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女力士への道  作者: hidekazu
それぞれの頂へそして扉の向こうの世界へ

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決戦 ! 日本vsロシア ④

 土俵上では石川さくらとロシアの絶対横綱アレクサンドロワ アンナの後継者と云われている若手筆頭の横綱コヴァルベラが仕切りを何回か続けているうちに会場の雰囲気はピークに近づいていく。


 石川さくらにとってはいきなりの強敵、前のブラジル戦は鮮やかな下手捻りでブラジルの横綱を転がしてしまったが・・・・。


>「さくら、瞳の手はもう使えないからね」と映見


「えっ・・・」


「あれをやってみな。勝負に拘らなくていいから万が一でも私が絶対抑えるから!」



「あれ」とは映見が控室でアドバイスと云うよりも・・・。


 映見はタブレットPCに対戦相手のデーターをすべて入れて云うより倉橋監督から提供れているもので個々の相撲の特徴から過去の対戦データーなりを動画を含めて渡されているのだ。それを見ているのだが同時に和樹との夜の事を妄想しながらデートプランを検索?とその時主将である瞳から電話が・・・・。


(こんな大事な局面で電話してくる?意外と主将って常識ないよね全く)とか云いながら結局


「映見、ゴメン大事な局面で・・・」


「今、私は精神集中とていて瞑想に耽っていたのにまったく集中が途切れてたじゃないですか全く」


「本当に御免」


「それでなんですか用件は手短に!」


「なんか凄い怒ってる?」


「いいですか主将!この後大事な決勝なわけですよそれが終わって次はもっと大事な局面なんですよわかってます!」


「大会が終わってもっとな大事な局面って・・・なに?」

「えっ・・・」


「はぁーん・・・男ね? 」

「はぁー?何云っているんですか!いいですか今私達は日本女子相撲の威信をかけて」

「『稲倉映見 愛』ってでっかく赤文字で・・・羨ましい・・・」

「・・・・・」


 しばらく無言の二人であったが


「用件はさくらの相撲なんだけど」

「さくら?」

「ブラジル戦の取り口って映見がアドバイスしたの?」

「いいえ、と云うよりあれって主将の得意技ですよねてっきり主将がアドバイスしたのかと・・・」

「高大校の打ち合わせが三重であった時、さくらにちょっと喧嘩売られてね稽古を口実にさくらの鼻をへし折ってやったのその時の技」

「そんな話初めて・・・・」

「あなたが目標だと云われたこともなんか腹がたって余計にね。映見が精神的に苛つき始めた時の話よ」

「・・・・・」


「それでさくらの対戦相手なんだけど映見、私があなたに教えたあの技やらしたら」


「あの技って・・・レスリング仕込みの?」

「ブラジルの横綱相手にあんなに綺麗にコピーできるんだったらさくらなら」

「さくらに代わりましょうか主将から直接云った方が?」

「さくらに口頭では無理、少しは理論建てて相撲ができるようになってはいるみたいだけどやっぱり直感的な子だからあなたがさくらに実技でやってあげて説明する必要はないわ。あの子コピーしてそれをすぐ自分のものにできるから」

「さくらに優しいんですね?」

「あなたより素直だから」

「・・・・・」


 嫌味の一つは云われたが映見は控部屋から少し離れた非常出口近くの廊下で実技指導する。さくらは色々質問はしてくるが映見はあえて説明はしなかった。ただそれでもさくらは何回かやっていくうちにサマになってきた。レスリング仕込みの大技、大相撲の世界でもあまり見たことがない。


 土俵上では両者が最後の仕切、塩をまき睨みあう両者。横綱コヴァルベラとさくらは全くの格違いぐらいの差はある。真っ向勝負ではとても勝てる相手ではない。


(イシカワサラ、ブラジル戦見たいなことはもう通用しないわ。相撲強国はロシアなのまずは軽く高校生を捻り倒してあげるわ)と横綱コヴァルベラ


(あの技はタイミングを誤れば一気にはたき込まれる。うーん映見さんにはたき込まれたし・・・映見さんヒントとか教えてくれないんだもん・・・もう。やったことないことやって・・・うっふんあれやってみようかな一回やってみたかったし・・・)とおもわず笑みをこぼしてしまったさくら。


(なんなんだこいつ!私を馬鹿にしてるのか!ふざけやがってロシアの横綱として高校生であろうとぶっ潰すしてやる。絶対に許さないその舐めた態度!)


横綱コヴァルベラはさくらのその笑った表情に自分が馬鹿にされたと想ったのだ。もちろんさくらにはそんな意図は微塵もないのだが・・・。


 行司が二人を仕切り線の前に立たせる。


「見合って・・・はっけよい!!」互い仕切り線の前に両拳を持っていき立ち合いの体制に・・・・しかし・・・。両者なかなか手を着かない。睨みあった手を着かない両者・・・10秒ほど経った時横綱のコヴァルベラが腰をあげて立ち合いを嫌ったのだ。そして館内は大ブーイング。


コヴァルベラは明らかに苛ついていたしそれはロシアチームの首脳陣も苛ついていた。


同じく土俵の後方はでロシア女子相撲代表監督 ニキティア アナスタシアはコヴァルベラが立ち合いを嫌ったことに苛ついていた。


(高校生相手に何を嫌って・・・アマチュア相手に・・・。日本はプロ力士は一人ましてや桃の山なんだ外国人相手は不得意のうえに気持ち的に整理ができていないはず。アマチュア二人をさっさと片付けて桃の山を撃破すれば完勝なんだ。女子相撲の女王はロシアが貰う女子相撲の覇権もね)


「コヴァルベラ!アマチュアだからって躊躇するなそんなの関係ない!」と激を飛ばす


 ロシアチームは盤石の体制のはずなのに・・・・。それは記者席から見ているロシアの女子相撲ジャーナリスト ダヴィドコ オルガも同じ。


 桃の山潰しにはある程度成功したと想っているし実際、二回戦までは来なかったことは事実そして準決勝での相撲は完調からは程遠くアマチュア選手に苦戦したさまは狙い通り。百合の花の欠場も嬉しい誤算なのだが思いの外のアマチュア二人の活躍。稲倉映見は実績からしたら妥当としてもジュニアの石川さくらの活躍は予想外それもブラジルの横綱をいとも簡単に倒したのには偶々と云えばそれまでだがそれでも全く想定していなかった。


(コヴァルベラが普通に相撲を取れば負ける相手じゃないましてや高校生相手に普通に四つ相撲すればいいのよ。ブラジル戦での石川の取り口なんか気にしたら負けるわよ!自分から入ったら負けるわよ!)


 土俵下の日本の二人は・・・


「映見さん、さくらに云った「あれ」って控え部屋の廊下でやっていたあれ?」


「えぇあれです。うちの相撲部の主将が突然電話して来てさくらに教えろって」


「あれって「わたし込み」よね?」


「さすが横綱あれ見てわかるんですね」


「一応横綱張ってるんで・・・でも映見さんにはたき込まれたけど・・・」


「そこなんですけど、でもそれはさくらが足を取ってくるって想定しているからそうなるので大丈夫かなって」


「そうねぇそれは確かにあるけど、ブラジル戦の事を考えるとロシアはそれも想定してると想うけどそうすると何か一捻り必要ね、そう考えると何かしらの変化をしないと」


「変化・・・・」


 土俵上では再度の仕切り直し、相手を見合いながら最後の四股を踏み仕切り線へ。


(映見さんに教わった「わたし込み」をやるとしてどうしてもはたき込まれてしまう。だから相手を惑わして相手の動きを一瞬でも遅らせてそこで一気に・・・であれですよ・・・「キャッハ」)とまたもや思い出し笑いのような表情で


(なんなんだこいつはいい加減にしろよ!それは作戦か?まぁいいわこっちはお前が動いてからでも十分相撲はできる。捕まえてしまえばもう手も足も出ないだろ)コヴァルベラはなんとか自分を落ち着かせさくらが動くまで待つことに徹するに決めた。


 行司が二人を仕切り線の前に立たせる。


「見合って・・・はっけよい!!」


 二人とも腰を下げ臨戦態勢。だがさくらは若干いつもより腰を高くし右足を少し下げ・・・


(なにやってるのさくら!そんな高い体勢じゃ足取れないでしょもう何やってるのよ!)と映見


(ブラジル戦より姿勢が高い?意図的?さくらちゃんその体勢からどうしようとしてるの?)


 二人とも両手を着き立ち合い成立。その瞬間「バチン」と云う音が、一瞬コヴァルベラの動きが止まる。さくらはその瞬間を待ってましたとばかりに一気にコヴァルベラ左足膝の裏側を取りに行く。そして右手相手の胸を思いっきり押す。


(なんだそれ!)コヴァルベラはもう何もできない。


(大成功!キャッハ・・・)さくらは笑いが止まらない。


 コヴァルベラは背中から土俵の外へ・・・「ドサッ」と音を立てて倒れる。


 館内は一気に大歓声に変わる。高校生石川さくらの二つ目の大金星。


 ロシアチームの他の三人は唖然としていた表情だったがそれが怒りの表情にそしてその視線はさくらに・・・


(ゲッ、ロシアチームむちゃ怒ってる・・・まずい)と想った時こんどはコヴァルベラがさくらの前に立ち無茶苦茶睨みつけ右手に拳を作り震えている。両者仕切り線で礼をし土俵下へ向きを変える。


(目合わせたら殴られたかも・・・・ゲッ、何で怒ってるの!?)


 土俵下で映見が睨みつけてる。桃の山は下を向いてクスクス笑っているような・・・。土俵下に下り手を広げながら大きく深呼吸するさくら。視線は上の方の観客席を見ながら・・・。


「さくら、凄いぞ。大金星!」

「さくら、奇襲作戦凄すぎるよ!」

「さくら、面白すぎるぞ!」


さくらは観客に手を振る。桃の山がさくらの汗を拭き。映見が力水を差し出す。


「さくらちゃん、あんまりおいしいところ持っていかないでよ」と桃の山は笑いながら

「あぁはあ、考えてはいたんですけどなんか無意識にツボにはまって」とさくら


 映見が力水を渡す


「さくら、私は「わたし込み」をやれと云ったけど『猫だまし』やれって云ってないよね!この局面で猫だましってどんな神経しているのよまったく!」


「色々展開を考えていた映見さんに散々叩かれていたから相手の動きを一瞬でも迷わすのは猫だましかなーって・・・でなんか自然と体が動いて・・・」


「さくらちゃんは直感で行くタイプだからそれでいいわよ。でもそれがいつもハマるとは限らない。さくらちゃんはちゃんとした王道の相撲ができるんだからあまりね・・・でもそこのところもちゃんと自覚しているでしょうから、でもさすがは高校生横綱!」と満面の笑みの桃の山


「桃の山さんに云われると照れちゃうな・・・てへっ」と頭を掻くさくら


「何が(∀`*ゞ)テヘッよまったく。と云うか恐ろしい運の持ち主よねさくら」


「違いますよ映見さん。そ・れ・は実力です。ってあぁはあ」


「・・・・・なんかムカつく」と映見


「さくらちゃん次は同じアマチュアの女王経験者なんだから王道でね」


「ハイ、それじゃ行ってきます」と土俵へ


 再度土俵にさくらが土俵に上がると観客が再度歓声が沸き上がる。日本が一勝を先にあげたことで日本チームの士気が上がる。百合の花の欠場でどうなるか桃の山はどうなのかと心配されたがさくらの一勝はその心配事を払拭させた。ただそんな空気の館内の中に危機感を募らせている二人がいた。



(確かに、この一勝は大きいとてつもなく大きいのは事実、でもロシアがこの流れに簡単に飲まれてくれるわけは)


 遠くから土俵を見ている百合の花はどうしてもこの流れが日本チームにいい方向に行くとは思えなかった。そしてもう一人


(さくらが勝ったことで必要以上にロシアがナーバスになることは必至!どんな手を使っても勝ちに来る間違いなく。さくら・映見、もうここからはプロ・アマの垣根なんか完全に無視して来る。やるかやられるかの相撲になる。怪我をさせるのもい問わないガチ相撲・・・桃の山、あなたにとっての初めての死闘になるかもしれない今のあなたに立ち向かえるのその覚悟ある!?)葉月はこうなることも想定はしていたが・・・。


国際大会では往々にあるこどてはあるがこの大会を提案したロシアからすれば絶対に負けは許されない。傍目にはあくまでも相撲をしているように見えるが力士同士からすれば格闘技ルールなき・・・。それがプロ同士ならそれもある。しかし、この大会はプロ・アマ混合でありながら様相はガチ相撲それも反則まがいの・・・・。


 百合の花と元葉月山だからわかる空気感。ロシアチームの悲愴感は逆に云えばそれを覆すためには何でもする。せざる得ないことを意味する。






 

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