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女力士への道  作者: hidekazu
女子プロアマ混合団体世界大会

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133/324

若き獅子たちへ ②

 一回戦、強敵ウクライナを撃破した日本チームは館内から東花道を通り消えていく。


「さすが女王だよ稲倉映見!」


「さくら!次は勝てよ」


「アマチュア二人がんばれ!」


館内は一回戦敗退もあり得る相手ウクライナを撃破したことで俄然声援にも力が入る。


「百合の花!さすが日本チームの守護神」


「絶対横綱百合の花」と云う声援が飛ぶとあちらこちらから「絶対横綱」の掛け声がかかる。館内から百合の花コールが自然と湧き起こる。それはかつての妙義山も葉月山も館内の観客から自然と湧いてきて「絶対横綱の称号」をファンから授かってきたのだ。


(一回戦で勝ったぐらいで絶対横綱何って云われてもこっちが恥ずかしいわまったく)百合の花の横綱としてのプライドからするととてもとても「絶対横綱」なんって・・・。


 三人は支度部屋に向かう通路を雑談し笑いながらながら向かう。女子大相撲では絶対あり得ない光景だがプロ・アマ関係なくこれは女子相撲強国を決める団体戦。もう少し緊張感があっても良いような気もするが・・・。


 その後ろを真奈美と凛子が歩いていく。


「なんか日本チームは緊張感が足らないと云うかリラックスしすぎじゃないのか一回戦勝ったぐらいで」と凛子はどうも三人の姿勢と云うかどうも気に食わない。


「でも変にプレッシャーを感じてもらっても力を発揮できないしとりあえずアマチュア二人がやるベき事をやってくれたのでさくらは負けてしまいしたが試合をこなしていけば調子も上がると想うので心配はしていません」


「アマチュアもそうですけど百合の花のあんな生き生きと云うか・・・百合の花はどちらかと云うとあまり仲間とと云う感じの力士ではないので稽古場でも自分から積極的にアドバイスするとかイメージになかったので」と璃子


「映見はさっきも言いましたが百合の花さんには色々アドバイス貰っているようだし本当に色々勉強させてもらっているようです。正直云うとあまり百合の花は好かなかったようですが・・・」


「真奈美さんのところの伊吹桜とは馬が合っているようですけどね」


「ちょっとさくらや映見が羨ましいと云うか・・・」


「羨ましい?」


「現役の女子大相撲横綱と世界を相手に戦える何って私が相撲をしていた頃には想像もできなかった。もちろん私の頃は女子大相撲なんかなかったわけですけどそれを考えるとなんか・・・今、少しだけ後悔してます女子大相撲に行かなかった事」


「真奈美さん」


「入門してダメだったらそこで諦めればいいのに私はそれすら否定した。相撲は学生で終わりなんって勝手に扉を閉じてしまって女子大相撲を心の底では馬鹿にしていた自分がいた。そんな自分が大学生女子相撲の指導者何って・・・凛子さんのように創成期から女子大相撲を支えていた人達からしたら私なんか・・・」


「創設当時は大相撲の真似してとか全裸でやれよとか云われたもんです。でもそれでも女子アマチュア相撲の選手は着実に増えて一つのスポーツとして世界的にも認知されてこんな大会も開けるようになったのは何も女子大相撲の成功だけではないわけで・・・理事長の理想は女子大相撲が日本の女子相撲を引っ張る原動力であるべきと云うのは持論です。


 実際女子大相撲を目指しているアマチュア力士は多いわけでましてやワールドツアーも開催されるとなるとある意味男子の大相撲より興行的には先を行っているのかもしれません。そうなると相撲だけしか知らない人間も多くなる。しかし西経出身者は違うわけですよ以前話しましたが力士では伊吹桜なんか語学は堪能だし彼女なりの女子大相撲の持論も持っているしそれを外国人とディスカッションしたりこれからの力士は相撲だけができればいいわけではない。ただそれが理事長には面白くなかったんですよなにか真奈美さんにこれからの力士はこれぐらいできないとって見せつけられているようで」


「そんな馬鹿な・・・紗理奈さんだって確か国立大出て・・・」


「あの当時は女子相撲は学生までと云う何か暗黙のようなものがあって実際学生以外の選手はほとんどいなかった。ところが海外では社会人になってもアマチュア選手としてやっている人が殆どそれでいて相撲が強い。女子大相撲の理想はプロとして飯が食えることを目指すと同時に社会人になってもアマチュア相撲選手としてやれる環境を作りたいと云うのがあるんです。


 それは理事長の理想です。でもその前に世界と戦える日本力士及び選手を作らなければ世間は認めてくれないと・・・だから西経の「文武両道」は理想であるのにも拘らずそんな甘い考えは世界では通用しないと事実あの当時は日本の選手で戦えるの僅かしかいなかった。その意味では真奈美さんもその僅かに入っているのでしょうけど」


「私は・・・」


「だからこそ女子大相撲に来てほしかった・・・・あぁやめましょうそんな話している場合じゃないですねまったく何考えてんだがホントにもう」


「でもこんな話ができるのは一回戦を勝ち抜けたからなんですから」


「正直云うと初戦がウクライナと聞いて勝ちよりも負けが頭を過ってその上桃の山も出ないなんって勝負あったなとでも稲倉映見が流れを変えてくてくれた上に百合の花もどうも相当対戦相手を研究していた節があって・・・自国のチームでありながら個々の選手・力士を過小評価していました」と凛子は髪を搔きながら


「百合の花関は葉月山さんや桃の山関見たいにいい意味で華がないのかもしれませんがでも相撲に精通している者が見ると玄人好みの相撲をするし派手さはないけどきっちり勝たなければならないときは決めてくれる。国際大会のチームやダブル戦とか云っちゃなんですけど葉月さんなんか相当助けられてましたし百合の花は追い込められないと力を発揮しないんですよ。


 だから世間的には強いと云う印象がないでんです。ここのところ優勝できないのは葉月さんのようなライバルがいないからなんです。桃の山では肉体的・精神的に追い詰めてくる力士ではないんでしょうそのことが何か気持ちに火が付かないと云うかでもそんなこと云っても優勝できていないことは事実なんだからそんなの負け犬の遠吠えにしか想えませんが」と璃子


「うちの稲倉なんか色々百合の花関にアドバイスをもらっているようで本当に変わりました。現役の横綱と直に稽古やアドバイスをして貰えるのはさくらもそうですがアマチュア相撲している者からすると夢のようです」


「何年か前に力士と協会との懇談会があって女子大相撲トーナメントにアマチュアも出場させるべきだと百合の花が云ったことがありましてね。その時は私も含めて反対したんですが今の状況を見ると百合の花の云っていたことにも一理あるかなって・・・」


「もしそのような大会があればアマチュア力士は俄然やる気が出るでしょうし女子相撲の活性化にはぜひお願いしたいです」


「それとマスターズと云う話もあるんですよ」


「マスターズ?」


「過去女子大相撲力士だった者も大会に出れるようにそこにアマチュアも入れて年齢で刻んだり引退力士にはハンディをつけてアマチュア力士と対戦するとか考えているんです」


「何楽しそう」


「たとえば真奈美さんと引退力士で対戦するとかできるように」


「私と・・・誰です?」


「私・・・」と璃子が自分で指さし


「またまた御冗談を」


「本気なんですけどね私は・・・理事長とはできて私とはできないと?」


「いやいやあれはエキビジションですからもう・・・」


「倉橋は本気だったと理事長はおしゃってましたけど」と至って真面目な璃子


「・・・・」


(勘弁してくださいよまったく璃子さんと云うより元大関 藤の花。スピードと卓越した技で格上の力士を翻弄させた業師の上に一回優勝もしてるじゃないですか・・・でも妙義山相手にあのぐらい相撲できれば意外とちょろいかも・・・)


「内心、勝てると思ってるんでしょう?」と璃子


「とんでもないですよ。元大関 藤の花。スピードと卓越した技で格上の力士、私なんか足元にも及びませんから・・・」


「じゃー決定ですね楽しみです。倉橋真奈美の泣き面見てみたいんで」と笑みを浮かべる璃子


「もう勘弁してくださいよ。到底私なんか勝てるわけないし泣けるほどに実力が拮抗していれば別ですが」と笑う真奈美。


(ふざけんなよこの女。元大関 藤の花ぐらいなら多少稽古すればいい勝負できるわ!負ける勝負なんかしたくないんでねぇ。・・・・って私何云ってるのやらないわゆよ絶対。絶対やらないからまったく)


「ところで桃の山さんの方は?」


「葉月さんが近くの相撲場で会っていますそれも十和桜も一緒にいるそうです。伊吹桜から連絡がありましてここから少し離れた、大相撲旧武相山部屋にいるそうです」


「相撲部屋?十和桜関も一緒に?」


「葉月監督には何か考えがあるのでしょうが相撲場にそれも今回の当事者である十和桜と一緒にさせて何やろうとしているのかさっぱりわかりませんよ。多分二回戦も来ないでしょう下手すると多分今回の大会には出さないんじゃないんですか桃の山を」


「でも十和桜関と一緒にいると云う事は何かしらの和解と云うか話し合うことはできているとすれば」


「もしそうならわざわざここから離れた相撲部屋ではなく支度部屋に来ればいいんじゃないんですかそれをわざわざ・・・」と璃子は多少の苛立ちを見せながら


「でも監督はこの勝負を捨てるわけはないでしょうしそこは何か・・・」


「ならいいんですが・・・とりあえず二回戦は同じメンバーで戦うしかありません。アマチュア二人におんぶにだっこですね女子大相撲はまったく恥ずかしくて・・・」


「でも、百合の花さんがきっちり締めてくれるって想っているからアマチュア二人もおもいっきりいけるんです。日本チームの守護神は絶対ですから」


「あとは百合の花がどこまで持つのかそれだけが・・・・」


 百合の花の腰の状態の悪さは二人とも十分に承知しているしそれは映見も同じく。桃の山が二回戦どころか本当に欠場なら勝負する前から答えは決まっている。口には出さないがそれは二人の暗黙の認識。百合の花の状態如何では試合放棄も考えなければならないしそこまで至らなくても大将に映見を持っていくことまで真奈美は想定しているのだが・・・。


 二回戦、ロシアVSモンゴルが始まり先鋒ロシアが順調に勝負を決めた。無敵艦隊につけ入れる隙はなさそうだ。

 

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