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女力士への道  作者: hidekazu
女子プロアマ混合団体世界大会

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138/324

横綱四天王 ②

 さくらは映見に桃の山の賛否を問いていた。桃の山は皆に受け入れられないのならここから消える。そして女子大相撲界からも傍から見たら大袈裟過ぎるほどに・・・・。アマチュア経験なしで入門し横綱に疾風の如く頂点に上り詰めたがそのことが桃の山の最大の弱点。基礎を固めてと云う大事なことができなかった。単に相撲の技術だけではなく精神的な面での鍛錬もそのことの方が大きかった。桃の山の相撲には強い印象が強いがどちらかと云うと好不調の波が意外と顕著なのだ。


(私は本当は相撲に向いていないのかもしない。好きだからやりたいからそして女子相撲の頂点女子大相撲力士になりたい・・・でもそれは幻想だったそう幻想だったのよでも現実になってしまった。横綱としていつの間にか驕っていたのよ。そして私の相撲人生の分水嶺を他人に委ねようとしている。十和桜に横綱として精進すると云っておきながら相撲界から消えるって・・・朝令暮改どころじゃないわね、映見が私を受け入れたくないと云ってくれたら楽って想っている自分がそもそも)


「何で映見さんは黙っているんですか!さっき謝ったようなこと云っといて桃の山関を受け入れるんですか受け入れないんですか!云い方次第では・・・」


 さくらは映見を睨みつける。映見はその視線に耐えられずつい視線をずらしてしまう。


「映見、おまえの想っていることを素直に云えよやっと四人が揃ったんだ大会開催中にこんなことやっているチームはないと想うけど私達の今には絶対必要な時間だ。ここまで三人で戦って勝ち上がってきた映見の活躍がなかったらここまで来れなかった。それでも私は桃の山は必要だと想っている気にいる気いらないではなくあくまでのプロ仕事としてアマチュアの映見には割り切れないかもしれないがそれができないのら映見、おまえが外れろ」と百合の花


「・・・・」映見はその百合の花の感情を入れずサラッと云ったことにショックを受けた。


「百合の花さん・・・」桃の山も百合の花の云い方にはけして私を擁護しているわけではないけども


「映見さん私は四人で戦いたいんです。私の目標の映見さんと憧れの女子大相撲横綱の百合の花さんと桃の山さんとそして監督は絶対横綱葉月山さん。もうこんなメンバーで戦えることなんかないと多分ないです。だから絶対四人じゃなきゃダメなんです映見さん!」


映見はさくらの必死な形相に苦虫を噛むような表情を見せた。自分自身が何を想ってあんなことを云ったのか正直自分でもわからなかった。あんなこと云う必要はなかった・・・(私は驕ってる?)映見は自分自身を追い詰めてしまっていたのだ。


「映見さん!なんで黙ってるんですか!」とさくらが語気を強める。


 映見は耐え切れず控え部屋を出ていく。出入り口付近では葉月・真奈美・璃子がいたが映見はその視線からも逃げるように廊下へ出ていく。


「映見・・・」


 その姿に流石に声をかけてしまった真奈美だが・・・。


「ここは力士達に任せませんか?戦っているのは彼女達何ですから」と葉月は真奈美が映見の後を追おうとした時右腕を掴んだのだ。


「映見は私の大事な部員何で黙っては見ていられませんから」


「真奈美さんは映見さんの事になると意外と冷静でいられなくなる」


「何が云いたいんですか?」


「ここは四人に任せたら如何ですかと云っているんです。四人はそれぞれの世界で横綱何ですよ日本の女子相撲においてそれぞれ個においての頂点です。トップの個を終結させれば勝てる何ってそんなものじゃない団体戦は組織として動かなければ勝てない。その組織を動かすのは監督の私でありコーチであるお二人。でも今の日本チームはそれぞれの個が組織としてどう動くべきかそれを考えるべきだと・・・三回戦以降は個の力だけじゃ勝てない!今以上に組織としてそれぞれの気持ちと勝ちへの意識が一致しなければ」


「二回戦に立ち会わず・・・そんな方が何を」


「女子大相撲の桃の山がこの大会に出ないと云うシナリオはないんで、私がいなくても二回戦は突破できると個々の選手・力士の技量を考えればそれだけの事です。負けていれば私は非難の嵐だったでしょうが」


「映見が桃の山関が加わることに異を唱えたらどうするんですか!映見を外すのかそれとも」


 真奈美はちらっと桃の山を見る。桃の山は別に動じることなく。


「三回戦は外れてもらいます。三回戦を突破できたら改めて考えます出すか出さないかは、ポーランド戦では随分強引な相撲をしたそうで私はそ云うのは嫌いなんで彼女には一息入れてもらう。それだけの事です」


 その時、十和桜がすーっと部屋から出ていく。


「十和桜どこへ」と璃子


「すいませんちょっとトイレへ」と云うと足早に部屋を出ていった。


 控え部屋の雰囲気は桃の山大会参加の賛否であらぬ方向にチームとして雰囲気の流れが変わってしまった。


「さくらさんの云う通り四人の横綱が揃う横綱四天王と云ってもいいわ。日本女子の絶対横綱百合の花、若き次世代のホープ桃の山、まだまだ原石のままだけとそれでも輝き放っている石川さくら、そして稲倉映見は女子アマチュアの一つの完成形と云っていいアマチュア界の絶対横綱。私が選んだ力士・選手に間違えはなかったって・・・でも稲倉を選んだのは間違いだったのかもしれない」


「なんですかその云い方」真奈美は葉月の云い方に苛立っていた。


「稲倉にはブラジル戦の間に気持ちを整理して貰います。ロシア戦ではポーランド戦ぐらいの気概でやってもらわないと、強引な相撲をしろと云うわけではないですがあれぐらいの気持ちがないと」


 葉月は時たま笑み浮かべながら話す姿に真奈美を余計に苛つかせる。


「何が可笑しいですんか!」


「もし私が西経大女子相撲部に入っていたら彼女みたいになっていたんだろうなーってなんかそんなことを私に想わせるほどに今の映見さんはプロにもひけをとらないほどに心技体が揃っているでもその気持ちが入り過ぎている。真奈美さんとそっくりですね」


「・・・・・」(何それ?)


「真奈美さんが最高傑作だと云うのだったら最高の場面で最高の相撲をさせてあげますよ。ブラジル戦は稲倉以外の三人で戦ってもらう。それは私は描いていた試合展開なんです。私を理想として指導してきたと云うのならそれに相応しい場面を用意してあげないと・・・絶対横綱葉月山として監督の椎名葉月ではなく」


「・・・・」(何を云いたいのあなたは?)


真奈美にとって絶対横綱葉月山は女子相撲力士の一つの完成形でありそんな選手を育てたいそしてその器に相応しい選手として稲倉映見が・・・。「相撲が好きなだけなんです。勝負は二の次なんです」が口癖、そんな選手。でも今の映見は違う勝負に拘り多少な強引さも見せながら。


 長谷川凛子に云われた「彼女も相撲大好き少女から勝負師の女性にって感じましたけど私は」と云う言葉に内心はアマチュア指導者としての自負もあったし女子大相撲関係者から映見を勝負師と云われたことは内心誇らしく思っていた。どちらかと云うと少しのことで傷つき下手をすると割れてしまうの様なそれはまるで宝石に例えるとエメラルドのような・・・。でも今の映見ならダイヤモンドまではいかなくともロシアの強豪プロ力士でも対等に戦える。女子大相撲で葉月山が絶対横綱であったようにアマチュアでは稲倉映見が絶対横綱なのだ。


(「相応しい場面を用意してあげないと・・・」云ってくれるじゃない!今の映見は桃の山のような貧弱な精神力しか持っていない力士とは違う。明け荷の名に【妙義山】の文字があったけど彼女なりに決心がと云うか覚悟を決めたと云う事でしょうけどね。映見も色々精神的に苦しかったけどそこを何とか乗り越えてきた。相撲好き少女からアマチュア女子相撲の勝負師として・・・映見と私は相撲において喜びも悲しみも怒りも・・・私も映見が卒業したら監督をやめる。あなたが桃の山を心の底では溺愛しているように私も映見を溺愛しているんでね!)


準決勝は昼休憩後に相手は重量級のブラジルカナリア軍団。技量的には劣るとしても重さとパワーでの真向勝負はさすがに厳しい。葉月は三人の選手・力士を呼び寄せる。


「準決勝のオーダーを発表するから。先鋒・石川さくら。さくらにはこのまま連戦で行ってもらうわ体力的に厳しいかもしれないけどあなたにはできるだけ経験を積んでもらいたいし徐々に調子が上がっているみたいだからここは最後まで行ってもらうわね」


「あっ・・ハイ」


「中堅は百合の花。あなたには行けるところまで行ってもらうから日本女子相撲の精神的支柱としてあなたの相撲魂を見せて。私にとって誰がなんと云おうと絶対横綱はあなただから頼むわよ」


「わかりました」


「大将は桃の山。日本が負けても負けなくてもあなたが不甲斐ない相撲をしたらあなたは相撲界から消えてもらうわ。それはあなたから云ったのだから今更訂正はなしよ。その明け荷に書いてある四股名をあなたが継げるかのか見ものだわ。あなたが消えれば妙義山の四股名も消える永久に」


「私はこの大会にすべてを賭ける。偉大なる妙義山の名跡を継ぐために私は葉月山とは違いますから必ず自分が勝ち日本が優勝するために・・・負ければ消えるだけです」


「そこまで言い切ったのだからもう云う事はないわ」


 葉月は三人の顔を見ながら想う。


(あなた達と指揮官として一緒に戦える機会を与えられたことに本当に感謝するわ。本当は私もその輪に入って一緒に戦いたいぐらいよ。


 桃の山よく云い切ったわねそこまで、あなたは絶対に消えさせない。百合の花、あなたが今の女子相撲を陰で支えてくれている大黒柱!桃の山がそこまでになるまでもう少し頑張ってよ。


 石川さくら、ここまでの相撲はあなたにとっては不甲斐ないのかも知れないけどあなたはまだ高校生まだまだ本当の相撲を知らないだから百合の花や桃の山に引っ張ってもらって必死についていきなさい。今はただがむしゃらに相撲をする勝負は時の運よあなたの後には二大横綱がいるんだから)


 昼休憩を挟んでの準決勝のブラジル戦。本当の戦いはここから始まる。


 





 


 

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