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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの頂へそして扉の向こうの世界へ

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決戦 ! 日本vsロシア ⑨

 桃の山がタオルとミネラルウォーターを渡す。


「口の中をこれで濯いで切っているだけだと思うから」


 映見は口に水を含みバケツに吐き出す。薄く赤茶けた液体が口の中から出るが見た目ほどは切っていないようだし舌も切っていない様子。


「映見!」真奈美は慌てた様子で顔面を見て口の中を見ると一瞬安堵した様子は見せるがすぐに厳しい表情に戻る。


「もう十分だわ映見。棄権してあとは桃の山関に任せるのよ」と真奈美は云うと葉月監督にその旨を云おうとした時、映見が一言。

「次の試合も出ます。棄権なんかするつもりはありません。続行です!」

「映見!何云っているのもう十分でしょ!あんたは十分仕事をした。あとは横綱に・・・」

「続行です!いいですよね横綱!」


映見の顔にはタオルでふき取ったとは云え若干乾いた血がついているがその表情の奥に燃え滾っている闘志が桃の山には痛いほど感じ取れていた。


(今のあなたなら棄権何って選択はしないでしょうね。それは自分のため?それとも私のため?)


桃の山にとって稲倉映見はアマチュアであるけど相撲もそして気持ちの上でも劣っているように感じていた。それ以上に相撲への情熱も・・・でも今は違う!


(映見、あなたは私に火をつけさせようとしていると云うより自分から私に火をつけるように凄いわね。私はアマチュア選手が間違えて横綱になってしまった見たいなものだから、そのことに薄々は感じていたから・・・。私の激励であると同時にそれは私に対する挑戦状ってところなのね)


 桃の山は映見を睨むように同じく映見も、二三秒の沈黙はそれだけでお互いの想いは一致した。


「映見!万が一の時は私が絶対にアンナを倒す!だから自分の相撲・・・全部出し切って勝負して!」

「了解です!」となぜか敬礼する映見。それを見て敬礼する桃の山。


 さっきまで睨みあっていたような表情が若干緩んだような・・・。


「私はそんなの認めない!世界最強のプロ力士相手にそんなの絶対にとらせない!映見にそんな無謀な相撲は・・・」


 映見で勝負を決めるとか心の中で想っていたことがロシアの本気と云うか攻撃的いや暴力的な相撲に真奈美自身が怖気づいていた。ついさっきまで「桃の山じゃー」とか云っていたのに・・・鮮血と映見の少し腫れた

ような顔がこの大会の厳しさを否応なく思いしらされた。


 正直ここまでの相撲になることは真奈美自身は考えていなかった。厳しい相撲ぐらい覚悟はしていたがその度合が全く違うのだ。そんな感じでロシアの横綱アンナに来られたらとても想像もしたくない。もちろんルールのようなものはあるがそこは何か曖昧模糊としたどちらかと云うとプロに準じる方向で試合は流れている。


「映見、私はアマチュア側の指導者としてあなたを棄権させる。実際に口の中も切っているし顔だって多少なり腫れている。そんな暴力的な相撲をする相手とさせるわけにはいかない。それはプロがやる相撲よ!いいわね」


 映見は真奈美を見ながら首を横に振った。そして真奈美の後ろにいる代表監督の椎名葉月に再度云おうとした時、


「私はここで引くつもりはないし引いたところで私には悔いしか残らない!最後まで私は全うしたい結果はどうであれ・・・たとえ私が勝てなくとも多少なりとも横綱の掩護射撃になるのならそれはチームとして当然やる仕事。

 

 私はこんな相撲は一番嫌いです!勝つためならなんでもするたとえルールで認められているにしても?でもそれを止めさせるのにはやられたらやり返す!ただ私は正攻法で行きます。たとえ私の体がボロボロになっても・・・土俵に上がります」と云うと大きく深呼吸し土俵に上がろうとしたとき映見の左腕を真奈美が掴む。


「私はそんなの認めない!あなたはアマチュアであることを自覚しなさい!あなたは女子大相撲の力士ではないのよ!」真奈美が声を荒げる。


映見は真奈美を凝視するようにそれは真奈美も同じ。過去幾度と真奈美とは相撲感と云うか勝負の意味で対立してきた。それは決まって映見への勝ち負けに対しての執着心の考え方で我慢できなかったら勝ちへの拘りが薄かったから・・・それが今は逆。


「今のロシアの相撲は尋常じゃないわ!あなたの今の姿がいい証拠じゃないアマチュアであんな強引な相撲は見たことがないしやっちゃいけない!それはあなたが云ってた事でしょ!」


「いつまでそんな甘い相撲してるんだって代表選考の時云われたのに・・・この大会は国家同士の戦いだとしたらそこに常識はない!ましてや相手がロシアならば・・・私はこの一戦で確かめたいとがあるんです。それはどうしてもこの場面、この取り組みでなければわからない・・・倉橋コーチ出場させてください!お願いします!」映見は頭を下げた。


「・・・・・」


(何のつもり?甘い相撲?・・・・そうねそんなこと云ったわね。勝負に拘らないあなたの相撲に腹が立った勝ってもあなたの相撲に、でも今は違う!桃の山を精神的に潰してきたように今度は本当に身体を潰しに来る。そうだったら半端な怪我じゃすまない!そんな土俵にあなたを立たすわけにはいかないのよ!)


「倉橋さん私が全責任を負います。だから稲倉を土俵に上げる事を了解してください」と葉月


「責任?あなたに何の責任が取れるの?私は稲倉映見の指導者なのよ!私の大事な選手にあなたは・・・だいたいあなたは」


 その時、葉月は倉橋の前で頭を深々と下げた。


「真奈美さんの指導者としてのお気持ちはわかります。しかし今は私がこの大会の指揮をとっているんです。稲倉が自ら出場することを志願しているのに・・・私はそんな選手を出場させないと云うあなたの意図がわからない」と云うと頭を上げた。


「あなたって人は・・・潰されることがわかっていながら・・・」


「それが相撲です。それがこの大会の売られた喧嘩を買った結果が今です。ここで勝つのか負けるのかそれは間違いなくこの先の女子相撲の今後に係わる。頭の回転の速い稲倉ならわかっているはずましてやさっきの相撲の強引さはそれを物語っている。それでも稲倉が出場したいと云うのならその意を汲むのは当然じゃないんですか!稲倉!頼んだわよ!」


稲倉は再度土俵に上がろうとするがまた真奈美が腕を掴む。


「私は絶対あなたを土俵には上げない。こんなバカげた大会ましてやアンナ相手になんて絶対に!」


映見は真奈美の腕を強引に振り解き土俵に上がった。館内は大声援に包まれる、暴力的なコザノワの相撲に苦戦しながらも勝ち上がった。映見に観客は更なる期待を抱きそして日本の優勝へと・・・。


 ロシア側からも絶対横綱アレクサンドロワ アンナが土俵に上がる。アンナの視線は映見へといくとおもいきやそれは全く違うところに・・・。


(私は葉月山と対戦したかったねぇ。勝ち逃げされた気分だよまったく。稲倉映見はあなたの後継者なのかい?だったら再起不能じゃないけど相撲ができないぐらいに痛めつけないとね、身体的にも精神的にも・・・若い芽は摘んでおかないとロシアの次の世代のために、稲倉映見には可哀そうだけど)


 アンナは薄笑いを浮かべながら葉月を見る。


(潰しますって感じね、アマチュア力士相手に、映見も私だって勝てるとは想っていない少なくともあなたは私には勝てなかった。今のロシアなら何でもありでしょけどそれを世界最強のあなたがやるの?やっても構わないけわよ稲倉を潰したいなら・・・ただそれは桃の山の闘志の種火に油を注ぐようなものだけどね)


葉月は土俵上のアンナを睨みつける。


 ロシアの絶対横綱アレクサンドロワ アンナにまずは稲倉映見が挑む。飢えたロシアの熊は爪を研いで待ち受ける。

 

「監督・・・」さくらはちょっと不安な声で、


「さくら、あなたにとっては厳しい相撲だったわね。これが女子相撲の世界よ高校生のあなたにとってはある意味幻滅したんじゃないの?」


「幻滅?」


「この大会はアマチュアのあなた達にとってはあまりにも厳しすぎるわね。それでも勝ち上がってきたけどね。さくらこんな相撲に嫌になったんじゃないかって?」


「嫌になった?・・・あぁさすがに怖くなったことはありましたけどこれはプロの大会何だって想えば・・・こんな世界で桃の山さんや百合の花さんは戦っているんだって、それに・・・」


「それに?」


「映見さんと一緒にこんなすごい大会で相撲ができるなんってもちろん百合の花さん・桃の山さんとも夢のようだけど夢じゃない!アマチュアでありながら女子大相撲力士と一緒にそれも世界を相手に・・・でも私はまだまだ」


「さくら、あなたはまだまだこれからよ。まずはあなたの目標である稲倉映見と対等に相撲ができるように・・・まだまだ映見の足元にも届いていないわよ!傷だらけの映見は本人はもちろんだけどあなたにとってもそれは女子相撲の厳しさを見せてくれている。偉大な先輩ねあなたにとって」


「はい!でも・・・やっぱり厳しすぎる・・・」


「こんな大会は終わらせる。女子相撲の覇権などというくだらない欲のための大会何ってでもそのためには相手以上の厳しさで相撲をしなければならない。高校生のあなたをそんな大会に選出してまったのは私の間違いだったわ。悪かったわね怖い想いをさせてしまって・・・」と葉月はさくらを抱き頭を撫でる。


「でも、映見さんや百合の花さんや桃の山さんがいるから戦えた勇気をくれたから・・・それと・・葉月山さんも・・・」


「さくら、相撲も覚醒したけど口も覚醒した?それと葉月山じゃないから・・・」と云いながら葉月はさくらを強く抱きしめた。


(よく頑張ったわね。ロシアの強豪相手にここまで相撲がとれればできすぎなくらいよ!この先もっと相撲の奥深さを知っていけばもっとうまくなるしもっと楽しくなるわ。とりあえずはお疲れさくら)


 そんな葉月の胸に体を摺り寄せるような形のさくら


(この今の一瞬まで色々な事が・・・私が代表でいいのか・・・本当は怖かったジュニアやアマチュアだけの大会と全く違うし世界の強豪相手に相撲がとれるのかと?葉月さんが私を選んでくれなかったら映見さんとも一緒に戦えることもなかった。そして、百合の花さんや桃の山さんの二人の横綱とも本当に日本女子のドリームチームに私もその一員だったこと・・・)


 そんな想いのさくらではあるけど、本当の日本の勝負はこれから世界最強女性力士であるロシアの絶対横綱アレクサンドロワ アンナを仕留められるのか?まずは女子アマチュア女王である稲倉映見が立ち向かう。







 

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