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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの頂へそして扉の向こうの世界へ

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159/324

決戦 ! 日本vsロシア ⑦

さくらは璃子と医師と一緒に東花道出入り口から救護室へ歩いていく。土俵下におもいっきり投げ飛ばされたがとありえずは足取りもしっかりとして心配はない様子。


「さくら、お疲れさん」と百合の花が声をかける


「あぁ百合の花さん・・・怪我は?」とさくら


「大丈夫よ、どうしても日本チームの戦いを生で見たくてね。さくら女子大相撲力士顔負けね、正攻法ではまだ勝てないけどかっこよかったわよ」


「はぁっっ、いいところまでいったんですけどさすがに相手が強すぎました」と苦笑い


「凛子さんさくら?」


「うん、派手に土俵下に投げられたからねちょっと簡単であるけど診断してもらおうと先生にお願いして」


「先生、自分もちょっと見させてもらってもいいですが外傷はなそうですけど」と隆一


「そうかい、助かるよ」


「じゃ、百合の花さん自分は先生と一緒に」


「お願いします」


 さくらと医師二人に看護師一人で救護室へ。


「百合の花、ここで最初から見ていたのか?会場内でみればいいのに」


「私はここからで、手負いの私が側でみたらみんな気合が入り過ぎちゃうだろうし、ついいらん事大声で云い出しそうだしそれに今のチームの柱は桃の山の仕事だし」


「桃の山じゃ心配か?」


「心配も何も私の代わりは桃の山しかいないし日本の守護人は横綱である桃の山が当然担うべきです」


 百合の花の本心に嘘はない。稲倉映見に思いがあることも事実だがやっぱりアマチュアに国の威信の勝負を任せるのはやっぱり残酷すぎる。それでも耐性は映見の方があるかも知れないがそれでもそれを背負うのはプロである桃の山であるのは至極当然の話なのだ。それをいつしか桃の山じゃと云う想いの真意は桃の山が潰れてしまうのではないかと云う無意識な忖度だったのかもしれない。


「百合の花、ここまできた以上負けるわけにはいかないし桃の山だってアマチュア二人の活躍を見せられたら不甲斐ない自分なんかみせられないだろう?」


「璃子さん、桃の山を頼みます。この壁を乗り越えられば桃の山はもっと・・・」


「二代目『妙義山』を受け継ぐのなら負けは許されないと云うより自分が許さないだろうよ、鬼の『妙義山』の娘だぞ」と璃子は笑いながら


「あと、映見も・・・」


「稲倉は真奈美さんの担当だろうが私に云うなよ。映見も相撲が変わってきた良い意味で良い顔になってきた勝負師って感じでなあ本当に、葉月さんが稲倉を買ってる意味が少しわかったような気がする。相撲が好きなのは当然として勝負が好きなんだよ映見は、ポーランド戦の相撲なんか幕内上ったころの葉月山やお前にそっくりだよ冷静なんだけど意外と瞬間爆発するあたりおまけに勝気が強いから云う事聞かないし・・・葉月山に喧嘩売ってたものなあれは確か・・・」


「もういいですから璃子さん。葉月さんが大人だったから受け止めてくれたけど若かったらボコボコにされてたでしょうから・・・その意味じゃ葉月さんに似てるんですよ映見は」


「さくらが稲倉を慕っているのは、相撲もさることながら人間性なんだよ、相撲が強くて勉強できてなおかつ美人だけどそこには人としての弱さも見せてしまう。傍から見れば完璧なように見えて実は色々脆くて・・・でも真奈美さんにちょっと聞いたら代表に選ばれたからだいぶ変わったそうだよ。


 そんな映見をさくらは見て色々考えることができたんじゃないかなぁ負けてなお強し!さっきの相撲は精神力の相撲!負けたくない一心で実力的には勝てる相手ではなかったが正攻法であそこまで攻められたことはこれからの彼女にとって大きいな財産だと思う負けたけどな。映見の相撲もそうだ。そしてその相撲を見て桃の山がどう思うか・・・・。無我夢中で相撲をとっていつのまにか横綱になってしまった。本当はそれまでの過程に壁にぶち当たったりして悩み・苦しみ、横綱になれるもんだがある意味不幸なんだよ。それは、私も含めて周りの関係者がよくなかった・・・」


「璃子さん。でも実力がなければ横綱にはなれないいくら回りが気持ち的に桃の山寄りになったところで・・・」


「実力的に申し分ないそれはお前もみんなだって・・・でも心のどこかに桃の山を大事にしすぎるきらいがあったことも事実。それを払しょくするためにもこの大会で勝つことが桃の山の心の底にそして周りが想っている呪縛から解放される唯一の答え。少なくとも協会関係者がそのように桃の山を作ってしまったんだ。忖度なんかしているつもりはなかったけどなぁ」


「二代目『妙義山』を継ぐためにも負けちゃいけない・・・・絶対に」


「妙義山か・・・理事長である前に桃の山の母。どんな気持ちで見ているのか知らんが・・・」


----------土俵下----------


「映見!」後ろから真奈美の声。映見を後ろを振り向き真奈美の方に歩いていく。ロシアチームは首脳陣・選手・力士とも全員の視線が二人に集中する。真奈美はその視線からそらしながら・・・。


「コザノワとの対戦だけど、突き押・・」


「コザノワは突きできても早い段階で四つに切り替えてくると想います。さくらとの対戦で消耗しているしそれよりも得意の突きで勝負ができなかったことは多分想定外だと・・・」


「・・・・・」


 真奈美は映見の冷静な分析に驚いた云うよりそんなことを今まで云ってきたことがなかった。今までなら真奈美の指示を無視ではないが聞いているのか聞いていないのか特に代表決定以前は・・・。


「コザノワは四つでもいけるのよそこは・・・」


「後半、突きの威力が落ちていました。少なくとも私が対戦した高校生の時とは威力が落ちています。冷静に見極めれば負けることはないと思います」


「映見・・・」


「なんですか?」


「ちゃっんと分析してるのね」


「監督から頂いたデーターと私のデーターと照らし合わせての私なりの答えです」


「そう、でも油断はしないでさくらとの相撲も強引なところが見受けられたしあなたには辛酸をなめさせられてるし・・・」


「高校生の私に負けた時の悔しがりようは尋常ではなかっし土俵下での号泣は今でも記憶に残ってます。コザノワにしたらリベンジの好機ってことでしょうかそこは用心していきます」と映見はあくまでも冷静に落ち着いた表情のなかにみなぎる自信。


「女子大相撲力士バリね」と真奈美


「今日の大会は勝負に徹するただそれだけに拘って・・・やるかやられるか」


「やるかやられるか?」


「本当の私はそんな相撲が好きだったんです私が気づかなかったと云うか表向きは勝負に拘らないと云いながら・・・真剣で切り合いをするような命を削るような・・・」


「映見・・・あんた」


 あまりにも意外だった・・・。映見がそんな風に思ってたなんって、勝負だけに拘ることにあれだけ嫌っていたのに・・・。確かにこの大会は単なる興行ビジネスとはまた違った側面をもっていることは周知の事実。そしてこの大会のいやらしいところはアマチュアとプロ力士を分け隔てなく相撲をとらせること、真奈美自身はこの大会には無理があり常識から外れているましてやルール規定はプロに準じて多少は手直しされてもいるがその段階で一種のアマ潰しに近いのだ。


 アマチュア選手からしたらプロとやれると云うのは夢のようだがそんな甘いものではない。それでもここまでは各国ともプロ力士としてアマチュアとの対戦は抑制が働いていたそれはモラルとしての相撲の取り組みのように・・・でもこの対決は違う。映見の云うようにやるかやられるかプロ同士がやるのならまだしもプロ・アマ混ぜこぜの常識外れの大会。


「さくらには殺伐とした相撲はさせたくなかった少なくとも・・・でもここからは間違いなく・・・」


 映見の表情が引き締まる。アマチュア選手と云うよりも女子大相撲力士のようにそれは真奈美が理想としていた横綱葉月山を彷彿とさせるよなオーラを醸し出している。


「映見、無理はしないでよ。アマチュアではあるけど横綱のロワアンナと遜色はないわあの強烈な突きはあなたからしたら落ちたように見えるのかもしれないけどそれでも・・・」


「意外ですねちよっと」と映見は若干笑みを浮かべながら


「なにがおかしいの?」


「監督ならもっとけしかけるとおもったから」


「けしかける?・・・・ふっんそうね、これが普通のアマチュア同士ならねでもこれは違う。女子相撲の覇権が掛かっているのオリンピックの競技でも一度ロシアに勝利が行った競技はなかなか奪還するのは難しいそれが単純に競技と云う純粋な物なら、でもそこは自国が有利な状況作りから始まりもう他国は意見することさえもできなくなるそれはあってはならない。


 そんなの当たり前と云う意見もあるけどそれは間違いなく相撲と云う物の発展を阻害する。この大会はプロ主導であるけどもアマチュアにとっても多大なる影響がある。少なくとも公平な立場で相撲を発展させるのならロシア主導はないわ!ロシアがけしかけてきたこの大会で日本が勝利する意義は大きいのよ」


「監督・・・」


「山下理事長にも云ったけどこんな無謀な大会はもう二度とするべきじゃないってプロ・アマ混合のガチ相撲なんって・・・さくらはあの程度で済んだけどあなたはそうはいかない!ロシアはあなたを潰しに来る間違いなく。たとえ反則まがいでも『不可抗力』で片づけられるそんな雰囲気がある。映見も私もロシアにとっては潰したい二人、私はそう想っているわ」


「私にはその覚悟は」


「わたしのなかにこの大会は映見で勝負を決めてロシアにも女子大相撲の関係者も稲倉映見ここにありを見せてやると想っていたのよ、でもねさすがにアマチュアの映見にそんなことさせるわけにはいかないしそもそもが日本の女子大相撲の地位低下を狙った大会何だからその決着は女子大相撲の横綱が決めるべきだと・・・桃の山より映見の方が全然上に決まっているとか・・・自分でやらないくせして」


「監督、桃の山さんは私より上ですよ全然。私だったらこの大会には来なかったと想います精神的ダメージは大きい。忖度横綱って云うレッテルを貼り付けられ・・・それでもこの大会に来られて私達と一緒に戦っている。ましてや今は戦えるのは私と桃の山さんしかいない。ロシアは四人で万全な状態。私が絶対に一勝して桃の山さんに決めてもらう、それしか日本が勝てる道はない。桃の山さんは覚悟ができているはずですし私はそう思っています。コザノワは何が何でも勝ちに来ると想定すれば私も何が何でも勝ちに行くそう云う事です」映見は真奈美に一礼し土俵に向かい歩いてく。


(映見・・・いい意味で随分変わったわね。でも無理はしないで!ここであなたの相撲人生は終わりでないのよ!まだ・・・・まだ・・・・その先に)



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