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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの想い・それぞれの願い

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花の命は短くも ④

 タイ・バンコクのニミブトル スタジアムで行われた大会は5000人と云う比較的小規模な会場で行われたが満員御礼で東南アジア10か国から成るASEAN諸国から女性力士達が揃い熱戦を繰り広げた。今回の妙義山の出場に関してはレベル的には格段の差がありゲスト的意味合いもあるのだが、それでもけして油断はできなかったがそれでも圧倒的な横綱相撲で優勝。タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど各国からの力士たちが妙義山に挑んだが、彼女の前に敗れ去っていった。それでも対戦力士も観客も圧倒的な強さでありながら対戦相手に対する姿勢などは感動と興奮そして相手に対する謙虚な態度はいかにも日本力士なのだ。


 そんな妙義山の姿を土俵下の関係者席で観戦している映見だが、午前中のアマチュア戦での出場はまったく云われていなかったのに、前日の夜一緒に泊まっているホテルの一室で妙義山から突然出場するように云われたのだ。


「アマチュアの大会に出場するなんって聞いていません!私はあくまでも妙義山さんの付き人であり稽古相手として・・・」


「そんなことあるわけないじゃない、稽古相手だけならあなたを誘うわけないでしょ」


「・・・・」


「プロ・アマ混合大会ではアマチュア二人に必要以上にプレッシャーをかけたのは私だから・・・でもそれは二人を更に飛躍させた、相撲も精神力も・・・二人には頭が下がるとくに映見さんにはね、私が遅れてきてチームに参加させてほしいって云った時、何をいまさらって云われたじゃない」


「あれは・・・」


「いまさらその話を蒸し返すとかではなくて、映見さんってこんなに心が強かったけって?」


「別に私は・・・」


「なのに意外ともろいと云うか・・・相撲に迷いがあるような気がしてね、今回あなたを誘ったのは百合の花関の提案なのよ?」


「百合の花関?」


「あなたが何か相撲に迷っているようだから私の遠征に同行させて気分転換させろって、私も大会以降のあなたの相撲は気になっていたし、そんな時に東南アジア協会の方から相撲大会にゲスト的な意味で参戦してくれないかって云われてね。そこにアマチュアへの指導めいた対戦も組みたいって、それだったら日本のアマチュア力士との対戦の方が相手もやる気が出るでしょうし勝負のしがいもあると想ってそこで映見さんを私から指名したのよ、さきの大会でもタイが出場していたからあなたの強さは見ているわけでだったらと想って、でも断られたらその時はしょうがないかって」


「何でですか?なんで妙義山関も百合の花関もなんでそんなに私を・・・私は女子大相撲に・・・」


「女子大相撲に来なさいよ!さくらは私に女子大相撲を目指しているって宣言したわ!あなたの目標は医師の国家資格を取り医師になること、でもそれだけでいいの?これだけ相撲に邁進してきて学生で終わらせるの?もちろんあなたが国家資格を取れたとしてそこから入門するのは年齢上限25歳未満で云えばぎりぎりましてやそれとてそこには学生もしくは実業団での成績が加味されたうえでの話。一緒に大会で戦ってきた力士として云うわ。私は映見やさくらと本割で勝負したい!それは百合の花さんもきっと同じのはず!」


妙義山の真剣な目に嘘はない。まっすぐ視線は映見の目に・・・。


「私はさくらみたいにきっぱり女子大相撲に行きたいとは云えないです。今の私の目標は確実に国家資格を取ることそれが大前提です。私にとって三年後の未来にあの大会のような相撲ができているのならその時は、女子大相撲に行きます。私が自分に納得できる相撲が取れるのなら・・・」


映見の真剣な目に嘘はない。まっすぐ視線は妙義山の目に・・・。


「わかった。それだけ聞ければ私はもうそれ以上の事は聞かない。勉強と学生相撲を両立するのは大変でしょうけど、私からすると羨ましいわ。目指すものがあってそれを今までの糧にその先へ・・・なら迷いもなくなる迷っている時なんかないわ今を精一杯生きればいつのまにか目標に到達する。私も色々あったけどあの大会に私のすべてを賭けた。そして、これから私がやるべきことは女子大相撲のさらなる飛躍のために日本の横綱として世界の力人達と戦い日本の女性力士やアマチュア選手達から目標にしてもらうこと、もちろん世界の女子相撲を愛さるように引退された葉月山さんのように、今はそれが私のモチベーションよ」


 妙義山は少し笑みはを浮かべながら


「その意味ではこの大会への参戦って」


「東南アジア女子相撲協会の設立には日本の協会が深くかかわっているしプロリーグもでき上って、この前の大会でもタイが出場して一回戦で敗れてしまったけど大きな一歩。今度の参戦は武者修行と云うより、東南アジアでの更なる女子相撲の発展のための参戦なの、その意味ではアマチュアの選手が増えてくれることも重要だからそこで稲倉映見は適任と云うことで私が協会にお願いしたの、世界のアマチュア力士はあなたに注目しているし」


「大袈裟な・・・」と映見


「少し盛ったけど」と妙義山は笑いながら


----------土俵下 関係者席----------------

 午前中は東南アジアから四か国の女子アマチュア選手と日本の稲倉映見とのトーナメント方式での試合が行われ、映見は危ない場面もあったが全勝で優勝。先の大会の優勝国のアマチュアメンバーとしての権威は守ることができたことは、映見にとっては一つの自信になったのは間違えなかった。


「今回はありがとう。さすがは西経の女王ね、監督があなたを最高傑作って云うのも納得だわ」と真子


「その最高傑作って云うのはちょっとやめてほしいんですけどね」とちょっと照れる映見


 映見は席に座って妙義山と各国力士との取り組みを見ている。そして隣には日本の協会から東南アジア女子相撲協会に派遣されている西経OGで元前頭の「肥後の山」(神泉真子)と談笑していた。


「真子さんにとって監督ってどんな人でしたてか?」


「なにいきなり、そうね頼れる年の離れた姉って感じかな監督は」


「姉?」


「西経の母とか云ったら「私はそんな歳じゃないわよ」って怒られそうだからね、歳の割には若いからね、それに再婚するってそれも元夫と・・・なんかそう云うところが意外とうぶと云うか乙女チックと云うか・・・どんな人?」


「実は、私が小中と通っていた相撲クラブの先生で・・・」


「相撲クラブ?・・・絶対相撲が絡むのねうちの監督は」


「でも監督にあれ以上相応しい人は多分いないと想います。まず監督を手なずけられる男性はなかなかいないと」


「手なずけられる?手なずけられてるんじゃないの?だって離婚して相撲部の監督になってそんでもって別れた旦那とまた結婚って、監督の方から結婚してください何って云うかな?」


「それが云ったんですよ。実は大学の稽古の見学と称して先生が来て・・・」


「はぁー?」


 映見は、あの夜の出来事を真子に話す。


「監督が泣いたんだ・・・ちょっと想像できないなぁー。監督は優勝しても私のいた頃は当然って感じで表情一つ変えなかったましてや泣く何って・・・。監督も歳を取ったのかな?でも、監督に幸せが戻ってきたのならOGとしてはすごい嬉しい。監督一筋で来られた方だから・・・未だに西経は女子学生相撲の女王だからね。ただ女子大相撲では伊吹桜以降幕内に上がってくる西経のOGがいないと云うのは、ちょっと寂しいかな監督としては」


「監督にとっては西経から女子大相撲に行くことにはあまりうれしくないような・・・」


「そうねぇ、女子大相撲は男同様厳しい世界だから、私が女子大相撲に行きたいことを相談したら積極的に賛成してくれなかったけどね、ただ私の場合は伊吹桜みたいに実力がそこまで備わっていなかったから、監督にお前は幕内にあがれるかどうかが限界だからなって云われて腹が立ってね」


「そんな云い方って!」


「でもね、結果的には前頭がやっとそこからさらに上には無理だった、相撲云々よりも気力がもう限界だったのよ、でもねぇ本当だったら私の実力からすれば前頭何って奇跡だったのよ。現役時代に監督から私が気落ちしている時をまるで見透かされているように手紙を送ってくれてね、励ましの文章なんって僅かで私の取り組みの事に関して事細かと書いてあって私の弱点の対処方法はヒントしか書いてなくて要は自分で考えろと、そこまで書くのならなんでって「カチン」ときたけど今考えるとあれが監督の教えなんだよね。答えは自分で見つけないと・・・」


 土俵上では妙義山が力士達に相撲を取りながら技術指導を通訳越しに行っている。廻しの持ち方などは指をどこの関節まで入れるとかなど事細かに、そして申し合い稽古で妙義山関もう何番しているのかと云うぐらい時間を忘れ・・・。


「稲倉は医師になるんだから女子大相撲には関心ないんでしょ?」


「もし三年後でも今日のような相撲ができているのなら行くつもりです。相当難しいかもしれませんができれば行きたいです。国家試験に合格してなお相撲で一定の成績を維持できるのか年齢制限の上下には特記事項がありますから」


「そうか・・・監督には云った?」


「それとなくは・・・」


「監督ならあなたをどう稽古していけば国家資格の合格と学生横綱の地位守れるのか考えているんじゃない。確かに厳しいし私も女子大相撲で力士としていたからわかるけど女力士の寿命は短い。そこに出産や子育てなどが加わるとしたらなかなか大変であることは事実。普通の大学出身者より二年のハンデを背負うわけだからそこは慎重に考えないと・・・」


「それは色々想うところもありますがまずは国家試験に合格することなので落ちたから女子大相撲に行く何って選択はないので」


「あたりまえよね。楽しみにしてるわ女子大相撲の関係者として、そして西経OGとして」


「全力を尽くします。誰のためではなく自分のため・・・でも倉橋監督は私が力士として土俵に上がっているところを見てもらいたいです。私の力士姿を・・・」


「映見、監督の事頼むわよ。意外と寂しがりやだから適当に遊んであげてよ」


「わかりました、ただいじり過ぎると爆発しそうなんで神経使いますよ、ハイ」


 大会の終了予定時刻はすでに過ぎているが会場は妙義山相手に三番勝負とはいえタイのプロ力士である横綱ヴィトティーラサン ヴィパラットとの相撲に白熱する会場のファン。ムエタイとは違う格闘技であるが、これたけ熱中する何かが相撲にある。妙義山はすでに試合を含めて三十番以上はしてるはずなのに全く衰える気配すらないどこかますます力が漲ってくるような・・・。



(私も妙義山さんと対戦してみたい!本割の土俵で・・・絶対に、勝負してみたい!)


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