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女力士への道  作者: hidekazu
女力士
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世界大会そしてライバル

モンゴルウランバートル。冷たい空気が肌をつく。ここはアジア大陸の最北に位置し、かつてはソビエト連邦の一部だった国である。今は独立国家となっているが、首都機能はモスクワに移されている為、この国の実質的な指導者は大統領ではなく首相となっている。百合の花と葉月山はこの国にやって来ていた。彼らは今、大会が行われるホテルに向かっているところだ。


 「百合の花。あなたがいなかったらここまで相撲を続けていたか?ライバルの出現に本心はうれしかったのかも」葉月山は流れる車窓からポツリと・・・。

「うーん、どうだろう?ただ単に"勝ちたい相手がいる"というだけじゃない?」百合の花の答えは素っ気ないものだった。

二人は黙り込んでしまった。そしてそのまま沈黙が続くこと数分、ようやく目的地に到着したようだ。

二人が案内されたのは巨大なホールのような建物だった。床には赤絨毯が敷かれており、天井からはシャンデリアがぶら下っている。

そして、会場内には大勢の観客の姿があった。

――さあ、いよいよ始まります!

――世界最強の女力士を決める戦い!

――その名も"ワールド・SUMOU・カップ"!!――皆さん、盛り上がっていますでしょうか!?

――おおぉ~!

――それでは早速始めていきましょう!

――第1回戦は、アメリカ代表、ジョン・スミス選手対絶対横綱葉月山です。


――両者前へ――。

――はい!――両者は土俵中央で向かい合うと、仕切りの姿勢を取った――。

――見合って――、見合って――!――はっけよい!――

――おおぉ~、いきなり激しいぶつかり合いです。

――両者とも譲らない――。――おっと、ここで葉月山の突き押しが決まったぁ!――

――これは強烈な突っ張りですねぇ。

――葉月山、一気に相手を土俵際に追い詰める――。――しかし、ジョン選手も必死に堪えています。――

――両者の力はほぼ互角といったところでしょうかね?――

――はい、そうですね。――

――しかし、このままだと勝負が長引きそうです。――

「葉月山の動きが重い」百合の花は土俵脇でじっとこの取り組みを見つめる。「横綱ふんばって」隣にいる桃の山が呟くように言った。


――両者一歩も引かない展開が続きます――。――土俵際まで追い詰められた葉月山だが、そこから再び勢いを取り戻して攻め立てる――。――しかし、今度はジョン選手が耐え凌ぐ――。――土俵際ギリギリの攻防が繰り広げられます――。――あっと、葉月山が体勢を崩しかけたところを見逃さず、すかさずジョン選手が押し出しに出た――。――葉月山が堪らず後退していく――。――ああっと、とうとう土俵際まで追い込まれたぞ。――

――ここを逃せば勝機はありませんよ、――果たしてここから逆転できるのだろうか?――

――はっけよいぃ!!――

――おおおぉ!!――

――葉月山、踏ん張った。

――まだ諦めません。葉月山、懸命に堪えている。

――一方のジョン選手は苦しそうだ。――

――葉月山、何とか相手の圧力に耐え抜いている――。――

――一方のジョン選手の方は、もう限界のようですよ。

――葉月山は体ごとぶつかっていくような感じだ――。

葉月山一気に電車道で押し込んでいく。これはジョン選手堪らない。彼は思わず片膝を突いてしまった。

――おや? どうしたんでしょう?葉月山も片膝をついてしまった。

――葉月山もどうやら足腰に来たみたいだな。――

――葉月山は立ち上がろうとしますが、立てない様子だ――。――どうしたんですか?葉月山が立ち上がれないようですが?――

――どうしたんだろう?

――どうやら足を捻挫してしまったようです。――

「大丈夫です」葉月山は苦虫を噛むような顔で立ちあがった。

勝者 葉月山。苦しみながらも初戦突破。

 土俵際の死闘を制した葉月山に会場中から拍手が送られた。

葉月山もホッとした表情を浮かべると、ふーと息を抜いた。

その後、2回戦、3回戦目と順調に勝ち進んだ葉月山だったが、4回戦で思わぬ苦戦を強いられることになった。対戦相手はモンゴル国籍の女性だったのだが、彼女は相撲の経験がなく、相撲部屋にも所属していなかった。にもかかわらず彼女の強さは何とも不思議だった。

――それでは、両者前へ――。――

――はい!――両者は仕切りの姿勢を取る。――見合って――、見合って――。

はっけよい!

――おおぉ!――

――両者激しくぶつかり合った――。――おっと、何ということだ!

――なんと、葉月山の突きが効いていない!――

――いや、むしろ押されている!――

――葉月山、必死に堪えるが……。――ついに土俵際まで追い詰められた――。

――あぁっと! これは苦しい!――

――土俵際に追い詰めたところを一気に攻め立てた!――

――葉月山、堪らず後退する――。――これは勝負あったかな?――

――しかし、ここで負けるわけにはいきません。――

――さすがは横綱ですねぇ。しかし、相手もなかなかしぶとい――。――両者とも一歩も譲らない展開が続いている――。――おっと、ここでまたもや百合の花の突っ張りが決まったぁ!!――

――――モンゴル・バース バッシメグの体が宙を舞う――。――しかし、これで終わりではなかったのです。――土俵際ギリギリのところで踏み止まったバース バッシメグが反撃に転じた――。――激しい突っ張りの応酬が続くぅ!――

――両者一歩も譲りませんね。――

――えぇ、そうですね。――

――しかし、ここで勝負ありました。――

――両者一歩も引かない展開が続いたが、最後は力尽きて倒れ込んだのは……、なんとのモンゴル・バース バッシメグ方でしたー!!――――勝者、葉月山――。


――場内からは惜しみのない歓声が上がった――。

土俵際での激闘を制し、見事に勝利した葉月山は、土俵上で一礼すると、観客に向かって深々と頭を下げた。

さあ優勝決定戦は日本人横綱同士。葉月山VS百合の花です。両者プライドにかけて負けられません。


 やっぱり勝ち上がってきましたね。苦しい戦いは逃れようにないようですねそれに百合の花は絶好調のようね。今の私では厳しいかも・・・。


 でも私は絶対に勝つわよ。葉月山の胸に秘めた思いは前人未到の5連覇の達成。たとえ調子が落ちていようが私は絶対横綱なんだから負けるわけにはいかない。


 葉月山さん調子を落としているようですね今の私は絶好調。私が変わって絶対横綱の称号を奪い取って見せる。百合の花は廻しを締め直し自ら顔を叩き土俵に向かった。



2人は土俵中央で睨み合う。

「葉月山、頑張ってください!」「葉月山、頑張れ!!」「葉月山―!!!」

観客席から声援が飛ぶ。

「葉月山―!!!」「葉月山―!!!」「葉月山―!!!」

「「「「「葉月山、葉月山、葉月山」」」」」

「「「「「「葉月山、葉月山、葉月山」」

「「葉月山、葉月山、葉月山」」

「「葉月山、葉月山、葉月山」」

「「葉月山、葉月山、葉月山」」「「葉月山、葉月山、葉月山」」

会場中の声援が2人に注がれ、熱気が渦巻く。

「百合の花、お願いします」「百合の花、勝ってください」

「百合の花、頑張ってくれ」

「百合の花、応援してます」「百合の花、がんばれー」

「百合の花、がんばってくださ~い」

会場中からの期待を一身に背負った2人の取組が始まった。

見合って見合って……、はっけよい!

――おおぉ!――

――いきなりぶつかった!――

――どちらも譲らない!――

――激しくぶつかり合った!――

――おぉっと!――おおぉ!――

――今度は互いに押し合いだ!――

――激しい攻防が繰り広げられています!――

――しかし、やはり経験の差か!?――

――徐々に百合の花の方が押され始めた――

――このままだとまずいぞ!――

――なんとか踏ん張る!――

――しかし、どうやら限界が近いようだ!――

――今、百合の花が大きく後退した!――

――もう土俵際まで追い詰められてしまった!――

――あぁっと、ここで勝負あった!!――勝者、葉月山!!――

――土俵際まで追い詰められたところを一気に攻め立てた!!――

――葉月山、見事な勝利です!!――

――場内からは拍手と歓声が巻き起こっている――。――土俵上では、肩で息をする葉月山と、悔しそうな表情を浮かべながら一礼する百合の花の姿があった――。

――こうして葉月山は前人未到の5連覇を達成した。――その偉業に日本国民は熱狂した。そして同時に世界からも賞賛された。――だが、その一方で一部の相撲ファンは不満を漏らしていた――。――なぜ、あの時勝てなかったのか?――――それは、百合の花の体調が万全ではなかったからだ――――――。――確かに百合の花は絶好調だった。――それでも、あと少しだけ力が足りていなかったのだ――。――もし、もう少し力があれば・・・。――そうすれば結果は違っていたかもしれない。――そう思うと悔やんでも悔やみきれない気持ちになる。――だが、時は戻せない。百合の花は窓から星が燦燦と輝いている夜空を見上げながら涙を浮かべていた。葉月山の5連覇を祝う祝賀会が行われたに二か月後、百合の花はアジア大会で再び土俵に立った。

相手は昨年アジア選手権で優勝を争った日本勢のライバルであるモンゴル・バース バッシメグ。彼女はリベンジを果たすためにこの場に現れた。

両者は土俵中央で再び睨み合う。見合って見合って……。はっけよい!

――両者がぶつけ合うように激突した!――

――しかし、今回はバース バッシメグも負けていない!――

――両者一歩も引かない展開が続いている!――

――激しい攻防戦が続くが、果たしてどちらが強いのか!?――

――おっと!これはバース バッシメグ優勢なのか!?――

――そのまま突っ込んでいく!――

――しかし、百合の花も負けてはいない!――

――必死に押し返す!――

――両者譲らず、膠着状態に陥ってしまった!――

――しかし、このままではいずれ体力的に劣る方が負けてしまうだろう!――

――一体どうなるんだ!?――

――すると突然、バース バッシメグの動きが止まった!――

――なんということだ!――

――まさか、意識を失っているのか!?――

――それを見た百合の花が猛然と襲い掛かる!!――

――あぁっと、一瞬気を失った隙を突いて、百合の花の強烈な張り手が決まった!!!――

――勝者、百合の花!!――

――場内から大きな歓声が上がる!!――

――百合の花、素晴らしい戦いぶりを見せました!――

――まさに横綱の名にふさわしい強さを見せつけた!!――

――会場中から惜しみない拍手喝采が起こっています!――

――百合の花は両手を上げて応えている!――

――その姿には、今まで以上の貫禄を感じさせた!――

――今年もまた新たな伝説が生まれた瞬間である!!――


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