって、私の教育が間違えていたってことだよ、そんな娘をなんで除名処分にしなかった?昔のあんたなら甘くても幕下まで降格さしただろにそれが前頭十枚目ってなんだい!そんな甘い処分で女子大相撲の秩序維持ができるのかね!紗理奈も歳とって焼きがまわったか?」と美紀は自分の娘の処分の甘さに少なからず不満だったのだ。


 紗理奈はその話を無視するように話題を変えた


「女の大相撲は大相撲の亜流であって相撲ではないって当然のように云われた。キャバレーの女相撲ととたいして変わらないって、あの当時の女力士達はみんな心のどこかに劣等感を持っていた女力士としての職業に、そんなくだらないことを想っているうちに世界の女子相撲はメジャーな職業スポーツに」


「そんな云われ方もしたな、でもあんたが何時しか絶対横綱と云う称号を熱心なファンからつけられた辺りから女子大相撲は急に世間から認められるようになって、その頃からだろう相撲だけで食っていけるようになったのは、それはマイナー競技な女子相撲をやっていた者やっている者の悲願だった。その後あんたがトップに立ちいまに至る。紗理奈がいなかったらここまで認知されなかったし世界と戦うことができていなっかたろな・・・」


「自分の力なんかたいした事はない旦那が陰から援護と云うか女子大相撲の発展と引きかえに・・・結婚後もお互い現役力士だったから気が強くてそれでも彼は大人だった。私は後先考えず想っていること口に出して、大相撲の関係者から色々かげ口めいた事を云われていることに腹が立ってね・・・。そのことを夫にぶつけて、それでも旦那はいつも平常心でね、逆にそのことがイラついて・・・」


「大関鷹の里さんは角界きっての人気力士だったね、相撲は強かったのはもちろんだったけど、でも今思うと大相撲には向いていなかったね、紗理奈の旦那には失礼な云い方だけど引退後の鷹の里と云う人を見た時に、なんかね・・・」


 紗理奈には美紀が遠回しに何を云いたいのかは察しが付く、鷹の里を引退に追いやったのは私なんだもっとやれた横綱にだってなれた!でも秀男は自分の力士生命と引きかえに女子相撲と私を守ってくれた。世間は紗理奈の強烈なリーダーシップややもすれば紗理奈の独善的な態度は紗理奈が女性としての弱さを見せたくない一つの方法だったのだ。そのことを一番気にかけていたのは秀男でありそのことに痛いほど感じていたのは紗理奈自身だったのに・・・。


「秀男さんには一生頭が上がらない、私が強引に大相撲の世界へ入れてしまったことそして・・・力士を辞めさせてしまったこと、あの人の人生を翻弄させてしまた私のせいで・・・・」


「秀男さんは女子大相撲の影の功労者だからね・・・ここまで女子相撲が盛んになれたのは男の大相撲が女相撲を認めて協力してくれなかったら・・・それを私達が知らない間にやってくれていた。


 引退の原因は女子大相撲じゃないのかって・・・でも今の大関鷹の里さんは一番人生を楽しんでるじゃないかい、スイーツ好きなのは現役力士の時から知っていたけどそれが世界のスイーツの大会で入賞しちゃうんだから、そう考えると大相撲に入門してしまったのは無駄な時間だったのかもね、その一方で旦那の相撲はある意味相撲をしている者の教科書だった。相撲に関する執筆活動も現役力士の時やっていたんだからでもそのことを大相撲の親方連中や力士達のなかには毛嫌いして者もいたからね」


「秀男さんにはもう好きに生きてもらいたいのよ、鷹の里が引退したら部屋を持って女将としての覚悟もしていたのに、それを私自身で潰したのよ・・・かってよね」


「でも、二人には桃の山・・・じゃなかった二代目妙義山がいるじゃないみんなは初代妙義山の娘って事ばかり云うけど二代目は鷹の里の相撲に近いものを感じるよ、でも自分の娘に四股名を継がすなんってちょと羨ましく思ったりしてね」


「美紀さんだって娘の十和桜がいるじゃないですか?」


「十和桜ねぇ・・・まぁ二代目妙義山とは格が違いすぎるよ、ましてやあんな馬鹿なことを女子大相撲をどれだけ傷つけてしまって元力士としては何とも・・・・本当に」


「美紀さんもうその話は・・・・、美紀さんが地元で実業団女子相撲部の監督になられると聞いて近いうちにお伺いしたいなと思っていたんです、そのことを知った時物凄く嬉しくて、美紀さんが女子相撲に戻ってきてくれたと」と紗理奈は美紀を見つめる。引退後は相撲の世界からはアマも含めて完全に消えていたそれは娘の十和桜が入門した時も一切表にでることはなかった。


 そんななか、青森の柴咲総合病院が女子相撲部を設立するにあたり地元出身元力士である美紀(元十和田富士)に白羽の矢が立ったのだ。現役力士時の大怪我のリハビリをこの病院でしていたのだ。そんな縁もあり監督の話を受けたのだ。


「正直云うと断りたかったんだが、私が関脇までいけたのはあの病院じゃなかったら無理だった、まぁそんなこともあってね、青森は女子相撲選手の層は厚いんだがどうも抜きん出る選手がね。


 一応は実業団の相撲部だけど女子中高生達の一つの練習拠点の意味合いもあるんだよ,柴咲総合病院はスポーツ整形とかそっちの方は強いからねその意味では環境は悪くないんだが如何せん指導者が頼りないんでね、そんな意味とバカ娘がちゃんとやてるのか視察に来ったてところなんだけどまさか理事長来るとは考えてもいなかったのは誤算だったよ」と美紀は苦笑いを浮かべながら


「娘さんに十和田富士を継がしても良いんじゃないんですか?確かに今回の件は協会としては許される話じゃない、美紀さんが云うように私もあまいと想いますが・・・今回の処分に対しては力士達からの嘆願書が協会宛に出されましてそれも処分軽減の・・・・私には理解できませんがんね?」


「処分軽減の嘆願書?・・・あまいね日本の女力士達は一人潰れればそれだけ楽になるのに」


「男子大相撲の亜流からの脱却?力士達がそれでいいのなら協会はそれに従う力士優先になってしまったいつの間にか、いいんだか悪いんだが・・・ただ十和桜にとってはなかなか辛いものもあるでしょうけど、母親を前に云うのもあれですが・・・でも今度の事で十和桜は変わると想います、今日も色々見学者から云われていたようですし」と紗理奈は美紀を見ながらそんな美紀は聞いていないようなふりをしているが・・・。


「自分のまいた種だ!それは自分でしか解決できない!まずは三役に上がること上がればそこからが本当の力士としての新たな始まり・・・そこまで行けるかどうか?」


「大関に上がったら十和田富士に改名ですね」と笑みを見せる紗理奈


「十和田富士・・・かっ」美紀は正沢川の川の流れを見ながら「ふっー」と息を吐く。


 幕下昇進がかったあの一戦は二人の命運を分けた、ボロボロになりながらもやっと関脇になった十和田富士とあの一戦を勝ち飛躍し初絶対横綱の称号をファンから授けられた妙義山。そして今度はその娘たちが二人にとっては楽しみ以外何もないと・・・・。


「紗理奈、今度おまえとガチな相撲をしたいなあの大阪での【栄光の名力士対決】とまではいかなくてもどこかで」と美紀は真剣な表情でその目から遊びではなくとでも言いたげな視線で・・・。


「それは私への挑戦状ってところですか?」


「そうだね、初代絶対横綱の鼻っ柱をへし折ってズタボロにしたいんだよ」


「わかりました。返り討ちにしてあげますよ心の準備しといてくださいよ」


「云ってくれるね、相変わらずの負けず嫌いが」


「鬼の妙義山なんで」


「てことはさしずめ、十和田富士は女桃太郎ってところだね」


「桃太郎?大分歳いってますがね」


「一つしか歳は変わらないだろうが」


「二つです!」


「けっ!まったく負けず嫌いと云うか意地ぱっりだねー」


「事実ですから!」



 いい歳して精神年齢は子供か?って感じなのだ、そのことにお互いどこか安堵したと云うか現役力士の時のように、そんな二人の関係も十和田富士が霧のように相撲界から消えた事、紗理奈が現役力士の時はそんなにも気にもかけなかったどころか負け犬がぐらい思っていたのに力士を引退しふと十和田富士のことが、でももうその時は連絡さえも拒否反応するかのように、本当はその理由を聞きたかったけど・・・。


「まぁそんなこんなでアマチュアではあるけど女子相撲の世界に出戻ってきましたので」と苦笑いをしながら紗理奈に頭を下げる美紀。


「お帰りなさい、十和田富士さん・・・」


「ただいま、初代妙義山」


おもわず紗理奈は美紀に抱きついてしまった。


「ちょ、ちょっと・・・・」


「十和田富士さん」


「あ、あっ、暑苦し・・・暑苦しいんだよ妙義山!」


 そんな二人は二十代後半ではあったが女子大相撲創設当時に戻ったように楽しくも苦しくも・・・あの時代に戻りたいとは想わないが、それでもあれほどに女子相撲、そして力士として生きることにすべてを賭けた。そんな二人ももう五十も後半にそして二人の娘が女子大相撲へ・・・。二人にとっては嬉しくもあり悲しくもあり・・・・。


「ところで、紗理奈の隣にいた女性って誰?」


「あぁ、葉月山だよ」


「葉月山?葉月山ってあの葉月山かいなんか随分スッキリしたと云うか・・・」


「ダイエットしたらしいよ、もう女子大相撲とは関係ないんだからどうでもいいんけど」


「寂しーか」


「・・・・」つい言葉に詰まる紗理奈


 美紀はそれ以上の言葉はかけなかった。葉月は紗理奈にとって自分の娘以上に娘のような存在だった。それは今でも変わらないのだろうけど・・・。そんな紗理奈は急に改まった口調で喋り出した。


「美紀さんが実業団の監督に就任すると聞いて近いうちに伺おうと想っていたのですがまさか今日会える何って想っていなかったのですが、ちょと相談をしたいことがありまして」


「相談?」


「アマチュアの稲倉映見、当然ご存じだと思いますが?」


「あぁ、さきの大会での相撲は女子大相撲力士と遜色ないか凌駕してるような感じさえも受けたが」


「本人は女子大相撲入りを考えているのですが、医大生で卒業は二十四歳なんですそこで美紀さんに相談したいことが」


「そうか・・・彼女は医大生だったね、普通の学生なら来年卒業で入門だけど・・・確か二十五歳未満が入門条件で二十三歳以上は全国大会優勝者か措定の国際大会でそれに準ずる者だったね?それも卒業直近の?」


「そうなんですが」


「そうなると、秋の学生選手権か年末の日本選手権か年明けの世界大会だけど、医大生にそんな大会に集中できる時間があるかね?そもそも医大生で大相撲入りなんって聞いたことないし・・・そもそも医大生の最重要事項は国家資格の取得だろう?自ずと答えは出てるんじゃないのか」


「女子大相撲入りはあきらめろと?」


「紗理奈は私に何をさせたいんだい!」


「稲倉を美紀さんの実業団チームに入れて頂けませんか、国家資格取得且つ大学卒業後に・・・」


「何のために?」


「八月の実業団日本選手権での優勝狙いです」


「実業団日本選手権・・・・なるほどね、でも国家資格取得をしたからってそこから確か2年以上の初期研修をして更に3~5年間の後期研修を受けてはじめて医師になれる、本人はそこまで覚悟してるのかい?」


「葉月に大相撲入りと国家資格の取得の両方を狙いたいと云ったそうです、でも学生時代に狙うのは避けて国家資格取得後に実業団優勝で入門条件をクリアーする」


「紗理奈・・・・お前」


「それと、葉月に・・・」


 その時、背後から十和桜の声が・・・。


「お弁当の用意がしてありますので上がって来てください」と時刻はすでにお昼を回っていた。



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