決戦 ! 日本vsロシア ⑥
「さぁー日本が先制の勝利はブラジル戦での大金星の石川さくらがまたしても若きロシアの横綱からまたもやの大金星と云う展開になりましたが遠藤さん如何ですか?」
「『猫だまし』からの「わたし込み」の展開はなかなかだと想いましたこれが本人が考えたのかそれとも指示なのかはわかりませんが上手く嵌ったと云うところでしょうか?」
(正攻法で勝てるような相手じゃないから当然アマチュアからしたら変則的相撲でと云うのはセオリーだけどこうも嵌る何って・・・石川さくらは強運の持ち主かも知れないけどそれには心技体すべてが嚙み合わなければねたいしたもんだわ。高校生を推した葉月の先見性には頭が下がるわ)
大学生アマで無差別クラス世界女王経験者のオルガ・ヤナ・コザノワは映見のライバルの一人。石川さくらにとっては間違いなく強敵であると同時に同じような奇策が通じるような相手ではないし当然ブラジル戦を含めある意味の手の内を見せてしまった以上もう正攻法で行くことは決めているが監督の指示は・・・。
>「次は王道の四つ相撲ができればと・・・」
「王道ね・・・さくら、次の相手のコザノワとは勝負はしなくていいわ」
「勝負しなくていいって・・・負けろってことですか?」
「もちろん勝てるのなら勝負すればいいわでもね、この大会は普通とはちょっと違うの色々な意味でね。ロシアチームの雰囲気からしたらまともな勝負をするから?さくらどう思う?」
「・・・私が『猫だまし』したからですか?正直云うと土俵からロシアチームを見た時にちょっと恐いと云うか・・・」とさくらの声のトーンが下がる。
「さくらもその空気感を意識してるのね・・・うんそれだけ思っているのなら十分だわ。いい無理に勝ちに行こうとか思わない。そしてちよっとでも恐いと感じたら引く、いいわね」
高校生のさくらにとってオープンクラスの無差別級クラスそれも上位クラスとの対戦は初めて、横綱二人を倒したとはいえそれはある種の奇策。真っ当に組んだり突き押しで来られた時に対処できるのか稽古では百合の花・桃の山ともしているとはいえそれはあくまでも稽古、本番ではない。
土俵上ではコザノワが執拗にさくらを睨みつけるさくらも負けじと睨み返すがそこは格の違いと云うか蛇に睨まれた蛙と云うかさくらは金縛りにあっているように体も心も硬直とているかのように動けない。
コザノワはそんなさくらに薄笑いを浮かべる。それだけでもう十分なくらいにさくらは威嚇されまくりそれはいままで感じたことのない。
行司が二人を仕切り線の前に立たせる。
「見合って・・・はっけよい!!」
二人とも腰を下げ臨戦態勢に 行司が二人を仕切り線の前に立たせる。
コザノワは気合十分な体制と表情に対しさくらは腰が引けているように明らかな腰高の上に表情はまるで怯えているようにそれは今まで感じたこともなかった恐怖感。相撲をしていてこんな気持ちになったことは初めて、負ける恐さよりも以前にコザノワの威圧感に圧倒されてしまっているのだ。
(相撲するのが怖い・・・)もうすでに勝負前で負けているさくら
(多少痛い想いぐらいしてもらわないとね、お嬢ちゃん)絶対的優位のコザノワ
二人とも両手を着き立ち合い成立。しかし・・・・
「えっ」
「お嬢ちゃん来ないのかい・・・」
さくらの立ち合いが一瞬遅れて立ち上がったはいいがコザノワは立ち上がって臨戦態勢のはずのに仁王立ちで待ち受けていた。さくらはその姿に一瞬膠着してしまいお互い見合うような形になり動かない。
薄笑いを浮かべて右手で来いよ見たいなしぐさをする。コザノワ
もう動くことができないほどにガチガチのさくら。
>「いい無理に勝ちに行こうとか思わない。そしてちよっとでも恐いと感じたら引く、いいわね」
(意図的に負けるの何って嫌だそんな勝負を捨てるようなことなんって)
(ほぉー、やってやるって顔ねぇ・・・だったら来なさいお嬢ちゃん)
さくらは一歩半いったん下がり一気に突っ込んで行く。そこを待ってましたとばかりコザノワの突っ張りが右肩にさく裂。さくらは後退せざる得ないほどに強烈な突っ張りを食らいながらも腰を落としなんとか持ちこたえる。
(お嬢ちゃんいつまで耐えられるかな?息を入れる時間なんか与えないよ、ほらほらどうする?)
「ノーコッタノーコッタノーコッタ!! ノーコッタノーコッタノーコッタ!!」
「そらそらっ!!」
「うあっ!! きゃっ!!」
さくらはさらに後退を余儀なくされる。
「さくら!ちゃんと相手の動きを見て!」と映見が大声で掛ける。今まで一言も取り組み中に声を掛けてくれなかったのに・・・・。
(映見さん・・・負けられない!)
さくらはコザノワの突っ張りを何とか見切り左腕をとりにいく。しかしその隙にコザノワが逆とったりで取りに来たがうまく凌ぎ右上手を取ることに成功。
(さくらいいよ!落ち着いて!)と映見の声が体に響く
コザノワは左上手を取りに来たが失敗し左下手を取ることに成功。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「ハァ…ハァ…ハァ…」
さくらのお腹が激しく揺れるほどに激しく息が乱れる。しかしそれはコザノワも同じ。強烈な突っ張りで一気に電車道と想っていたのに想像以上にさくらに粘られてしまったことでスタミナを消耗してしまった。
(ここからどうすれば、さすがにスタミナも残ってないよ)
(さくら、予想外に粘るね全く考えてなかった・・・ここは少し息を入れて次の手を)
「さくら、相手に息を入れさせちゃダメ!足技、内無双よ!」
(内無双?)さくらは映見の言葉に即座に反応し相手の右足にかかり跳ね上げた・・・(やったぁ!)と完璧に掛かったここから一気にいくはずだが・・・。
(そんな馬鹿な!?腰が微動にしない)さくらはコザノワの腰の重さに驚愕し手も足も出ない。
(危ない危ない、まったく油断も隙もありゃしない。でもそんな技で私が倒れるとでも思ったかここから反撃だよ)
コザノワはここから強烈な寄りをさくらが一瞬後退したが腰を落としなんとか凌ぐ。
(しぶといねこのガキ)コザノワは動きを止めてしまう
(今だ!)さくらはここで渾身の下手投げを打ち一気にコザノワを土俵際までもっていく。
「さくら!休んじゃダメ!」と映見の必死の声。
「ノーコッタノーコッタノーコッタ!! ノーコッタノーコッタノーコッタ!!」
「くっ!! くっ!!」
「クゥッ! アックッ!」
(あと一歩!これで勝負を決める)
さくらは渾身の力で吊る姿勢を見せながら一気に寄る。がしかし・・・。
「ウオォォォッ!!」
「うああああっ!?」
(えっ何?そんな・・・)さくらの体が浮く
コザノワは逆に右足をさくらの内股に入れるとさくらの体を乗せように吊り上げると降るような体制からおもいっきり土俵際から外におもいっきり投げ飛ばすと激しい衝撃音と共に土俵の下にさくらが転げ落ちる。
「さくら!!!」映見が素早く立ち上がりさくらの下に
「さくら!」
「・・・はぁ・・・やられちゃいました・・・(∀`*ゞ)テヘッ」とさくらは笑いながら
「・・・はぁ・・・よかった。意識あって・・・」
「でもちょっと星が飛んでますかねぇ・・・・・」
「さくら立てる?」
「大丈夫です。けどちょっと肩を貸してくたせさい」とさくらは映見の肩を借りて立ち上がる。
「怪我は?」
「とりあえず打ち身だげですかね・・・ちょっと派手に投げ飛ばされて・・・」と少し痛そうな表情を見せたが何か安堵したような表情。
「さくら、よく頑張ったね。強かったよ負けてなお強し、さくら後は私と桃の山さんに任して救護室で医師に見てもらった方がいいから頭打っていたりしたら後遺症見たいなことになったら大変だから」
「頭は打ってないですから大丈夫ですよ。ありがとうございます映見さん」
映見はさくらの頭を撫でながらロシアチームを見る。そしてさっきまでさくらと対戦したコザノワと目が合う
(いくら何でも高校生相手にやり過ぎだろうが!この大会にプロ・アマの垣根はないとしても!)
映見はコザノワそしてロシアチームを睨みつけるとチームの面々は映見を見ながら薄笑い・・・そのことが映見の神経をさらに否応なく刺激する。
(潰すって感じね。そっちがその気なら私だって・・・って私?)
映見自身が今まで気づかなかったことにいや気づいていたのに拒否をしていた?
(本当の自分はこんな世界が好きだったんだやるかやられるかそんなプロの相撲の世界が・・・)
怒りの心境の奥に興奮を抑えきれない自分がいる。相撲に勝負以外を求めていたのは勝ち負けだけに拘ることが凄く嫌だったから、勝つためになんでもする多少強引でも乱暴でもそれでも勝ちさえすればいい。そんな考えが嫌だった、でも今やっているこの相撲大会は『勝ちさえすればいい』の一択でしかない。
「さくら、お疲れさま。あとは映見さんが仕留めてくれるから」と桃の山
「いいんですかそんな事云ってやっちゃいますよ、私」
「お願いします」と桃の山は笑いながら
(ほんとはそんなこと想ってないのにまったく、でも最後は桃の山さんが仕留めてください。日本の横綱として)
(映見に女子大相撲の横綱として無理はさせられないし勝負の決着は私がつけるわそれが女子相撲最高峰の桃の山としての責任だから)
お互いを見合いながら笑う表情の中の目は決して笑っていない。自分の苦しみから抜け出した映見と自身の泥沼から抜け出せるのか桃の山。残り二人を倒せば・・・・アマチュア横綱 稲倉映見・女子大相撲横綱 桃の山。自分との勝負、そしてお互いの勝負へ。




