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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの想い・それぞれの願い

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177/324

それぞれの道 ③

 東京発「のぞみ89号」は新丹那トンネルを抜けたところ、9号車のグリーン車に倉橋真奈美と石川さくら、そして稲倉恵映見の席にはさくらの彼氏である圭太が座っていると云うか寝てしまっている。


 真奈美とさくら隣同士の17Aと17B、圭太は通路を挟んで17Dに座っている。


「彼氏は爆睡してますけどね」とさくらをからかうように云う真奈美


「応援に来るなんって一言も云っていなかったのに・・・でもうれしかったです」とちょっと照れくさそうに・・・。


「さくらもいいのよ体力的にも精神的にもきつかったでしょうから寝ても名古屋に近くなったら起こしてあげるから」


「えぇ・・でもなんかまだちょっと興奮してていつもなら爆睡しちゃうんですけどなんか・・・」


「そっか、まぁ私もちょっと興奮したけどね、でもさくらも映見も本当にいい相撲してくれた。日本の勝利は二人抜きには無理だったから、映見にはちょっと厳しい相撲になってしまったけど・・・」


「映見さん、本当になんとも・・・」


「心配しないで、検査結果も異状はなかったし念のために今晩は様子を見て何もなければ明日には帰ってくるから、今晩は葉月監督が一緒に病室に泊まるって云ってたわ。ちょっと大袈裟だと想うけどね」


「映見さん、葉月山さんのファンだから・・・なんか羨ましいです」


「さくらは葉月山もそうでしょうけど桃の山でしょ今は?」


「両方です。天秤にかけるようなことはしたくないんで・・・でもどっちと云われたら桃の山さんですかね、今日の相撲、本当に凄かったと云うか怖いくらいに、私にはあんな相撲取れないです」


「私は、桃の山を馬鹿にしていた。映見のほうが上だって相撲も精神力も、でもそれはとんでもない見当違いだった。さすが女子大相撲の横綱。元妙義山さんの娘・・・アマとプロの違いは歴然とあることを見せつけられたわ。それでも、さくらも映見も劣ってはいないと思ってるし今日の大会で十分に二人の強さを見せつけられたアマチュアも日本は強いんだぞって、さくらはこのあとジュニアの世界大会ががあるんだから」


「あぁそうでした。少し休みたいのが本音なんですけど・・・」


「そこは島尾監督が考えてくれるでしょ?当然、そこも視野に入れてるはずだからうまくいっている島尾との関係は?」


「いってますよもちろん!ただ・・・・」


「ただ何?」


「週末と日曜の特別授業が・・・・」


「島尾から聞いたけど何、西経目指してるんだって?」と真奈美はニヤニヤしながら・・・


「あぁぁ、色々考えたんですけどやっぱり西経女子相撲部に入りたいんです。そのためにはちょっと足らないかなぁーって、模試はそれなりに取れているんですけどもう一息足りないと云うか・・・」


「朋美にちょっとあなたの学業の事聞いたけどちゃっんと頑張ってるじゃない。今のペースでうまく相撲と両立しないさい。西経女子相撲部は学業もできないと部員としては認められないんだから、相撲以上に厳しいわよ」と真奈美はさくらの頭を撫でながら


「頑張ります!」


「私も一応名ばかりだけど客員教授やってるからそれなりに・・・一応、島尾には公募推薦の話はしてるあるからただそれだってちゃんと学生としてやるべきことはやってもらわないと、大学が認めても私が認めないと不可だから」


「えっ・・・あぁぁですよね」と顔は笑いながらも実に複雑な表情のさくら。


「ところであなたどこの学部を受けるの?」


「国際学部を・・・」


「国際学部?」真奈美は意外な顔してしまった。


「今日の大会もそうですが女子相撲は国際的なスポーツになっているし百合の花さんも桃の山さんも海外の選手と英語できっちり話ができてみなさんすごいなぁーって、ジュニアの大会とか行ってももう少し世界の事を知っていればいけないと痛感することもあったりして・・・だから国際学部、できればグローバル・コミュニケーション学科に行きたいと・・・」


 (さくらって意外ねぇそんなことを考えているなんって・・・)


 真奈美からすればどこか幼さが残る女の子って感じだったけどちゃっんと先の事を考えていることに少し驚いた。西経のグローバル・コミュニケーション学科はけして特に難しいわけではないけど偏差値で云えば65前後だと云われている。さくらの成績からするともう一息というのは確かなのだ。


「そっか、さくらがちゃっんと色々な事を考えていることわよくわかったわ。付属高校の時のことは私もいけなかったわ。単に部員としてさくらをほしいと想っていたことに今考えるととても恥ずかしい。文武両道とか云っていながら・・・」


「西経の推薦を断ったのわ・・・」


「映見でしょ?」


「えっ」

 

「云いたいことはないわけではないけど、さくらは明星に行って正解だったのよ。実際にあなたの相撲は飛躍的にうまくなっているし島尾監督の指導のおかげ、それから良い稽古相手であり彼氏に出会えたわけだから、それでよかったのよ」


「でも、今度は本気に西経に行きたいんです。映見さんや他の部員の人達と切磋琢磨したい。相撲も勉強も・・・」


「わかったわ。そこまで云われたら私も協力できることはするからあなたはちゃっんと自分のやるべきことをやって、わかった」


「はい!」


 倉橋の学生時代とは学生の意識は変わった。少なくとも女子大相撲も存在していなかった時代、女子相撲などやっている女子なんか奇異な目で見られていたし女子相撲人口そのものが数百人の部類だった。それが今や世界的に認知され海外では日本以上の人気と競技人口、そのなかにおいてプロ力士が各国で誕生し近々世界ツアーなるものも始まり女性力士そのものが国際的視野を持たなければならないある意味男子の大相撲とは一線を期すのが女子相撲であり女子大相撲なのだ。


 さくらを含めアマチュアのトップクラスの選手は国際大会への参加も多くなりその先には女子大相撲が視野に入る。さくらが国際学部を希望するのもある意味の必然なのだ。


「大学に入れば勉強も相撲も濃密になる、特に女子相撲部はね。それとあくまでも自主性を重んじる相撲も勉強も自分で自分を管理できないものは自然と淘汰される厳しい世界。それは女子大相撲もそうだけど・・・さくらは女子大相撲は考えているの?」


「当然です。伊吹桜さんや江頭さんみたいに相撲だけではなくそれ以外の事にも社会人として通用する力士になりたいです。ハイ。まずは映見さんを撃破して女子学生横綱の称号を取りたいです」


「まずは映見か・・・そうねぇ。あなたにとっては映見は憧れであるけどライバルになるのね真の意味での私も楽しみだわ」


「私にとって映見さんは一つの理想とする選手、そして女性だから・・・」とさくら


「そっか・・・」


 新幹線は富士川鉄橋を渡る。昼間であれば富士山が見えるところだが・・・。


(さくらは最後は力士としての道を行くのね・・・)


 真奈美はさくらが女子大相撲力士としてへの道を進むのであろうと云うことを改めて認識した同時に脳裏に浮かぶのは映見の事・・・。女子大相撲に行きたいような素振りもみせたこともあったが真奈美の本音は素直に医師になることが彼女にとっては最善であると・・・。でも・・・。


 新幹線の窓ガラスに映る自分の表情は納得はしていないと言いたげな表情そのもの。映見がアンナに土俵下まで叩き落され一時、意識が怪しくなったとことに激しく動揺してしまった。相撲はコンタクトスポーツましてやフルコンタクトスポーツなのだから当たり前だし監督になってから似たようなことは多々あった、それでもプロ相手の相撲はアマとはまるで違った、いくらプロがアマに対しての相撲に一応のルールはあったが、実際にはそんなことは関係なかった。そんなことは最初からわかっていたのに今更ながら・・・・。


 西経からは何人も女子大相撲力士になっている。引退後もそれぞれの道で活躍している。それは幸い大きな怪我もなく引退できたからであって、致命的になるような身体の障害になってしまった者はいなかった。今日の映見とアンナの一戦でその恐怖が頭を過ったのだ


現役力士で幕内に上がっているのは関脇の伊吹桜、今度の春場所は大関昇進がかかる大事な場所。監督としてOGの活躍は嬉しくないはずはないましてや三役クラスの力士は西経初。本来ならはっぱをかけて檄を飛ばすのだろうか、歳をとったせいかそれよりも怪我無く無事に力士生活を終えることを願うことが多くなった。そんなことを考えることが多くなった時に起きた映見のアクシデントは医師を目指している者が行く場所なのか?もし、映見から相談を持ち掛けられたら私はなんと回答すればいいのか?


さくらはいつの間にか寝てしまっていた。優勝と云う形で終わった今度の大会はさくらにとっても本当にきつかったと思う。海外勢のアマはおろかプロも相手にしなければにらないプレッシャーは相当なものであったはず、それでもやり遂げた。間を置かずの世界ジュニアは心身とも疲弊しているうえに今回の大会の活躍はさくらに対する各国のマークも厳しくなる。個人・団体の優勝を目指すさくら、そして日本チーム。


(さくら、今回はお疲れ様。今度のジュニア世界大会は今日以上に厳しくなるでしょうけど落ち着いてやれば大丈夫。怪我しないで無事に終えてよ)


 真奈美はさくらの頭を撫でながらそんなことを思う。さくらに西経を目指していると云われたことは正直嬉しかった。力づくとは云わないが付属高校が獲りに行ったのは単に勝ちたかったら・・・。それを妨害したのは映見だったのも薄々は気づいていた。


(女子大学生のリーグ戦も始まる。私も気持ちを入れ替えなきゃねぇ。映見は少し休ませようあなた抜きでの試合は厳しいものもあるけど・・・)


 のぞみは浜名湖を通過する、もうじき名古屋。四月から主将も正式に吉瀬瞳で女子相撲部が始動する。そして真奈美も・・・。

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