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女力士への道  作者: hidekazu
女子プロアマ混合団体世界大会

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130/324

一回戦 ②

「先鋒・石川さくらウクライナのKaryna Kolesnikの突き押しから強引に石川の得意である四つの体制に持っていこうとした瞬間内掛けで足元をすくわれ手痛い一敗。解説は元横綱三神櫻(遠藤美香)さんです。如何でしょうか」


「だいぶ気負っていたようでしたからちょっととは想いましたが焦りすぎましたかね?ここはじっくりいっても良かったとは思いますがしかたありません。ただこの一戦で勝ちぬけれればば緊張もほぐれるでしょうから稲倉・百合の花に期待したいところです」


「その稲倉が土俵上で四股を踏んでいますが遠藤さん稲倉の評価は?」


「高校・大学と常にトップクラス且つ世界でも学生及びシニアでも数多くの優勝をしていますし実績では申し分ないです。直近の世界大会や先日の伊勢で行われた大会では石川さくらに惜敗しましたが直近の合同稽古では女子大相撲相手に完勝に近い稽古ができていたと聞いていますのでその意味では期待していますし違う稲倉の相撲を見れるのではと」


「と云いますと?」


「稲倉の得意は四つですからその意味では石川さくらと同じですが稽古では突き押しや引き技も見せていた聞いています。その意味では一皮むけたのではとそうなると元々相撲センスには定評がある選手ですから「あっ」と云わす相撲を期待してしまいます」


土俵上ではすでに両者仕切り線の前にKaryna Kolesnikは先ほどの相撲で気持ちが高ぶっているように気迫十分、たいして稲倉映見はあくまでも冷静に相手を見ているが目だけは相手を威圧するように・・・。


見合って見合って……、はっけよい!


 立ち合いはほぼ互角だが稲倉は体半身分左へ変化したような素振りを見せると秒殺で上手投げを決めた。あっけない相撲に館内は一瞬鎮まるが日本が五分に持ち込むと一気に歓声に変わった。映見は一旦土俵を下り息を整える。すかさずさくらが近寄る。


「映見さん凄いです!」とさくらは興奮気味

「さくらの相撲が参考になったから多分もう一度突き押しで来ると踏んだから」

「的中ってことですか?」

「過去の彼女の相撲をできるだけ動画で見てそれに一回だけ対戦していることもヒントになっていたしね。でも次はそうはいかない」

「プロリーグの力士・・・」さくらの言葉がどことなく緊張を誘う


(プロ力士との対戦ももちろん想定して作戦は練っているし監督から貰った資料の緻密さとヒントの的確さには改めて驚いている。ここで負けるつもりはないから)


----------------------------試合当日 午前五時三十分・稲倉監督の部屋-------------------------


「さくらは?」と真奈美

「ぐっすり寝てます」と映見



真奈美は前日にこの時間に自分一人で部屋に来るように云ってあったのだ。


「こんなことになることは考えていなかったけど映見とさくらで最低二人を倒さなくてはならくなると想う」


「二人って私も?」


「椎名監督から連絡があって桃の山関が来ないことを想定してくれと」


「・・・・・」


「私からすればキツイ云い方だけどあの程度の事で潰れるんじゃ話にならないよ。でもさすがに遅れるかも知れないが来ないと云う事はないと思うけどね常識的に本当に来なかったら引退だよ」と真奈美は感情的にならずと云うよりも他人事・・・・。


「監督はあの時私は潰れると想いましたか?」

「あの時?」

「さくらが西経に出稽古に来た時」

「さぁ・・・潰れようが潰れまいが判断するのは本人だからね」


 真奈美はソファーに腰掛け映見はデスクチェアに腰掛け・・・・。


「ここにいることが不思議なぐらいなんです私は・・・」と映見

「私は潰れてもいいと思っていたよ冗談ではなくそして映見が相撲部から去ったら私も辞めようと」

「えっ」


「私は二回辞めようと思ったことがあったんだ。一回目は西経が低迷して以前ほどの成績が取れなくなった時・・・潮時だなぁってそんな時映見が高校に入ってきてお前の相撲を見た時に大学で育てたいと思ってしまってもう一つはさっきの出稽古の話。ところがお前がまた相撲やる見たいなことになって辞めるチャンスを逸したよ・・・まったく」と真奈美は苦笑しながら


「私のせいですか?」


「そうだよお前のせいだよまったく」


 真奈美はソファから立ち映見が座っているチェアー脇の窓のカーテンを開ける。空が若干オレンジかがっていた・・・。


「映見、お前には感謝するよ。多分映見に巡り合わなかったらとっくの昔に監督辞めていた。そうだったら瞳とここまでの関係になる事もなかったし濱田ともう一度再婚する何ってこともなかったから・・・。相撲記者の中島京子に映見は突然現れた女神だって云われてね」


「女神?私が?」


「西経の相撲部を救ってくれた・・・いや私を救ってくれたかな・・・」と真奈美は多少照れながら


「そう云う事は部員達の前で云ってほしいですけどね」と映見


「ふん、生意気な・・・まだもう少し映見と付き合わないといけないからなぁ」


「あと三年・・・よろしくお願いします」と映見は席を立ち頭を下げた。


「こちらこそ・・・」


 倉橋真奈美にとって映見と出会っていなければ相撲部監督を辞めて何をしていたのだろうか?今更会社勤めも起業してなんかもしたくはなかった。多分ロクなことにはならなかったろう・・・間違いなく。


 倉橋はソファーに座り映見を対面に座らせるとUSBメモリーを渡した。


「USBに日本と同じ組の各国の選手情報と試合動画が入っている。私なりにざっとまとめてあるからさらっと見といてくれ。桃の山関の動向及び試合状況いかんではお前がアマ・プロ一人ずつつに確実に勝たないと日本に勝ち目はないからな。さくらは気持ち的にまともな相撲はできないことを考えたらお前が二人を撃破して百合の花関に渡すそれしか日本の勝ち目はない。百合の花関が決勝まで持つのか正直不安だ状態はよくない」


「それは私も同感です。三人抜くつもりでいますから」


「まずは二人抜けばいい余計なこと考えるな。お前の役割は相手を疲弊させて最後の一人を百合の花関に渡すそれが役割だ。変に勝ち急いだり三人抜けなんか考えていたらお前が潰れる。日本チームの生命線はお前が握っているんだ。チームとしての勝負に徹しろ!この大会で映見を出すとしたらそれは日本チームがピンチの時だと考えていたけど一回戦から出すことは想定していなかった。


 サッカーで云えばボランチの役割。チームの舵を取るような・・・団体戦であろうと攻撃的に勝つことは当たり前だが負けても疲弊させて大将に渡すのも大きな意味がある。お前の役割はチームの流れをいい方向に持っていくことそれは相撲が強ければ誰でもできるわけじゃない。チームの状況を冷静に見て一気に勝負するのかそれとも自分は無理をせず百合の花関に渡すのかそれを冷静に判断するのには頭の回転も必要だそれができるのはお前しかいない。お前が代表に選ばれて以降色々なスタイルに挑戦して習得していったのはそう云う事なんじゃないかと」


「ふん、まあそう云う事にしといてください。監督に私が出るときは日本がピンチの時だって云われた時に私がすべき事は察しがついていたしそれはさくらが潰れた時だと思っていましたがまさか桃の山関だとは考えもしていなかったですがでもこのまま大会欠場は間違ってもないとは思っていますが」


「私もそう思っているが・・・。だから少なくとも二回戦のポーランド戦ぐらいまでは楽に行かないと三回戦のブラジル戦は重量級を揃えたメンバーだとしても技量的には落ちる。ただ二回戦までの消耗如何ではあっけなく勝負をつけられる可能性もある。その時点でも桃の山関が来なかったら勝負はついたも同然だけどな」


「日本が負ける?」


「妙義山さんの娘がそんなことはしないだろう・・・とにかく映見!おまえがチームの流れをコントロールしろそれができるのはお前しかいないんだから」


------------------------------------試合会場 一回戦------------------------------


ウクライナ二人目はプロ力士TROSIUK SVITALANA。体格的には映見を少し上回る程度だがスピードを武器としているプロとしては軽量力士で地位は横綱33歳。筋骨隆々で女性らしかせぬ体つきは裸でなくてもよくわかる。スピードタイプの力士はどちらかと云うと苦手である映見ではあるが・・・。


見合って見合って……、はっけよい!


  SVITALANAは左で張って右を差そうとすると映見は頭を低くして右差し左おっつけ狙い、 SVITALANAは左を伸ばして上手を掴もうとしたが届かない。両者左からおっつける形、映見は左で上手を狙ったう。

SVITALANAが右腰を引いて嫌うと映見は左でおっつけてSVITALANAの右を封殺するがSVITALANAもしつこく左おっつけで肘を攻め、右をまた差そうとする。


 映見は左おっつけ押し上げる。激しい押し合いからSVITALANA


「う~ん・・・う~ん・・・」


「くぅ・・・あっ・・・ん~ん~・・・」


「・・・・・・くっ!!」


「・・・・・・うあっ・・・」


 左に廻って突き落としで振り、右を差そうと半身になるが、頭をつけてついていった映見は左で肘を押さえ、 次いで左の恰好でおっつけて許さない、さらに左で横褌を取る。SVITALANAは腕捻りを引くが、映見も左に変わって右で頭を押さえながら左小手投げ気味に引っ張ろうとすると、映見は左が切れたが右下手のSVITALANAの左突き落としに左おっつけでついていき、 膝を取りながら怒涛のごとく寄り切った映見の大金星。一気に館内が沸騰するほど大歓声。


「稲倉凄いぞ」

「さすがアマチュア女王だぁ」

「アマチュア絶対横綱!」


と歓声が飛ぶ館内。映見は一礼していったん土俵下に下りると安堵したのかふっと膝まづいてしまった。


「映見さん!」

「稲倉!」


さくらと百合の花が駆け寄る


「すっすいません。ちょっと気が抜けちゃって」と苦笑いをする映見。


「怪我してるんじゃないよな?」

「大丈夫です百合の花さん。やっぱり三人抜けは無理そうなんで三人目は適当に流しますんであとはお願いします」

「とか云いながら狙ってるだろう映見」と百合の花

「いやいややっぱりそこは横綱でしとめてください」

「調子いいこと云いやがって」


 三人目のウクライナはTSARUK VIKTORIIA。映見は適当に流してチャンスがあったらとは思っていたが押し出しで負けてしまった。そして大将、横綱百合の花の登場だ。


 


 



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