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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの頂へそして扉の向こうの世界へ

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最終決戦 ! 日本vsロシア  深緋色の決意 ③

百合の花はただ一人、花道の出入り口で立ったまま土俵を見つめる。映見のアクシデントで璃子・さくら、そして瀬島は映見と一緒に出たまま帰ってこない。土俵から瀬島に担がれ出ていく映見は完全に意識がないわけではなく朦朧という感じだったがそれでも脳震盪は意識があっても軽く見てはならないし後遺症だって・・・。


「百合の花」


「璃子さん、さくら・・・映見は?」


「救急車で搬送してもらった。映見、意識は多少はっきりしていないところがあるから検査して様子を見るって、瀬島さんと真奈美さんが一緒に救急車に乗っていったから」


「そうですか・・・」


「映見さんなら大丈夫です!きっと・・・」


「そうね、さくらが云うのなら」と百合の花はさくらの頭を撫でる。


「百合の花さん・・・」


「さくら、土俵下行って桃の山の応援頼むわ」


「あっっ・・はい!」


さくらは百合の花に一礼すると慌てて土俵下に走っていく。


「百合の花」


「はい」


「桃の山見て何か気づかないか?」


「えっ?」


百合の花は桃の山を見て正直よくわからないが違うと云えば・・・


「締め込みの色・・・ですか?」と百合の花は自信なげに・・・


「あの締め込みの色の意味わかるか?」


「色の意味ですか?・・・すいませんちょっと」


「あの色はこきあけとかふかひとか呼び方は色々あるらしいがあの深く赤色は燃え上がる炎のようにそれはまるで己の命ように・・・あの色は初代絶対横綱『妙義山』だけに許されている禁色きんじきなんだよ」


「桃の山の母親・・・」


「別に本当に禁色ではないがさすがにあの色の締め込みはつけられないよ覚悟がなければ、娘が入門した時、相撲ファンの誰もが二代目妙義山を期待したそして横綱に昇格した時に誰もが妙義山に改名すると想ったがしなかった。桃の山にとって妙義山と云う名を継ぐ気かあったのかなかったのか・・・それが今はあの深緋色の締め込みをつけているってことはそう云う事なんだろう。理事長の気持ちを察すると嬉しくないはずはないだろうけどなかなか複雑なんじゃないか・・・・百合の花知ってるだろう桃の山の横綱昇進の経緯」


「まぁー・・・って璃子さんから聞いたんじゃなかったでしたっけ?」


「そうだっけ?まぁーいいか。理事長は最後の最後まで首を縦にふらなかった。最低でも優勝しなくてはって、そうでなければ世間が認めないって、でも世間は納得した。そして、横綱昇進後は百合の花とか云う東の横綱が体たらくで桃の山が二場所連続優勝、結果的には横綱に昇進させたのは間違いではなかったが今思うと理事長の云う通り優勝してからさせるべきだったのかもしれない。百合の花の一人横綱で場所を通して行くことに私も含めてだけど興行的にと云う事もあって、でも本人を前に云うのもあれだけど一人横綱で通してお前にプレッシャー掛けた方がお前にとっては良かったんじゃないかって・・・」


「すいませんねぇ・・・百合の花が体たらくで」百合の花は苦笑してしまったが


もちろん璃子は本音で百合の花に云っているわけではないが何か闘志と云うのが足りないと云うか少し丸くなってしまったのか知れないが葉月山に牙を向けていた百合の花が好きだったのだ。しかし、そんな百合の花も葉月山が担っていた女子大相撲力士としての重鎮の役割をしなければならない立場になったのだ。


「葉月山は百合の花がいたから最後も輝けていた。葉月が最後まで力士として心底やり切れたのは百合の花がいたからって云ってたわ。なんか羨ましいよおまえの事が・・・・、この大会で桃の山が勝てば一段と強くなるよあいつは、でもそこにはどうしてもライバルがいる。百合の花、桃の山はお前の闘志に火をつけられる力士になるそ゛!お前だってまた燃えるような相撲したいだろう?初代絶対横綱だった『妙義山』が二代目として復活する。打倒妙義山!百合の花との名勝負期待していいよな!」


璃子は百合の花をけしかけるように、それでもそこには璃子なりの想いもあるのだ。女子大相撲ファンは必ず名勝負は何と問われればやっぱり葉月山と百合の花の勝負を上げる。葉月山を唯一本気にさせた力士は百合の花以外いなかった。それは百合の花とて同じ、絶対横綱であり絶対女王!


そんな死闘のような相撲は心身ともに消耗しながらも女子大相撲力士としてかけがえのない時間だった。しかしそんな時にも終わりはやってきた。そして葉月山と入れ替わるように桃の山が横綱として百合の花の前に現れた。どちらかと云うともともと勝気な性格な百合の花からして見れば妙義山の娘の桃の山など燃えるような相手なのだが・・・。


 常に葉月山に立ち向かっていた百合の花、今度は迎え撃つ立場になった時そこには燃えるようなものが湧かなかった。桃の山と云う突飛っきりの生粋の力士は・・・。


「優勝していないのに横綱に昇進させてしまったことは桃の山にいらんプレッシャーをかけてしまったんだ。横綱に昇進してから優勝もしているんだからそんなことはもう終わってる話だと想ったが桃の山はその事を今でも気にしている。そしてもう一つは海外力士との対戦成績に目ぼしいものがないこと、そこは相撲経験の足りなさがある。


 本当ならアマチュアでそう云うのも経験していれば別なのだがなかったからな、そこは稲倉や石川などのアマチュアの方が海外力士との対戦も豊富にある。ここまでの対戦見ても全然ものおじしないどころか逆に燃えるところなんかは経験の成せる技とでも云うのか、私も含めて協会は桃の山を大事にしすぎたんだ。十和桜の件もそうだが力士の中にはそれを面白くないと想っている者も多数いると思う。でもそれでも桃の山は自力で勝ってきたそこに嘘はないんだ!」


「璃子さん・・・」


「だからこさ桃の山には力が落ちたとはいえ女子相撲最強と云われて久しい『アレクサンドロワ アンナ』を倒してほしいんだ!そこには日本の女子相撲の話もあるがそれ以上に桃の山自身のために、あの締め込みをしたと云う事はこの先の相撲人生への覚悟をしたことだど・・・百合の花!」


「はい」


「今度、本割で桃の山と・・・いや妙義山と対戦する時はお前の闘志に火をつけてくれるよ、きっと!」


「そうですね。私も理事長の娘と云うのが無意識の中にあったのかもしれません。もちろんそこに遠慮何ってありませんよ当然ですけど、でも何かリミッターのようなものが邪魔をしていたのかもしれません。私も自分の気持ちをまっさらにして挑みますよ、楽しみになってきました!」


「そうか・・・ところでお前何時結婚するんだ?」


「結婚?」


「医者の男と交際していたなんって驚きだよ。百合の花にしてみれば驚愕もんだよいつから付き合っていたんだよ」


「付き合ってなんかいませんよ。それにさっき知り合ったばかりで・・・」


「はぁー・・・百合の花、別に恥ずかしがることでもないだろうに・・・医師でが体もいいしちょっと男前で・・・・もう寝たのか?」


「・・・・・」百合の花の顔がいっきに真っ赤になる。


「百合の花そんな噂も全くなかったのにいきなりだもんなー。いいんじゃないかお前ならいい奥さんになれそうだし相撲の相手もしてくれるんじゃないか?」と含み笑いの璃子


「凛子さん!もう少し云い方っていうのがあるんじゃないですか!わたしはまだ付き合ってもいないし隆一さんがどう云う方もよく知らないんです!そもそも今そんな話する必要ありますか!l隆一さんに余計な事聞いたりしてないですよね!」


「隆一さんだったって・・・普通は瀬島さんじゃないのかい百合の花関・・・」


「えっ・・・はぁ・・・」


「まぁあれだよいいじゃないかお似合いだよ。女子大相撲力士の結婚相手ってだいたい大相撲力士だろうまぁそれでもいいんだけど理事長なんかさ絶対横綱だったわけじゃんそれで旦那は大関ってなんか想像できちゃうだろう旦那は大相撲力士なのに腰が低くくて人当たりいいだろうそれとは対照的に勝負の鬼『妙義山』さんだぞその子供が桃の山、鬼が天使を産んじゃったみたいなもんだろう」


「璃子さん・・・ちょっとそれは・・・」と急に小声になる百合の花


「多分、旦那の鷹の里さんに似てるんだろうな桃の山の性格は大関止まりだったけど私は好きだったよ勝負強さは断然『妙義山』さんだったけどな本割で見合うともぉーそれだけでどっから来るのかねぇあの威圧感は今でもどうも苦手で・・・」


「璃子さん・・・」とますます小声になる百合の花


「なんだよ百合の花さっきから蚊の鳴くような声で」


「悪かったね。鬼であげくに天使を産んでしまって」


 璃子は後ろを振り向く


「えっ・・・あぁ・・・」


「相撲はたいしたことなかったけどまぁ一回だけ優勝してるんだったな・・・璃子さんよ」


「理事長・・・えっ・・・今のはですね」


「元大関 藤の花!春場所前にちょっと時間作ってくれるか?」


「えっ・・・はい、もろんです」と璃子の答えにNOはない。


 理事長である紗理奈は璃子を見ながら『ニタッ』と緩い表情を見せながら


「そうか嬉しいな。ガチ相撲してくれるってことでいいか?協会にある相撲場でお互いぶっ倒れるまでやろうな!藤の花!」


「ガチ相撲・・・ですか・・・いや・・・」


「そうだよ。スピードと卓越した技で格上の力士を翻弄させた名力士であったあなたに無理なお願いで申し訳ないけど」と穏やかな表情で璃子を見る。


「わかりました。そこまで云われては・・・それじゃ改めて日時の方は」


「ありがとう璃子。いゃーなかなか相手にしてくれなくて誰も、鬼の妙義山とかいつの話してるんだか全く」


「ですよね!誰でしょうね本当に・・・」と泣きそうな顔で相槌を打つ璃子。


「百合の花」


「あっはい」


「怪我は大丈夫か?無理はするな。春場所、もしあれだったら秋場所も休んできっちり直せ!だいぶ前から悪かったんだろう?だから二場所休むぐらい誰も文句は云わないし云わせない。だからきっちり直してから復帰しろいいな!」


「はぁっ・・・でも横綱として・・・それに桃の山関一人に負わせるわけには」


「百合の花!桃の山も横綱だ。横綱の責務と云う事を理解していればそれぐらいのことで潰れているようじゃ引退したほうがいい。桃の山はまだまだ百合の花の足元にも及んでいない。横綱は勝てば責務を果したそれで終わりじゃない。


女子大相撲全体と云う大局をも見て相撲道に邁進していくんだ。お前が葉月山をライバルに相撲道に邁進してきたのは単に勝負だけではないはずだ。まだまだ桃の山の世代はアマチュアに毛が生えたような物だ。百合の花!だからこそ今年はゆっくり休め!心技体すべてを万全な状態にして復活しろいいな!」


「理事長・・・」


 百合の花は胸が詰まるほどに理事長の言葉が・・・。妙義山引退後は女子大相撲の発展に尽力してきた。その厳しさは力士以上にそれゆえ協会内で対立し孤立したこともあったがそれでも己を信じて・・・。紗理奈は土俵上に立つ娘である桃の山を見る。深緋色の締め込みが紗理奈の魂を熱くする。女子大相撲創成期の苦しい時代をそして海外の女子相撲に後れをとっていたあの時代を・・・。


 紗理奈は百合の花に背を向けながら一言。


「二代目妙義山をとことん苦しめてくれそして真の横綱に・・・頼んだよ百合の花」


 紗理奈は軽く右手を上げると館内の関係者席の方へ向かい歩いていく。


(今まで娘の取り組みを間近で見ようなどとは死んでも思わなかった。独断で新弟子検査を受けたことの怒りはどうしても許せなかった・・・でもここまで来たんだな。でもこの勝負は今までで最高に厳しい相撲になる。気持ちが折れたら負ける!負けたら・・・・妙義山も終わる!)








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