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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの想い・それぞれの願い

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一夜の星に願いを ④

 西経の三人は、事前に動画サイトで自主練をしていたことで実にスムーズに踊ることができていた。こっそり大学の相撲場に午前中に現れ練習していたのだ。あとは周りを見ながら流れに乗っていけば自然と踊れるものなのだ。


郡上踊りは途中から連には入るのも出るのも自由でありそのことに文句を云われることもないそんなころも郡上の気さくなと云うか観光客も参加しやすい一面なのだ。



 西経の三人はそれぞれ踊りながらもその中でも映見は体格もいいし、モレウノカ=ゆるやかに渦巻く文様が白地に深い赤で描かれている浴衣は周りの踊り手達の浴衣とは異彩を放っている。瞳・瑞希・映見の順番で流れていく連、映見と瑞希は瞳の踊りに魅了されていたと云うより・・・。


「瑞希先輩、主将ちょっと上手すぎません?」


「瞳の事だから私達との練習以外で特訓してたのよあれは、何事も負けず嫌いだから」


「映見も相当やったでしょ?」


「瑞希先輩だって?」


「瞳にボロカス云われるのは屈辱なんでね及第点ぐらいはできるように練習したわよ」


「私だって動画サイト見ながら練習しましたよ、でも周りの踊り手の人達の様子を見て真似ていく方が実戦的ですけどね」


「映見も負けず嫌いだから瞳に負けず劣らず」


「瑞希先輩だって、相撲の稽古ガチなんですもん」


「当たり前でしょうましてや特別待遇見たいな感じなんだから無様な負け方は絶対にできないって」


「でも、今日の相撲は文句のつけようはなかったと思いましたよ」


「それは、映見のおかげ感謝している」と瑞希は心底思っているのだ。


「それは私もですから瑞希先輩のカウンセリングなかったら潰れていたと・・・・・」


「私は映見にきっかけを作ってあげただけだけだから・・・やるやらない本人だから」


「感謝してます」


 踊りの連はゆっくり流れてゆく、みな思い思いに踊りの流れの中を・・・。


> 「郡上の八幡出てゆく時は、雨も降らぬに袖しぼる」 の歌詞で知られる郡上おどりは400年にわたって城下町郡上八幡で歌い踊り続けられてきたもので、江戸時代に城主が士農工商の融和を図るために、藩内の村々で踊られていた盆踊りを城下に集め、「盆の4日間は身分の隔てなく無礼講で踊るがよい。」と奨励したため年ごとに盛んになったものです。


そんな歴史背景から郡上おどりは誰もが、つまり観光客も地元の人もひとつ輪になって踊るという楽しさがあるのです。 ここに郡上おどりは「見るおどり」ではなく「踊るおどり」といわれる理由があ ります。  郡上八幡観光協会HPより引用


そんな中瞳が連から外れたのだ。


「瞳?」と瑞希は声をかけるが・・・・。


「瑞希先輩、あれって監督と山下理事長だけどもう一人は、えぇ・・・うん…もしかして葉月さん?」一瞬誰だかわからなかったが二人も連から外れる。 


 瞳と話していた倉橋が二人に話しかけてくる。


「二人とも似合ってるじゃない」


「監督、隣の方ってもしかして椎名葉月さんですか?」と映見


「どうも久しぶりね、て云うよりその浴衣?」と葉月


 葉月にとってその浴衣が気にならないわけがない現役時代着ていたそのものなのだ。


「似合ってるは、自分が着ていたものと同じ柄なんか見たことなかったら」と葉月は映見を見る


「たまたま浴衣の生地を探していたら見つけてしまって、葉月山さんが着ていたものと同じだって・・・」


「なんか自分で自分を見ているようで不思議ね」


「来られていたんですね」


「二人の相撲を見て見たくて、試合が終わったらすぐ帰るつもりだったんだけど・・・二人の対戦見て安心した。調子悪かったみたいだったから」


「先日、妙義山さんとタイへ稽古相手として遠征さしてもらいまして色々アドバイスをもらいました。私なりに考える機会をいただいて」


「そう・・・・」


 葉月は妙義山と会って聞いてはいたがそのことは敢えて云わなかった。


西経の三人はそれぞれ真奈美達三人に今日の踊りの課題曲をレッスンすることに・・・・。


 瞳は、理事長である山下紗理奈・映見は椎名葉月・瑞希は真奈美を相手にすることになったのだ。


「山下理事長はじめまして西経女子相撲部で主将しています吉瀬瞳と申します」と一礼をする。


「こちこそあなたが西経の主将か真奈美が信頼していると聞いているよ」


「監督は私にとって女性としての生き方のバイブルだと思っています。離婚と云う失敗はしていますがそれも含めて・・・・」


「真奈美から聞いていたとおりだな」と云いながら僅かに笑ってしまった。


「監督が何か?」


「いや・・・話は違うが青年協力隊の件なんだが、女子相撲関係者としては歓迎だけどいいのかいお前さんみたいな優秀な人材はもっと違う選択もあると想うが?」


「女子相撲をとおして国際貢献のような事ができるのならそれもありかと実際OGのみなさんが活動されているのを見まして私もと思いまして」


「そうかい・・・協会としても女子相撲が世界的に更なる発展を目指しているしビジネスとしても、その意味ではあなた見たいな人材が加わってくれることは大歓迎だし期待している」


「ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります」


「じゃレッスンの方頼むよ」


「はいよろしくお願いいたします」


 瞳が想像していた理事長とはだいぶ違っていた。自分が相撲絡みで海外協力隊員として行くことを知っているなんて・・・・。山下紗理奈が長きにわたり理事長の職をしている訳がわかたような気がしたのだ。


 瑞希は倉橋相手にレッスンなのだが・・・・・。


「わかってますよね?」と瑞希は念を押すように・・・。大会前に瑞希が大会後に郡上踊りに参加することをちらっと云ったのだ。別にそのことに真奈美は文句など云うはずもないのだが相撲の大会が近づくに連れ郡上踊りのことが頭を過る。真奈美は密かに相撲場で練習してるところを瑞希に見られてしまったのだがそこは瑞希との秘密として・・・・・。一緒に泊まりませんかとも云われたが真奈美としては一緒に泊まるわけにはいかないので夫である光に迎えに来てもらう手筈まで用意していたのだが、まさかの理事長との宿泊は想定外。


「わかってるわよそれわそれで難しけど」と真奈美


「間違っても免許皆伝の木札とか貰わないでくださいね、監督ガチだから大体おかしいとおもったんですよ、急に郡上に行くからなんって云うから、「私が心配だから」とか云いながら本音は郡上踊りとは、て云うか用意していた浴衣どうしたんですか?」


「理事長が来るどころか食事なんて想定してないしましてや葉月さんまで来るとは想わないし、そんな状況で浴衣持参で大会来たなんて云える訳ないでしょう理事長に倉橋は大会そっちのけで踊りに来たのかとか云われかねないし」


「意外とそう云うところ気にしーと云うか、それで借りた浴衣がそれですか?華やかではありますが歳との整合性がとれてないと云うか・・・」


「あなたも理事長と同じこと云うのねまったく」


「云われたんですか?」


「悔しいから気持ちは18歳って云ってやったは!」


「18歳って・・・・」


「こうなったら完璧に踊って免許皆伝よ、と云うか何なのよ瞳の自信に満ちた踊りは、どんだけ練習したのよあれ」


「瞳の負けず嫌いは一番しってますよね?」


「団体戦の敗因は瞳ね!それも踊りの練習のしすぎでまったく話にならないは!」


「監督だって、人のこと云えないじゃないですか」と瑞希は小声で


「はぁ、今なんか云った!」



 映見は、葉月に今日の課題曲のおどりをレッスンしてる


「さすが葉月さんですね、マスターするのが早いと云うか」


「映見の教え方が上手いのよ、でもまさか郡上踊りに参加するなんて考えてもいなかったから」


「葉月さんはもう相撲の大会などには来られないと想っていたので、ただいらしていたのなら声ぐらいかけてほしかったですけど・・・」


「そうね、ちっと大人げないわねだったら来なければよかったのだから」


「でも全然気がつかなかったと云うか今見てもすぐはわからないです」


「体形大分変わったからね、郡上踊りなんって頭になかったから・・・その柄の意味わかる?」と葉月


「いいえ」


「アイヌ文様には魔除けの意味があるのその渦巻き状の文様は風や波をあらわしていると云われているは、私の血にアイヌ民族の血が流れているかどうかわからないけどね、それより二人の決勝戦を見れたことだけでも来たかいはあったわ」


「葉月さんとはもう会えないのかなとも想っていましたがまさか郡上で会えるなんって」


「理事長や倉橋監督も来ていたのも何かのめぐり会わせなのかもね」


「私・・・・・」


「映見、次、もしあなたと会うことがあるのならそれは、あなたが何かしらの決断をする時よ、三年後のその時私も決断するその時に本当の意味での女子大相撲に終止符が打てる。あなたの決断がどうにせよ・・・・」


「葉月さん・・・・」


「自分の人生なんって自分の思い通りなんかならないことのほうが殆どよでもそれを努力で手繰り寄せることはできる。最後は自分しかいない自分しか・・・・」


「はい」


 葉月にとって稲倉映見は自分が描いていた自分・・・・。もし、西経に行って文武両道を全うした時、私は競走馬の仕事に行ったのだろうか?多分・・・・迷った挙句に女子大相撲に・・・


(あなたが女子大相撲力士になるチャンスは本当に一回しかないもしチャンスを勝ちとったのなら、私の相撲の魂を映見に・・・・)


 それぞれの想いを踊りで表現するように上手いも下手も関係なく、踊り手達と歌い手の阿吽の呼吸が自然と生まれる。夏の夜の舞台は短くも永遠に続くかのような・・・・。

               







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