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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの想い・それぞれの願い

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一夜の星に願いを ①

-----相撲関係者用駐車場--------


西経の三人と明星の面々は別れ際の立ち話。


「とりあえず、前哨戦は私の勝ちと云うことでよろしいでしょうか?さくらさん」と映見


「そんな事云われなくたってみんな見てたんだからわかりますよ全く、少し性格悪くなりましたよね」とさくら


「でも、さくらにとっては映見が調子が戻ってきたことは嬉しいことでしょ?」と瞳


「それはそうですけどなんか映見さん調子に乗っていると云うか・・・」


「こんなこと云っているけど本当はあなたとの対戦楽しみにしていただろうし、この前の出稽古に来てもらった時のような状態だったら辞退も考えていたぐらいなのよ、ねえ映見」


「主将、余計な事云わなくていいですよ全く」


「とにかく、さくらはまずは西経の合格を勝ち取ることが最優先、わかった」


「はい、まずは西経の合格を決めること、それが決まれば全国大会は万全な状態で映見さんに挑めます!」


「で、さくらはもう直接家に帰るの?」


「これから福井に遠征して強豪神崎高校と明日練習試合なんです。島尾先生が予定組んでくれて」


「そうなんだ、神崎高校は四位入賞だったよね」


「だから、今日は神崎高校の相撲部でキャンプなんです」


「なんか楽しそうね」


「みなさんは?」


「郡上踊りに参加しようかなぁって」


「えっ、いいなぁ」とさくら


「郡上には来ているんだけどなかなか郡上踊りには参加できなくて、でも今回は泊るところも確保したからそれでね」と瞳。


「そうなんですね、ちょっとうらやましいけど」


「今日の郡上は相撲大会はもちろんなんだけど大学生最後の想いで作りじゃないけどそんな意味もあるの年明けると色々忙しくなるんで」


 そんな話をしていると明星高校のハイエースワゴンが選手達の脇に到着して乗り込んでいくとそのまま駐車場を出ていた。


「じゃーうちらも行きますか」と西経もミニバンで三人を乗せ駐車場を出ていった。


駐車場を出て国道156号を南下し郡上八幡へ、車内の会話は今日の相撲の話ではなく・・・。


「瞳、どっかのホテルかなんかに泊まるの?」と瑞希


「町家を借りたから」


「町家?」


「盆踊り会場の近くの家を借りたのよ、その方が気兼ねしないでいいでしょ」


「町家か、なんか小京都って感じなんでしょうね・・・よく知ってますよね主将」と映見


「別れた彼氏とね・・・・」


「えっ・・・」と映見が云うと小声で隣のキャプテンシートに座っている瑞希が映見の頭を引っ叩いたのだ


「空気読めよ」と瑞希


「どうやって空気読むんですか!」と映見も小声で


「映見、和樹君とはどうなの?」


「えっ、どうなのって云われても和樹は東京ですし・・・」と映見


「そうよね、遠距離恋愛だものね・・・でも知らないほうが良いこともあるし」


「・・・・」(ちょっとそれってどう云う意味なんですか!)


 そんな話をしながらも車は郡上八幡へ・・・・。



-----------郡上八幡城-----------


 【文豪 司馬遼太郎を魅了した美しい山城】


 司馬遼太郎の著書「街道をゆく」のなかで郡上八幡城を訪れた時の想いを綴っている。


 葉月はそんな山城の天守閣から郡上八幡の街並みを見ていた。


>「相撲はあなたの人生を変えた、屈辱だっただろうけど・・・でも、いまのあなたがいるのは女子大相撲のおかげであることは紛れもない事実。妙義山があなたをスカウトしていなかったらあなたも死んでいたんじゃないのかい!」


 中島京子に云われた言葉が頭を過る。


(確かにそうかもしれませんね)


 葉月は城内を散策していく、葉月の体重が重いせいもあるのかもしれないが床が「ギシギシ」と音を立てる。五階の天守閣から一階へ木製の階段を下りていく。展示物を眺めながら城から出で入り口前のベンチに座り一服。時刻は午後五時三十分。ホテル雪花園は城の真下にあるのだが・・・。そんな迷いのなか葉月のショルダーポーチのスマホがバイブする。葉月はスマホを取り出し着信相手を確認する。


(美香さん(遠藤美香)・・・・)


「久しぶりだね葉月」


「美香さんから私に電話何って?」


「もしかしたら出てくれないかと想ったけど・・・」


「なんでですかもう・・・」


「今どこにいる?」


「えっ・・・」


 美香の問いに一瞬迷ってしまった。素直に郡上にいると云うべなのか?


「紗理奈が郡上の相撲大会に行ってるらしいから・・・娘に郡上に行って今のアマチュア相撲を見るべきだと云われたそうだよ」


「妙義山に?」


「本当は、私も郡上に行ってみようかなとも想ったんだけど色々執筆の仕事が立て込んでいて時間作れなくてね、そう云えばあんたの連載評判いいらしいな旦那に聞いたよ、でもペンネームがなぁ、【夏葉】って?」


「私が育った牧場に名牝の馬がいてそれにあやかって・・・」


「あぁそう云えば旦那に聞いたっけ確かサマーリーフだっけ?」


「えぇ、まだ生きていて・・・北海道に戻ることに踏ん切りがついたのは彼女のおかげと云うか彼女が導いてくれたと」


「本当に牧場の娘なんだなお前は」


「私が女子大相撲協会で確固たる地位と仕事がてきるように理事長が動いていたのも先の大会での監督の件はその一つだと・・・なのに・・・」


「違うな・・・」


「えっ」


「それはちょっと前までの話だよ。娘が二代目妙義山を継いだことでもうお前の身は自由になった云い方悪いが紗理奈はお前から子離れができたんだよ、だからお前はもう紗理奈にとっては用無しって云ったらお前は怒るだろうけど・・・こうなることは紗理奈自身は覚悟していただろうよ、お前は相撲より競走馬を選んだそれでいいんだよ」


「美香さん・・・」


「ただ、遺恨が残るような別れ方はするなよ、お前が今の名声を得られているのは紗理奈のおかげでああることは事実なんだから」


「実は今、郡上に来ていて大会を見終わって郡上八幡城にいます」


「日本で最も美しい山城か・・・」


「理事長に関係者を通して食事を添われていて正直迷っていたんです」


「それで?」


「一択しかないなって・・・」


「そうか・・・それとお前に忠告しとくけど」


「忠告?」


「もう、小説書くとかはこれっきりにしてくれ!どうしても私の土俵に入ると云うのならおもいっきりぶちかまして土俵下まで叩き落してやるから」とスマホの向こうから美香は笑いながら


「わかりました。ただこれをけし掛けたのは美香さんの旦那さんですからねそこのところはお願いしますよ」と映見。


「勝にとって葉月山はヒロインだからねよかったよお前と同世代じゃなくて」


「だとしても、美香さんを選んでいた想いますよ」


「あ・り・が・と・うってなんかイラつくけどね」


「美香さん理事長お願いします。最高の相棒として、私には無理でしたから・・・」


「紗理奈にとって大相撲界でのお前との時間は忘れられない時をそれは物語のような時だったはずだ、今日が最後のつもりで・・・」


「わかりました」


「それじゃ」と美香の方から通話を切った。


 眼下に広がる郡上の街並みは若干朱色がかり夕焼けと云うほどではないが空も・・・。


 葉月は駐車場を向かい歩いていく、野面積のづらづみという手法で作られた石垣を横に見ながら駐車場へ・・・。


(今日が最後・・・)


 葉月は車に乗り込みディーゼルエンジンのプッシュスタートボタンを押し火を入れる。軽く身震いして僅かなカラカラ音を立ててアイドリングする。駐車場から出て狭い曲がりくねった山道を下りていく。屈曲した山道を下っていくと左側にホテル雪花園の入り口が、車をホテルの駐車場に入れるとそこには白のアルファードの運転席からから新崎一花が降りてきた。葉月もそのアルファードから駐車枠を数マス開け車を止めると運転席から降りロックした。


「来てくれたんですね葉月さん」と一花は葉月を笑顔で迎えた。


「さすがにこのまま会わずに帰るのもね」と葉月も笑顔で・・・。


「よかった本当に、ご案内いたします」


「一花、なんで理事長は郡上に?」


「えぇ、理事長御本人から私の方に連絡がありまして一か月ぐらい前でしょうか、プライベートで見に行きたいと云われて、そこで私が昨日は名古屋で支援していただいている企業の方と飲食をされて今朝、私が車で」


「そう・・・」



---------ホテル内 お食事処 長良川---------


 紗理奈と真奈美は対面で座りテーブルの端には氷が入った白木のワインクーラーに紗理奈の故郷群馬県永井酒造の【MIZUBASHO PURE】が入っている。


「紗理奈さん本当に私で・・・」


「私にとって真奈美は大事な人だから気にしないでよ、今日はあくまでもプライベートだからアマチュア相撲関係者とは話をしないつもりで来たから、相手も何か気遣ってくれたのか話しかけてはこなかったけど真奈美の指示か?」


「えっ?」


「真奈美なら適当にあしらっておけばいいぐらいの事は云うだろうけど」


「そんな、ご冗談を・・・まったく」


「それに近いようなことは云ったよな?」


「・・・・」


「わりやすいな真奈美は」と鼻で笑いながら視線は別の方向に鋭くなる。


(新崎・・・葉月!)


「失礼します。椎名さんをお連れしました」


 それを聞いて慌てて振り向く真奈美。


「真奈美さん」と葉月


「葉月さん・・・」


 葉月は軽く二人に礼をする。


「おまえは来ないと想ったから真奈美を誘ったんだ。お前はとっくに帰ったと想ったけどね」と云うと紗理奈は席を立ち新崎に耳打ちをし一旦店外へ・・・。


「葉月さん」と新崎は椅子を引き葉月を真奈美の隣に座らせる。


「大事なお客さんが来たのなら私はここでお暇させていただいて」


「倉橋さん、理事長から三名分の食事を用意するように云われましたので席に」


「でも・・・」


「多分、お二人と食事をしながら話す機会を理事長は切に望んでいたと想います」


「理事長は?」と真奈美


「今の理事長のお気持ちを察すればお二人に感極まった表情は見せられないと・・・倉橋さん明日車で迎えに来ますので、それでは私はここで失礼いたします」と新崎は店外へ・・・。


 真奈美はちらっと葉月の横顔を見る。極度に緊張していることが見て取れるほどに・・・。


(郡上の大会に来ていたなんって全然気づかなかった。紗理奈さんが急に郡上に来たのは葉月さんと会うため?)


 真奈美は葉月に何か喋ろうとするが何かその隙すら与えてくれないような緊張感が漂う。


 白木の入ワインクーラーにっている【MIZUBASHO PURE】が中の氷が溶けたのか「カタ」っと音を立てて動く。ガラス越しに見える外の景色は茜色に木々の緑の葉は黄色く色づくように・・・。





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